※この作品はR-18です。

ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~   作:イジー・ムラシロ

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31 天井裏の袋

 夜が明けた。

 しかし深夜のゴブリン撃退(げきたい)とその後始末(あとしまつ)があって、朝陽が上ってしばらく経っても誰ひとり起きようとしない。

 

 突然の魔獣(まじゅう)襲撃(しゅうげき)。たとえ簡単に(たお)せて、あっという間に逃げていきはしたが、実際に魔獣と格闘(かくとう)をしたということ。そして、血の(におい)いや(けもの)絶叫(ぜっきょう)

 

 自分たちに戦うための能力がついているのだからいつかは戦いがあると全員が思っていたが、実際に戦うとそれは肉体的にも精神的にも大変なものだと思い知る。

 誰もが毛布に(くる)まったまま、なかなか起き上がれなかった。

 

アイ「…ねぇ、アカリ…そろそろ起きる?…」

アカリ「…う~ん…ツグミ、いま何時?」

ツグミ「…もう8時を過ぎてるよ…」

ソラ「昨日までは明るくなったら起きてたから…」

ルカ「…でも…まだ身体が痛いよ…」

ソラ「…う~ん…分かる…なんかしんどいね……」

 

 アイもソラも何度か寝返りを打つが、毛布から出ようとはしない。

 アカリは一度頭から毛布を(かぶ)るが、また顔だけを出した。

 

アイ「…石投げて…木の棒を振り回しただけなんだけど……」

アカリ「魔法の方が疲れるの?……」

ツグミ「…うん…疲れてる……」

ナオ「…まあ、戦ってくれた人よりかどうかはわからないけど……それなりに疲れてはいるね……」

 

 ナオやルカも起きるような様子を見せないが、アユミは毛布をめくって寝転がったまま大きく伸びをする。

 

アユミ「…私、起きて食事の用意するよ…昨日は何もしてないし……」

アカリ「してないことはないよ…昼間はちゃんと食事のこととかもしてくれてたし…」

アユミ「…でも…戦いには参加できなかったし……」

 

アイ「全然……(あか)りで()らしてくれてて、ありがたかったよ。」

アユミ「そんな……そんなことないよ……」

ソラ「ねえ、モアはまだ寝てるよ……コラ、もう起きなよ……」

 

 みんなが(しゃべ)りながらも起き上がらない中、ツグミだけが起き上がり、座ったまま天井を見上げた。

 

ナオ「……ツグミ、どうしたの?」

ツグミ「……ううん……」

アイ「なに?また何かいるの⁈」

 

 アイは毛布から飛び上がるように起きて天井を見上げる。アカリやソラも飛び起きて全員に緊張が走った。

 

ツグミ「ゴメン!…そんなじゃないの…危険なものとかじゃないの……」

アユミ「…じゃあ、どうかしたの?…」

ツグミ「うん…あのー……この上に何かあるみたい…」

 

 ツグミはそう言うと天井の方を指差す。

 

アイ「この上って、天井裏のこと?」

ツグミ「うん、そう。何かがたくさんあるみたいなの……昨日までは何も感じなかったのに……」

アカリ「それも一応『索敵(さくてき)』に反応してるんだ。」

ツグミ「そう……」

 

 モアを(のぞ)く全員が起き上がって天井を見つめていると、その気配を感じてか、モアももぞもぞと起き出した。

 

モア「……ううん?おはよう……みんな、上見てどうしたの?」

アイ「毎度あんたには、カンが狂うよ……」

モア「うん?どうしたの?」

ルカ「ツグミちゃんがね、天井裏に何かあるんじゃないかって…」

モア「ええっ⁈ダメダメ!まだなんかいるの?ええっー!」

 

 モアは飛び起きると座ったまま毛布を()きしめ、こわごわ天井を見上げた。 アカリやルカがそんな様子にクスクス笑う。

 

アカリ「違うって(笑)…怖いのがいるって話じゃなくて…何か物があるんじゃないか、って…」

アイ「ハイハイ…騒がない騒がない…とにかく誰かが上がって調べないと…」

ソラ「上がるって…」

タクミ「あの~……だいたいは天井の(すみ)のどこかが上がれるように開いてるはずなんだけど……」

 

 タクミが今朝初めて喋ったので、女の子全員が彼の方を見る。

 タクミはさっきまでのように自然に会話が続くと思っていたので、みんなが自分に注目して少しあたふたした。

 

アイ「…でも、どうやって(さが)すの…」

タクミ「いや~、例えばあの机に乗って、とか…」

ナオ「ふ~ん…じゃあ、とにかくまず天井裏への入り口探しね……」

 

 アイとアカリが立ち上がると、2人でまだ座っているタクミの傍へ行ってその腕を引っ張った。

 

タクミ「えっ?」

アイ「えっ、じゃなくて、机に上って探すのはあんたでしょうが…」

タクミ「えっ、オレ?」

アカリ「ハイハイ…机は動かしてあげっから…」

タクミ「でも……」

アイ「ごちゃごちゃ言ってないで、すぐ起きなよ。」

 

 タクミはしぶしぶ立ち上がると机で(かこ)った、小屋の奥へ行く。

 ルカとソラが立ち上がって3人に加勢(かせい)する。

 ルカとソラが敷いてある絨毯(じゅうたん)をどけると、アイ、アカリ、タクミの3人で机を小屋の角へと動かす。

 

アイ「ハイ、じゃあタクミが(あが)って調べて…」

タクミ「……ハイ……」

 

 それほど背の高くないタクミが机に(のぼ)り、少しつま先立ちしながら手を伸ばして天井をまさぐる。

 と、角の天井板がガタと外れ、人ひとり入れるぐらいの口が開いた。

 

モア「やったー。」

タクミ「ちょうどここに入り口があったよ。」

アイ「よしよし、じゃあ、あんた、上って見てきてよ。」

タクミ「えっ、マジで?」

 

 タクミは目を丸くして女の子たちを見渡(みわた)すが、彼女たちの表情で誰の仕事なのか、全員一致してるのが伝わってくる。

 

ナオ「っていうか、今ここでそれができるのはタクミだけでしょ…」

モア「そうそう…タクミだけー…」

アカリ「ハイハイ…ここが頑張(がんば)りどころだね……」

タクミ「いや~、そう言われても……真っ暗だし…」

 

アユミ「えっ、灯りならあるよ…」

ルカ「いや、アユミちゃんがしなくても私も出せるから…」

タクミ「そういう意味じゃなくて……」

ソラ「(笑)…ハイ、もうあんたがするしかないの…文句言わない、言わない……」

アイ「ほら!さっさとしなよ!」

 

 初体験の時の、あの可愛い姿はどこにいったのか。

 アイはすっかり学校の時の感じに戻ってしまっていて、タクミは彼女に言い返すこともできず、ルカが出した灯りを手にした。

 だが、背の低いタクミでは天井の入り口に届かない。

 

タクミ「…あの~、オレ、届かないっす……」

アイ「も~、世話の焼けるやつだねー…」

アカリ「ほら、手を貸すから…」

 

 アイとアカリも机に乗って2人がタクミを(かか)え上げるようにして、タクミはやっと入り口に届く。

 

タクミ「うわ~!ここ、蜘蛛(くも)の巣だらけだー!」

アカリ「ハイ、そんなの分かってるよ…」

アイ「ほら、押すからしっかり上りなよ!」

 

 2人に無理矢理押し込まれるようにタクミは天井裏に(のぼ)らされる。

 

タクミ「うわ~!」

アカリ「どうしたの?何があるの?」

 

 タクミの絶叫を聞いて、アカリが思わず聞き返した。

 

タクミ「スゲー、部屋いっぱいに何かある!なんか、デッカイ布の袋で部屋がいっぱいだ!」

アイ「じゃあ、それを持って降りてきて。」

タクミ「持っていくって、どうすんの?」

アイ「なに言ってんの。ストレージに入れてきたらいいでしょ。便利なもん、(もら)ってんだから…」

タクミ「分かった…でもこれ、スゲー多いよ…」

アカリ「いくらでも入るでしょ。」

 

 女の子たちが天井を見つめていると、天井裏でゴソゴソ動く音が響く。

 

タクミ「うわ~!」

アイ「何度もどうした?」

タクミ「ここ、マジで蜘蛛の巣だらけだぁ~。顔まで蜘蛛の巣でいっぱいだよぉ~。」

ソラ「情けない声出すなよ……ほらほらガンバレー…」

 

 タクミの言う袋はかなりの数あるのか、ゴソゴソいうタクミの足音だけがずっと響いて本人はなかなか降りてこない。

 みんながじっと待っていると、やっとタクミの声がした。

 

タクミ「降りるから、身体、支えて…」

アイ「オーケー。」

アカリ「ハイ、入り口のところにいるから。」

 

 タクミが脚をそろそろと下してくると、ズボン全体が蜘蛛の巣まみれで真っ白になっている。

 

アカリ「キャー、これはひどい。」

アイ「うわ~、どこも持てないしー。」

 

 すぐに支えてもらえると思っていたタクミは支えがないので足をバタバタさせる。

 

タクミ「うわ~!落ちるよー。」

アイ「ハイ、持ったから…」

アカリ「うわ、こっちまで蜘蛛の巣、くっつきそうだよ……」

 

 何とか2人に支えられてタクミが降りてくる。その姿は頭の先から足元まで、全身に蜘蛛の巣が(まと)わりついていた。

 

ルカ「わー、たいへん……」

アユミ「ちょっとひどいよ……」

ソラ「(爆笑)…タクミ、そりゃすごいよ!」

モア「キャー、キャハハハハハ、ウケるー!(笑)…」

タクミ「う~、誰か紙をちょうだい……顔全体に蜘蛛の巣が…」

 

 タクミはもう目も開けてられないようで、灯りを手にしたまま身動きできない。

 

ルカ「ハイ、アカリちゃん、これ、渡してあげて……」

アカリ「タクミ、顔、()いてあげっから…」

 

アカリがタクミの顔を(ぬぐ)って、タクミはやっと目を開いた。

 

タクミ「ひでえ……全身、どろどろだよ……」

アイ「(笑)…ハイ、ごくろうさま…とにかく荷物出して、それから頭、洗ってもらおう…」

ソラ「ハイハイ…お疲れ…私が念入(ねんい)りに洗ってやっから…」

 

 机から降りた蜘蛛の巣まみれのタクミを先頭に、全員が小屋の外へぞろぞろ出ていく。

 

アイ「とりあえずこの広いとこに、まずあった荷物を出して…」

 

 タクミは言われた通り、小屋の前の広場に荷物を出していく。

 タクミが言ったようにかなり大きな袋から長い袋まで大小たくさんの布袋があり、小屋の前だけでは足りずに川原の前にまで並べないといけないほどだ。

 

ナオ「…こんないっぱい…何だろね……」

 

 ナオの言葉を聞いて、アユミが思い出したように本を取り出す。

 

アユミ「なんか、色々書いてるみたい…」

アイ「じゃあ、一つ一つ、開けて確認しないとダメね……」

 

 その瞬間、グゥーと誰かのお腹の鳴る音が響いた。

 

ソラ「…ゴメンゴメン…お腹、鳴っちゃった(笑)。」

ルカ「そういったら、今朝、朝ごはんまだだね(笑)…」

アイ「(笑)…とりあえずタクミの頭を洗ったら、朝ごはんにしよう。」

 

 みんなは蜘蛛の巣まみれのタクミを川岸にまで連れていき、そこでタクミの頭を洗ってやろうとする。

 

ソラ「ハイ、とりあえずワイシャツとシャツとズボンは脱いじまいな。」

タクミ「えっ、裸になるの?…」

ソラ「服着て頭は洗えないでしょ…」

タクミ「服、どうしよう……これも洗わないと…」

アユミ「じゃあ、後で私が洗っとくから…」

 

 アユミはそう言いながらタクミの服を(あず)かる。

 

タクミ「オレ、パンツ一枚でいるの?」

アカリ「っていうか、あんた最近、基本裸でしょ…気にしなくていいんじゃない(笑)…」

タクミ「パンイチはちょっと……」

アユミ「ゴメンね…すぐに洗うから…」

ソラ「ほら、とにかくこっちへ来な。」

 

 タクミを川べりへ引っ張ってくるとアユミがタクミの頭に『洗浄(せんじょう)』をかけた。すると素早くソラが水を出してやる。

 

ソラ「ほら、頭ゴシゴシするくらい、自分でできるしょ…」

タクミ「ううう…冷たい……」

ナオ「…まあ、明るくなったけど、まだ朝だもんね……」

アカリ「学校だと1限目ぐらい……」

ナオ「…そんなもんじゃないの……」

ツグミ「タクミ君、見えないところは洗ってあげるから…」

タクミ「ああ、ゴメン…ありがとう…」

ソラ「前の方も、顔もちゃんと洗いなよ。」

ルカ「タオル、ここにあるから…」

 

 ツグミやルカが手伝って何とか頭を洗い終わると、頭や顔を()きながら歩くタクミと一緒に全員で小屋に戻る。

 

タクミ「…ううう……寒い……」

ツグミ「ハイ、毛布あるよ。」

タクミ「ありがとう…」

ソラ「頭、しっかりと拭いた?もうちょっとちゃんと拭かないとダメだよ…」

ルカ「ハイ、ちょっと止まって、頭、拭くから…」

 

タクミ「うううう…」

ソラ「ちょっとだけ我慢しなよ、ジタバタしないでさ…」

ルカ「ハイ、こんな感じじゃない?」

ツグミ「うん、これぐらい拭いたらいいと思う…」

アイ「ほら、急いで!ご飯にしようよ…」

全員「ハーイ!」

 

 

 ルカやナオがパンや飲み物を出して、いつもより遅い朝食を取る。

 女の子たちが丸くなって座るなか、タクミは結局パンイチに毛布を(かぶ)っての食事になった。

 

ソラ「私、クロワッサンね…2個ちょうだい…飲み物はオレンジジュースでいいよ。」

ナオ「モアは何にする?」

モア「私もクロワッサン、2個!」

ルカ「コーヒーも紅茶もあるよ。」

モア「コーヒー!」

 

アカリ「私もコーヒー、ちょうだい。パンはバターロールで。」

アイ「私もバターロールでお願い。それと牛乳あるかな?」

ルカ「大丈夫…牛乳もあるよ。」

アイ「じゃあ、それで。」

 

 それぞれがワイワイ言いながら思い思いのパンと飲み物を選ぶ。

 

ツグミ「タクミ君は何がいい?」

タクミ「オレはバターロールで。飲み物は紅茶を…」

ツグミ「分かった。私も紅茶をお願い。それと私のパンはブールで。」

ソラ「なんか、パンと飲み物の種類が増えただけで、豪勢(ごうせい)な食事になった気がする(笑)。」

アカリ「家にいた時は贅沢(ぜいたく)ばっか言ってたけど…」

アユミ「ホントはハムとかソーセージとかも出るんだけど……道具が何もないから…ゴメンね…」

 

ソラ「そんな意味で言ったんじゃないよ…アユミ、気にしないでね…」

アカリ「ルカ、パン、もう一個ちょうだい。今朝はなんかお腹が空いてて…」

アイ「昨日、ゴブリンを()(ぱら)ってから何も食べてなかったもんね…」

モア「そうそう…」

ルカ「後でまたパンも出しとくから、いくらでも食べてね…」

ソラ「私、今度はバターロールをいただきっ!」

全員「(笑)」

 

 それぞれがお腹を()たすと、みんなで小屋の前に広げた袋の中身を確かめることにした。

 

 

 

 

 

 




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