※この作品はR-18です。

母の写真 日常の向こう側   作:松田義和

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第十七章 ノンストップ妄想

その夜、布団に入ってもなかなか寝つけなかった。

天井をぼんやり見上げながら、昼間の会話を何度も思い返す。

まさか自分が、母さんたちの旅行に同行することになるとは――。

 

(冷静に考えて、これはけっこう変な状況なんじゃ……)

 

そんなふうに考えていたら、ふと脳裏に映像が浮かぶ。

どこかで見た、あの設定。

そう、AVのやつだ。

「ママ友旅行についていった息子が……」という、あの非現実的すぎるストーリー。

 

(いやいや、あるわけないだろ)

 

自分でツッコミを入れながらも、妄想は勝手に動き出してしまう。

旅館の薄暗い部屋。

浴衣姿の母さんの友達たち。

くつろいだ空気と、ほんのり香るお酒の匂い。

笑い声が重なり、ふと誰かの浴衣の裾がはだけて――。

 

(……やめろ)

 

頭を枕に押しつけて、妄想を打ち消そうとする。

でも、浮かんでしまったイメージはそう簡単に消えてくれない。

 

(ユキさん、ああ見えて寝るときは無防備なんじゃ……)

(イクミさんは酔うと陽気になって距離感が近くなったり……)

 

(って、何考えてんだ俺!!)

 

思わず声が出そうになるのをこらえ、布団をぎゅっと握りしめる。

みんな、ただの母さんの仲の良い友達で、それ以上でも以下でもない。

しかも、幼なじみの親だ。

それなのに、こんなくだらない妄想をしている自分が、本当に情けなかった。そういう設定は嫌いだったはずだ。

 

(……本当に俺、行って大丈夫か?)

 

 

布団に潜り込み、目を閉じても妄想は止まらなかった。

 

「ああ、もうダメだ……」

 

頭の中の映画はフルカラー、音声付きで勝手に再生される。

 

宴会の席はすでにいい感じに酔いが回り、イクミさんの豪快な笑い声が響く。

 

「もう、今日は飲みすぎちゃったわよ〜」

 

ユキさんはテーブルの端でくすくすと笑いながら、僕に「あなたって本当に優しいのね」としっとりと話しかける。

 

母さんは目を細めて、微笑みながら僕の肩にそっと手を置く。

 

「大丈夫よ、ここはみんなの場所なんだから」

 

部屋は薄暗く、障子の向こうからは柔らかな月明かりが差し込んでいる。

 

そして、なぜか僕の布団の横には浴衣をはだけたユキさんが寝ている。

 

「暑くて眠れなくて……ね?」

 

そんな声が囁かれて、僕の心臓はバクバクと高鳴る。

 

襖の向こうからはイクミさんと母さんの声。

 

「ねぇ、彼をどう思う?」

 

「いい子よね。でも……」

 

「ほら、あの浴衣のはだけ具合を見て」

 

「ふふ、もう限界かしらね」

 

そんな怪しい雰囲気が漂い、僕は思わず布団をかぶってしまう。

 

「いや、そんなことありえない」

 

と自分に言い聞かせるが、妄想はますます膨らむ。

 

温泉の湯気の中で、3人が僕を囲みながら笑いかける。

 

「大丈夫よ、リラックスして」

 

「今日はあなたのための旅行よ」

 

「さあ、こっちへおいで」

 

僕は逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。

 

でも、どこかでこの非現実的なシチュエーションに少しだけ興奮している自分がいることも否めない。

 

「こんな妄想、絶対やめよう」

 

と何度も心の中で叫びながら、結局最後までその映像は消えることなく、僕は眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

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