ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
ジミー「では、今はこれぐらいにしてひと休みしよう。
それから少し早いが食事を
ジミーの一言を聞くと、その場の全員が頭を下げて屋敷の方へと歩き出した。
ジミーはダイと一言二言交わすと、最初にカイが言っていたように武器庫に置かれていた自らの武器や防具をストレージにしまう。
ジミーが戻ってくるまではクエストの準備とは言え、この数日のバタバタもあってまだ
しかし、ジミーから話を聞き、アイたちも緊張感を覚えながら
ツグミ「なんか、いろんな魔獣が出るんだって…」
アカリ「らしいね…トラって聞いたけどそいつ一頭だけって思ってたから…」
ナオ「これまでのデカイ相手ってあのビックゴブリンとオオカミのボスとかかな?」
ルカ「アイちゃんが倒したクマもすごかったよ。」
タクミ「メチャどデカかかったよ、あいつ…」
ソラ「あれが一番ヤバかったんじゃない?」
ルカ「
アユミ「確かに、もしかしたらあのクマが今までで一番大きかったかも…」
アイ「今考えると、あん時にあんな化け物相手にするって、かなり
アカリ「分かる、今だと
タクミ「でも、人が
ナオ「あん時は無我夢中だったから…」
アユミ「だね…」
まだ装備もほとんどなく、能力も今と比べるとずっと低かったにもかかわらず戦った魔獣のクマのことを思い出すと、自分たちも意外と多くの経験をしてきたように感じられる。
そうした経験のためか、今度の魔獣退治には何か怖さも感じるようになってきている。
アイ「ヤバいね…」
アカリ「ヤバいって、何が?」
アイ「うん…なんかジミーさんの話聞くと今度の相手はさあ…」
アイが廊下で少し不安気な表情で立ち止まると、他のみんなも立ち入ってアイの様子をうかがった。
ソラ「まあ、その気持ち、分かんなくはないけど…」
ナオ「でも、そのために準備をしているわけでしょ…」
アカリ「そうそう、これだけ武器とか道具とかも用意できたし、これからそのために訓練も行くわけだし…」
タクミ「
ツグミ「こんな準備がないとホントに怖いね…」
ソラ「そんなこと言いながら、あんまりなんもせずにオオカミ退治に行ったじゃん…」
アユミ「あれは、ソラがやろうやろうって言ったんだよ。」
モア「そうだよー、でー、やっぱめっちゃっ
ソラ「確かに、思ってた以上に大変だった(笑)…」
アカリ「笑い事じゃないよ(笑)…」
タクミ「まあ、どう戦うのかはみんなで
ナオはアカリと一緒にアイのそばにいって肩に手を置く。
ナオ「不安なのは私も一緒だよ…
でも、今度はジミーさんのおかげでどんな相手でどんなことが起こりそうなのかも分かってきてるし、準備だってアカリの言う通り、いい武器をたくさん
だから、今までで一番ちゃんとして出発できそうだから、
アカリ「それに、なんてったってジミーさんがいてくれるからね…」
ソラ「そー、そー、それって大きいよねー…」
アイは仲間たちの顔を見渡すと頭を下げた。
アイ「ゴメン、私が弱気になっちゃって…
みんなの言う通りだね、今までで一番準備ができそうだもんね…頑張るよ。」
アユミ「大丈夫だよ、アイ…
アイだって怖い時には怖いって言っていいよ…みんな一緒なんだから…」
アイはアユミやナオにうなずくと、みんなと一緒に部屋に戻った。
ジミーが言ったようにいつもより少し早めに昼食を取ると、彼が食後にアイたちに言い渡す。
ジミー「いつものようにマントを
昨日城へ
アイ「その練兵場を使うのは私たちだけですか?」
ジミー「そうなるように言ってある。
木剣や木槍、他にも魔法や矢の
ただし、準備や片付けは我々でせねばならぬが、それぐらいはできるだろう?」
ナオ「分かりました…」
ソラ「その練兵場で一体何をするんですか?」
ジミー「それは向こうに着いてからのお楽しみじゃ(笑)…」
ジミーが不敵な笑みを見せたので、アイたちは顔を見合わせる
ジミー「さあ、出発の準備をしよう。」
全員「はい!」
全員がいつも通りマントのフードを真深く被って馬車に乗り込むと、ジミーに続いてカイが乗り込んでくる。
ダイは御者のすぐ横のわずかなスペースに身体を寄せ、馬車はゆっくりと屋敷を出ていった。
馬車はしばらくの間
やがて
ダイ「ブロッケン
衛兵「
ダイ「城外の練兵場である。」
衛兵「分かりました、ブロッケン男爵閣下の馬車である!道を開けよ!」
人の声や馬の
そうしてしばらく進むと、馬車はまたゆっくりと止まった。すぐにダイが馬車の
カイ「皆様、到着致しました。どうぞ順番に外へお出になって下さい。」
カイとジミーに続いてアイたちも馬車から降りていく。
外には夏の日差しが
馬車を降りたすぐ目の前に木製の高い扉があり、周りには人の気配すらない。
カイとダイは黙ってその扉を開けて中に入っていく。歩き出したジミーについてみんなも扉の中に入った。
しばらく左右に木製の壁のある通路を通っていくと、やがて目の前に見えてきたのは木製の
ただ、地面は土であちこちに雑草も生えている。カイとダイはこの場所のことをよく知っているのか、何も言われずとも左側にある倉庫のような場所へ向かっていった。
ジミー「さあ、お前たちもあの2人と一緒に道具を運んでくるのだ。」
ジミーに言われてカイとダイの後を追うと、倉庫には無数の木剣や
みんなは自分たちで
ジミー「よしよし、では今日は個別の能力の強化を図ろう。
今から魔法を使える者と
カイもダイも儂に仕えるまでは名のある勇者パーティーの一員だったので、腕前はかなりのものだ。お前たちのよき訓練相手になろう。」
ジミーの言葉にタクミとアユミは顔を見合わせ、タクミが手を
タクミ「あの~、オレは能力はないですけど一応戦うのはできるんですが、アユミさんは魔法でも武術でも戦闘系の能力を持ってないんですが…」
ジミー「お前たち2人は確かに武術の能力も持っていないな。ダイ、お前が2人に剣の使い方を教えよ。
タクミは能力が低いだけで戦闘には参加したことがあるようだが、アユミは全くそうした力がないからな。一から教えるように、よいな。」
ダイ「承知しました。」
ジミーは不安そうな顔をするアユミの目を見て言う。
ジミー「アユミ、お前が仲間たちのために戦い以外の場でよく働いているであろうことは、普段のお前の様子を見ていればよく分かる。
だが、特に今度のクエストでは魔獣がいつどのように襲ってくるのか分からぬ。
だからお前も剣を
アユミ「分かりました…」
ダイ「では、タクミさま、アユミさま、あちらへ行きましょう…」
アユミがうなずくと、ジミーも笑顔でうなずく。ダイがタクミとアユミはみんなと少し離れたところへと連れていった。
ジミー「では、魔法を使うものはこちらへ集まれ。そして、この的をもっと向こうへ持っていくのだ。」
カイ「武術の能力をお持ちなのはどなたでしょうか?私のところにお越しください。」
ソラ「私ってどっちへ行ったらいいかな?」
ナオ「せっかくだから私たちと魔法のことを習おうよ。」
ジミー「そうだな、今日はお前も儂らと共に訓練をしよう。」
アカリ「
アイたちはそれぞれ能力別に分かれると、ナオとツグミ、ソラとモアはジミーに言われた通り大きな木の的をかなり離れた場所まで運んでから、またジミーのところまで戻ってきた。
ジミー「よいか、魔法での攻撃の基本は矢や
だから、最終的には強い魔法をより遠くまで届かせられるようにせねばならぬ。」
ジミーはナオたちにそう言うと、彼女たちが置いた
すると、その手のひらからソフトボール大の火の玉がかなりのスピードで真っ直ぐその的へと飛んでいき、見事に的の真ん中に当たった。
的は真ん中辺りが
ナオたちはジミーの出した火の玉がかなり向こうの的まで真っ直ぐ飛んでいったのに目を丸くする。
ツグミ「うわぁ~…」
ソラ「スゴっ…」
ジミー「儂は最大の力を出したわけではないが、あの距離までしっかりと『ファイア』の力を届かせることができる。
お前たちもまずは弱くてもよいのであそこまで『ファイア』が届くかやってみよ。」
ナオ「わかりました。」
ジミーの指示通り、ナオから順番に遠くの
だが、みな的の一歩か二歩ぐらい手前で力なく落ちてしまう。
ジミー「よしよし、ではあの的をもう二歩半ぐらい近づけるのだ。そしてもう一度
ナオたちは的を近づけるともう一度火の玉を飛ばす。
ツグミとモアは一度で的まで火の玉が届くが、ソラとナオは何度かやってやっと的に届く。
ソラ「クソぉ~、うまくいなねぇ~…」
ツグミ「ソラちゃん…」
ジミー「ソラ、ナオ、
ナオ「だってさ…」
ソラ「そうだけどさぁー…」
ジミー「よし、もう一度あの的を狙え。今度はもっと強い魔法を当てるようにするのだ。
あれが魔獣だと思って攻撃しろ。」
ジミーに言われてみんなは何度も的を火の玉で狙うと、少しずつ強い大きな火の玉が的に当てられるようになってくる。
ジミーの指示で的をもう少し遠くに動かしても、ツグミとモアだけでなくソラとナオも少しずつ今いる位置から魔法が届くようになった。
すると今度はジミーが
ジミー「よし、今度は近いところを攻撃する訓練をする。
近い敵を狙う時は少し弱くてもよいので連続して出せるようにせねばならぬ。そして、確実に相手に当てるのだ。
失敗すると自分が攻撃されるぞ。」
ジミーは自分で盾を持つとナオに言う。
ジミー「まずはナオが盾で自分自身を守りながら
儂は動くからな、よく盾を狙え。」
ジミーは2メートルほどナオから離れて盾をかざす。
ナオも盾をかざしながら離れた盾へと火の玉を出した。
だが、盾を持つのも初めてなら、動く盾を狙って魔法を出すのも初めて上手く火の玉を当てられない。
ナオ「エイッ、エイッ、ヤーッ、ヤーッ…」
ジミー「どうした、それでは届かないぞ。ほら、横に
ナオに続いて他の女の子たちもやってみるが見ている以上に難しい。
みな、上手く盾に当てられずに終わってしまう。
モア「ジミーさん、この盾ってないとダメですか?」
ナオ「私たち、盾は全く使ったことがなくて…」
ジミー「わかった、では盾を使わずにやってみよ。」
モアが盾を使わずにやってみると、さっきよりはジミーの持つ盾に魔法を当てられるようになる。
だが、何度か上手く火の玉が盾に当たるようになったところで突然ジミーが弱い「ウィンド・ブロウ」をモアに
モア「わっ⁉」
ツグミ「モアちゃん!」
ソラ「モア!」
ジミーの魔法はそれほど強くはなかったが、
モアが顔を上げると、目の前にジミーが立っている。
ジミー「どうじゃ、儂が敵の兵ならもう
モア「えっ~⁉…」
ナオ「ジミーさん…」
ジミーは笑顔でお尻をついているモアに手を伸ばして彼女を立たせた。
ジミー「盾を使わずともよいが、お前たちは魔法で攻撃をする時に自分自身を守ることを忘れている。
防御魔法で自分たちを守っている時はそれでよいが、乱戦になるとそうはいかぬ。
攻撃をしながら自分自身を守ることも意識せねば、今のように簡単にやられてしまう…」
ナオ「だから盾を使って…」
ジミー「そうじゃ、剣や
しかし、お前たちが使う攻撃魔法は純粋に攻撃のための力であり、それを
ツグミ「確かに…」
ジミーはそう言うと、今度はストレージから小さめの盾を取り出す。
それは上半身全部を隠す盾の半分ほどの大きさをしている。
ジミー「お前たちはこれぐらいの大きさの盾は持っていないか?」
ソラ「そう言えば、いろんな大きさの盾を入れた気がする…」
それぞれがストレージから何枚かの盾を出すと、ある程度小さなものも出てくる。
ジミーはそれを見て、盾の持ち方からナオたちに教える。
ジミー「よし、もう一度その小さな盾で身を守りながら魔法を出すようにするのだ。
今度は「ウィンド・フラッシュ」をこの儂が持つ大きな盾に向かって出すのじゃ。
上手く盾の真ん中を狙うようにな。」
今度もソラから順番に動くジミーが持つ盾に向かって魔法の風を出す。
魔法を出すことばかりに気を取られると、ジミーが時々出す「ウィンド・ブロウ」が当たってしまう。
しかし、身を守ることを意識しすぎると上手く魔法を当てられない。
ジミー「ツグミ、モア、もっと盾を自分の身体にかざすのじゃ。ただ持っているだけだと敵の攻撃は防げないぞ。」
モア「クソっ、エイッ、エイッ、エーイッ!」
ジミー「そうそう、上手く動きながら盾を狙え!」
みんな少しずつ盾に魔法を当てながら、ジミーの動きを見て彼が出す魔法をよけたり盾で防いだりできるようになってきた。
ジミーもナオたちも激しく動いたせいで汗だくになっていた。
ツグミがストレージからタオルを出して他の女の子たちにも、ジミーにも渡すと、全員が汗を
ナオはコップと水の入った入れ物を出してみんなに渡した。
ジミー「よし、だんだん動きが良くなってきたな。
もっと魔法が強くなり、遠くでも近くでも正確に当てられるようになれば盾は必要なくなるだろう。
しかし、まだしばらくは盾で身を守りながら戦う方がよい。
本来ならば盾を使って相手の攻撃を避ける動きから学ぶべきだが、全てをする時間はない。
ナオ「分かりました…」
汗を拭って水を飲むと、また元気が戻ってきた。しかし、七月の日差しは
ジミー「では、次は防御魔法を見せてもらおうか。どれぐらい早く『バリア』で壁が作れるのかな?」
モア「それはこないだのクエストの時に結構練習したよ…」
ツグミ「もう、モアちゃん…」
ジミー「ふっふっふっ(笑)…では、その防御魔法を見せてもらおう。」
モアが自慢げな顔をするのでツグミが困った表情をするが、ジミーは笑っただけだった。
ナオたちが魔法の訓練をするところから少し離れた場所では、アイたちが一人々々カイと木剣を持って向き合っていた。
最初にアイが、その次にアカリが木剣でカイと立ち会ったが、さすがにジミーに認められるだけあって剣技の能力やスピードなども上がっているアイやアカリの攻撃でもカイはうまく
アカリ「ハアハア…」
アイ「カイさんはやっぱりスゴイですね…」
カイ「ありがとうございます、アイさまとアカリさまもなかなかの腕前でございます。
お二人はどこかで剣術を学ばれたことがございますか?」
アイ「はい、私たちの国の戦い方を少しだけ…でも、真剣を使っての実戦なんかは無かったです。」
カイ「やはりそうですか。お二方とも剣の
アカリ「まだこのタイプの剣の使い方も難しいです。」
カイ「なるほど…では、次はルカさまですね。」
3人の話を聞いていたルカは少し不安気な顔をする。
ルカ「あの~、私はアイやアカリみたいに剣の使い方とかよく分からなくて…」
カイ「ですが、武術の能力として『剣』の力はお持ちですね。」
ルカ「はい、それはアイやアカリと同じようにあります。」
カイ「では一度手合わせをしましょう。無理のないようにして下さい。」
ルカ「はい…」
ルカはカイと向かい合うと、最初はやや
しかし、カイがルカの剣を受けながら少しずつ攻めてくると、ルカも力を入れてカイへと向かっていく。
アイやアカリはどこか軽々と剣を振ってカイの受けの
その打ち込みはかなりの力のようでカイですら少し押し込まれるようなこともあるが、カイはルカの真っ正直な攻撃で出来る
自分の攻撃を
ルカ「あっ!」
アカリ「ルカ!」
アイ「大丈夫?」
アイとアカリが
するとルカが反射的にその剣を自分の剣で
カイ「ほう!」
ルカ「あっ、すいません…」
アイ「ルカ…」
カイはゆっくり首を振ると、
カイ「ルカさま、失礼いたしました。
ルカ「すいません、私は大丈夫です。ちょっと強めに当たっただけなんで…」
ルカが振り返るとアカリが彼女が跳ね飛ばしたカイの木剣を取ってきた。
カイ「申し訳ございません。」
アイ「なんか、すごく飛んでいったけど…」
ルカ「ごめんなさい…」
カイ「いえ、あれでよかったのです。あの時のように相手の剣を跳ね飛ばす方が実戦では正しいですから。
わたくしこそ少し油断しておりました。」
アカリ「なんか、ルカの剣の方が力があったみたい…」
アカリの言葉にカイは深くうなずく。
カイ「動きのスピードや反射神経の
私もルカさまの剣を受ける時にかなり
アカリ「やっぱり…」
カイ「実際の戦闘では皆様の
アイさまやアカリさまの場合、無理に力勝負をするのではなく相手の攻撃をかわしながら相手の
ルカさまはスピードよりも大きな剣を使ってパワーで一気に相手を倒すようになされればいいのではないでしょうか。」
アイ「午前中にもあんなおっきな
カイ「確かにそうでした。他に長剣などはストレージに入れられましたか?」
ルカ「そう言えば…」
ルカはそう言われて自分のストレージから刃渡り1m50㎝ぐらいの大きな剣を取り出す。
ルカ「こんな剣を使うんですか?」
カイ「はい、その剣を力一杯2度、3度相手に振り下ろし、一気に相手を
アカリ「なるほど…」
カイは倉庫から運んできた木剣の
カイ「では、それぞれの戦い方で私にもう一度向かってきて下さい。私でどれだけ相手になるかわかりませんが…」
アイとアカリとルカは交代でカイへ立ち向かうが、カイもなかなかの実力で簡単には打たれたりしない。
それでも少しずつカイの動きやパワー、スピードにアイたちも慣れてきて、カイをヒヤッとさせるような場面も増えていった。
カイ「ハアハア、少し休憩しましょう。」
ルカ「すいません…」
ルカはそう言うと、ナオと同じようにコップと水を取り出す。
アカリはタオルを出してみんなに渡し、ナオはカイにコップに入った水を差し出した。突然出てきたコップにカイは驚いて辺りを見渡す。
ルカ「ごめんなさい、私がストレージから出したので…」
カイ「そうですか、そういったものも入っているのですね…これはいったい…」
ルカ「これはただの水です。」
アイ「すいません…私たちも何か言えばよかったのに…」
ルカやアイが
カイ「ありがとうございます。そのように気になさらなくとも大丈夫です、ありがたくいただきます。」
ルカはアイやアカリにも水の入ったコップを渡す。
カイはアカリの渡したタオルも笑顔で受け取り、しばらく4人は水を飲み、汗を拭いて休憩した。
アカリ「でも、実際の魔獣はもっと速かったり、強かったりするよね…」
カイ「はい。魔獣でもオオカミや野犬、ヒョウなどのたぐいはどちらかと言えば速く、クマやイノシシ、トラのようにものは力があると言えますが、実際にはオオカミも十分にパワーがあり、クマもトラも見た目以上に速さもあります。
そういう意味では人と
ジミー「そうじゃ、魔獣は人とは比べ物にならぬからな…」
4人が振り返ると、ジミーがナオたちを従えてそばにやって来た。カイはコップを地面に置いて
ジミー「どうじゃ、お前たちも一度経験してみるか?」
ルカ「経験って…」
ジミー「
アイとアカリとルカは顔を見合わせるが、ジミーは笑顔のままカイから木剣を受け取る。アイもその様子を見て自分の木剣を手にした。
アカリ「もう魔法の方はいいんですか?」
ソラ「まあ、だいたいいろんなことは習ったから…」
ジミー「今は儂がお前たちの相手もする方がよかろう…」
アイとジミーはみんなから離れ、お互いに距離を取って向かい合った。
ジミー「アイ、儂を魔獣と思って全力で攻めてこい。手加減は無用じゃ。」
アイ「わかりました!」
それでもアイはしばらくジッとジミーの様子をうかがっていたが、「ヤッ!」と声を出すと一気にジミーに攻めかかった。
だがアイが素早く剣を振っても、ジミーはそれを軽々とよける。
やがてジミーが動きを止めると、アイは上段から剣を大きく振り下ろした。
全員があっと思った瞬間、振り下ろしたアイの木剣が高々と遠くへ
ソラ「あっ!」
ツグミ「アイちゃん!」
アカリやソラがアイのところへ急いでやって来る。
木剣を飛ばされたアイは身動きもできず、ジミーは笑って彼女に近づいた。
ジミー「どうじゃ?」
アイ「そう言えば「大斧のダン」と戦った時もこんなふうに攻撃をよけられて…」
ジミー「それで今日のように剣を落とされたのか?」
アイ「その時は私が足を取られて倒れてしまって…」
ジミー「そうか、よしよし…」
アイはソラが
ジミー「さあ、今度はお前が相手だ。お前も儂を魔獣と思うのだ。」
ルカ「わかりました…」
ルカはアイのことを見ていたのでなかなか動けなかったが、それでも意を決してジミーへと長剣を振り下ろす。
ルカは全力で大きな木剣でジミーを攻めるが、今度もジミーは軽々とその剣を受ける。
ルカ「えいっ‼」
ルカがジミーの動きを見て
しかし次の瞬間、ジミーは彼女の真後ろに回って彼女の首元に木剣を突きつけていた。
見ていたアイたちもあっけに取られるほどの身のこなしだった。
モア「えっ、なに?」
アカリ「わかんない…」
ソラ「どうなってんの…」
こちらも動けなくなったルカの肩をジミーは後ろからやさしく
ジミー「どうだった?」
ルカ「ジミーさんの動きが全く見えなくて…」
ジミー「そう、これが魔獣の動きじゃ…」
ルカはジミーに
そこにいる全員がジミーの動きに目を丸くしていた。
ジミー「オオカミや野犬の魔獣でも身体は大きくなくとも体当たりを
アイ「魔獣のオオカミと戦った時にタクミが突き出した
ジミー「そう、スピードだけに気を取られると思わぬほどのパワーを見せられる。
クマやトラは逆に身体が大きくともスピードも我らとは
モア「じゃあ、どうやって戦えば…」
モアの正直な言葉にジミーはニッとするとアイの方を見る。
ジミー「アイ、お前は今魔獣のオオカミと戦った時のことを言ったが、その時はどのように戦ったのだ?」
アイ「その時はナオやツグミが出す『バリラ』を
ジミーはアイの答えに大きくうなずく。
ジミー「そうじゃ、基本的には本物の盾や防御魔法で身を守りながら戦うのじゃ。そうすれば相手の予想外の攻撃を受けることも
ソラ「でも、そんなことばっかじゃないかも…」
ジミー「ソラ、そんな時はどうすればいい?」
ソラ「そんな時って、それは…」
モア「大急ぎで逃げる!」
ツグミ「逃げちゃダメだよ…」
ジミー「ふっふっふっ(笑)…そうじゃ、魔獣でも獣でも背中を見せるのが一番危険じゃ。」
ジミーは笑いながら全員の顔を見た。
ジミー「まずは魔獣と一対一にならないようにする。
できるだけ一対複数になるようにして、後退する時も自分たちの盾だけでなくその場に生えている木や大きな岩などで身を守りながら、
魔法を出したり弓矢や投げ槍などで攻撃したりするのも忘れず続けること。
戦う時も逃げる時も全員で助け合うことが大事じゃ。」
アイ「全員で助け合う…」
ジミー「そう。
物の分かった勇者パーティーは村の
名声などより命の方がよっぽど大切だからな。」
ナオ「全員の力で魔獣と戦えば危険も少なくなるってことですね。」
ジミー「
必ずまとまって戦うのじゃ。そうすれば強力な魔獣でも倒せる可能性が出てくるというものじゃ。」
ジミーの
*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、お気に入りや評価をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。