平穏な日々の暮らしを徒然に書いてみます。
あれからの僕は、就職活動に追われて、慌ただしく毎日を過ごしている。
会社説明会に行ったり、面接を受けたり、履歴書を書いては直して…気がつけば日が暮れていることもしょっちゅうだ。
そんなふうに、ただ目の前のことをこなしているうちに、時間だけがどんどん流れていく。
特に大きな変化はない。
平和といえば平和だし、忙しさに紛れて余計なことを考えなくて済むのは、ある意味ありがたいのかもしれない。
あの夜の出来事も、最近ではすっかり遠い記憶のようになってきていて。
まるで夢だったんじゃないか、そんな気さえしてしまう。
とはいえ、いくつかの会社からは手応えもあって、この慌ただしさも、もうすぐひと段落つくだろう。
そんなある日のことだった。
本当に何気なく、ひょんなきっかけで、久しぶりに“そういう”ジャンルの動画を目にした。
昔はよく検索していたけれど、最近はもう、必要もなければ興味も薄れていた。
ただ、その日はたまたま、ネットをふらふらしていて、小さな動画サイトで見つけた一本の作品に目が止まった。
タイトルは「妻の寝取らせ映像」。
夫が日常的に妻を撮影していて、あるとき覚悟を決めて、他の男に委ねる――という流れのものだった。
もちろん、演出だし作り物だってことは分かってる。
だが、どうにも既視感があった。
その動画の構成やカメラの動き、部屋の照明や音の抜き方。
それらが、あの時見た母さんの映像と驚くほどよく似ていたのだ。
偶然かもしれない。でも、あまりにも――似ていた。
気になって、その動画を出していた制作会社を調べてみた。
聞いたことのない名前だったけど、住所を検索してみたら、どこかで見たことのある有名な会社とまったく同じ場所だった。
どうやら別の名前で、違うラインとして運営しているらしい。
ジャンルや作風を変えて、ブランドを分けているんだろう。
僕はそれを見て、なんとなく腑に落ちた。
そして、それ以上を知ろうとは思わなかった。
知ったところで、どうなるわけでもない。
過去は変わらないし、真実を深く掘り下げれば、もっと戻れなくなりそうだったから。
ただ、あの夜の記憶は、薄く霞んでいるようで、確かに僕の中に根を残している。
そして時々、何もない夜の静けさの中で、母さんのあのときの表情や声が、不意に胸の奥で揺れ動くのだ。
そして僕は、そっと目を閉じて、それをやり過ごす。
何もなかったように、また次の朝を迎える。
ただ一度だけわからないことがあった。
あれは先週のこと。
疲れ果てた僕は寝坊をしてしまった。
ハッと目が覚めると横に母さんがいた。
起こしにきてくれたのだろう。だけど何となく母さんはそわそわして
おはようと言うとそのまま出て行ってしまった。