こうして僕は、また新しい“母さんの写真”を持つことになった。
望んだわけでも、探し求めたわけでもない。
ただ、それは届いてしまった。
そして僕はまた、見てしまった。
イクミさんの写真も、ユキさんのものも、
絶対に誰にも見つからないようにしておかないといけない。
見つかったら終わりだ。
3年前、
僕は“母さんの写真”で、人生を狂わせた。
正確には、その魅力で、心を壊されたのだ。
そして今。
ようやく大学を終えて、これから外の世界へ踏み出そうとしていたこのタイミングで――
僕はまた、引き戻されていく。
なぜだろう。
母さんの写真は、なぜこんなにも僕をかき乱すのだろう。
現実の母さんがすぐそこにいるのに、
僕は画面越しの、
止まった光の中のその人に――心を支配されていく。
すべての写真が、とんでもなく美しい。
いや、“美しい”なんて言葉では足りない。
何かもっと深い欲望の底を撫でるような、抗えない力がある。
本物が、いつも隣にいる。
日常を共にして、話もして、時には口論だってする。
でも、
写真の中の母さんは、僕の理性を粉々にする。
狂わされている。
わかっている。
でも、抗えない。
そして――
あの旅館の夜のこと。
二人で部屋に戻ったあと、
あの出来事は……本当にあったのか?
それとも、
あれだけは夢だったのか?
あれだけは、証拠がない。
他の記録はあるのに、それだけが曖昧に空白のまま。
朝、目を覚ましたときには、
いつもの母さんが、
何事もなかったように布団を畳んでいた。
現実にしては出来すぎていた。
でも、夢にしては……
あまりに感触が残りすぎている。
僕の中で、あの夜だけが、
いまだに確定しない。
写真の中の母さんは、
何も語らず、ただそこに在りつづける。
そして、
僕を、また引き戻してくる。
僕には近親相姦の願望なんてない。
それは、本当だ。
ずっとそう思ってきたし、
今もそう信じている。
僕が惹かれるのは、
写真の中にいる母さんだ。
静止した瞬間、切り取られた色彩、表情、温度のないその世界。
現実の母さんではない。
写真の中だけの、遠くて近い幻のような存在。
でも――
それだけじゃないことを、僕は知っている。
僕の中には、消えずに残っている記憶がある。
あの夜、
旅館の部屋でふたりきりだったとき、
布団の中で僕の耳元で――
母さんが、
なにかを囁いた。
その声は、
とても静かで、でもとても淫蕩で
僕はその瞬間、
たしかに、
抱きしめ返してしまった気がする。
それが夢だったのか、
現実だったのか、
今となっては、もう確かめようもない。
でも、耳の奥にはいまだにその声が残っている。
母さんの囁きが。
そしてそれは、
“写真”よりもずっと深く、
僕を壊していくのだ。
「さっきあの男があなたに言ったでしょう?二人でお母さんをやらないか、って。あの言葉を聞いた時、なぜか私、カラダの中が熱くなっちゃって、濡れてきてしまったの。バレたらどうしようかとハラハラしていたのよ笑 もしあなたがあのとき断らなかったら、私どうなっていたのかしら」
「あの男に後ろから突かれながらあなたのモノを口で咥えたり二人からカラダ中舐め回されたりしたのかな。
そんなことされたら私、おかしくなっちゃう。」
二人で。ユキさんのように二人から母さんがされたら。
ダメだ。
僕はもう逃げられない。