※この作品はR-18です。

ポリジュース薬でハーマイオナニー   作:リター

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9月

『ポリジュース薬』という魔法薬がある。

その薬効は『飲んでから1時間対象の人物に変身でき、その人物の外見、声、癖まで完璧に変身することが出来る』というものだ。

 

対象に変身するためには変身したい人物の体の一部………例えば爪や髪の毛などが必要だ。

なお、変身できる対象は人間のみであり、誤って人間以外の動物の一部を材料にすると獣人のような中途半端な変身になってしまう上、一時間経っても元に戻れない。

その場合は専門家からの回復措置がなければ元の姿に戻れなくなるという危険性の高い薬となっている。

 

更に調合の為に希少な材料が用いられることと、調合期間として約1ヶ月かかる割に効果時間が一時間のみと非常に短いことが難点で、魔法薬学家からは効果こそ強力だがあまり有用な魔法薬と見られていない。

 

ちなみに…実際に飲んだことはないが、話によると味と匂いがとても酷いらしい。

 

 

 

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今年入学した新一年生にハリー・ポッターという男が居る。生まれながらの有名人、額に稲妻型の傷を持つ少年だ。

勇敢なグリフィンドール生らしく何かと問題児だがいつも話題の中心であり、最近ではクィデッチにおいて競技の主役ともされるシーカーに一年生ながら大抜擢されたらしい。

……レイブンクロー生の内で成績も中の下である僕の住んでいる世界とはまるで違う場所で生きている。

 

僕が唯一得意としているのは魔法薬学だけ。他の授業は目立って苦手なものこそないが、抜けて得意なものもない。

 

しかしそれも実家が三代続く魔法薬の店だから同級生より知識量が多いだけであり、実践的であるとは言い難い。

魔法薬学の専門家であるスネイプ先生は僕の能力をある程度の称賛をしてくれるものの、最近では型にはまってしまった知識に対して応用性のなさを指摘されている。

 

………そんな僕にある種の転機が訪れたのは数か月前に行われた魔法生物飼育学でのことだった。

 

その日、僕が授業で座ろうと思っていた席には仏頂面で本を抱えているボサボサの長いブロンド髪が特徴的な少女がまだ腰を掛けていた。

…同級生にしては酷く小柄に見える彼女は、机の上に広がったノートや本を全て片付けるとスッと立ち上がり教室から駆け足で出て行ってしまう。

先ほどまでここで授業を下級生がまだ残っていたのかと自身を納得させたその時、一瞬見えた顔立ちだけで彼女が誰なのか気付くことが出来た。

 

人並以上に自己主張が激しく授業では聞かれてもいない質問にまで手を挙げる。周囲に嫌われている空気の読めない女として有名なマグル生まれの魔女。

ハーマイオニー・グレンジャーその人だ。

 

5歳年下で今年ホグワーツに入ったばかりの妹に聞いたところによると、様々な授業中に彼女は悪目立ちし、周囲から奇異の目を向けられているそうだ。

しかし彼女はそんな事は気にも留めていない様子で、ただただ仏頂面のまま授業に参加しているために気味悪がられてもいるらしい。

 

しかし僕はその生意気に鋭い瞳や小柄で薄い身体、無理に大人びようとしている可愛らしく幼いハーマイオニーの容姿に気が付けば心を奪われ

気付けば彼女が去って行った事を扉の外を呆けたように見つめてしまっていた。

 

そうして数秒。運命の出会いの衝撃からようやく解放された僕が彼女の座っていた椅子に目を戻すと………

椅子の上にはウェーブ気味の長い茶髪…彼女のものと思われる髪が一本残っていたのだ。僕は咄嗟にそれを拾い上げてしまう。

 

彼女の髪を初めて手に入れたこの日以降、良くも悪くも目立つことがない、物語であれば名前さえ出ない脇役である僕の趣味が『落ちているハーマイオニーの髪の毛』を集めることになった。

 

 

 

あれからクリスマス休暇目前までの約3か月間。隙を見ては抜け落ちた髪を集め続け、今では20本以上ものウェーブ気味の茶髪を所持している。

集めるにあたって成長期で髪が抜けやすいことと、彼女の特徴的な髪は見分けがつきやすいというのも手助けをしてくれた。

 

別寮かつ別学年である彼女の髪の毛を手に入れるのはなかなかに大変だったが、箒による飛行訓練の授業を窓から覗き、彼女が落下してしまった場所に残っていたものを採取したり

一人で廊下を歩いている彼女の背後から一世一代のウィンガーディアム・レヴィオーサ《浮遊呪文》によってローブに付着した髪を引き寄せたりと、自分なりに忙しい期間ではあった。

 

女子生徒の抜けた髪の毛を収集しているという、こんなことが誰かにバレれば変態扱いは免れないだろう……いや、今からやろうとしていることを考えれば変態なのに間違いはないだろうが…

 

そしてクリスマス休暇が始まる12月24日。ホグワーツで行われるクリスマスパーティにも参加せずにそそくさと家に帰った僕たち兄妹は家族との団欒をつつがなく過ごることとする。

妹もホグワーツでのクリスマスパーティには特に憧れがなく、休暇ならば家で静かに過ごしたいとのことでさっさと家に帰りたい僕としては好都合だった。

 

両親は早く帰ってきたことについて追及することはなく笑顔すら向けていたが…むしろ学校で一緒にいる妹にこそ手を焼かされた。

同じくレイブンクロー生である妹は僕より研究者肌をしているようであり、来年以降のホグワーツの授業が随分と気になって仕方がないようなのだ。

妹の熱意に押し負けて授業について事細かに話してあげることになってしまい、思ったよりも時間を取られてしまう。

 

…その夜、家族が寝入る午前0時を回ったところで僕は音もたてずに自室から抜け出した。目的はただ一つ、ポリジュース薬の調合に必要な材料を集めること。

こっそりと実家の材料保管庫に侵入し、早速薬の材料集めに取り掛かる。

ポリジュース薬の調合に必要なものは、クサカゲロウ、ヒル、満月草、ニワヤナギ、二角獣の角の粉末、毒ツルヘビの皮の千切りなど、どれも貴重な素材ばかりだ。

しかし魔法薬店である実家の材料保管庫にはどれも問題なく備蓄されている。

そこからバレない程度……三回ほど調合ができる材料を盗み出すと、後始末をしてそそくさと自室に戻った。

 

材料を手に入れることができて焦る気を落ち着ける。あくまでも薬を調合するのはホグワーツに戻ってからなのだ。

 

このクリスマス休暇は2週間ほどしかないので、調合するのに一か月を有するポリジュースを完成させることが出来ない。

それに中途半端に調合を始めてしまい、調合途中の状態で実家からホグワーツまで輸送するのは危険だ。

移動が調合にどのような影響をもたらすかわからない上に、万一失敗してしまうと…この数か月の材料集めが台無しになってしまう。

 

だがホグワーツ内で作ることにも当然ながら問題が無いとは言えない。

そもそもポリジュース薬の調合方法は学生の身分においては禁書扱いされており、一生徒の自分が勝手にそれを調合する許可などというものが学校から下りるはずがないのだ。

許可も取っていない薬の調合を男子四人の共同部屋である寮の自室で行うわけにもいかないだろう…

 

ホグワーツ内で誰も近寄らない…いや、理由があって近寄りたくない場所を探して調合する必要がある。

しかし、これに関しては幸い目星が付いていない事もない。

 

はやる気持ちを落ち着けた僕は、集めた材料を鍵付きの引き出しの中に隠すと始業日まではのんびりと休暇を楽しむことにしたのだった。

 

 

 

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二週間後、ホグワーツ魔法魔術学校に戻った僕は薬を調合する為に最適な場所へと向かっていた。

辿り着いたのはホグワーツの三階にある女子トイレ。ここには厄介なゴーストが住んでいると有名であり、好んで近寄ろうとする者はまずいない。

 

僕は周囲から見られないように気を使いながら女子トイレに侵入する。トイレの固い床に靴底がぶつかり、カツンカツンという硬質な音が響いた。

すると瓶底眼鏡をかけた二つくくりの女が一番奥の個室を貫通してぬっと顔を出し、トイレの中を飛び回った……トイレの住人、嘆きのマートルだ。

 

『ちょっと!女子トイレに何の用なの? ここはあんたが来るところじゃないわよ!』

 

キーキーと少し怒気を含んだようなマートルの声を受け流し「初めまして」と返事をする。

すると彼女は大げさな身振り手振りで驚いた様子を示すとさらに言葉を続けた。

 

『まあ!あいさつされたのなんていつぶりかしら…私、マートル・エリザベス・ワレンよ、どうせ私のことなんか知らないんでしょ。誰も私の話なんかしない』

『それで?また何か投げつけに来たの?見事腹に命中すれば10点!頭を通り抜ければ50点!さぁみじめなめそめそマートルに本をぶつけよう!!』

『ア〜ン!ア〜ン!』

 

彼女はこちらの話を聞かずに矢継ぎ早に文句を言うだけ言って急に泣き出してしまった。正直とても面倒な相手だが、ここを使わせてもらうためにはマートルに嫌われるわけにはいかない。

泣きわめく彼女に優しく話しかけると、薬を作りたいのでここに居座ってもいいかと許可をとってみた。

 

『私の許可なんか必要ないでしょ!勝手にすればいいんだわ!』

 

急に泣き止むと今度はプリプリと怒っている、感情の浮き沈みが激しすぎてついて行けなくなりそうだ……

ただ、そんな彼女に調合中はついでにならば話し相手になると伝えると、途端に機嫌を良くし、鼻歌を歌いながら飛び回り始めた。

 

そしてそれから一か月間、マートルに毎日のように囃し立てられ、彼女の愚痴を我慢して聞きながら薬の調合を続け――――ついに特徴的な土気色の薬が完成した。

 

『あんた、ほんとにそんな泥みたいな薬を飲むつもりなの?』

 

……飲むしかないだろう。

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