お待ちかねの夜だ。
私はなんとなく正座をして、コーザさんと向かい合う。
コーザさんもどことなく緊張した面持ちで、説明を始めた。
「妊娠しないえっちはね、おしりを使います」
「はへぇ〜」
頭の中にもなんとなくの知識がある。
この体で経験済みかはわからない。
ちょっとアブノーマル寄りのプレイである、と脳みそが言っているからだ。
「気持ちいいんですかね? お互いに」
「おしり側からお腹を刺激すれば、気持ちいいところに当てられるよ」
「なるほど、内臓をスキン代わりにするというわけですか。天才?」
本命は子宮で、それを腸越しに刺激する。
なるほど理論はわかった。いけそう。腹から押しただけで気持ちよかったし。
「あ、渋ってたのは自分が気持ちよくないかもしれないからですか? 私コーザさんにも気持ちよくなってほしいんですけど、なにかできることあります?」
「健気だねえ……」
「えーと、それは悪いことですか?」
「悪いかも」
「えー!?」
私の何を指して健気といったのか理解できなかったので、すぐに改善することは難しいだろう。
「悪い子でも抱いてくれますか?」
ここまで来てお預けだよ、と言われたら泣いてしまうかもしれない。
不安になって眉を下げながら聞くと、コーザさんは片手で顔を覆って、深くため息をついた。
だめだよってこと!? 今日はしないよってこと!?
「私なんでもしますよ!? 教えてくれたらなんでも!」
「いいよ、大丈夫。おじさんが全部教えてあげるからね」
「やったー!」
縋ったら許してくれたので、もろ手を挙げて喜んだ。
コーザさんは私を見て、眉を下げたまま笑った。あ、この顔好き。
毛布を敷いた地面に座ったコーザさんの膝の上に、向かい合って座る。
ここは森の中で、ふかふかのベッドは存在しない。
コーザさんは私を硬い地面の上に転がすのが嫌なようで、あれだけえっちを繰り返したのに、私は未だに正常位を経験していなかった。
正常っつってんのにね。誰から見ての正常なんだろう。
ちょっとキスされ、ちょっと体をくすぐられただけで私の体はピンクに色づく。
でもこれは体が敏感だからではなく、相手がコーザさんだからだと思う。
コーザさんの手練手管もあるけれど、私がコーザさんを好きだという気持ちが感度を良くする。
「はい、ちょっと力んでね~」
力を抜いてと言われることばかりだったので、混乱した。
おしりの穴にコーザさんの指が入り込む。
後ろにまで垂れていた愛液で濡れていたために、大した抵抗もなかった。
指先が抜けていっても、腸内に異物感がある。
「おしりにな、なにいれたんですか……!?」
「セックス用の洗浄剤」
避妊具は尽きたのにアナルセックス用のアイテムはあるんかい。
もちろんそんなことでコーザさんを軽蔑することはない。
だが、もしかしたらこの人、えっち専門の行商人なのでは……という疑いは少々持ってしまうな。
だとしたら避妊具の手持ちが少ないのはありえないが、でもアブノーマル寄りの……やめよう。
本当にそうだったとき怖い。
だってそうだったら恋人いないわけなくないよね。手練手管で女転がしまくってるだろう。
行商人とは聞こえのいい呼び名で、実際は女衒。
体良く言いくるめられて、私は商品としてつくりあげられつつあるのでは――妙な説得力があって最悪だな、この想像。
「な、なんか、おなかがぐるぐるするんですけど……!?」
どんな形の何を入れられたのかわからない。
セックス用の洗浄剤、とコーザさんは言った。
普段は排泄に使う場所に男性器を突っ込むのなら、そりゃあ必要だろう。
でもその、つまりそれって、浣腸ということなのでは。
「ここで出していいよ」
「はぇ?」
――詳しいことは割愛するが、私は様々な尊厳を失った。
「ごめんごめん、そんなに恥ずかしがると思わなくて」
「かわいいところだけ見て欲しいと思うのが女心じゃないですか! 知らんけど!」
「知らないんだ」
女心がなんなのかも忘れてるんだよこちとら! 記憶がないんじゃい!
毛布の上で土下座のように丸まってしくしくしていると、私の背中を撫でて慰めてくれていたコーザさんの手がしっぽをくすぐる。
気分は下がっていたが体は正直なので、指先でしっぽを弾かれるだけで腹の奥がうずく。
「このままいれていい?」
「う……コーザさんがそうしたいなら……」
「やっぱり嫌?」
「そのう、体勢が……後ろからだとコーザさんが見えなくて寂しいというか……」
言い切る前に、腰を掴まれ軽々と持ち上げられた。
向きをぐるりと変えられ、あぐらをかいたコーザさんの上に座らされる。
「オレもラピちゃんが気持ちよさそうな顔してるの見るの好きだよ」
「へへ~」
頭を撫でられ、耳がぴくぴく勝手に動いた。
頭を撫でていたコーザさんの手は私の後頭部に回り、ぐっと顔を引き寄せられる。
唇を吸うようなキスを何度も繰り返しつつ、コーザさんは私のおしりの穴をいじめた。
どうやらおしりというのも性感帯らしい。
お腹の中から子宮を刺激されなければ気持ちよくなれないのかと思っていたが、すでに気持ちが良い。
「最後までしても大丈夫?」
「いやここでお預け食らったら暴れますけど!?」
「あっはっは。オレも~」
コーザさんが暴れるところは想像がつかなかった。
ちょっと見たいので今からでも返事を変更できないかと思ったが、ほぐされたおしりの穴はすんなりとコーザさんの陰茎を受け入れてしまった。
「い……今言うことじゃ、ないかもなんですが……!」
「なに?」
「これ感染症とか大丈夫ですか!」
「おお、教養があるね。ま、リスクあるとしたらオレの方かな」
「だめじゃん!」
だから渋っていたのか?
私に自分の体を大切にしろという割に、コーザさんだって体を大切にしていないじゃないか。
文句は言葉にならなかった。
私は身勝手だ。
今気持ちいいなら、相手の体を心配しなくてもいいんじゃないか、と思ってしまう。
じゃあやめるねって言われたら切ない。この人なら言いそうだし。
私をここまで発情させた責任くらいはとってもらわないと。
「も……もうイキたいです、おなかせつない……!」
額を伝った汗が流れ落ちていく。
「んー、おじさんもおしりは初めてだからなあ。勝手がつかめないかも」
その言葉はどこか白々しく聞こえた。
初めてというのも嘘っぽいし、勝手がつかめないのも嘘っぽい。
私が初恋だ、というのはあれほどすんなり信じられたのに、というのが根拠である。
これほど器用な男が、ここで不器用を発揮するだろうか。
ゆっくりねっとり奥を捏ねられ、性感だけが高まっていく。
動きがゆっくりだからか、腸壁ごしの間接的な刺激だからか、決定的な快感は得られない。
いますぐ爆発しそうなのに、きっかけだけがなかった。
「うー……! うー……い、いじわるぅ……!」
「あっはっは。散々おじさんのこと弄んだお返しだよ」
やっぱり遊んでいたらしい。
私がいつコーザさんを弄んだというのだ。
ずっと弄ばれっぱなしのはずだ。
というか、弄られっぱなしというのは問題な気がしてきた。
私はコーザさんに喜ばせられまくっているが、コーザさんに対して私はなにもできていないということ。
「じゃあ、私もお返ししていいってことですね……!」
あわよくば奴隷にしてくれないかな。
そういう気持ちがあったから、コーザさんの前ではできるだけ従順にしていた。
そもそもコーザさんが大変にやさしいため、反抗する機会もなかった。
だが、今の私は奴隷ではない。
迷子で、食料も水もコーザさんから貰うだけの穀潰しだが、自由意志はある。
舐めてると火傷するぞこらっ!
少々乱暴だが、起き上がると同時、コーザさんをどんと突き飛ばした。
おしりから陰茎が抜け、括約筋が寂しそうにきゅうきゅうする。
コーザさんに馬乗りになって、私は初めて上を取った。
ついでにコーザさんの両手を掴んで地面に固定する。
仕返しだからな……! 初日にやられたことをやり返してやる……!
コーザさんは私の下で、目をまんまるにしていた。
このおじさんかわいすぎるだろ、反省しろ。
「ちょ……! マジか、こんなに力強かったの……!?」
「そうらしいですねえ……!」
記憶がないから、自分の握力がどれくらいなのかも知らない。
だが、ずっと手加減している、という感覚だけはあった。
コーザさんが抵抗するのを、もっと強い力で押さえこむ。
私は言い訳をした。
「私を弄んだコーザさんが悪いんですよ。傷つけたくないからやさしくしてたのに」
「……きみはちょっとやさしすぎるな」
コーザさんは褒め上手だ。
こんなときでも私を褒めて、単純な私は嬉しくなってしまう。やることはやるけどね。
コーザさんの頭の上に手をまとめたままではセックスができない。
私たちには体格差があり、手がそこにあったら挿入できないからだ。
だから恋人つなぎをして、両手を固定した。
いちゃらぶセックスみたい。
腰を前後させ、コーザさんの陰茎に愛液をまぶした後、腰を落として男根を呑み込んだ。
初めてのときと比べれば、私も随分うまくなったと思う。
体の動かし方がわからなくなる、ということはなく、すんなり逆レイプが成立してしまった。
コーザさんの腹筋に、ぽたぽたと雫が落ちた。
汗かと思ったが違う。私は泣いていた。
「ちょ、拘束しながら泣かないでよ!? 慰めてあげられないよ!?」
拘束をとかせようとするのがうますぎるだろ。
慰められたいから手をはなしてしまいそうだ。
コーザさんの両手を掴んでいるから涙を拭うことができない。
ぽろぽろ流れるのをそのままにして、私はぐずぐず鼻を鳴らした。
「うえぇん、きらいにならないでください~」
「なんで!?」
「わ、私……これじゃ、性欲のことしか考えられない獣じゃないですかあ~! せっかくコーザさんが配慮してくれたのに、身勝手すぎるう、うええ~ん」
「その発言はおじさんにもかなりダメージが入るんだけど」
コーザさんがなにを言っているのかわからない。
こんなにやさしい男が、そのへんにごろごろ転がっているようには思えない。
なぜなら獣人は奴隷としか認められていないからだ。
奴隷が私の思う意味の単語ならば、コーザさんのような人は、コーザさんくらいしかいないのだろう。
さすがにコーザさんに鼻水たらしたくない。
掴んでいた手を解いて、顔をごしごしこする。
拘束から解放されたコーザさんは、すぐに私の腰に両手を伸ばした。
抜かれてしまう。
そう思って焦ったが、コーザさんは私の腰を掴んで持ち上げた後、そのまま手をはなした。
勝手に腰が落ちて、より深く貫かれる。瞼の裏にバチバチと星が散った。
「……あー、時間差でゾクゾクしてきた。今まで全部、自分の意思で抵抗しなかったってこと?」
「ふぁ……? はい」
お腹から広がる多幸感に酔いしれていると、コーザさんが上体を起こした。
体面座位のかたちだ。これ、体が密着するので好きだ。
ぽわぽわの頭で、コーザさんからなんと質問されたかを必死に思い出す。
「私、丈夫って言いましたよね。たぶん人間より力も強いです。器用じゃないので、本気で振り払ったら骨とか折っちゃうかもと思ったし、あと本気で嫌なことはされなかったし……?」
殺される、と思ったら私だって暴れていただろう。
別にそんなタイミングはなかった。
コーザさんは本当にやさしいおじさんである。
「嫌じゃないんだ?」
「コーザさんにされることならぜんぶすき」
ぐるんと天地がひっくり返った。
押し倒されて仰向けになり、コーザさんを見上げる。
コーザさんの陰茎は私の膣に押し込まれたままだ。気持ちいい。
もうなにも考えたくないと思い始めるが、ぶんぶん頭を振ってなんとか正気を呼び寄せる。
しかしその理性もすぐに霧散した。
コーザさんの亀頭が私の奥を捏ね始めたからだ。
前後に動く腰がリズムよく叩きつけられ、快楽が全身を支配する。
結合部から響く水音が耳を犯す。
「あっ、ぅあっ、コーザさっ、い、いいのっ? はッ、はらんじゃう、こどもできちゃう、うぅっ」
「いいよ。一緒に育てよう」
膣が収縮して、ぎゅうーっとコーザさんの陰茎を食いしばる。
息が上手くできなくて口をはくはくさせたのを、キスのおねだりと勘違いされたのか、コーザさんが私の舌を食んだ。
気持ちいい。嬉しい。もうなにがなんだかわからない。
でも言うことは言っとかなきゃ。
コーザさんの肩を叩いて、キスをやめてもらう。
自由になったが、ふにゃふにゃになった舌で、私はなんとか伝えたいことを言葉にした。
「あかちゃんほしい、コーザさんのこどもうむ」
「誕生日より嬉しいかも」
おじさんなのにまだ誕生日嬉しいんだ。かわいすぎる。
もう二度とはなさないと言わんばかりに、膣がぎゅうぎゅう締まった。
コーザさんがふー、と長く息をつくのが聞こえて、背筋がビリビリした。
しばらく抱きしめあって、私は幸せをかみしめていた。
お互い賢者タイムに入った後、私は毛布の上で正座していた。
そのまま土下座しつつ、コーザさんに謝罪する。
「ごめんなさい……」
「こっちのセリフだと思うんだけど、まずは理由を聞こうかな。なにが申し訳ないの?」
「手に痕つけちゃいました」
コーザさんの手首は赤くなっている。
私ほど白い肌をしていないので手の形ははっきりとはわからないが、それでも充分痛そうだ。
手をひらひら振ったコーザさんはへらへら笑った。
「オレもラピちゃんにいっぱい痕つけたし、おあいこじゃない?」
「でも私、なんかめっちゃ丈夫で! すぐ消えちゃいますよこんなの! つけるならもっと一生残りそうなやつつけてください!」
「本当にすげえこと言うよ、この子は」
コーザさんは琥珀の目を細め、私はぴるぴるとしっぽを震わせた。
「おじさん本気にしちゃうけど? 行為中は何言ってるかわからなくなるって言ってたから忘れてあげられるけど、今は正気だよね?」
「いいですよ! 死ぬような傷はだめですからね!」
「はいはい」
私の首筋に顔を近づけたコーザさんは、そのままぺろっと舌で舐めてきた。
後ろに引きそうになる体を何とか抑え、傷って話だったじゃないですか、と文句をつけようとしたその矢先。
首に激痛が走る。――噛まれた。
「い……っ!」
今まであれほど私の体を大事に大事に抱いてきたこの人が、私の首筋に容赦なく歯を突き立てたのだ。
大事にというよりは、ねちっこくと言った方が近いかもしれない。
それでも、私を痛がらせるようなことは一度もしなかった。もちろん、初日の拘束は除く。
むしろあれを申し訳なく思い、その後は慎重に抱いてくれているのだろう。
自分の首筋だから、どうなっているのか見えはしない。
コーザさんは私につけた傷を眺めながら、自分の唇についた私の血を舌でなめとった。
「……えっちな気分になりました。責任取ってください」
「今ので? マゾだったの? おじさん心配だなあ」
「コーザさんじゃなかったらぶん殴ってるくらい痛かったんですけど」
「これでさえすぐ消えちゃいそうだけどね」
「ええ!? そんなに丈夫なんですか、私!?」
たしかに、初日に枝や葉でついた切り傷は、今は見る影もない。
コーザさんに握られた手首も真っ白だし、そのほかつけられた痕も……。
ならばこれほど手ひどく噛まれても、数日で治ってしまうのだろう。
もうすぐ人里に到着してしまう。コーザさんを思い出す手がかりになるかと思ったのだが、それほどもたないのなら意味がない。
「しょうがないですね。体の痕は諦めます。代わりに一生忘れませんから」
恨みがましくそう言うと、コーザさんは苦笑した。
「そうなったら嬉しいけどね」
「あー! 私が記憶喪失だからって信用してませんね! もうなくさないように努力しますよ!」
「ああ、ごめんごめん。ラピちゃんがいつも元気だから、つらい境遇なのを忘れちゃうな」
「それはコーザさんが忘れさせてくれてるんですよ?」
「はあー……おじさん本当に心配。奴隷になって無事でいられるのかな……」
その晩、コーザさんは私を抱っこして、ずっと頭を撫でてくれた。
これが大好きなことがすっかりバレている。彼はエスパーなのかもしれない。
アナルセックスとスカトロの境目がわからなかったので控えめに書きました。
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