個性『淫魔』 作:えっちいやつ。
えっち回は♡付けておきます。
平常時の
ひとつは、言わずもがな他者の体液。主に精液や愛液、微量で良いならば唾液なんかも含まれる。
もうひとつは、個性研究機関が作り上げた栄養ゼリーだ。こちらは精液程ではないが空腹を満たせる。桃香の主な食事はこのゼリーであり、これを一日三回、時には四回や五回は口にしなければならない。ただし、味は満足行くものではない。どちらかといえば、ケミカルでフェイク。そんな味だ。何なら食感も、ゼリーとしては落第である。
本音を言えば、積極的に食べたいとは思えない代物だ。例えるなら、こんにゃくラーメン。美味しいは美味しいが、ラーメンとは似て非なるもの。なんか違うと思ってしまう、代用品だ。そんなものを食べ続けなければならないのだから、食事が作業になってしまうのも無理はない。その気になれば美味しい食事を楽しめるのに、敢えてそうしないのは心に負荷がかかる。
理性がどんなに拒んでいても、本能が無くなることはない。抑え込めても、消し去ることは出来ない。淫魔としての本能は、今なお桃香を蝕み続けているのだ。
「……っはあ……。ごちそうさまでした」
パックゼリーを三分と掛けずに流し込んで、しっかり蓋をしてからゴミをスクールバッグに押し込んだ。食事時間は、たった数分。対して昼休みは、五十分。桃香は昼休みが嫌いだ。食事は直ぐに済んでしまうし、どうしても時間が余る。しかも代用品で食事を済ませている以上、勝手に淫魔としての本能が働き始める。本物の食事を摂りたくなってしまうのだ。
淡々と流し込んで済ませるのではなく、快楽も欲しい。その方がもっと満たされる。その事実を、桃香は嫌でも理解してしまっている。そしてなにより、今日は―――。
『こ、ここ……、が職員室……で』
『こっちは、かきゃ、か、化学室……!』
『体育、館……』
『と、とっ、図書室……です』
『家庭科しちゆっ、……室』
自分に誘惑されながらも、一生懸命に学校中を案内してくれた同級生が居た。癖っ毛で、ほくろがあって、自信が無さそうで。何となく、自分と同じ類い(あくまで気質が)の男の子が。
その彼は、桃香の目には美味しそうな獲物に映った。映ってしまった。淫魔の本能は、既に狙いを定めてしまっていて。だけど、だからって本当に美味しく頂くわけには行かない。転校初日からそんな事はしたくないし、そもそも転校初日でなくともしたくない。けれども、美味しそうなご飯を見た後で代用品で満足出来るかというと……。
「……っ、もぅ……やだ……」
ぎゅっと自分の身体を抱き締めて、桃香は椅子に座ったまま前屈みになる。吐息が熱っぽくなって、鼓動が早くなって。つい太ももを擦り合わせて、小さく喉を鳴らす。少し物足りないけど、別にお腹は空いてない。ついさっき、食事は済ませた。だけど身体は、空腹でもないのに欲しがってしまって。
背中が熱い。腰、……正確にはお尻の少し上。尾骨の辺りが、熱い。こうなると、下腹部まで熱くなってしまう。こんな状態では、とても人に会えない。すれ違うことも出来ない。こんな時に誰かと会ってしまえば、それこそお互いに我慢出来なくなってしまう。
だから、せめて。他の誰かに迷惑を掛けてしまうぐらいなら。
念の為。念の為に、周囲を見渡す。隔離教室の壁や天井、それと四隅なんかにも目を配る。監視カメラが無いとは言えない。この教室は、人を連れ込んで情事に及ぶには絶好の場所だ。何せ完全防音なのである。周囲の目から桃香を保護する為に、窓すらない。出入り口がふたつ有るだけで、一応更衣も考慮して内側から鍵を掛けられる。着替えの為でもなくても、桃香は基本的に鍵を閉めるようにしている。だから中に桃香が居る限り、生徒用出入り口から勝手に人が入ってくることは無い。あくまでも、生徒用からは。
「……ん……っ」
背もたれに身体を預けて、スカートの裾に指を入れる。少しだけ足を開いて、右手の指で太ももをなぞる。ゆっくりと時間を掛けながら、細くて白い太ももを擽るように指先で擦る。徐々に指を進めながら、桃香は瞼を閉じた。そして思い出すのは、今日―――ほんの数時間前に、誘惑に抗いながらも学校を案内してくれた男の子。この
もし。もしも緑谷くんが誘惑に耐えられなくて。途中で、その気になってしまったら。数百人の生徒や数十人の教師と言った、沢山の人が居る学校の中でお互いにその気になってしまったら。
―――くちっ。
スカートの奥。誰でも受け入れようとしてしまう
もはや見るまでもない。桃香が身に付けている下着はとっくに濡れてしまっていて、その向こう側に隠されている花唇は涎を垂らしている。
『……はぁ、は……っ。蜜月、さん……! 蜜月さん……っ!』
「……っ♡」
男子トイレに連れ込まれて。一番奥の個室に押し込まれて。真っ赤になった顔で、荒い鼻息で、血走った目で。男の子らしい力で、壁に抑え込まれて。身動きが取れないまま、助けも呼べないまま、迫られる。
無遠慮に、制服の上から平坦な胸を触られて。すっかり準備万端なスカートの中に、手を入れられて。太ももの間に、男の子の手が差し込まれて。
そんな妄想をしながら、桃香は指を動かす。左手を胸に当てて、撫でる。手のひらで押すように、擦るように。右手の指先で、濡れた下着の上から筋を擽る。下から上へ、上から下へ。ゆっくりと、何度も往復させていく。
『蜜月さん……っ。蜜月、さん……!』
妄想の中の緑谷くんは、何度も桃香を呼びながら手を動かし続ける。真っ赤で必死な顔をして、迫り続ける。
「んん……っ♡」
気持ち良いところに、たまたま指が当たる。そうして、喉を震わせた桃香を見て彼はもっと指を動かす。制服の上から胸を撫で回し続けて、下着の上から弱点を指先で擦る。
現実の桃香もまた、同じように手を動かす。胸を撫でて、濡れた下着の上から弱点――勃ってしまった
「ぁっ、んん……♡ ふあ♡」
妄想に耽って、敏感なところを指で擦る。今日初めて会った男の子をオカズにして、学校の中でひとりえっち。とっくに死にかけの理性が「学校なのに……っ」と文句を言っても、手は止まらない。むしろ。
『学校なのに、気持ち良くなってるんだ、ね……?』
と、妄想の緑谷くんに喋らせる。そんな想像をしてしまったら、もう止まらない。いや、とっくに止まらなくなっているのだから、更に加速して行くと言った方が正しいだろう。
「ん、ぅ……♡ だってぇ……♡ んんっ♡」
『だ、誰かに聞こえちゃうよ? ほら、静かに……』
「ん、んんぅ……っ♡」
口を塞がれた妄想と同時に、左手で口を覆う。下着の中に指を挿し入れて、濡れ切った秘裂をくちゅくちゅと撫で鳴らす。一人きりの教室の中に響く、ひとりえっちの音。こんなところでと思えば思う程、指の動きと淫らな水音は増していく。
『こんなに濡れて……。蜜月さん、凄くエロい……』
「んぅ……っ♡ んぅーーっ♡」
『違うの? 違わないよね。こんなに気持ち良さそうにしてて……』
「んっ♡ んんんっ♡」
『もっと見せてよ、えっちなとこ。蜜月さんのそういうとこ、見たい……』
「―――っ♡ っっ♡♡」
都合の良い言葉を耳元で囁かせ続けて、すっかり蕩けた顔をして。それでも未だ欲求が満たされない
(い、……くっ♡ も、イっちゃ……♡)
『逝ってよ、蜜月さん』
「ん、ぁっ♡ あっ、んんんんっ♡♡」
口を塞いでも、尚。桃香は大きく声を漏らして、びくんと身体を震わせる。一瞬動きが止まり、その後ゆっくりと弛緩していく。口を塞いだ左手は外れたけれど、まだ右手の指は下のお口の中だ。気が付けば足は大きく開いてしまっていて、スカートも捲れてしまっている。
「……おねが、ぃ……♡ もっと……♡♡」
『……うん。じゃあ……、もう一回』
「あっ、んんっ♡ ちが、そうじゃ……♡ んぁあ♡♡」
ぐちゅりと指を突き入れて。再び桃香は、妄想の中の緑谷くんに辱めて貰う。一度イッてしまったからか、大分スッキリ出来た。でもやっぱり、物足りないような気もする。気持ち良い事をしたのだから、精液が欲しい。けれども今、目の前には誰も居ない。そもそも、そんなにお腹は空いていない。
せめて妄想の中だけでも。と、頭が淫魔の少女は淫らな想像にもう一度飛び込む。
『何が欲しいの?』
「ん、んんっ♡ せーえき♡ せーえき、欲しい……♡♡」
『良いよ。……じゃあ、ほら。脱がしてよ』
「……んっ♡」
今度は、緑谷くんの腰に手を伸ばす。ベルトに手を掛けて、カチャカチャと音を立てて外して、ジッパーを下ろして、それから。それから、薄緑色のトランクスの向こう側の―――。
なんて、妄想をしながら下で咥え込んだ指を動かし始めたその時。
「み、蜜月さん。入って良いかな……?」
「ひあぁあっ!?」
「み、蜜月さん!!?」
教室前の出入り口。教師の出入りの為に設けられた扉の向こうから現実の緑谷くんの声がして、桃香は理性が一瞬で蘇った。大慌てで椅子から立ち上がり、濡れた右手でスカートをぎゅっと掴む。ほんの僅かに遅れて、扉が開いた。
「だ、大丈夫蜜月さん!?」
「ん、んん……っ♡ へ、平気……。その、ここは静かだから、急に人の声がして、び……びっくりしちゃって……」
ひとりえっちで赤くなった顔をそのままに、何とか言い訳を絞り出す桃香である。もし見られてたらどうしよう? あ、でも見られてたらもう襲われてるか。じゃあ良い……、良くない……っ。そんな自問自答、更には勝手に緑谷くんをオカズに使った罪悪感でいっぱいいっぱいだ。
尚。緑谷くんは桃香の内心がぐちゃぐちゃになってる事に気付いていない。ただ、桃香と目が合った次の瞬間に勢い良く顔を逸らした。勢いが付き過ぎて、首がグキリと鳴ったのは気のせいじゃない。何なら痛い。とても痛い。が、彼としてはそうせざるを得なかった。
何だか。今は凄く、物凄く、転校生の蜜月さんが扇情的で魅力的に見えてしまったからだ。分厚いアクリル壁越しなのに脳を揺さぶるかのような甘い匂いがして、何でか赤くなっていて、困ったような顔をしているのが可愛くて綺麗に見えて。何と言うか……この身体の熱さをぶつけたくなるような。
そんな風に思ってしまった。そうして良い対象として見えてしまった。だから彼は全力で顔を逸らした。
決してそんな目を、今日会ったばかりの女の子に向けるわけには行かない……! それは気持ち悪いぞ緑谷出久……! と、全力痩せ我慢をしたからである。
「ぁ。そ、そっか。一人、だもんね……」
「ぅ、ん……。ど、どうしたの……?」
「えっ、あっこれ。進路希望用紙。放課後、提出してって……」
「……あ、ありがと。そこ、置いといて……」
「ぅ、うん。じゃあ……」
うっかり握り潰してしまった進路希望用紙を教卓に置いて、緑谷くんはギクシャクと
そして猛烈に、さっきまでのひとりえっちを後悔する。幾ら個性が
だけど。今回のは違う。今回はただ、自分から。今日会ったばかりのクラスメートをオカズに、オナニーをしてしまった。家ならばまだしも、学校で。しかも転校初日にだ。幾ら何でも、自分の節操無しに愕然とするしかない。そして、猛烈に恥ずかしい。もしまた緑谷くんに会ったら、どんな顔をしたら良いかも分からない。
「ぅ、うぅう……っ。も、もうやだぁ……っ!」
涙目になって悶えながら、桃香は床を叩くしかなかった。
♡♡♡
尚。この日の夜、男子生徒諸君は転校生の蜜月さんで抜いた。何なら女子生徒も何人か、蜜月さんをオカズにした。
そして緑谷くんは、悶々とした気持ちで指定特別個性保持者とその個性について滅茶苦茶調べて、寝落ちした。無事夢精。
ヤジを飛ばしていた不良っぽい男子は、なんと抜かなかった。
彼は一晩中「クソがぁああっっ!!!」と叫び続けながら筋トレに励み、翌日には全身筋肉痛になってピクリとも動けなかったとか。
桃香(理性)「えっちなのはいけないとおもいます!」
桃香(本能)「いっぱいえっちしよっ♡」
だいたいこういう話です。