ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
ジミーは明日
彼は
ジミーはいつも出発の
馬車に乗り込むと、ジミーはすぐに
ジミー「サウル地区のバグの店へ行ってくれ。」
ホーグは黙って馬車を出発させる。ジミーは馬車が屋敷を出る時に小窓から辺りに人がいないか慎重に見渡した。
しばらくすると、ジミーの馬車はバグの店から少し離れた場所に止まった。
ジミーは馬車から降りると、御者台から降りてきたホーグにここでしばらく待っているように指示をして通りの方へ向かった。
ジミーが傍まで行くと、バグの店の辺りには多くの人が集まっていた。
バグの店もドムニのオットの店と同じように隣り合う入り口の
バグは武器商人と言われているが、店の前には兵士や勇者パーティーの一員らしき男たちだけでなく、食料品や
ジミーは行き交う人の間を
ジミーが待っていると、しばらくして女性がドアを開けた。
女性は
初老の女性「ジミー様、ようこそお
ジミー「すまんな、突然押しかけて。バグは忙しいかな?」
初老の女性「すぐに主人を呼びに行かせましょう。どうぞこちらへ…」
家の中に入ると、真っ暗な中にズラッと
女性が足元に置いていた
どうやらこちらの家は倉庫にしているのだろう。棚には武器や武具、工具や農具、食器や料理道具などが
ジミーは女性の案内で家の一番奥まで進むと彼女について奥にある階段を上った。
家の2階も商品を置く倉庫のようになっていたが、3階からは
ジミーは案内されて最上階の4階まで上がり、その一番向こう側の通りに面した部屋に通された。
部屋には無駄な
初老の女性「何のおもてなしもできませんが、そちらにお座り下さい。主人はすぐに参りましょう。」
ジミー「
女性がテーブルに燭台を置いて下がろうとしたので、ジミーはそれを手で
彼女はそれを見て、燭台を手にしたまま頭を下げて部屋から出ていった。
家の中は静まり返っていて誰かがやって来るような様子もない。
引き戸の窓は開いていてそこから店先の
「失礼いたします。お待たせいたしました。」
突然男性の声がして、ジミーはハッと我に返って部屋のドアを見る。すると、そこにはきっちりとした身なりの、こちらも初老らしき男性が立っていた。
ジミーは自分から立ち上がって彼に握手をしに行った。
ジミー「バグ、忙しいところ申し訳ない。仕事の方は大丈夫だったかな…」
バグ「お待たせし、申し訳ございません。店は他の者に
ジミーがバグに
バグは席に着くとすぐに着ていたチョッキのポケットから何かを取り出す。
バグ「今朝
バグはそう言ってポケットから出した手紙をジミーに渡す。
ジミー「この手紙は?」
バグ「こちらはレアの村長から私
ジミー「レアの村長と言えば、アイたちが出てきたという…」
バグ「はい、お手紙にあった勇者パーティーの皆様のことが書かれております。どうぞお読みを…」
ジミー「では、失礼をして…」
ジミーはそう言うと、渡された手紙を読み始めた。
しばらくの間ジミーはその長い手紙をずっと読んでいたが、やがて読み終わると手紙を手にしたまままた何かを考えている。
バグはその間何も言わずに彼の様子をジッと見ていた。
やがてジミーはバグの方を向くと、不思議そうな表情を浮かべた。
ジミー「何とも
もしかしてレア出身のおぬしならば何か知っておるかと思っていたが、まさかこのような手紙が着ていたとは…」
だが、バグはジミーの言葉に首を振る。
バグ「決して奇遇などではござりませぬ。
アイ様とおっしゃる方を含め、その「
皆様がどのようにお思いかは存じ上げませんが、村の者にとってはいつまでも恩人であり、その行く末を心配するのは当然のことでしょう。
村から私に「彷徨い人」の皆様のことをよろしく頼むと連絡があっても少しも不思議ではありません。
それよりも、むしろジミー様が皆様とお会いになられただけでなく、その身を
ジミーはバグから視線を外すと、どこかあらぬ方を見て
ジミー「…儂はニディア教の言う
それが良きものとなるか、それとも何か
バグ「いやいや、ジミー様がその「彷徨い人」の皆様を御養子にお
そうしたことは間違いなく良き指針の先にあるものでござりましょう。
その
バグは決してジミーを
だが、ジミー自身は黙って首を振る。
ジミー「それもこれも明日の
ジミーはそう言うと、バグの方へ向き直って姿勢を正した。
ジミー「そこでの、おぬしに
大まかな話としては、アイたちは儂の若い頃の恩人の縁者でその恩人はレアの村の出身だったのじゃが、その恩人を始め、アイたちの親類縁者がみな亡くなり儂に後見人を頼みたいという内容じゃ。
急な頼みで済まないが、
バグ「
ジミー「うむ、明日の午前中の間には登城をせねばならぬのでな。
それとレアの村長に
バグ「もちろんでございます。その手紙はアレン様もご
ジミー「そうじゃ。他の者は儂の言葉だけでも信じてくれようが、アレン様はそうはいくまい。
何か形のあるものが必要なのじゃ。」
バグ「分かりました。すぐに用意をさせましょう。
明日の早朝には必ず御屋敷にお届けいたします。」
バグがそう言うと、ジミーは座ったまま丁寧に頭を下げる。そして顔を上げるとフッと息を一つ
ジミー「じゃが、アイたちはレアの村で
バグ「「
バグの言葉にジミーは「ククク」と笑う。
ジミー「確かに、アイたちとは
バグ「今朝
その言葉にバグもニッコリして答えた。ジミーはもう一度手にした手紙を読み返して言う。
ジミー「だが、この手紙を読んで改めてあの者たちのことが少し分かった気がする。
確かに魔獣のクマに立ち向かうなど
そうした誰かのために戦おうという姿がレアの村の人々の心を動かし、この手紙のようにあの者たちを助けたいという形に変わっているのだろう。
そうしたあの者たちの
バグ「ジミー様のそのお一人でござりましょう(笑)…」
バグが笑顔でそう言うと、ジミーは「ハハハ」と軽く笑った。
ジミー「(笑)…確かにその通りじゃ。あの者たちには何か手を差し伸べたくなるようなところがある。
謙虚で真摯で、それでいて野心のようなものが
まだこの世界のことに全く染まっていない感じじゃ…」
バグ「では、我らの世界にずっと居れば、いつかはその皆様も染まってしまうとお思いで…」
ジミー「…分からぬ…だが、若い者が月日を重ねて良き意味でも
バグ「ジミー様はそのように染まらぬようにその「彷徨い人」の皆様を
ジミー「さあな…あの者たちが染まるのか染まらぬのか、それはあの者たち次第であろう。儂に出来ることなど多くはなかろうて…」
ジミーは少しの間何かを思い浮かべるように壁の方をジッと見ていたが、やがて気がついてバグの顔を見る。
ジミー「いや、長居をしてしまったようですまなかった。
手紙にも簡単に書いたが、明日の午前中にはアイたちと共に登城をしてアレン様に
アレン様はあの者たちの
それ
アレン様が
その折には無理を言うと思うが、どうか許してくれ…」
バグ「ジミー様からどのようなご無理を
どうぞ何なりとお申し付けくださいませ。」
ジミー「うむ、ではまたその折にはよろしく頼んだ。」
ジミーはそう言うと、椅子から立ち上がった。
バグも立ち上がり、自分が先に立ってジミーを案内した。その背中にジミーが言う。
ジミー「難しいことを言うが、手紙のことはよろしく頼む。」
バグ「承知いたしました。明日の早朝には必ずお届けいたします。」
バグが先になって部屋を出て上ってきた階段のところまで行くと、そこに女中らしき若い女が待っていた。
彼女が燭台を手に下の階を手で指すので、ジミーは今度はその女性について階段を下りようとする。
バグがジミーに頭を下げるとジミーも深くうなずき、そのまま階段を下りていった。
ジミーがその女性の案内で最初に入ってきたドアから出ると、まだバグの店先には多くの人が買い物をしようと集まっていた。
だが、太陽は
ホーグは馬の
ホーグが馬車のドアを開けると、ジミーは笑顔でうなずいて乗り込む。
ホーグが
ジミー「すまんが屋敷に戻る前にミドとキリの家へ向かってくれ。もうギルドの仕事も終わっておろうからな…」
ホーグ「承知いたしました。」
ホーグが馬に
馬車が走っている間に教会の
ジミーは馬車の窓をわずかに開いて街の様子を見ていた。
やがて馬車は人通りの少ない場所で止まった。
ジミーは自分でドアを開けて馬車から飛び降りる。
辺りは商店などない人家ばかりの地区のようだ。ジミーはまた馬車を待たせて近くの家へと向かった。
ジミーが前に立った家は他の家と同様に間口が非常に狭かったが、どうやら2階までしかないこぢんまりとした家らしかった。ジミーはその家のドアをノックする。
返事をしてドアを開けた男性はジミーの姿を見て固まった。それは昼にギルドで会ったミドだった。
ジミーは言葉が出ないミドに笑顔で尋ねる。
ジミー「すまんな、突然やって来て…少し邪魔をしてもよいかな?」
ミド「ジミーさん…すいません、まさかいらっしゃるとは思ってなかったもので。
どうぞ入って下さい、狭い家ですが…」
ジミーが中に入ると少し入ったところに小さなテーブルと椅子があり、その椅子にはキリが両手で顔を押えた
ミド「キリ、ジミーさんが来られたよ…」
ミドの言葉に顔を上げたキリは視線の先にジミーの姿を認めると、立ち上がって彼に
キリ「ジミーさん、ジミーさん、ジミーさん、ジミーさん……」
ジミーの胸の中でうなされたようにキリが彼の名前を繰り返すのを見て、ジミーも少し目元を
ミドもそんな彼女を見て、少し涙を浮かべた。
だが、ジミーは
ジミー「今日は少し帰りが早かったんだな?」
ミド「はい…妻がギルドでもずっとジミーさんが居られなくなったのを悲しんでいて、それを見て仲間たちが今日はもう帰るように言ってくれたので…」
ジミー「そうか、それはお前たちにもギルドの者たちにも迷惑をかけたな…」
ミドはジミーの胸の中で泣くキリの肩にそっと手を置く。
キリが泣いたまま顔を上げると、彼はうなずいてキリに座るように手で椅子を指す。
ミドはキリがジミーから離れると、今度はジミーに別の椅子に座るように
ジミーが黙ってその椅子に座ると、キリは泣き顔のままジミーに尋ねた。
キリ「どうして、どうしてギルドを
キリは
ジミーは少しの間黙っていたが、言葉を選ぶようにゆっくりと話し始めた。
ジミー「ギルドでも言ったが、お前たち2人も他の者も、皆もう
お前たち2人はもう王都でもローダニアの他のどこに行っても通用するだけの力がある。
儂はもうお前たちに教えることなど何もないのじゃ。
だがギルドに儂がおると、今でもみな儂の言うことを聞こうとしてくる。
まだ儂の言うことが絶対に正しいと思っているようじゃな。
せっかく一人前になっておるのにこれではいつまでたっても半人前の気持ちのままじゃ。
だからな、儂もいつかはここを離れねばならぬと思っておった。
だが皆が儂を
キリ「ジミーさん…」
ミド「ジミーさん…」
ジミーは座り直すと2人の顔をしっかりと見る。
ジミー「お前たちはもう儂の助けなど何も
だが、今度やって来た勇者パーティーの者たちにはどうしても儂の助けが必要なのじゃ。
それに鑑定士としての知識はお前たちに全て伝えたが、それ以外の知識はまだ誰にも伝えられておらぬ…」
ミド「じゃあ、ジミーさんが勇者パーティーの生活で学ばれたことを…」
ジミーはミドの言葉に深くうなずく。
ジミー「その通りじゃ。儂にまだ時間が残されておるのなら、儂の知っていることを出来るだけ教えてやりたいのじゃ。
だからな、儂がギルドを去るのをどうか分かってほしい…」
それでもキリはまだジミーが去る事実を受け入れられず椅子に座ったまま、また泣き出した。
それを見てジミーは立ち上がって彼女の頭を軽く
ジミー「キリ、そんなに泣かないでくれ…
儂はまだ死んだわけでもなく、ギルドでの仕事を辞めるだけでリラの街を去るわけでもない。
ただこれまでのように毎日顔を合わすのではなくなるだけじゃ。
それだけのことで、儂らが
さあ、顔を上げてくれ…」
だが、顔を上げたキリの眼にはまだ何か暗いものが
キリ「ジミーさんはもう私たちのことなど忘れて、あの勇者パーティーたちのことだけを考えるのでしょう…」
ミド「キリ…」
キリの言葉を聞いてジミーは彼女の眼をしっかりと見て言う。
ジミー「何を言うのだ…儂がお前たちの
お前たちもギルドの皆も儂の子どもと同じじゃと申しただろうが。
確かにあの勇者パーティーの者たちは儂の養子となるが、儂とお前たちとはあの者たちと同じかそれ以上に強く結ばれている。
だからな、儂がギルドに邪魔しないならお前たちが儂の屋敷に来てくれ。
儂はいつでも歓迎するからな…」
ジミーはそう言うと、キリの腕を軽く
キリ「ジミーさん…」
ジミー「うむ、儂はいつでもお前たちの力になるからな。だから、困ったことがあればいつでも言ってきてくれ。
また会うまで、しばしのお別れじゃ…」
ミドがジミーに近づいてくると、ジミーはミドにも腕を伸ばして彼も一緒に抱擁する。
しばらくの間2人を強く抱きしめると、やがてジミーは力を弱めて腕を離した。
そしてミドやキリの顔を見ながらドアの方へ向かう。
ジミー「ではな、またすぐに会おう。それまで
ミド「ジミーさん…」
キリ「ジミーさん!」
ジミーは笑顔で2人に向かってうなずくと、手を振ってドアを出ていった。
ジミーはそのまま足早に自分の馬車へ戻ると、今度はホーグの横を少し難しい顔をして馬車に乗り込んだ。
そして、馬車のドアを閉める前に「屋敷に戻ってくれ」と一言かけると、ドアを閉めて席に腰を下ろし、大きく息をついた。
ジミー「これで、儂に何があっても、十分な別れだろう…」
ジミーがそう
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