※この作品はR-18です。

母の写真 日常の向こう側   作:松田義和

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第九章 四人の飲み会

そういえば――

母さんたちの集まりが、いつも“飲み会”ではなく“お茶会”になるのには理由がある。

もちろん、家のこともあるけれど、それ以上に単純で、ちょっと微笑ましい理由だ。

 

……母さんたち、あまりお酒に強くないのだ。

 

四人の中で一番飲めるのは、イクミさん。

さすが蕎麦屋の女将を長年務めているだけあって、場慣れしていて、飲みっぷりもいい。

ビールも日本酒もさらりとこなして、ついでに場を盛り上げる話題まで自然に振ってくるから、彼女がいるだけで場が明るくなる。

気がつけば、周りもつられて笑っている。そんな存在。

 

ユキさんは、まあ普通。

人並みに飲めるけれど、自分から進んで飲むことは少ない。

ほんのり頬を赤らめながら、お猪口を持つ姿は、どこか上品で静かだ。

昔から物腰がやわらかくて、僕の中では「優しいお母さん」の典型みたいな人。

 

ユウナさんは、ほとんど飲めない。

ワインを一杯飲めば、顔がぱっと赤くなるタイプで、すぐに水やお茶に切り替える。

そのかわり、酔った人のお世話は手慣れたもので、誰かが飲みすぎたときには、率先して世話を焼く。

まるで保健室の先生みたいに、てきぱきと動く姿が印象的だった。

 

……で、うちの母さん。

これはもう、昔から変わらないけれど、ほんの少し飲んだだけですぐに眠ってしまう。

口に一杯運んで、「なんか眠くなってきたかも〜」なんて言ってたと思ったら、数分後には完全に爆睡している。

実際、僕が何度か迎えに行ったこともある。

まだ家にいた頃、ユウナさんから「お母さん寝ちゃったの、ごめん、迎えに来てくれない?」ってLINEが来て、駅前の居酒屋まで行ったことがあった。

 

今思えば、あれも思い出のひとつだ。

 

僕が下宿を始めてからは、そんな飲み会は自然と減って、お茶会ばかりになったらしい。

きっと“何かあっても呼べる人がいない”というのも、理由のひとつなんだろう。

 

でも、今回の旅行となると――

もしかしたら、久しぶりに夜の宴が開かれるかもしれない。

 

そんなふうに思ったら、なんだか想像が膨らんで、ひとりでふっと笑ってしまった。

 

……目に浮かぶ。

盛り上がって陽気になるイクミさんとユキさん。

その隣で手際よく水を配ったり、酔い止めを差し出したりするユウナさん。

そして、誰よりも先に座布団で気持ちよさそうに寝息を立てる母さん。

 

――うん、間違いない。きっと、そうなる。

 

旅先でも、変わらないんだな、この四人は。

ちょっと安心して、ちょっと笑えて。

そんな夜がやって来る気がして、僕はなんだか嬉しくなっていた。

 

 

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