個性『淫魔』 作:えっちいやつ。
オールマイトの介入により、ヘドロとの本番えっちを逃した
何で気絶したのかは、いまいち覚えていない。今言えることは、お腹が空いてしまっていること。それから、壁に掛けてある時計が真夜中を示していることだけ。ひとまずこの空腹を何とかしたくてソファから立ち上がり、直ぐに顔を顰めた。自分の身体から、鼻が曲がる悪臭がしたからだ。誰かが掛けてくれた毛布を抱えて、そのまま脱衣場へ。鏡の前を通ると、制服もカーディガンも滅茶苦茶に破かれていることに気付く。ブラやパンツも酷い在り様だ。正に大惨事となっている自分の姿を見た桃香は、少し悩んでからキッチンへと向かう。
棚の中からゴミ袋を取り出して、広げる。着ている衣類や下着類、ついでに靴下も脱ぎ捨て、毛布と一緒くたに放り込む。最後に思いっ切り袋の口を縛って、パックゼリーのゴミしか見当たらないゴミ箱に押し込んだ。更に蓋をキッチリと被せ「くさい」と文句を零す。
その後。桃香は素っ裸で浴室に向かい、壁に取り付けられた給湯機リモコンを操作する。浴槽に湯が張られ始めたのを確認した後、今度は蛇口を捻ってシャワーから水を出した。数十秒も待つと、湯気が立つ。春の夜に浴びるには少し熱いシャワーを、桃香は頭から被った。
長い黒髪に湯が通って、こびり付いていたヘドロの残骸が流れ落ちる。折り曲げた指で髪を梳いたり、軽く絞ったり。手のひらで挟んで擦り合わせたり。浴室の鏡である程度汚れが落ちたことを確認したら、シャンプーを手のひらにたっぷり乗せて泡立てる。それを何度も何度も髪や頭に擦り付けて行く。数分後、桃香の黒髪は泡立ったシャンプーで真っ白になった。
シャワーヘッドを手に取り、白くてモコモコになってしまった髪に湯を当てる。たっぷり時間を掛けて全ての泡を洗い流すと、一から同じ事を繰り返す。
三度も髪を泡まみれにすると流石に満足したのか、或いはこれ以上の洗髪は面倒と妥協したのか。今度はたっぷりのコンディショナーを髪に塗りたくる。
長い髪を一つに纏め、肩から前に垂らす。ボディタオルにこれまたたっぷりのボディソープを付けて、右肩から洗い始める。上から下まで、しっかりと身体を洗うと頭からシャワーを被った。そしてまた、一から身体を洗い始める。
こうして何度も何度も髪や身体を洗った桃香は「ふぅ……」と息を吐き、バスチェアに腰掛ける。それから淡々と足を開き、泡立てた手でゆっくりと丁寧に膣口やその周辺を洗っていく。
「……ん……っ」
泡で滑る指が、陰核に触れた。ここもヘドロに弄ばれた箇所だ。悪臭が残ることは避けたいので、丹念に洗う他ない。……が、そうすると快楽に震えてしまう。洗う為とは言え、敏感な部分に触れ続けることが気恥かしい。優しく指の腹で擦ったり、摘み擦ってみたり。膣口を洗うことも、もちろん忘れない。挿入される前に救け出されたのは、ある意味幸いだった。もしあんな蛞蝓ペニスを突き挿れられていたら、膣の中まで洗う羽目になっていただろう。
「……っ、うぅ……♡ もぅ……っ♡」
くちゅ、くちっ。
ただ洗っているだけなのに、桃香の身体はどうしようもなく感じてしまう。次第に息が荒くなって、指の動きが乱雑になっていく。ふと脳裏に浮かんでしまったのは、ヘドロに犯されている時のことだ。気持ち良いところを一緒くたに触られて、滅茶苦茶に感じてしまった。もっとして欲しいと、早く挿れて欲しいと思ってしまった。救けられた時、邪魔されたと感じてしまった。
「洗うだけ、洗うだけ……だからぁ……っ♡」
今にも本格的なひとりえっちを始めそうになりながら、桃香は洗浄を続けて行く。直ぐえっちな気分になったり、快楽を求めてしまう身体が恨めしい。これでは誰かに淫乱と罵られても、否定は出来ない。
唇を噛んで、泡まみれになった恥部にシャワーを当てる。その時、一際大きく身体が震えた。喉の奥から、えっちな声が漏れ出てしまう。
「んっ、んんぅ……っ♡」
ひとりえっちが始まらないよう、太ももで泡まみれの手を強く挟む。理性で本能に抵抗している桃香だが、既に陥落寸前だ。恐る恐ると言った様子で、躊躇いがちに
「―――ぁっ♡」
……結局。我慢出来なくなった彼女は、ひとりえっちに耽け込んでしまった。
♡♡♡
(もう、最悪……っ)
入浴後。他の誰の気配も生活感も無いダニイングで、水色のパジャマ姿の桃香は、自己嫌悪に陥っていた。どうして本能に逆らえず性的快楽に流されてしまう自分を恨めしく思いながら、スパウトパウチに詰めのゼリーを啜る。相変わらず美味しくない。しかしお腹が空いているのなら、これを食べなければならない。そうしないと、空腹のあまり誰彼構わず誘惑してしまうからだ。出来る限り人様に迷惑を掛けたくない桃香としては、そんな真似は御免被りたい。今日はもう大人しく寝る為に、手早く食事を済ませたいところだ。
しかし、食事の手は中々進まない。一口飲んでは辟易とし、一口飲んでは口から遠ざける。何故なら、緑谷くんを味見してしまったからだ。思っていた通り、彼は美味しかった。甘くて優しくて、温かった。対して、ゼリーは冷たくて不味い。食が進まないのは当然と言えるだろう。更には、誰かとえっちすれば美味しいご飯が食べれると考えてしまう。頭の中に居る天使(理性)と悪魔(本能)は、常に悪魔側が優勢なのである。
気を紛らわせる為に、桃香はリモコンでテレビを点けた。特に見たい番組があるわけでも、気になる番組があるわけでも無いのだろう。ただ何となくで、ザッピングしてるだけだ。
「……はぁ……」
溜め息を吐き、ゼリーを一口。不味さに顔を顰め、パウチを強く握る。今晩は特に不味いと感じてしまうゼリーを、無理矢理喉の奥に流し込んで行く。十数秒後、ひとつ空になった。ゴミを足元のゴミ箱に放り投げ、テーブルの上に鎮座するおかわりに手を伸ばす。小さな白い蓋を捻って開けようとしたところで、桃香は突っ伏した。二つは食べようと思っていたのに、全然食べれる気がしない。お腹いっぱいと言うには程遠いのに、食欲が失せてしまった。
食べなければと思えば思う程、ゼリーへの嫌悪感が大きくなっていく。
せめてもう少しだけでも味が良ければ。そんな風に考えながら、テレビを点けっぱなしにしたまま桃香は明かりが点きっぱなしの二階に上がる。一階の明かりも点いたままである。
部屋の扉を開けた彼女を迎えたのは、年頃の女の子にしては味気無い部屋だ。幼少の頃から引っ越しと転校を繰り返し続けて来たからか、私物らしい私物などは置かれていない。唯一目に付くのは、勉強机の隅に置かれた裁縫道具や刺繍道具、毛糸の玉がぐらいのものか。
「……誰か一緒に暮らしてくれたら良いのに……」
なんて、到底叶わぬ望みを呟きながら。今日は色々有って疲れてしまった桃香は、ベッドに横たわった。
数分後。夢の世界に旅立った桃香は緑谷くんと出会い、目が丸くなったのである。
サブタイトルに♡を付けるか、ちょっと悩みました。