ずかずかと一直線に私の部屋へ向かってくる足音を聞いて、私はとっさにベッドの裏に隠れた。
すぐに扉が開き、見えたのは、大柄な男である。
目つきがめちゃくちゃ悪いし、全身入れ墨まみれだし、筋肉の量やばいし、どうみてもカタギではない。
男は私を一瞥すると、片眉をあげた。
「耳出てんぞ」
私の耳は頭の上にある。
ベッドに隠れて、部屋に入ってきた男を見るには、当然目をベッドより上に出さなければならない。
耳は目よりも上にある。ならば向こうからも丸見え。そりゃそう。
一応手でうさぎの耳を下に引っ張り、ちょっとだけ隠しておいた。
「ど、どちらさまですか……」
「お前がラピ?」
「そうですが、まさかコーザさんのお知り合いですか?」
「そォだよ、奴隷商のイグナだ」
コーザさんから聞いていた名前と同じである。
ちょっと絶望しかけた。私この人に預けられたの?
無事に命を繋げるビジョンがわいてこないのですが。
イグナと名乗った男は、まず半裸だった。
そんなことある? 文化の違い?
私はポンチョを羽織ってちょうどいいくらいの気候なので、別段暑いというわけではないと思う。
鍛え上げられた体であることは間違いないので、ある意味服を着るより芸術的なのかもしれない。
惜しげもなく晒されている上半身にはびっしりとタトゥーが彫られている。
ぱっと見てなんの絵だ、とわかるものはなく、幾何学的な図案だ。
私の常識がなくて、実は何かの絵なのかもしれないが、頭の中に該当するものはなかった。
背が高い。
特に根拠もなくコーザさんの背を高いと思っていたが、この人はもっと高い。
宿屋の扉をくぐるとき屈んでいたくらいだ。
コーザさんの背が低い可能性――いや、宿屋に来るまでにすれ違った人々や門番を見たな。
たぶんコーザさんで平均かそれ以上のはず。この人はそこから頭2つ以上抜けている。
そして、煙草をくわえていた。
歩き煙草は忌避すべき、という常識が私の頭の中にあるが、間違っているのはどちらだろう。
「不躾な質問ですが、コーザさんとはどこでお知り合いに……?」
「出会いの話聞いたら、もっと怖がるんじゃねェの」
「こ、怖〜ッ!」
聞かなくても怖かった。
私はコーザさんのやさしい部分しか見ていなかったが、もしかするとすんごい怖い部分もあるのかもしれない。
なんてずるい男だ。そういうところも見たかった。
「チッ。なんだ? クソ度胸のうさぎ獣人って聞いてたんだがな」
「コーザさん、過言すぎるだろ!」
なぜそんなにハードルをあげたんだ!?
ムキムキのヤクザは私だってさすがに怖いよ!?
相変わらず、自分のことなんだと思ってるんだあの人。
コーザさんを怖がらなかったからといって、私を恐れ知らずと認定するのは早計が過ぎる。
「で、逃げんのか? 俺としちゃそれでも構わねェぜ、面倒が減る」
獣人は奴隷以外が認められていない。
コーザさんの言葉は信じると決めているので、逃げ出せば私はそれだけで犯罪者だ。
犯罪者と奴隷、どちらがマシかという話になる。うーん、どっち?
「コーザさんが迎えに来てくれるって言ってたので、見つけやすい場所で待ちたいですねえ。だからイグナさんが把握できる場所にいたいです」
「チッ。しゃあねェな、ついてこい」
コーザさんが私を探しに戻ってきたとき、まず訪ねるのはイグナさんだろう。
そこ経由で、私が奴隷としてどこに売られたか確かめるはずだ。
だとすれば今逃げ出すのは悪手である。
コーザさんなら私がどこにいても見つけてくれそうな雰囲気があるが、それは恋する私が見せる幻想かもしれないし。
イグナさんは背が高いので、歩幅も大きかった。
小走りでついて行こうとして、うさぎの耳が出しっぱなしなことに気がつく。
しまった、餞別としてコーザさんの髪紐をもらっておくんだった。
「おい、ぐずぐずすんな」
「髪紐持ってます?」
「持ってると思うのか?」
イグナさんには結べるほどの髪の長さがない。
後頭部や側頭部は刈り上げてあるし、ついでに入れ墨も入っている。頭皮にも彫れるんだなあ。
「耳隠さないと」
「俺と一緒なら構わねェ」
「特権階級?」
それ以上の説明はなかったので、フードを被らないままについていく。
後ろを歩いて気づいたが、この人靴はいてなくて素足だ。な、なぜ。
私とコーザさんが泊まったのは2階の部屋だったので、イグナさんを追いかけて階段を降りる。
すると宿のおかみさんが、真っ青な顔で斧に手をかけていた。
――あ、これ私、誘拐されかけていると思われている?
すみません、合意です。私もそんなことあるかよ? とは思っています。
おかみさんを流し見したイグナさんは、不機嫌そうに舌打ちした。
それだけでおかみさんは震えあがる。
まあ、これと比べたら私は恐れ知らずか。
ならもっと恐れ知らずのことをしてしまおう。
イグナさんの隣に立ち、勝手にその手を取った。
そして指を絡める――恋人つなぎである。
おかみさんはそれを見て唖然とした。
斧から手がはなれ、カラカラと転がる。
コーザさんに汚名を被せるくらいなら、私はおじさんとやべェ男に二股をかけるやべェ女になろう。
宿を出た瞬間、恋人つなぎは振り払われた。
別に驚くこともない。むしろ、よく空気を読んでここまで耐えてくれた。
イグナさんは意外といい人なのかもしれない。コーザさんの知り合いだし。
それよりもきっと、宿のおかみさんのほうが良い人だったな。
獣人は奴隷として扱われているのに、私にうさぎの耳が生えているのを見ても、斧をはなさなかった。
かっこいい。私もああいう大人になりたいね。
ついて行くと、どんどん街の様子が変わっていく。
進めば進むほど汚くて臭い。道に転がっている死体なんだかわからない人も増えていく。
たどり着いたのは、大きな屋敷だった。
外装はそれなりにボロボロだが、敷地が広く、建物が大きいことは間違いない。
何の気なしに門をくぐっていくイグナさんを追いかけて、私もそこに足を踏み入れた。
「ここイグナさんのおうちですか?」
「自宅兼職場」
ということは、ここで奴隷を売り買いできるのだろう。
イグナさんは短くなった煙草を投げ、踏みつけて火を消した。そのまま歩き出す。
あ~ポイ捨てだ~いけないんだ~。
入り口付近もこの人の所有している敷地ではあるのかな。ならばギリギリセーフ? 火を消してるだけマシ?
イグナさんは扉を蹴り開けて中に入った。おおう、自宅とはいえワイルドすぎる。
私も扉が閉まる前に体を滑りこませ、これまた広く長い廊下をどんどん進んでいくイグナさんの背を追った。
「別にどこ行ってもいいが、主人なし、首輪なしで外出ると殺されるからやめとけ」
「それはどこに行ってもいいということにはならないのでは?」
歩きながら適当に言い放ったイグナさんへ、流石に疑問符を飛ばす。
どこに行ってもいい、死ぬ覚悟があるのなら、じゃないんだよ。死ぬ覚悟はない。
「お前が死ぬと面倒減るんだよ」
「命の保証してくれないんですか!?」
「この世の誰にもそんなことはできねェ」
なんか哲学っぽく言われて納得しかけたが、言ってることはただのクズだ。
この人に私を預ける判断はあってたんですか、コーザさん。
奴隷商にこれ以上マシな人材はいないということか。ここになければないですね~。
「地下にも行かねェ方がいいな。くせェし、半分死んでるようなのが繋がれてっから」
「あのう、私がそこに行かされる可能性はいかほどか聞いてもよろしいでしょうか?」
「行きてェならいつでも行きゃいいだろ」
「行きたくねえから聞いています」
「じゃあ0」
「やった~」
ものすごく適当に答えられたので信用に値しなかったが、希望に縋りたかったため喜んでおいた。
とある部屋の前で立ち止まったイグナさんは、今度は蹴り開けることなく手でドアを開けた。
「ここがお前の部屋な」
「奴隷なのに一室いただいていいんですか?」
「お前が売れるまでだ。ここに住んでたやつは先月飛んだばっかだから、置きっぱなしのもんはなんでも好きにしていい」
意外に好待遇かもしれない。コーザさんのおかげだろう。
私が誰かに売れるまでは、特にすることがないということだろうか。
食事とかちゃんともらえるんだろうか。不安。
イグナさんはそのままどこかへ行ってしまった。
自宅兼職場と言っていたので、自室に向かったのかもしれない。
これって広義に言うと同棲になりますか? 全然ときめかないな。
部屋は妙に広かった。
先月まで人が住んでいたまま放置されていたのだろう。埃っぽい。
棚を開けて物色すると男物の服がいくつかあったので、手で引きちぎって雑巾にする。
水はテーブルの上の水差しに入ったままだったのでひとまずそれでいいや。
濡らした布でそこら中拭きまくりながら、そういえばあっさり服を引きちぎったけど、やっぱり私の筋力って結構ありそうだな~とぼんやり考える。
コーザさんと、もっと無茶なプレイができた気がするな。
優しいおじさんだったから、こちらから誘惑しないとめちゃくちゃにはしてくれない。
うーむ、しかし記憶がないので無茶なプレイというのがどういうものか思い出せない。
掃除していると、ベッドの裏になにかがあるのに気づいた。
ベッドの枠とマットレスの間に挟み込むようにして固定されている。
取り出してみると、皮でできた小袋だ。
中を改めるとコインが入っていた。
ここの通貨かな。一番気になるのは、いくつか血のついたものがあることだ。
汗水どころか血まで流しながら働いて稼いだへそくりを置いて行かなければならなかったとは。
前の住民が生きているといいが。
ものが少なかったので、掃除はスピーディに終わってしまった。
体力がありあまっている。暇。なにしよう。
横になってもいいが、それはそれで悲しい気分になってしまいそうだ。
こういうときは運動だな、運動。
思い立った私はひとまずスクワットを始めた。
すごい、体になんの負担も感じない。無限にできそう。
そういえば私はうさぎの獣人なのだから、きっと足に筋力があるはずだ。
うさぎといえばぴょんぴょん跳んでいるイメージがある。
私も結構高く跳べるんだろうか。試してみよう。
「みぎゃーっ!?」
跳びあがりすぎて天井に頭を打ち付けた私は悲鳴を上げた。
あ、危ない……!
跳びあがる瞬間、足元を見てちょっと俯いてたから後頭部をぶつけるだけで済んだけど、耳からぶつかっていたら骨が折れていたかもしれない。
あれ、耳の中に骨ってあるよね? 軟骨的ななにかが?
頭を抱えてうずくまっていると、部屋の扉がノックもなしに開いた。
現れたのは煙草をくわえ、呆れた顔のイグナさんである。
「……なにやってんだお前」
「あ、イグナさん。様子見に来てくれたんですか? 意外に律儀ですねえ」
「うるせェから見に来ただけだ。なにやってんだよ」
「なんか落ち着かないんですよお。運動したら治るかと思ったんです。でも狭くて!」
喋っている間にも、痛みは随分引いてきた。やっぱりこの体は丈夫だ。
頭をさすりながら立ち上がると、イグナさんが私の顔をじっと見る。
なんだかぞわぞわして、しっぽが震えた。チッと舌打ちされ、今度は体が震える。
「運動させてやる。ついてこい」
「はい!」
これがツンデレというやつなのかもしれない。
具体的にそれがなんなのかは思い出せないけど。
「なんの運動するんですか? 柔軟?」
「……お前コーザに抱かれてたんじゃねェの?」
「? はい、抱かれました!」
おっといけない。
思わずいつものように大きな声で答えてしまったが、ここは森ではないのだった。
いつ誰に聞かれていてもおかしくない。
ここはイグナさんの自宅兼職場で、当然働いている人や客が出入りしている。
下ネタはもっとこそこそ話さなければな。
イグナさんがひとつの扉の前で止まり、中に入る。
私もそれに続くと、イグナさんに首根っこを掴まれ、ベッドの上に放り投げられた。
突然のことだったが、私は自然と受け身を取った。
「あぶなっ! 予告してくださいよ! ……はっ! ベッドの上でやるタイプの運動ってことですか!? えっちってこと!?」
「なるほど、めちゃくちゃアホなんだな」
「間違ってました!?」
イグナさんは部屋の扉を閉め、私が転がされたベッドの上に乗ってきた。
「間違ってねェよ」
ズボンに手をかけられ、勢いよく脱がせられる。
私はその勢いに負け、ひっくり返って腰を上げることになった。
「きゃんっ!?」
「なんだ。なにもわかってねェって顔してたくせに、こっちは準備万端じゃねェか」
自分の体がどうなっているのかわからない。
嘘かもしれないが、そういうこと言われるとどっちにしろ恥ずかしいな。
いや下半身を丸出しにしている方が恥ずかしいか。
あっという間にシャツもはぎ取られ、全裸にさせられた。
手際が良過ぎる。一体どれだけの経験があるのだろう。
私の服をぽいとベッドの下に投げ捨てたイグナさんは、ベッド脇のテーブルにあった灰皿に煙草を押し付けて消した。
「いいか、俺はお前を性奴隷にするつもりはねェ」
ええ……!? ベッドの上で身ぐるみを剥いでおきながら、一体どんな了見だ。
「じゃあなに奴隷になるんですか私は……!?」
「あー、まあ家政婦とか? メイド的な?」
「え!? メイドってえっち担当じゃないんですか!?」
「場合によるわな。担当しねェ方のメイドだ」
「なにやるんですかその人たちは……!?」
「掃除とかじゃね?」
「なるほど……」
私の中に存在する常識が正しいものかわからないので、マナーを求められても困る。
掃除くらいならできるだろうが、それほど需要があるものだろうか。
人を買ってまでやらせたいことか? 掃除が?
雑用全般、ということであれば、この体は筋力も体力もあるのでそれなりに役立てそうだ。
それこそ鉱山とかに送られても、小柄だしそこそこ働けると思う。
「コーザにゃ恩があるからな。アイツからの頼みだ、そうでなけりゃこんなに面倒見てやってねェ」
「感謝します!」
「チッ、マジでめんどくせェ」
「見捨てないでー!」
私が泣きつくと、イグナさんは深く、深くため息をついた。
「エロいと襲われる。だからエロくなるな」
「はい!」
「よしじゃあやってみろ」
「やってみろ!?」
エロくない、を実行するとは?
誘惑の逆? 逆ってなんだ? 拒絶?
私は精一杯目付きを悪くし、歯をむき出しにして、イグナさんを睨みつけた。
「舐めてんのか?」
「まったく!」
「へえへえ、どうせコーザはお前にしこたまやさしくしたんだろうな」
「はい!」
「ボケが。俺が本物のセックスを教えてやる」
「え~!? いいんですか~!?」
「なに喜んでんだアホ」
今のは腰に来るセリフだった。
コーザさん、これって浮気ですか?
でも最初に私を置いて行ったコーザさんが悪いな。
そんな隙を見せると寝取られても文句言えないんだぞ。
煙草を灰皿に押し付けるような、無造作で、粗野で、なんでもない動きだった。
へそのすぐ下――子宮のあたりを、親指でぐりぐりと押し込まれる。
「セックスってのはな、楽しいもんじゃねェんだよ」
――イッた。
あまりにも呆気なく、一瞬で。強制的に。
足を伸ばす暇もなかった。
入口がくぱくぱ、もの欲しげに蠢いて、愛液がとろとろ零れだす。
カハッ、と口から息が漏れた。殴られたみたいな衝撃。
初めて絶頂したときとは全然違う。
コーザさんに開発されたというのはもちろんあるが、あのときは愛撫されて体ができあがっていた。
今の私は全然体を触られておらず、まあちょっと気分はそっちに流れていたけれど、それでも一度もよがっていない段階である。
すべてをすっとばして絶頂させられた。
この人はなぜ私の気持ちいい場所が的確にわかるのだろう。
ツボとか見えてる? 魔眼とか持ってるのか? 魔法があるならそういうのもありそう。
なんとか呼吸をしながら、イグナさんの発言に言い返す。
「そ、それは……! 感性は人それぞれ、というだけでは……! 私はセックス好きですけど……!?」
「悪ィ、手加減しすぎてたらしいわ。もっといじめとくな」
「なんで!?」
無造作に膣へ指を突っ込まれる。
いきなりのことだったのにしとどに湿っていた私のそこは、指の侵入をすんなり許した。
ぐちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ。
指が素早く、激しく動いて、中を掻き回す。
「ガ……ッ!」
口から飛び出したのは、嬌声などという可愛らしいものではなかった。
格ゲーのダメージボイスみたーい――格ゲーとは?
打ち上げられた魚のように、体がひとりでにびくびく跳ねた。
シーツを掴んで握りこむが、強すぎる快感はどこにも逃がせなかった。
無慈悲にも、イグナさんはさらに追撃してくる。
親指でクリトリスを押し潰される。
そんな雑に扱っていい場所じゃない。
乱暴にされていると思うのに、快感だけは体が拾い上げてしまう。
なんだこの人。なんだこの人!
えっちのチート持ちか!? チートって何!?
「あぅーっ! いく、いくいくっ!」
「はァ? 勝手に気ィやるんじゃねェよ、淫乱」
叫んで快感を逃そうとするが、どうにもならない。
私はマゾだったのかもしれない。気持ち良すぎて、いろんなことがどうでもいい。
イグナさんがようやく指を抜いて、強制的に押し上げられた快楽のてっぺんから、少しだけ降りてこられた。
「犯されても喋んなお前は」
「えーっ!?」
ベッドに力なく沈み込むと、上からイグナさんがこう吐き捨ててきた。
言い返す前に、大きな手のひらで口をふさがれる。
余裕で私の顔を全部覆えてしまうくらい大きな手だ。
「もがっ」
犯されるのかと思ったが、イグナさんは再び指を突っ込んできた。
これだけで気持ちいい。口を押さえつけられているから、鼻息を荒くすることしかできない。
指を折り曲げて中を掘削される。
頭の中がめちゃくちゃで、視界がチカチカする。
「ぅうううぐううううっ」
らぶらぶえっちでは絶対にあがらない呻き声が飛び出す。
気持ちが良くて苦しい。じんわり涙が滲んできた。
腰が浮いてカクカク動く。
それでもイグナさんは手を止めてはくれなかった。
私は快楽からなんとか逃れようとして暴れた。
じたばたする足がイグナさんの腹に蹴りを入れ、私はさっと青ざめる。
跳びあがったら天井に頭をぶつけるほどの脚力だ。
人の腹など蹴ったら、内臓を破裂させてしまうのではないか。
しかしイグナさんは呻くどころか、びくともしなかった。
「はー。うぜえ」
クリトリスをひねりあげられて、私は絶頂した。
ベッドに腰かけたまま煙草をふかすイグナさんは、余裕そうだ。
当然だろう。彼は手しか使っていない。
これはセックスではない。あまりに一方的だ。
だが、そんな文句を言う元気は、もう私には残っていない。
「雑魚すぎんだろ」
「ぐぅーっ……!」
ぐうの音は出せたので、完全敗北ではないはずだ。