はむはむ、と夢中でコーザさんの唇を食んでいると、違和感に気づく。
へそのあたりに、なにかかたいものが当たっている。
キスをやめて確認すると、コーザさんの股間にはテントが張っていた。
「……あぇ? コーザさん、興奮してますか?」
「そりゃするだろ。するから抱いてる」
「わぁ〜い」
もっとぎゅっと抱いてほしくて、私はコーザさんの首筋にすりすりと頭を擦りつけた。
「腰上げれる?」
「ふぁい」
腰を浮かすと、コーザさんは私の服をするする脱がした。手馴れている。
かつての女の影が見えてちょっと嫌だな。
でも獣人の体は詳しくないと言っていたので、獣人を抱くのは初めてだろうか。
いや、詳しくないという言い方だと、別に初めてではないというニュアンスかな……くっ、おじさんの経験が豊富すぎる。
「……しっぽ生えてたんだ」
「らしいです。これなんに使うんでしょう」
「本人がわからないならおじさんもわからないかなあ」
私の服は獣人用ではなさそうだった。
しっぽはそれほど大きくないため、無理矢理ズボンに収まっていたが、服を脱ぐと解放感がある。
コーザさんが私の腰に手を伸ばし、しっぽの付け根をくすぐった。
「ぅああ!?」
「ちょ、ごめん、触っちゃいけないところだった?」
驚いてコーザさんに抱きつくと、コーザさんも驚いたようだった。
振り向いて自分のしっぽを見ると、ぴくぴく痙攣している。
ここって動くんだ、意識したことなかった。
「触っちゃいけないかもしれないです、気持ち良すぎる」
「んー……つまり触ってほしいってこと?」
「触ってほしいという気持ちと、触られすぎると狂いそうなのでほどほどでやめてほしいという気持ちがあります」
「後半だけでよくない?」
「いえ、もういっこありました。コーザさんになら狂わされてもいいよって気持ち」
「狂わされそうなのはこっちなんだけど」
どういう意味か聞く前に、しっぽをくすぐられて悲鳴をあげた。
暴れ回りそうなので、コーザさんに必死でしがみつく。
向かい合っているので、私の背中に手を伸ばすコーザさんから逃れようとすればするほど、コーザさんに体を擦り寄せることになる。
私は今、自分をいじめている人にしか助けを求められないんだ。
「あ、あ……っ」
体がこわばって、腰が痙攣した。
詰めていた息が元通り吸えるようになってようやく、自分がコーザさんをガチガチにホールドしていることに気づく。
締め技でもかけているのか?
慌てて体をはなしたが、コーザさんはどこも怪我していないようで安心する。
コーザさんはベルトを緩め、下着をおろした。
背が高いので性器も大きいだろうなあ、とはなんとなく思っていたが、ちゃんと大きい。
赤黒く、張り詰めた陰茎の先端からは、透明な液がしみだしている。
生きている人間の一部なんだなあ、と思って妙に感心してしまった。
「わあ~。はじめてみた」
気持ちよくて頭がバカになっているようだ。
アホみたいな感想しか出てこない。
もっとえっちなこと言うよう努力した方が良いだろうか。
えっちとはなんだ? ああ、今それをコーザさんに教えてもらっているんだった。
「怖い?」
「え? コーザさんのどこに怖がる要素があるんですか? 自分のことなんだと思ってるんです?」
「それはおじさんが聞きたいんだけど、オレのことなんだと思ってるの?」
「めっちゃやさしくて親切でかっこいいおじさん、命を預けても良し」
「命は自分で持っといて」
ほら、めっちゃやさしくて親切でかっこいいじゃないか。
コーザさんはどこかから取り出した、透明の袋のようななにかを、自身の性器に被せた。
つるつるとした素材のそれは、性器をぴったり包んでいる。
「それなんですか?」
「避妊具」
「おおーえっちですねえ」
「そう?」
「私たちこれから生殖のためじゃなくて、えっちなことするためにえっちするんでしょう。えっちじゃん」
語彙力がカスになっている。
自分で笑ってしまった。ふーん、えっちじゃん。
避妊具をつけたコーザさんの性器に、自分のものをこすりつける。
これだけでも気持ちが良い。いれたらどれだけ気持ちいいんだろう。
しかしコーザさんに腰を掴まれて、動きを止められてしまった。
「こ〜ら。もっと慣らさないと痛いよ?」
「若いから生き急いでるんです、待てません」
「悪い子だねえ」
「うぅーっ……!」
その言葉に、肌があわだった。
ゆっくり息をして、ちょっとだけ腰を浮かせる。
コーザさんの胸にぐりぐりと額を押し付けながら、私は頑張って興奮を抑えた。
「コーザさんに嫌われるなら我慢できます……」
「……今度はオレが我慢できない」
いつもより低い声に、うさぎの耳がピンと立った。
余裕のなさそうな声に腰がしびれる。
おしりに近いふくらはぎのあたりを両手でつかまれて、膣の入り口にぴたりと陰茎が添えられた。
この人は、どうして私より私の体のことがわかるのだろう。
「力抜いて」
「む、むちゃな……!」
さっきから、無意識に歯を噛みしめている。
私の白い肌は、全身真っ赤だ。首筋から垂れてきた汗が谷間を滑っていく。
ふー、ふー、なんとか荒い息をして、コーザさんに跨った足から力を抜こうとする。
自分の足を見るためにうつむいていた私は、コーザさんが突然うさぎの耳を舐めるのに反応できなかった。
「ぴゃっ!?」
その拍子に動いた腰が沈んで、亀頭が入り口を通り抜ける。
「んぅッ」
痛くはない。ただもっと奥にほしい。
でも体が言うことを聞かない。気持ちよさと興奮で全身に力が入る。
足の力をゆるめないと、腰を落としてコーザさんを受け入れられないのに。
歩き方が急にわからなくなってしまったみたいだ。
「コーザさんっ! からだから、力抜こうと、してるんですからっ! 耳で遊ぶの、やめてくださいよ!」
「ふふ」
耳を食んだまま笑われ、私は体を跳ねさせた。
どうしていいかわからずにかたまっていると、コーザさんが私の太ももを指先で撫でた。
触れられた場所から電流が走ったような感覚がして、突然力が抜けた。
自重により、一気に貫かれる。カハッ、と空気が口から出ていった。
内臓を殴られたような衝撃が襲ってくる。
だが、本当に不思議なことに、痛みはない。
「よしよし」
コーザさんの膝の上にぺたんを座り込んで、呆然としていると、頭を撫でられた。
お腹の中がぎゅうっと縮こまって、コーザさんのものを締め付ける。
「ラピちゃんの中は甘えんぼさんだねえ」
「ぅう……」
なにか言い返さなければ、と思ったが、快楽に邪魔され頭の中で言葉を組み立てられない。
「見える?」
「……んぅ?」
必死に息を整えていると、コーザさんは私のお腹――へそのすぐ下を指さした。
私のお腹は薄く、中を押し上げるコーザさんの陰茎の形にぽっこりと浮き出ていた。
「おじさんの、ここまではいっちゃったね」
「……あっ、ひぅ」
ゆだってしまったようだ。もうこれ以上赤くなれないのに。
いつのまにか口から垂れていた唾液をなめとられ、そのまま口づけられる。
唾液が舌でかき混ぜられる、ぐちゃぐちゃという音が頭に響く。
「苦しい?」
キスをやめたコーザさんに聞かれ、首を横に振った。
気持ちいい。もっと。足りない。
コーザさんのものはすっかり根元まで私の中に入って、下の毛同士が絡まりそうなくらいだった。
白と麦色の濡れた毛を見る。どっちも髪の毛と同じ色なんだなあ。
「わ……私、丈夫って言いましたよね?」
「ん? ああ、あんまり信用できないやつね」
「なぜ……!?」
「いや、傷だらけになってたでしょう」
「でも寝たら治りましたよ……!」
「うーん、それはそう」
初日、枝や葉で傷ついた細かい傷は、あっという間にふさがった。
コーザさんも驚いていたので、彼が使ってくれた傷薬が異様に効くというわけではなさそうだった。
ならば私の治癒力が凄まじいのだ。
「すぐなおるから、もっと乱暴に、していいですよ」
「そういうのが好き?」
「いえ、コーザさんにも気持ちよくなってほしくて」
琥珀色の目がすうっと細くなった。
「あんまりおじさんをなめちゃだめだよ?」
腰を掴まれ、ぐりぐりと最奥を捏ねられる。
快楽が全身を駆け巡り、私は大きくのけ反った。
「きみをよがらせながら、自分も満足させられるさ」
「うぅ~……っ!?」
私の体重が軽いのか、コーザさんの力が強いのか、その両方か。
コーザさんは私の腰を両手で持ち、軽々と上下に揺すった。
お互いの肌がぶつかり、パンパンという音が鳴る。
ああ今、セックスしてるんだなあと、妙に遠く感じる思考がよぎった。
「ぅ、あっ、あ、ぅあっ、あっ」
ゆすぶられるたびに、コーザさんのものが奥に当たって、勝手に声が出る。
そういうおもちゃみたいだ。――そういうってどういう?
自分の体が思い通りに動かない。それなのに、全然怖くなかった。
この人になら命を預けてもいいと、思っているからである。
気持ちいい。気持ちいい。それしかない。
腰を打ち付けるスピードが少し上がる。
揺れる視界でコーザさんを見れば、熱い欲に塗れた目が私を見返した。
あんなにやさしいおじさんに、こんな顔をさせているのは私だ。
奇妙な優越感が胸を満たす。
最後にコーザさんは、私の体を強く抱きしめた。
私の肩を押さえ、腰を突きだし、もうこれ以上ないはずの奥に、熱い肉棒を叩きつけられる。
どくどくと鳴る、どちらのものかわからない鼓動を聞く。
この瞬間が永遠に続けばいいのに。
余韻に浸っていると、自分の汗でしとどに濡れた私の前髪を、コーザさんが整えてくれた。
「気持ちよかった?」
質問の形をとっているが、私の答えがわかっているのは瞭然だった。
息が上手くできなかったので、首をぶんぶん縦に振ることで返事をした。
私の体を綺麗にし終わったコーザさんは、私の白髪をやさしくなでながら、へらへら笑った。
「いやあ、この歳になって自分の好みを自覚するとはなあ。オレってこういう子が好きだったんだ~」
「コーザさんの初恋が私ってことですか!? やばくないですか!?」
「恋するおじさんって痛々しすぎ?」
「いや興奮します」
「あっはっは!」
大きな声で笑うコーザさんを見ていると、私も嬉しい気持ちになる。
これが好きってことか。頭がぽやぽやして、胸がぽかぽかする。
「コーザさん。記憶がないから、私もコーザさんが初恋ですよ」
思ったままを言うと、琥珀色の目が細まった。
この目で見られると、ちょっと怖い。
でもお腹の奥から、ぞくぞくするような何かがのぼってくるのだ。
「もう一回戦やっていいってこと?」
「え? いやそういう意味ではないですけど、もっかいしたいのでそういうことにしていいですか」
「いいよ」
コーザさんは二度手間をやらかした。
私の体は再びどろどろになり、コーザさんは再び私を綺麗にしなければならなくなった。
面倒だろうに、不思議とコーザさんの機嫌は良かった。
というかなぜこの人はこんなに元気なんだ?
私は半分気絶しながら、コーザさんの献身的な介護を受けていた。
まあ私をこんなんにしたのはコーザさんなんだから、責任はとってもらわないとな。
私たちは同じ場所で野営することになった。
丈夫な私の体でも、一日中いじられたらさすがに足腰が立たなくなったからである。
喘ぎすぎてかっすかすになった声で、私は文句を言った。
「こ、殺す気ですか……!?」
「約束しただろ? 殺さないって」
数え切れないほど絶頂したため、全身の筋肉が痛い。
途中から記憶がないし、気持ちよすぎるというのが一種の暴力であることを知った。
乱暴にしていいと言ったときにはやらなかったくせに、最終的に乱暴されたようなものだ。
コーザさんは悪びれることもなくこう言った。
「もっとって言うからやったのに?」
「もう自分でもなに言ってるかわかんないんですよ、気持ちよすぎて! ちょっとは手加減してください、大人でしょ!」
「ラピちゃんがかわいいから難しいな〜」
「え〜!? じゃあしょうがないですね!」
「ちょろすぎる。おじさんは心配だよ」
だったら私を奴隷にして、ずっと傍にいてくれたらいいのに。
そんな思いは言葉にならなかった。
あまりの眠気に襲われて、一瞬で意識を失ってしまったからだ。
肩をゆすられて起こされた。
目を擦ると、すっかり支度を終えたコーザさんがいた。
寝坊したらしい。はやく起きていても私にできることはなかっただろうが。
「立てる?」
「……? はい!」
差し出されたコーザさんの手を取って、寝ぼけながらも立ち上がる。
ぐっすり寝たので、私の体はすっかり回復していた。
「うわ~、獣人って丈夫なんだなあ」
「なんかそうみたいですね!」
元気に返事をした私の声は、すっかり元通りになっていた。
気分爽快、体も元気! ちょっとだけお腹に違和感があるが、痛みではない。
「他人事だねえ」
「記憶がないせいか、なんだか他人の体みたいです!」
「……昨日のこと覚えてる?」
「覚えてますよ! 昨日はものすごく気持ちよかったです! またしてくれますか?」
「このまっすぐさ、おじさんには眩しすぎる……」
「え? 私光ってました?」
手のひらを見る。やはり白い手だ。
あまりに白いため、感光板の役割でもしていただろうか。
そういえば、3日前コーザさんに掴まれて赤くなっていた痕は、見る影もなかった。
やっぱり私の体は丈夫らしい。すごいな~獣人って。でも奴隷しかできないのはしんどいな~。
どこかに獣人だけの街はないのだろうか。
コーザさんがその話をしないということは、んなもんはない、ということか。
ここになければないですね~。なんだこのセリフ?
鉈で道をつくるコーザさんに手を引かれて歩きながら、話をする。
「年甲斐もなく夢中になっちゃったよ。避妊具はそれほど仕入れてなかったから、昨日ので最後。だからもうしない」
「えーっ!」
「えー、じゃないよ」
「まあ、自分一人でも生きていけない私が子供を産んで育てるのは無茶無謀すぎますね。しかたありません。妊娠しないえっちはないんですか?」
「この子すげえな」
よくわからないが感心されている。褒められているということでいいのだろうか。
コーザさんは咳払いをして、どことなく気まずそうに、言った。
「ない、こた、ない」
「わーい! コーザさんがものしりでよかった! 今日の夜はそれやりましょうね!」
「おじさんが元気だったらね」
「私コーザさんのこと抱えていきましょうか?」
「木の枝にひっかかってオレもろともズタズタになるだろ」
「否定できないな……」
そもそもコーザさんは私より大きいので、抱えるのも難しそうだ。
体重は軽いので、持ち上げるだけなら簡単だろうが、どう持ったら安定するのか思い浮かばなかった。
最初にやる気はあるができることはあまりない、と申告したその通りになっている。
情けない。正直もうちょっと役に立てると思っていた。
コーザさんが完璧すぎるからだろうか。私が雑魚なんだろうか。
いけない、ネガティブになってもいいことはない。
考えを振り払って、思いついた話題を口にする。
私は記憶喪失だ。だから話せる記憶は非常に限られている。
「そういえばコーザさん、私が起きた場所に人の死体がいっぱいあったんですけど、見ました?」
琥珀色の目をまんまるにしながら振り返り、コーザさんは言った。
「……あそこで目が覚めたの?」
こんな言い方をするということは、コーザさんも現場は確認済みということだろう。
お互い嫌なものを見た。同情心を覚えつつも、私はハキハキ答えた。
「最初の記憶はあそこから始まってますね! 最悪かも!」
「大丈夫だよ。かも、じゃなくて最悪だから」
あれくらいの死体の山は日常茶飯事、というわけではなさそうだ。
最悪の治安ではなさそうで安心する。
再び歩き始めたコーザさんは、私に言った。
「それじゃあ、凄惨な現場を見たショックで記憶がなくなっちゃったのかもね」
「えー? 起きて死体見たとき、死体だなあとしか思いませんでしたよ?」
「そう思えるように、記憶をなくしたんじゃない?」
「おおー、なるほどー」
みんな知り合いだったから、死んでしまったのを直視したくなくて、記憶を失った。
それなりに説得力のある仮説である。
起きたとき頭も痛くなかったし、ぶつけた衝撃で、という感じでもなさそうだった。
肉体が原因ではないのなら、精神が理由。
当然の帰結だな。
コーザさんは鉈を持ったままの手で麦色の髪をぐちゃぐちゃとかき混ぜた。器用。
「てっきりあれのことは知らないもんだと……オレが声をかけたとき、こいつが犯人かもって思わなかったの?」
「全然思いませんでした!」
「潔いねえ〜」
「むしろこの人についていかないと、犯人に殺されちゃうかも! と思ってました! たしかにコーザさんが犯人の可能性もありましたね! あのくらいのことできそう!」
「やってないからね?」
「よかった〜!」
コーザさんが殺人鬼だったら、私も覚悟を決めなければならなかっただろう。
警察を全員ぶっ飛ばして、どこまででも逃げる覚悟である。
「というか逆にコーザさんは私が犯人かもって思わなかったんですか?」
「思ってたよ」
「思ってたのにあれほどやさしかったんですか!? すご! 聖人!?」
「おじさんはね、ラピちゃんの将来が心配」
じゃあ、コーザさんが私のそばにずっといてくれればいいじゃないか。
その言葉は飲み込んだ。これだけ親切にしてくれる人に対して、望みすぎだと思ったからだ。
重い女は嫌われるという格言のようなものが、私の頭の中にもあるしな。
私たちは、疲れも知らないかのように歩き続けた。
獣人は体力がありそうだからわかるけど、コーザさんはおじさんなのに凄すぎないだろうか?
だから絶倫なのだろうか?
何度射精できるのか数えたいが、その前に私が気絶してしまうだろう。