個性『淫魔』 作:えっちいやつ。
放課後にもなると、校内は
多くの学生達が噂話に尾ひれを付けて、転校生を遠ざける。どうしてそんなヤベー奴を受け入れたんだと言い出す生徒も、少なくはない。中には、興味本位で校舎裏の
―――その結果。
「おいクソナード!! 何でてめぇが特個者の世話係なんだ!? ああ゛っ!?」
夕焼け色の教室に、爆発音が響いた。ヤジを飛ばしていた不良生徒が、緑谷くんの机に手を叩き付けたからだ。危うく、机の上に置いてあったノートが消し炭になるところだ。
やけにギラついた不良生徒な彼、―――爆豪勝己は激怒していた。思い返せば今日は朝から気に入らない事ばかりだ。
まず、転校生。見てくれは良いがおどおどしたモブのくせに、不覚にも目を奪われた。それが指定特別個性の力であることに、直ぐに気付いた。それでも今なお、頭の片隅に転校生の姿が浮き出てくるのが気に食わない。これでは、あんなおどおどしたモブに負けたようなものではないか。これだけでも、今日一日の機嫌は最悪と言える。
そして、その後。進路希望調査で、腐れ縁の 無個性が天下の雄英を受験しようとしていることが発覚した。それも気に食わない。何の力も無いくせに、よりにもよって雄英を選ぶことが気に入らない。記念受験のつもりなら辞退しろ、そうでないなら尚更死ね。無個性の分際で俺と同じ受験先を選ぶなど、見下してるつもりかクソナード。これだけでも大爆発ものなのに、更なる気に食わない出来事が待っていた。
そう。転校生の世話係を、緑谷が任命されたのだ。特個者との交流経験の有無は、雄英を受験する際の武器になる。何かの拍子で個性が暴走してくれれば、それはそれで儲け物だ。特個者の暴走を止めたと言う箔が付く。
つまり。受験を優位に進める為に内申点が欲しい。彼にとって桃香とは、利用価値が有るモブだ。なのに。
よりにもよって、教師達から世話係を命じられたのは無個性の緑谷だ。
「そ、それは……その。ただ先生が、君が適任だから……って」
緑谷は、昼休みに職員室に呼び出されて説明を受けていた。特個者の個性がどれだけ危険で、どれだけ厄介なものか。それを生まれ持ってしまった彼女が、どれだけ不幸な存在なのか。本来は教師が付きっきりで面倒を見なきゃならないし、もちろんそのつもりだが、教師だけでは気が休まらないだろう。一人でも頼れる同級生が居たら、きっと彼女も気が楽だろう。世話係と言っても、転校生の蜜月さんが何か困ってたら声を掛けるだけで良い。たまにプリントとかを隔離教室に届けてあげて。
そんな説明とお願いを少し早口でされた緑谷は、流されるままに首を縦に振った。
「何でてめぇが適任なんだ!?
「わ、分からないよっ!? 説明も全然だったし……! むしろ不明瞭な感じで……」
「だったら断われや!! 内申稼ぎしてんじゃねぇぞクソナード!!」
またも、爆発。今度は爆風に煽られて、ノートが吹き飛んだ。緑谷の言い分を聞いて、爆豪は余計に苛立ちが増した。何で俺じゃなくて、こいつなんだ。俺の方が上手くやれる。そんな思いが腹の内に渦巻いて、頭の片隅におどおどした転校生が思い浮かぶ。それがより一層、頭を来た。正直言って、今日の爆豪はいつにも増して過激だ。間違いなく行き過ぎている。
「……つか、このノートなに? 将来の為のヒーローノート? 何だこりゃっ?」
吹き飛んだノートを拾い上げたのは、爆豪と
「んなノート付けたってよぉ、無個性のモブがヒーローになれるわけねぇだろ!」
その後の爆豪の言動は酷かった。度が過ぎた言葉を平然と言い放ち、更には世話係を辞退しろと迫り、とうとう我慢が限界に達しそうな緑谷を個性をチラつかせて威圧し、ゴミ箱を蹴飛ばしながら帰って行った。取り巻きは大笑い。残された緑谷は、捨てられたノートを回収する為にとぼとぼと教室を出たのであった。
♡♡♡
「あっ」
「あ」
放課後になって、他の生徒達の気配が少なくなった頃。桃香は
「え、……と……」
「……」
「……」
「……」
「……」
夕暮れの校舎。コミュ障が、ふたり。当然、会話は無い。お互い気さくに話し掛ける、なんて真似をするには、それぞれ対人経験値が足りてない。結果、お互いに黙りだ。何なら目どころか顔も合わせない。
それでも。お互い相手の前から動かないのは、お互いに気になることが有ったからだ。桃香は、緑谷くんが焦げて濡れてるノートを持っていることが気になった。素直に「何で??」と思ったからだ。それはそれとして、彼をオカズにひとりえっちをしたのが気恥しいから、とても顔を合わせられない。
緑谷くんは、転校生の蜜月さんが気になっている。それは彼女が持つ個性の影響が半分、もう半分は単に同級生として……様子が気になった。ついでに、こんなところを女子に見られてしまったのが情けなくて固まっていたりもするのだが。
「……それ」
「えっ? あ、え……っ」
「……」
「……」
……会話が一向に進まない二人である。逸らした顔をそのままに目でノートを指した桃香は、それと言った。話し掛けられた緑谷は慌ててノートを隠し、そして固まる。また甘い匂いが鼻を擽って、今度は目も逸らせない。心臓がドキドキして、顔が赤くなってることが自分でも分かる。
「……それ」
「えっ、あ! えっと……」
「……落とした、とか……?」
「ぅ、ん……。い、いきぇ、い……けに……」
「……」
「……」
どうにも進まない会話だが、ひとまず池にノートが落ちてしまったことだけは理解出来た桃香である。何でノートが焦げてるのかも聞きたかったが、うっかり個性が暴発でもしちゃったのかなと勝手に納得した。ひとまず疑問は晴れたのだが、それでも彼女は動かない。早くこの場を離れるべきと頭で分かっていても、緑谷くんから目が離せない。
だって、美味しそうなのだ。
明らかに異性慣れしてなくて、それでも頑張って話そうとしてくれている彼に、つい手を付けたくなってしまって。どんな風に迫ってくれるのかな? とか、どんな味がするんだろう? とか。そんな事ばかりが気になって、立ち尽くしてしまう。
ふつふつと沸き上がる欲望が沸騰する前に、桃香は何とか足を動かした。その時。
「わ!?」
「えっ?」
同じタイミングで動こうとした緑谷が、足を絡ませて転んだ。運悪く、桃香に向かって。結果、二人はもつれ合うようにすっ転んだ。視界が大きく揺れる。一瞬、夕暮れの空が見えた。転んだ衝撃で息が詰まる。そして。
地面に背中を打った桃香の目の前には、緑谷くんの真っ赤な顔が有った。鼻先が触れ合いそうなぐらい近くて、大きな緑色の瞳が綺麗で。
どくん。と、胸が跳ねる。ひゅっ、と息が詰まる。右手が動かないのは、たまたま緑谷くんの左手が重なっているから。そして胸には、偶然右手が置かれていて。
「い、つつ……。ごめっ、だいじょ、え、あっ!?」
たまたま転んで、うっかり桃香を押し倒してしまった緑谷くんは、謝ろうとして固まった。自分達が今、どういう体勢で居るのか即座に理解してしまったからだ。同時に、目の前に居る女の子に目を奪われる。
艷やかで、さらりと広がった黒い髪。夕日に照らされてか、淡く輝く桜色の瞳。夕日に染まった白い肌に、幼気でありながらも確かに整った可愛い顔立ち。甘い香りが鼻を擽って、何だかとても……美味しそうで。
「……っ♡」
事故とは言え、同い年の異性に押し倒されているのに。なのに彼女は、どこか嬉しそうにしている。痛がりもしなければ、怖がりもしない。彼女は何も言っていないのに、耳元で「良いよ」と囁かれた気さえする。急いで離れなきゃと緑谷くんは思うのに、身体がぴくりとも動かない。それどころか、身体の芯が沸騰しそうなぐらい熱くなって―――。
「っっ! ご、ごめっっ!? わぁああっ!?」
大慌てで、桃香の上から跳び退いた。が、勢いが付き過ぎて、背中から池に着水した。その際、派手に水飛沫が上がって桃香もずぶ濡れになってしまった。
「がぼっ、ぼぼっ!? ぶはぁっ!?」
危うく池で溺れそうになったが、何とか緑谷くんは水の中から脱出した。すっかり全身ずぶ濡れで、頭や肩に藻が付いてしまった姿はまさに大惨事だ。咳き込みながら池から上がった彼は、両手と両膝を地面につけて肩で息をする。口の中に入った池の水は酷い味だ。すっかり最悪の気分になってしまった緑谷くんだが、直ぐに桃香へと目を向ける。彼女も彼女で、頭からびしょ濡れだ。カーディガンもセーラーも大惨事だ。
取り敢えず身体は起こしていたようで、今はぺたんと座っている。彼女は胸に手を当てて、それから。
「……、えっち……♡」
困った顔をしているのに、とても嬉しそうに声を漏らした。その言葉を素直に受け取った緑谷くんは、頭をガツンと殴られたかのようなショックを受ける。その直後、勢い良く土下座した。
「ご、ごごご、ごめんなさい!!!」
夕焼けの空に、特大の謝罪が響き渡った。
書いてて本当にこの頃のかっちゃんは擁護出来ねぇなと思いました。
それはそれとして、ラッキースケベ回。桃香からすれば生殺し。IF√不純異性交遊(野外)に入ると、桃香の餌ENDです。
ハーレムも逆ハーレムもやる予定ですが、A組男子が全員穴兄弟になるなこれ!?