昨日の夜のこと。
照りつける日差しの下をずっと歩き回って、さすがにへとへとになった僕は、駅前のマクドナルドでひと休みしていた。
冷たいコーラを飲みながら、ぼんやり外を眺めていたら、目の前の席にすっと誰かが座った。
「……義和、だよな?」
声をかけられて顔を上げると、そこにいたのはトシマサだった。
懐かしい――それ以上に、心のどこかがざわっとした。
「うわ……トシマサ! 何年ぶりだろ」
思わず笑って、手を伸ばす。
僕たちは小学校から中学まで一緒だった幼なじみだ。
でも、よく覚えているのは中学2年のあの日のことだ。
授業中に突然、校長先生がやってきて、トシマサを教室の外に呼び出した。
何か話をして、そのまま彼は荷物をまとめて帰っていった。
戻ってくることはなかった。
その後、先生が僕らに伝えた。
トシマサのお父さんが急に亡くなった、と。
彼の家は蕎麦屋だった。
お母さんが店を引き継ぎ、トシマサは中学を卒業するとすぐ、銀座の有名な蕎麦屋で修行に入った。
そして、僕たちが大学に入った頃、彼は地元に戻って店を継いだ。
そう聞いたとき、まぶしすぎて、直視できなかった。
同じ年なのに、彼はちゃんと前を見て、進んでいるのに。
それに比べて、僕は。
……僕は、母さんに――してしまった。
言い訳はいくらでも浮かぶ。流されただけだった、とか。あれは一度きりだった、とか。
でもそんなもの、何の意味もない。
母さんがあの夜、黙って目を伏せたまま、言葉を選びながら笑おうとしたのを、僕は忘れられない。
自分でも、どうしてあんなことになったのか、未だに答えが出せない。
ただ、あのとき僕は間違いなく――母さんを、ひとりの女として見てしまった。
それ以来、何もなかったふりで過ごしているけれど、ふとした瞬間に、その空白が顔を出す。
母さんは、何も言わない。
僕はいまだに母さんの世話になりながら、どこかで心がくっついたままになっている。
トシマサが母を支える側にまわったのに、僕は、母に甘え続けたまま。
違う意味で、母に寄りかかっている。
彼がまっすぐに自分の道を進んできたことが、ただ羨ましいんじゃない。
僕がやってきたこと、そしてそれをなかったことにして生きている自分の姿が、彼と並んだことで、はっきりと浮き彫りになってしまった。
「今度、店に来いよ。母ちゃんも元気にやってるから」
トシマサは、少し照れたように笑って言った。
僕は「うん」と返したけれど、どこかで逃げたくなっていた。
帰り道、夜風が思ったよりも冷たくて、歩きながら何度も自分に問いかけていた。
僕は――母さんに、何をしてしまったんだろう。
そして、これからどうすればいいのか。
答えは出ないまま、ただ、胸の奥に小さな痛みだけが残っていた。
リアルタイムノンフィクションだったりします
昨日はマジでおどろきました。