※この作品はR-18です。

個性『淫魔』   作:えっちいやつ。

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周囲の目

 

 

 

 

 

 

 緑谷くんが救急車で搬送されている頃。夢を通じて彼から精気を搾り取った蜜月桃香(みつきとうか)は、ベッドの上で悶えていた。膝を抱くかのように背中を丸めて、指を噛んで荒い吐息を繰り返す。昨晩の出来事を、ハッキリと覚えている。夢とは言え、抜かずの九回戦。拙いセックスで、甘く重く深く長く、何度も何度も絶頂してしまった。その余韻がまだ身体に残っていて、とても起き上がれそうにない。全身に残る蕩けた感覚が、少しも身体から離れてくれないからだ。

 

 ―――すごく気持ち良くて、美味しかった……♡

 

 淫魔の頭を埋め尽くすのはそればっかりで、他の事は考えられない。目覚めて直ぐ、学校に「今日は休みます」と連絡出来たのは奇跡か何かだ。もっとも、電話越しに蕩けた声を聞かされた教師は堪ったものじゃないのだが。桃香のセンシティブめいた囁き声が鼓膜に直撃したのだから、理性が揺らいでいたとしても不思議ではないだろう。

 

 兎にも角にも。久方ぶりの満腹感と絶頂の余韻で、桃香は震える。昨夜はあまりの気持ち良さで、どうにかしてしまいそうだった。いや、どうにかしてしまっていた。あんな風に、思い遣りが残ったえっちは初めての経験だったからだ。

 これまで交わって来た相手は、桃香を性欲の捌け口としか見ていなかった。彼女自身、こんな個性だからそうなっても仕方ないと諦めてはいる。けれど、年頃の少女として納得出来るかは別だ。どうせ抱かれるなら、せめて優しくされたい。自分が悪いとは分かっているけど、性処理の道具のように扱われるのは決して好ましくない。年頃の女の子として、そう思うのは当然だろう。

 

 だから。例え下手くそなえっちだったとしても、緑谷くんとのセックスは気持ち良くて堪らなかった。嬉しくて、堪らなかった。だから昨夜の桃香は、何度も何度も絶頂を重ねたのだ。

 

「―――っ、はぁ……♡ みど、りやくん……♡」

 

 昨夜の情事を思い出しながら、桃香は瞼を閉じる。許されるならもう一度。いや、何度でも。彼の精気を味わいたいと、淫魔な思考をぐるぐる回す。それが許されない事だと分かって居ても、どうしても「もしかしたら」を想像してしまう。

 

 例えば。もう一度夢の世界で緑谷くんとえっちする、とか。他に誰も居ないこの家で一緒に暮らす、とか。今度は現実でえっち出来るかも、とか。

 

 ついついそんな妄想をしてしまいながら、桃香は本能で物事を考え続ける。長い余韻と満腹感で再び眠るその時まで、彼女は緑谷くんとの未来を求めていた。

 

 

 

 そして、数時間後。

 

 

 

 時間が経って長い余韻や満腹感が消え失せると、ようやく桃香は理性を取り戻したようだ。彼女が寝落ちから目覚めたのはちょうどお昼で、枕元の目覚ましい時計を見て一瞬慌てた。が、直ぐに今日は学校を休んだことを思い出し、溜め息を吐きながら身体を起こす。同時に昨夜の夢を再び思い出して、今度は両手で顔を覆った。今の彼女の胸中を占めるのは「やっちゃった……っっ」という後悔である。同時に、緑谷くんの安否が気になった。

 平静を取り戻した彼女的にも、抜かずの九回戦は幾ら何でもヤり過ぎと思っているようだ。緑谷くんの身体にどれだけの負荷が掛かってしまったか、分かったものじゃない。自分と一度性交しただけで、大の大人が骨抜きになってしまう事実を桃香は知っている。幾ら夢の世界だったとしても、九回もしてしまったことを考えるとゾッとする。

 

「緑谷くん、生きてる……よね……?」

 

 桃香は青い顔をしてベッドから立ち上がり、スマホを探す。が、見当たらなくて余計に焦る。枕元や机の上を何度も探して、そう言えばスクールバッグの中に入れっぱなしだったことを思い出して一階へ。明かりもテレビも点けっぱなしのリビングでバッグを見付けると、直ぐに飛び付いた。青褪めたままスマホを確認すると、着信履歴やメール通知が十数件は入っている。急いで内容を確認すると、何件かは病院からの着信やメールだった。何故か税務署からの連絡も有ったようだが、そちらは意にも留めない。

 

 慌て過ぎて操作を間違いそうになりながら、桃香は何とか病院に連絡を入れる。すると直ぐ電話が繋がったから、名前を告げて用件を伺う。すると直ぐに保留が掛かり、待たされる。その間、少しも落ち着けない桃香はパジャマの裾を掴み、リビングの中を行ったり来たりだ。

 

 数分後。ようやく電話が繋がった。

 

『―――あぁ、桃香さん?』

「あ、あの……先生。昨晩わたし、夢で……。それで……っ」

『緑谷くんなら無事だから、落ち着いてね』

「……っはぁ……。……よ、良かったぁ……っ」

 

 緑谷くんの安否を確認出来た桃香は、その場で床に座り込む。無事だと分かって、緊張が解けて身体の力が抜けたようだ。その様子を電話越しに察した病院の先生は、溜め息を吐いた、それから、今朝は病院で何が起きていたのかを話し始める。

 精気が抜けた緑谷くんが救急搬送されて来たこと。あれやこれやと検査し、点滴を入れて、ある程度は回復したので自宅療養を言い渡したこと。―――それから。

 

『君の唾液の影響が有ったから、私の方から説明しておいた。誘惑しちゃうのは仕方ないけど、唾液は特に気を付けなさい。厳しい言い方をするけど、……また伯父さんみたいな人が出来るよ』

「……っっ。ご、ごめんなさい……」

 

 伯父さん。と言うワードが出た瞬間、桃香はビクリと肩を震わせた。青褪めた顔が更に青褪めているのは、決して気のせいではない。

 

『検査結果を見る限り、まだそこまで深刻じゃない。今後は彼相手に唾液を飲ませたり、口淫は絶対に駄目だからね? 分かった?』

「はい。わ、分かりました……」

『医療費はいつも通り桃香さんに請求するから、ちゃんと自分で振り込んでおくこと。請求書はもう送ったから、直ぐに届くよ』

「は、はい。……あの、いつもありがとうございます……」

『はい、どういたしまして。それじゃ、また何か有った時に』

「お、お願いします……」

 

 ひとまず、緑谷くんは生きている。それを知れただけでも安心だ。スマホを耳から離した桃香は、安堵した表情で大きな溜め息を吐く。すっかり身体から力が抜けてしまった。次に彼に会ったら、ちゃんと謝らなきゃと思いながら、もう一度スマホを操作する。今度はメールをひとつひとつ確認し始めたが、途中で指が止まってしまう。桃香の目に映るのは、税務署からのメールだ。件名には「Re:本年度の予定納税について」と書いてある。その内容を確認するかしないかで彼女は逡巡し、そっとスマホを伏せた。

 

「よ、良かったぁ……」

 

 すっかり安堵した桃香は手元からスマホを遠ざけて、そのまま床の上にころんと倒れた。まだ見慣れない天井から目を背けるように寝返りを打ち、薄桜色の瞳でテレビを眺める。昨夜から働き通しの画面が映しているのは、お昼時のニュース番組だ。ここ二年程で日本の出生率が増えた事について報じている。そしてその理由は、新種のED治療薬が各病院に流通したからだと医師がインタビューに答えている。

 何でも、その治療薬。通称『ピーチ』は今までのどの薬よりも使い勝手が良くて効果が素晴らしいとのこと。根治までには至らないし、効果の持続時間も他と比べればそう長くはない。が、服用し続ければそれも問題にならないそうだ。他の薬では食事に気を遣わねばならないが、これにはそんな心配も無い。

 また、不妊治療にも効果が認められておりEDどころか不妊まで治してしまう。これまでEDに悩まされていた男性も、不妊で思い詰めていた女性もピーチによって救われたとのこと。結果、出生率が増えたのである。正に完璧な治療薬だと最後に医師が締め括った。

 

 このニュースを眺めていた桃香は、苦虫を噛み潰したような顔になっていた。

 

「……わたしの唾液が原料じゃなかったら、完璧だったのにね……」

 

 すっかり気分が沈んでしまった桃香は床から起き上がり、ダイニングへ。テーブルの上に置きっぱなしのリモコンを操作して、チャンネルを変えた。その時「くぅ……」と小さくお腹が鳴ったことで、空腹を自覚する。あんなに美味しいご飯の後じゃ全く気が進まない桃香だが、それでもキッチンに向かい冷蔵庫を開いてパウチゼリーに手を伸ばす。その場で細いキャップを開いて口を付けると、思いっ切り顔を顰めた。

 

「美味しくない……」

 

 緑谷くんの精気はあんなに美味しかったのに。と、文句を零しながら何とかゼリーを食べ進めていくのであった。

 

 

 

♡♡♡

 

 

 

 翌日。今朝はきちんと早い時間に起きた桃香は、予備の黒セーラーやカーディガンを着て、渋々と朝食を済ませて家を出た。彼女は登校中に出来るだけ人と会わないで済むよう、随分と早い時間に家を出る。気温が低い春の朝に「ちょっと寒い……」なんて独り言を零しながら、通学路を進む。途中、人とすれ違う際は大きく距離を取る。曲がり角でばったり出会してしまった人には、一礼しつつ小走りで離れる。車道を走る車、特にハイエースなんかが見えたら細道に入って迂回する。

 

 出来る限り人目を避けて通学すること、二十分と少し。桃香は校門を越えた辺りで、昨日とは違う空気に気付いた。つい気になって周囲を見渡すと、何人かの生徒が見えた。が、誰もが彼女の存在を気にしていないように振る舞いながら、昇降口に向かって行く。だからこそ、気付いた。気付いてしまった。

 

 自身の存在全てで周囲の人々全てを誘惑してしまうからこそ、分かっていることが有る。誰しもが、桃香の存在を無視出来ない。特に男性や男子は、少し距離が離れていても桃香を目で追ってしまうものなのだ。なのに周囲の男子生徒数名が、分かり易く桃香から目を背けていた。つまり。

 

 無視しようとする理由が、彼等には有るということ。単に思春期特有の異性への照れを桃香に向けているだけなら、視線を感じることは有っても違和感を感じることは無い。

 

 なら、どういう事なのか。その答えは、校舎裏の隔離教室(プレハブ)に有った。

 

 

「……また、かぁ……」

 

 

 真新しいプレハブの壁面に、何枚もの紙が張り出されていた。その一枚一枚にマジックペンで書かれているのは、全てが罵詈雑言の類いだ。特に酷いのは、桃香の写る写真に淫乱だのビッチだの書かれていること。それは残念ながら事実とは言え、こんな扱いをされた当人が平気なわけじゃない。

 朝から嫌な気分にさせられた桃香は、溜め息を吐きながらビラやら写真やらを回収していく。何処かから小さな笑い声が聞こえたのは気のせいじゃない。視線だって感じている。

 

 学校という場所は、どうしてもこういう事態が生徒間で起きる。発覚すれば問題になるし、場合によってはニュース沙汰だ。大人達は後になって対処し再発防止に努めるけれど、何故か消えて無くならない。結果として、同じ事が繰り返されてしまう。

 

 それが何であるのか。分かり易く一言で言えば。

 

 

「イジメるには、わたしはちょうど良いもんね」

 

 

 諦念した顔をして、桃香は呟く。仕方ない仕方ないと自分に言い聞かせながら、剥がしたビラやら何やらを片手に、ひとりぼっちの少女は隔離教室の中に入って行った。

 

 

 

 

 

 






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桃香の唾液、お薬になるってよ。つまりマジカルチンポ薬が有るってこと。
それはそれとして、桃香とベロチューしたり桃香にお口でされたらマジカルチンポになるってことは……A組男子全員マジカルチンポ化待ったなしという事態に気付きました。まぁ、別にええか。いや良くな、いや……。まぁ……、何とかするか……。何とかしなくても良いかな……。心がふたつある〜〜〜!


あ、次回からイジメ回ですがスピード解決する予定です。でもモブ輪姦回は捨て難いなぁ〜〜。
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