※この作品はR-18です。

ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~   作:イジー・ムラシロ

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98 リラの鑑定士

 ドムニの町から馬車が出発するとまた雨が降り出し、しばらく降り続いた。

 

 ドムニの厩舎(きゅうしゃ)ではリラの街までは4日ぐらいと言われたが、雨のせいで最初の二日で行けるはずの行程が三日かかってしまう。

 

 それでも四日目からは天気も回復して空もカラッと晴れ上がった。

 馬車の(ほろ)の後ろから外の様子を見ていたルカが何かに気付く。

 

ルカ「ねえ…道を歩いてる人が多くない?」

ソラ「確かに…」

ナオ「歩いてる人だけじゃないよ…荷物乗せてる馬とか…あの小さいのって…」

アユミ「ロバじゃない?」

モア「どれどれ?」

アイ「そんなに乗り出したら、馬車が()れちゃうよ…」

 

 ルカやナオが言うように、これまでの駅馬車の旅では時々にしか見かけなかった旅装(りょそう)の人々や駄馬(だば)やロバがぞろぞろと同じ方へと向かっている。

 

 出会うのはそれだけではない。

 軽装ながら武器を(たずさ)えた兵士や騎兵、それに兵士に守られた豪華な装飾(そうしょく)の馬車もアイたちが乗る馬車とすれ違っていく。

 駅馬車はそんな騎兵や馬車と会うたびに止まって道を(ゆず)らないといけなかった。

 

タクミ「今通り過ぎた馬車ってスゲー豪華だったけど…」

アカリ「馬の上の兵隊も映画みたいな格好(かっこう)してたし…」

ソラ「何か別の意味で旅って感じ…」

アイ「シッ、あんまり大きな声出しちゃダメだよ…」

 

 ドムニの武器屋のおじさんやおかみさんに言われたことがあって、みんな段々と口数が少なくなっていた。

 

 そしてドムニの町を出て五日目。馬車は朝からゆっくりと進んでいたが、昼前に止まってしまう。

 すると、馬車の御者が前から大きな声で言った。

 

馬車の御者「荷物がない客は降りてくれ…この後は大門のところで衛兵が馬車も人も調べるからな…」

 

 アイたちがそう言われてぞろぞろと馬車を下りると、最初に馬車を下りたモアが思わず声を上げた。

 

モア「うわ~…」

アユミ「モアちゃん…」

 

 だが、他のみんなもモアのように声こそ上げなかったが、馬車の前の景色に息をのむ。

 そこには城壁に(かこ)まれた巨大な街が広がっていた。

 

 街は高い城壁が見渡す限り続いていて、その城壁の向こう側には薄っすらとお城らしき高い建物の影も見えていた。

 アイたちのいる場所からは城壁の真ん中にある大門がまだ小さく見え、その門に向かって人々の列がずっと続いている。

 

 アイたちがぼんやりとそんな街の様子を見ている間に、駅馬車はもう門の方へと行ってしまった。

 

モア「ああん、待ってよ…」

アカリ「どうやらあの列に並ばないとダメみたい…」

ソラ「いつ門に着くんだよ…」

ナオ「さあ、とりあえず武器を出そう…」

 

 ナオに(うなが)されてそれぞれが自分の武器を出して携帯し、フードをしっかりと(かぶ)り直すとぞろぞろと歩いて長い列に並んだ。

 とても止まって食事をする余裕など無く、みなパンと飲み物を出して立ったまま昼食を()ます。

 列はノロノロとしているが、確実に前に進んでいた。

 

モア「はあ~、大変だよー…」

タクミ「全然着きそうにないけど…」

アカリ「言わない、言わない…」

アユミ「みんな一緒だからね…」

 

 辺りを見回すと、男性も女性も長袖のシャツに長ズボンや長いスカートを()き、男性の多くは頭を(おお)うような帽子を(かぶ)り、女性は子どもでもベールを頭からすっぽりと被って出来るだけ顔を見せないようにしていた。

 アイとナオはみんなに耳打ちして、周りの人たちどんな格好をしているのかよく観察する。

 

 最初は大門へ向かう人の列ばかり見ていたが、実際には大門へ向かう馬車や大門からぞろぞろと出てくる人や馬車も列をなしている。

 そんな中を時々2,3騎の早馬が勢いよく門から出てきて走り去っていった。

 

 一時間ほどそんな列に並んで、やっと大門の辺りの様子が見えてくる。

 大門のところには衛兵が何人も並んでいて、やって来る人や馬車を一々チェックしているようだ。

 アイはその様子を見て、みんなにもう一度フードをしっかり被るように伝えた。

 

 ようやくアイたちが門のところへたどり着くと、衛兵の一人が彼女たちが武器を持っているのに気づいて声を掛ける。

 

衛兵1「お前たち、勇者パーティーなのか?」

アイ「はい…」

衛兵1「じゃあ(そろ)ってこっちへ来い…」

 

 アイたちは衛兵に門の少し奥まったところへ連れていかれた。そこにも衛兵たちが固まっている。

 よく見ると衛兵たちがいる前に机があり、そこに見たことのあるような白い箱が乗っている。

 

衛兵1「勇者パーティーの連中を連れてきました。」

衛兵2「よし、お前は持ち場へ戻れ。」

 

 アイたちを連れてきた衛兵が向こうへ行くと別の衛兵が言う。

 

衛兵3「このパーティーのリーダーは誰だ。」

アイ「はい、私です。」

衛兵3「じゃあ、冒険者ギルドのカードを出すんだ。」

 

 アイがその衛兵にギルドのカードを渡すと、彼は机の上の箱にカードを乗せる。

 すると、ドムニのギルドの時と同様に箱とカードが白く光った。

 

衛兵3「よし、お前たちがこの街を出る時も必ずここでカードを渡して確認させるんだ。それをしないとこの街からは出れないからな。」

アイ「はい…」

 

 衛兵はそう言ってアイにカードを返す。

 

衛兵2「うむ、行ってよしっ…」

 

 衛兵にそう言われてアイたちは一応軽く頭を下げてその場から離れた。

 門の辺りをうかがうと、衛兵たちにもっと奥へ連れていかれる家族もいる。アイたちはそれを見て心なしか早足(はやあし)になって街中へと入った。

 

タクミ「それで…街の中に入ったけど…」

 

 タクミやソラが辺りを見回すと、そこは正に人がごった返している。

 門の傍には外からやって来た人々、外へ出ようとしている人々、それだけでなく衛兵とは別の兵隊やいかにも勇者パーティーらしき風体(ふうてい)の男たち、駄馬やらロバを連れている人、物売りの女や子どもまでいる。

 

 勇者パーティーの一団がぞろぞろと向かう先を見て、ナオが言った。

 

ナオ「向こうがギルドのおじさんが言ってたリラの街のギルドみたい…」

アユミ「こんなに人がいたら、宿とかが気になるけど…」

 

 アユミはギルドへ行く前に宿を探しておきたいようだ。だが、行き交う人が多すぎてどうすればいいのかわからない。

 

アイ「とりあえずギルドへ行こう…アドスさんが言ってた人っていい人みたいだから、その人に宿も教えてもらおう…」

アカリ「それがいいかもしれない…」

モア「ああん、迷子になっちゃうよ…」

ナオ「さあ、固まって向こうへ行くよ!」

 

 元の世界の時はこれぐらいの人波なら当たり前だったが、約二ヶ月の間人が少ない場所ばかりにいたのでリラの街の人混みが大変なものに感じられる。

 アイたちは声をかけ合いながらそれぞれが離れ離れにならないようにして、リラの冒険者ギルドの建物にたどり着いた。

 

 その建物もドムニの町の冒険者ギルドと同じように木造だが、外から見ると3階建てかそれ以上の高さで、その背の高い建物がずっと向こうまで続いている。

 

 さすがに大きな街だけあって、その冒険者ギルドの建物の前でダラダラと(くだ)()いてたむろっている者など誰もいない。

 むしろ多くのグループが真剣な顔で何かを話し合っている。

 

 建物の前には酒場のような店がいくつかあって、そこにも勇者パーティーらしき男たちがひっきりなしに出入りしていた。

 別のパーティーが建物から出てきたので、ナオがみんなに声を掛ける。

 

ナオ「あそこが入口だよ…」

ソラ「じゃあ行こう。」

ルカ「一階が交換所って言ってたよね…」

 

 アイたちは(おそ)(おそ)る建物の中に入った。

 

 建物に入るとすぐに別のパーティーが右手の廊下からやって来た。

 アイがうなずいて、今のパーティーが来た方へみんなで廊下を進むと奥の方に受付らしき場所が見える。

 アイとナオがこわごわそこを(のぞ)()んだ。

 

 受付にはこんな場所にはいささか不似合(ふにあ)いな、大柄(おおがら)な男が立っていた。

 

受付の男「やあ、いらっしゃい…何の御用ですか?」

 

 男は身長180㎝ぐらい。年齢は50代半ばぐらいだろうか。長くて太い腕を軽く組み、肩幅は広くて胸板も服の上から見ても分厚いのが分かる。

 

 着ている物はこの世界でよく見る(あさ)のシャツとズボンだが、その上から着ている茶色の毛織のチョッキとそのチョッキを止めている革のベルトが、どこなく上品なものを感じさせる。

 

 髪の毛を綺麗(きれい)(まと)め、その上からすっぽり(かぶ)るタイプの帽子を被っているが、その帽子のすき間からも白いものが何本も見えた。

 

 顔つきは鼻が高く眼も大きくて(まゆ)も太く、口と(あご)には濃い(ひげ)(たくわ)えられているが、その髭も白くなってきている。

 

 その風貌(ふうぼう)は明らかにこんなギルドのような場所で事務員や鑑定士として働いているよりも戦場で兵士や魔獣(まじゅう)を相手にしている方がずっと似合っていて、その証拠に顔のあちこちにある深い(しわ)がどこかしら彼のこれまでの苦労をしのばせた。

 

受付の男「どうしました?私の顔に何かを付いてますか?」

 

 男は低く野太いが優しい声を出し、笑みを浮かべた。

 彼にはその武人らしき風貌から思わせるような傲慢(ごうまん)なところは一切なく、腰の低い丁寧な態度なのだが、その目はガラスのように()(とお)り、(にぶ)い光を(たた)えてアイたちを慎重に観察している。

 

 その男のどこか威厳(いげん)を感じさせる様子にアイは腰が引けてしまうが、何とかアドスから言われたことを尋ねてみた。

 

アイ「あの~…ここにジミーさんという鑑定士の方がおられると聞いて来たんですが…」

 

 アイの言葉を聞いて、男は不審(ふしん)そうな表情に変わる。

 

受付の男「ジミー…ジミーは私ですが…私に何か?…」

アイ「あっ、あなたがジミーさんですか…」

 

 まさかそんなに直ぐに会えると思っていなかったので、アイは少しびっくりして声が出ない。

 ナオやアユミもアイの後ろで顔を見合わせた。

 そんなアイの様子にアカリが脇をつついて手紙を出すよう合図する。

 

アイ「あっ、あの~…この手紙をドムニのギルドの人からジミーさんに渡して欲しいって言われて…」

ジミー「ドムニのギルドから私に手紙を…ほう…」

 

 アイは急いでストレージから手紙を出してジミーに手渡す。

 ジミーは手紙を受け取ると、「失礼」と言って横を向き、目を細めて手紙を読み始めた。

 アイたちはなぜか息をのんでその様子をジッと見ている。

 

ジミー「ふむふむ…」

 

 ジミーはしばらく黙って手紙を何度も読み返していたが、やがてアイの方へ向き直った。

 

ジミー「事情はわかりました…あなたがパーティーのリーダーのアイさんで…」

アイ「はい、私です…」

ジミー「そうですか…ここでは(いささ)か話しにくいですね…ちょっと待っててください…」

 

 ジミーはあくまで丁寧な態度を崩さず、奥の方へ入っていく。

 やがて若い男を(ともな)って戻ってきて、自分は受付の横にあるドアから廊下に出てきた。

 

ジミー「では、私についてきてください…受付は(まか)せたからな…」

若い男「わかりました、ジミーさん…」

 

 アイたちが先にいくジミーに黙ってついていくと、彼は廊下の奥のドアを開けた。

 

ジミー「さあ、中に入って…」

アイ「わあ~…」

モア「すご~い…」

タクミ「スゲー…」

 

 そこは体育館のように広い場所で、あちこちに武器や(けもの)の皮、食器や農具などが置かれたり積まれたりしていて、数人の男女がそれらを取り上げたり、覗き込んだりしていた。

 

ジミー「ここに勇者パーティーから買い取った物を置いてあってね…向こうにいる人物はそれを買いに来た商人です…

 我々鑑定士(かんていし)は値段をつけて勇者パーティーの戦利品(せんりひん)を買ってるだけじゃなくて、ここで交渉をしてこうした物を売ってもいるんですよ…」

ナオ「いろんなものがあるんですね…」

ジミー「そう、冒険者ギルドではいろんなクエストを(あつか)っていますから…では、こっちへ来てもらいましょう…」

 

 どうやらここが目的の場所ではないらしく、ジミーは広い部屋の中を奥へと進んでいく。

 部屋にはまだ見たこともないような獣の皮や武器がたくさんあって、アイたちは部屋の中をキョロキョロと見回した。

 ジミーは歩きながらアイに話しかける。

 

ジミー「そう言えば、さっきの手紙を見るとあなた方もクエストで得たものがあるようですね…

 話が終われば、それらも出してください。それとも別の町へ持っていかれるつもりで…」

アイ「いえ、ここで売りたいと思ってます。」

ジミー「では、私たちが鑑定しましょう…おっと、ここだ…」

 

 部屋の突き当たりにもう一つドアがある。

 ジミーはポケットから(かぎ)を出してガチャガチャとドアを開ける。

 ジミーがドアを開けると、そのドアの中からヒヤッとする冷気がやって来た。

 

ジミー「中は(すず)しく足元も(すべ)るので、気をつけて…」

 

 ドアの中はすぐに石段になっていて、地下に降りていくようだ。

 ジミーはいつの間にか手から魔法らしき(あか)りを出していて、石段を照らすようにしながら降りていく。

 ナオとアユミも『光源』の灯りを出して、みんなが石段を()(はず)さないようにした。

 ジミーはそうしたナオとアユミの様子をチラッと見る。

 

ジミー「ほうー…」

 

 中は洞窟(どうくつ)のようになっていて、壁には石が積まれ床にも石がしっかり()かれている。

 だが、中の寒さはとても地下だからというだけには思えない。

 

ソラ「ううう…寒い…」

ジミー「ここには(けもの)の肉や死んだばかりの獣を置いています。外にあると(いた)んでしまうので…」

ナオ「この寒さは…」

ジミー「鑑定士には私をはじめ、簡単な魔法を使える者が何人かおります。それで冷気を起こしてこの中を冷やしているんです…」

 

 ジミーが灯りで照らしながら奥へ行くと、壁際(かべぎわ)(しつら)えられた(たな)に肉の塊があったり、床に何かの動物の死骸が固まっていたりする。

 

 ジミーはだいぶ奥まで行くと、立ち止まってアイたちの方へ振り返った。

 

ジミー「では、ここでいいでしょう…まずはダンの()(がら)大斧(おおおの)を見せてもらいましょう…」

タクミ「は、はい…」

 

 ジミーはそう言って持っていた魔法の灯りを傍の棚に置く。

 彼に言われてタクミが進み出てジミーの前にダンの死体と彼の大斧を出して並べた。

 

 ジミーは(ひざまづ)くともう一つ別の魔法の灯りを出して床に置き、ズボンの後ろポケットから何やら紙を取り出して、まずダンの死体をじっくりと調べてその紙と何度も見比べる。

 

 それから大斧も実の部分の装飾を中心にまた紙に書いてあることと見比べている。アイたちは黙ってその様子を見ていた。

 ジミーは何度も死体と大斧を調べると、やっと立ち上がった。

 

ジミー「確かにこちらはダンの亡き骸で、こっちは彼の大斧です。

 これはヤツの手配書で、似顔絵と武器の絵でそれぞれの特徴が書かれています…

 この男の顔の傷とこの斧についた星の装飾が間違いなく、この手配書のものと一致します…」

ナオ「じゃあ…」

ジミー「この男を斬ったのは皆さんで…」

アイ「私が最後に袈裟懸(けさが)けに斬って…」

ジミー「なるほど…わかりました…」

 

 灯りが暗いためによくアイたちにはよくわからなかったかもしれないが、アイが自分がダンを()ったと言った時、ジミーの眼が一瞬キラっと光った。

 

ジミー「手紙によると、皆さんはゴブリン退治でビックゴブリンも倒し、ラウンドウルフ退治までされたそうですね…

 それらはもう皮だけになってますか?」

アイ「いえ、そのままストレージにしまっていて…」

ジミー「ほう、ストレージに…では、ちょうどいいのでここに出してもらえますか…

 あっ、このダンの亡き骸と斧はしまってください。」

 

 ジミーに言われて、タクミは(あわ)ててダンの死体と大斧をしまい、それからこれまで倒してきたゴブリンやラウンドウルフの死骸をそこに出す。

 一度に出すとそれらは結構な数で、(せま)い地下倉庫の通路の一角が死骸で一杯になった。

 

 ジミーは驚くような素振(そぶ)りも見せずにタクミが出した死骸を、特にビックゴブリンとラウンドウルフのボスのものを中心に調べていく。

 ジミーは顔を上げるとアイに聞いた。

 

ジミー「これだけ魔獣がいれば魔石もお持ちだと思いますが、それらはどうしますか?」

アイ「え~と、ちょっと待ってください。」

 

 アイは急いでナオとアユミを引っ張る。

 

アイ「どうしよう…」

ナオ「ゴブリンと普通の魔獣オオカミの魔石はここで売って、あのビックゴブリンとオオカミのボスのヤツはそれぞれが持っとこう…」

アユミ「それでいいと思う…」

アイ「わかった…」

 

 アイとナオとアユミが話している間も、ジミーはタクミが出したゴブリンやラウンドウルフを調べている。

 

アイ「じゃあ魔石も出しますので、お願いします…」

ジミー「わかりました…ちょっとお待ちを…」

 

 ジミーは地下倉庫の奥へ入っていった。

 アイたちはその間に他に売るべき物が無かったか、互いにストレージを確認する。

 

ジミー「では、魔石を種類別にこちらの箱にお入れください…」

 

 ジミーは奥から木の箱を三つ持ってきたので、タクミは魔石をゴブリンとラウンドウルフに分けてそれぞれ別の箱に入れた。

 

 ジミーはタクミが出した魔獣の死骸と魔石それぞれに、ポケットから出した紙に何かを書いてそれを乗せていった。

 そうしてアイたちの戦利品を大体仕分けすると、ジミーはもう一度アイに言う。

 

ジミー「さて、ではこの魔獣や魔石のことは我々に(まか)せておいて下さい…数や状態を確認して一両日中には買い取りのお金をお渡しできるでしょう…」

 

アイ「鑑定(かんてい)はジミーさんがして下さるんですか?」

ジミー「私とは限りません…ですが大丈夫、ここの鑑定士はみな優秀です。誰が鑑定してもちゃんとした査定(さてい)ができます…

 それと、魔獣については剣で切られていたり、(やり)で突かれていたりするぐらいは十分に()が付くんですが、この()()げているのは焦げている箇所や広さで値が付かないかもしれません…

 そこはよいですね…」

ナオ「わかりました…」

 

ジミー「魔石はゴブリンだと単に数で(いく)らという値付けになりますが、ラウンドウルフだともう少し魔石としての価値があるのでこれだけあるとある程度の金額になるかもしれません…

 魔石は傷とかは関係ないので、そこはご心配なく…」

アイ「はい…」

 

 ジミーは戦利品の査定(さてい)についてはっきりした基準を言ってくれるので、アイたちも一々(いちいち)納得できる。

 そんなジミーの話し方を聞いていると、彼は十分に信頼できる人なのが伝わってきた。

 

 しかし、地下倉庫の寒さで何人かはもう我慢できずに(ふる)えている。

 ジミーはその様子に気づいた。

 

ジミー「まだ話したいことはありますが、とりあえず上に戻りましょう…ちょっと寒すぎましたな…」

 

 ジミーに(うなが)されて、アイたちはぞろぞろとまた倉庫の石段を上って上の部屋に戻った。

 

ソラ「う~…もうちょっとで死ぬとこだったよ…」

モア「そうだよー…」

アカリ「それは大げさすぎ…」

モア「違うよー…」

 

 ジミーは真面目な顔でアイに話の続きをする。

 

ジミー「次はダンのことですが、先に(うかが)っておきたいのですが皆さんはローフの村でラウンドウルフ退治のクエストを終え、その報奨金(ほうしょうきん)(もら)っての帰りにダンの一党に(おそ)われたということですね?」

アイ「はい、帰りの駅馬車を襲われました…」

 

ジミー「どうしてダンはあなた方を襲ったのです?それともダンはあなた方目当てではなく、他に何か金目のものがあったので?

 まさか皆さんが褒美(ほうび)を貰うところにダンがいた訳ではないでしょう…」

アイ「それは…」

 

 アイはナオやアユミに目配(めくば)せをする。ナオは首を少し振ってうなずいたので、アイは正直にジミーに言う。

 

アイ「実は私たちみんな女性で、単にドムニのギルドから手紙を(たく)されたんですが、ローフの村長にさんざん女性の勇者パーティーなのを馬鹿にされて、それでちょっと腹いせに魔獣退治をして村長から褒美を貰ったんです…」

 

ジミー「まさか無理矢理お金を奪ったのでは?」

アカリ「そんなことはしません…ただ、最初は村長がクエストをすれば十分な褒美を出すと言ったんですが、いざクエストを終えたら出すのを嫌がって…

 それでオオカミの死骸を見せたりして少し(おど)して…」

アユミ「アカリ!」

 

 アユミはアカリの(そで)を引っ張るが、ジミーはニコリともせずあごを(さす)る。

 タクミがその様子を見て慌てて()()えた。

 

タクミ「とにかく、オレたち…私たちは自分たちのクエストの成果(せいか)披露(ひろう)して、それで褒美(ほうび)(もら)ったんです…」

ジミー「なるほど…では皆さんはどのようにお思いで…」

 

ナオ「私たちはローフの村長がダンと(つな)がりがあって、それでダンに私たちを襲わさせてお金を取り返そうとしたんだと思います。」

アイ「ダンも私たちに、ローフの村長から貰ったお金を持っているのを知ってると言いましたから…」

ジミー「なるほど…そういうことでしたか…」

 

 ジミーはあご(ひげ)を触りながらうなずいた。

 

ジミー「わかりました…では、私が手紙を書きますのでそれを持って衛兵方の兵舎へ行って下さい。

 兵舎はギルドを出て門の方へ戻ってその左手にあります。

 私の手紙を見せれば(しか)るべき応対(おうたい)をしてくれるでしょうから、無事に報奨金を貰えるでしょう…」

 

ナオ「ジミーさんは兵隊の誰かに伝手(つて)があるんですか?」

ジミー「冒険者ギルドのようなところで働いてますので、このリラの街ではあちこちに多少顔がききます。

 ご心配ならさずとも報奨金は貰えるでしょう…」

アイ「お手数をおかけします…」

 

 アイが頭を下げるとジミーは一度言葉を切って、彼女たちをぐるっと見渡した。

 

ジミー「つかぬ事を(うかが)いますが、皆さんは声を聞いているとだいぶお若いようだが、まだ成人されてそれほど経っておられないのでしょうか…」

アユミ「はあ、まだ2,3年ぐらいです…」

ジミー「そうですか…やはりな…」

 

 ジミーは少しの間横を向いて考え事をしていたが、すぐにアイたちの方へ向き直る。

 

ジミー「申し訳ない…皆さんのお話を伺っているととても興味深いと思いましてな…

 実は私も若い頃は勇者パーティーに居りまして、もしよければ一度皆さんのお話をじっくりと伺いたいのですが…

 

 幸いにも私は明後日休暇をもらっていますので、お時間があればどこかでゆっくりと話をしませんか?いかがでしょうか…」

 

 ジミーからの突然の申し出にアイとナオは顔を見合う。

 これまでもドムニの武器屋のオヤジやナニに十分に気をつけろと言われてきていて、ジミーに言われるがまま会って話すことに一抹(いちまつ)の不安は感じる。

 

 だがそれと同時に、ジミーの誠実な態度や落ち着いた口調にアイたちはみな何か親しみのようなものも感じていた。

 アイは後ろを向いてみんなに相談する。

 

アイ「どうしよう…」

アユミ「この人なら大丈夫だよ…」

ルカ「確かに…それにドムニのギルドの人も信頼できる人って言ってたし…」

ナオ「ここまでもちゃんと話してくれてるから…」

タクミ「それに、いろいろ聞きたい気もするけど…」

アイ「じゃあ、わかった…」

 

 アイはジミーに向き直って頭を下げる。

 

アイ「すいません…ではせっかくの機会なので、一度どこかで話をさせていただけませんか…」

 

 ジミーはアイの答えにうんうんとうなずく。

 

ジミー「こちらこそよろしくお願いします。では、明後日の朝にどこで会うか使いを出したいが…

 皆さんはどこにお泊りになるか、もうお決めですか…」

ナオ「実はどこに泊まればいいかわからなくて…

 もしどこか心当たりのとこがあれば教えていただけませんか?」

 

ジミー「わかりました…兵舎とは逆方向になりますが、このままギルドの前の道を真っ直ぐ来た方へ進んでいかれると、家の前に黄色の二重丸が描かれた看板が出ているところがあります。

 そこはミルトという女将(おかみ)が切り盛りしている宿屋で、そこへ行かれてギルドのジミーの紹介と言ってもらえればきちんと応対してくれるでしょう…

 

 部屋が()いていればよいですが、空いてなくても私の紹介と言えば女将が必ず別の宿を教えてくれます…

 そちらへ行かれるのをお(すす)めします。」

ナオ「ありがとうございます。じゃあ、そこへ行ってみます…」

 

 ジミーは笑顔でうなずくと、受付の方へ歩き出した。

 

ジミー「では私はダンについての手紙を書いてきますので、皆さんはこの部屋の入り口の辺りで待っていて下さい…

 多少時間がかかるでしょうから…」

アイ「すいません…何から何まで…」

ジミー「いやいや、そのようなお気遣(きづか)いは無用です。何でも私たちに言ってください…では、失礼…」

 

 ジミーはそう言うと、改めて向こうに行こうとする。だが、その間にもそこにいる別の鑑定士を呼び、何やら言いつけた。

 呼ばれたのは若い女性で、ジミーから何かを言われるとすぐにさっきまでアイたちがいた地下倉庫へ入っていく。

 ジミーもそのまま受付の方へ行ってしまった。

 

 アイたちはぼんやりとジミーが扉の向こうへ行くのを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 




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