個性『淫魔』 作:えっちいやつ。
個人の自由を制限してでも、国が直接管理しなければならないと判断した個性の総称。それが、指定特別個性である。
対象者は特個者と呼ばれ、国そのものに監視・制限を設けられることになる。なお、特個者の対象となる者の基準は世間の混乱や暴動を防ぐ為、詳しくは公表されていない。それ故、世間では以下の選定基準を複数満たす者である可能性が高いと思われている。
1.『広域災害級』の危険性を有する個性を持つ者。 本人の意思に関わらず、街一つを壊滅、あるいは機能不全に陥れる可能性が有る個性を指す。
2.『倫理的・人道的』な欠落。 生態として他者を害さなければ生きられない、あるいは社会秩序を著しく乱す性質を持つ個性。
3.『戦略・経済的』重要資源となる個性。その個性が国家の利益、あるいは軍事・医療に多大な影響を与える力を有するもの。
以上が国が特個者を選定する基準なのではないかと、世間では噂されている。つまり
今日は色々と有って頭も心もパンクしそうな緑谷くんは、家に帰ると疲れた身体を引き摺ってパソコンを立ち上げた。正直言えば、もう倒れてしまいたい。心身ともに限界だが、それでも調べておきたいことが有ったからだ。
桃香の家を出た後。彼はひとつだけ、どうしても聞きたいことが有ってオールマイトに縋った。
無個性でもヒーローになれるかどうか。その質問を、随分と無茶をした後に答えて貰った。そこからもまた、色々起きた。具体的には、オールマイトに「無理だ」と質問を返された後、とぼとぼと帰路に着こうとしたら、見覚えのあるヘドロが商店街で大暴れしていたのだ。その責任の一端が自分にあると気付き、緑谷くんは自責するしかなかった。しかも何やら「あのメスガキを出せ……! 出なければ、このガキの個性で街を滅茶苦茶にしてやる……!」と主張し、幼なじみだけども嫌な奴―――爆豪勝己に取り憑いていた。彼は彼で抵抗を続けていたが、今はまだヒーローを志すだけの学生だ。錯乱した
その様子を目撃してしまった緑谷くんは、どうにも熱が冷めない身体で駆け出してしまった。桃香にキスをされてから、異様なまでに身体が熱い。今にして思えば、その熱に浮かされていたから無茶な真似をしてしまったのかもしれない。間違いなく、今日の無茶の原因のひとつであることは確かだ。けれど、それ以上に。
よく知った顔が、救けを求めていた。だから、駆け出してしまった。無茶でも無謀でも、動かずに居られなかった。
結果として。事態はオールマイトが介入したことで見事に解決。緑谷くんは多少のお説教を受けることになったりもした。
―――そんなこんなで。暗い夜道を帰っていると、オールマイトがダッシュで追いかけて来たものだから大いに困惑したり、幼い頃母親に言って欲しかった言葉を他ならぬオールマイトに言って貰えた。彼の後を継ぐことも、この時に決まった。無個性な彼が、ヒーローとしての未来を授かった瞬間だった。
だけど、ひとつだけ。ひとつだけ、今も胸に引っ掛ける言葉が有る。再び捕まったヘドロが、何度も叫んでいた。
「もう一度あのメスガキに会わせてくれよ……! なぁ頼むよ、会ってヤリてぇんだよ……!! あの子じゃなきゃ、俺はダメなんだよぉっ!?」
何とも最低な主張だった。誰も聞く耳を持たなかったが、ヘドロが酷く錯乱していることに誰もが気付いた。彼が何故こうも錯乱し、最低な主張を繰り返すのか。その理由を緑谷くんは何となく察してしまい、同時に自分も蜜月さんを求めているのだと自覚してしまった。
そして、別れ際。オールマイトは「私の後を継ぐなら、蜜月少女のことも避けては通れない。いずれ君がセーフティに選ばれる。帰ったら、指定特別個性について調べておきなさい」と言っていた。だから緑谷くんは、くたくたでもいっぱいいっぱいでも、指定特別個性について調べ始めた。いわゆる特個者が、これまで何をして来たのか。どのような特個者が居たのか、蜜月さんについての情報は有るのか。時間を掛けて、あれやこれやと調べ続けて行く。
けれど。蜜月桃香についての情報だけは、何も出て来なかった。SNSでも検索してみたが、何もヒットしない。これはどういう事だろう? と疑問に思いながら椅子の背もたれに身体を預け天井を見上げる。その時、ふと思い出してしまった。
自分の身体の中に有る熱と、今でも立派に勃起している股間の事を。
「っ、いやいや……! もう少し……っ」
ぶんぶんと頭を左右に振って、脳裏を過った欲求を追い払う。今日出会ったばかりの女の子をオカズにするなんて真似はしたくないし、何より桃香に失礼だと思ったからだ。沸き上がる煩悩を抑える為に両頬を抓ったり叩いたりして、何とか理性を強めた緑谷くんはパソコンに向かい合う。身体も心も疲れ切っているが、もう一度一から指定特別個性について調べ直して―――。
やがて、机に突っ伏す形で寝落ちした。
♡♡♡
「え……っ?」
寝落ちした緑谷くんが次の瞬間に見たものは、何処とは分からない薄暗い空間だ。照明らしい物は側には無く、けれどもぼんやりとした光で包まれている。右を見ても左を見ても壁が見えない。上を見ると、幾つもの大きな織物が有る。主に桜色をしており、目を凝らせば向こう側が透けて見そうな程に薄い。立っている彼より1メートルは上で揺ら揺らとしているのは、上の方では風が吹いているから……だろう。
そして。やけに床が柔らかい。肌滑りが良い素材で出来たシーツのようで、立っているだけでも少し身体が沈む。歩き出そうとすると、足裏をふわりとした感触が押し返してくる。
果たして、ここはいったい何処なのか。夢と言うにはやけに生々しく、現実と言うには妙に朧気な気さえする。ひとつ確かなのは、この空間を埋め尽くす甘ったるい匂いに覚えが有ることだ。
「あっ」
すぐ後ろから、誰かの驚いた声が耳に届く。この声にも聞き覚えが有る。と言うより、今日は何度も聞いた声だ。鈴の音のように澄み通った、なのにどこか仄暗い。自信はなさ気で、何処か諦めてしまっているような、そんな声が確かに聞こえた。
目の前の景色に困惑している中で知ってる声が聞こえて来たものだから、緑谷くんは後ろを振り返ろうとして―――固まった。
何故なら、どういう訳か素っ裸だったからだ。しかも股間からぶら下がる男のモノが、かつて無い程に怒張していたからだ。浅黒い皮から飛び出ていた真っ赤な亀頭の先、いわゆる鈴口と呼ばれる部分からは既に先走り汁が溢れていて、硬くなった竿を伝って静かに垂れていく。心臓の鼓動に合わせるかのように、ドクンドクンと脈打ってるような気さえする。現に血管が浮き出て、少しグロテスクなように見えなくもない。
つまり、今。緑谷くんはギンギンである。
自らの股間の惨状に気付いてしまったからか、頭がクラクラし始める。とっくに呼吸は荒くなって、収拾が付かない。なけなしの理性で深呼吸をしようとも、余計に荒くなっていくだけだ。それだけではない、心臓も狂っている。これでもかこれでもかと血液を送り続ける様は、まるで何かに叩かれているかのよう。
「っ、何で……? ど、どうしよう……っ」
背後に居る誰かが、困惑している。この状況を前に、困っている。平時の緑谷くんだったら、自分の姿など気にする暇もなく振り返ったかもしれない。けれど今、全裸の緑谷くんはどうしようもなく興奮している。まるで餓えたケダモノのように、荒い呼吸を繰り返す。
「ぅ、あ……っ」
どうしようもなく、身体が熱い。燃え上がるような熱さが、局部一つに集中していく。今直ぐにこの欲望を誰かにぶつけたい。でないと、何かが弾け飛んでしまいそうだ。
―――これはきっと夢、何かの悪い夢。夢の中なんだから、好き勝手しても良いよ。
―――違っ、違うよ……っ。夢かもしれないけど、だからって……!
本能と理性が、緑谷くんの中でせめぎ合う。拳を握って歯を食い縛って、振り返りそうになる身体を必死に抑え込む。夢なら早く覚めてくれ。今にも消えてしまいそうな理性が願った、その時。
「……が、我慢しちゃ、だめ。おかしくなっちゃう、から……」
「―――っっ!!」
真後ろから、誰かに抱き付かれた。下腹部や胸に向かって回された細い腕が、震えている。背中で囁かれた声も確かに震えていて、けれども確かに……悲しみや諦めが含まれていて。
彼女は知っている。自分のせいでこうなった者が無理やりにでも我慢を続けると、どうなってしまうのか。だから。
「……わたしのこと、好きにして良い……から」
極度の興奮に囚われた少年に向かって、自らを差し出す。まるで誘惑するかのように、彼の胸や下腹部に後ろから手を這わせて。平坦な乳房を、背中に押し当てて。甘ったるい匂いと、やけに蕩けた声を発して。
もう本能に呑み込まれるしかないと悟った緑谷くんは、意を決し―――。
自らの金的に向かって、拳を振り下ろしたのであった。
自分の金的を殴る緑谷くんの図。エロ回の予定でしたが、もうちょっと踏ん張ってもらいます。おいおい、死んだわあいつ。