ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
小屋を出発して三日目。
女の子はタオルを頭に巻くのをやめて、それぞれに自分の髪型を整えるようになった。
ショートのアイやアユミ、ソラはそのままで、ミディアムのナオやルカやツグミ、ロングのアカリやモアはゴムや髪留めでお互いに髪がバラバラにならないようにセットする。
モアは以前のようなポニーテールだが、アカリはアイに長い髪をまとめてお団子にしてもらった。
みんなはこの先どこへ向かうのかを相談の上、とにかく人家を探しながら川沿いに進むことにする。
草原では
最初のうちこそ辺りを気にしていたが、虫や鳥が飛び出してきたりヘビを
みんなは次第にしりとりをしたり歌を歌ったりしながら歩くようになり、その日はそのまま昼も過ぎ、早めにテントを張ることにした。
昨日、一昨日は疲れて夕食も簡単に済ましたが、今日はタクミが大きな
飲み物も温め、アユミとルカが久しぶりにハムを焼き、ナオがパンと野菜を出した。
ソラ「肉が焼ける
アカリ「今日はお腹が鳴りそう…」
すると誰かのお腹が「グゥー」と鳴る。
アカリ「えっ?私じゃないよ…」
アイ「ゴメン…私(笑)…」
全員「(笑)」
あまりのタイミングの良さに全員が笑った。
みんなが焚き火を囲んで座ると、アユミは焼けたハムをどんどんお皿に乗せていく。
アユミ「ハイ、ハムをどんどん回していってね…」
ナオ「野菜もあるし、飲み物も温かいよ…」
ルカ「パンもあるし…」
ツグミ「コーヒーと牛乳とお砂糖を下さい…」
ソラ「次、私ね…」
モア「私も!」
アカリ「ハム、ない人は?」
タクミ「あっ、オレ、ちょうだい…」
アイ「はい、どうぞ…」
モアはまた誰よりも早くサンドウィッチを作ると、いただきますも言わずそれにかぶりついた。
モア「あ~、美味しいー…」
アカリ「またこの子は先に食べてるー…」
ナオ「いいよ…みんな、どんどん食べてね…」
ソラ「じゃあ、お先に…いただきま~す。」
ナオに言われてみんな次々にサンドウィッチを口に運ぶ。
アイ「トマト、こっちにちょうだい…」
ルカ「これ、どうぞ…」
ツグミ「いただきます…」
タクミ「いただきま~す…」
ソラ「美味しいー、感動ぉ~…」
アイ「大げさー(笑)…」
久々の肉と温かい飲み物に誰もがホッとした。
ソラ「ハムと野菜があるだけで生き返った気がするよ…」
アカリ「昨日、一昨日は食欲も出なかったからね…」
ナオ「でも、なかなか人家や村みたいなのに着かないね…」
アイ「どんだけ離れてるんだろう…」
ツグミ「まだ『地図』にも何も見えてこないよ…」
タクミ「ずっと川と草原なんだけど…」
ルカ「私たち、すごいところに居たんだね…」
アユミ「確かに…」
夕食を終えると、飲み物を飲みながら明日からのことを話し合う。
アイ「とにかく、このまま川
ナオ「誰かに会わないとここがどんな世界かも何も分からないからね…」
モア「ねえ、出会うのはいいけど、私たちとおんなじような人間なのかな?…」
ソラ「なに?アニメに出てくるみたいな宇宙人だと思うの?それともタコみたいなヤツ?(笑)…」
モア「変なのに会ったらイヤじゃん…」
モアは真剣に変わったものが出てくるかもしれないと心配しているようだ。
その様子を見てツグミやルカも顔を見合わせる。
アイやアカリも腕組みをしているが、ソラだけがケラケラ笑った。
アカリ「う~ん…」
アユミ「でも、あんなゴブリンみたいなのがいるから、宇宙人みたいな可能性もあるかも…」
ナオ「それだとこの衣服の説明がつかないと思うけど…」
ソラ「こんな、ちょっと古風な服着た宇宙人って、ウケる(笑)…」
アカリ「会ってみたい気もする…」
ツグミ「え~、怖いよ…」
アカリ「え~、ウケるじゃん(笑)。」
アイ「ウケるところじゃないよ…」
ナオ「まあ、
タクミ「そうじゃないかな~…」
アイ「とにかく、そういう人間を探そう…」
アユミ「了解しました(笑)。」
温かい食事に軽口も出るような会話のおかげで出発当初の不安や疲労から解放され、全員がリラックスしてその晩は眠りについた。
翌日。アイたちはいつも通り早朝に出発して、少しでも早く人に会おうと先を急いだ。
この世界も元いた世界と同じように季節は春。
草原を歩いていると一面に赤や黄色、紫色の花が咲き
アユミ「きれいね…」
ナオ「ホント、見たことないよ…こんな景色…」
モア「花畑とかじゃないんだよね…」
アカリ「そうだよ!メッチャきれい…」
アイ「ちょっとホッとする…」
ルカ「ねぇ、ちょっと振り返ってみて!」
ルカの声に全員が振り返ると、そこには自分たちがやって来た山が見えた。
草原の向こうに
高い山々の上の方にはまだ白い雪が残っていた。
ツグミ「…すごいとこなんだね…ここって…」
ソラ「あんな山の中に置き去りにされてたの、私たち…」
アユミ「人間なんて…居そうもないね…」
アイ「なんか…言葉がないよ…」
今まで感じたこともない自然の風景にみんな圧倒されながら、また歩き出す。
再び歩き続けて陽が頭上に輝くようになった頃、ツグミとモアが急に立ち止まって顔を見合わせた。
ルカ「ん?ツグミちゃん、どうしたの?」
ツグミ「あの~、前の方から何かが近づいてくるの…」
アイ「こないだのゴブリンみたいなの?…」
ツグミとモアはいっしょにうなずく。ナオも同じことを感じているようだ。
ナオ「こないだと同じで、何が近づいてるのかは分からないけど…」
アカリ「数は?ゴブリンみたいにたくさんいる?」
モア「ううん…そんなにはいないみたい…10匹か、もう少し多いぐらい…」
アユミ「どうしよう…」
ツグミ「だんだん、近づいてきてる…」
アイはアカリやナオに目で合図をすると、すぐに全員に指示を出す。
アイ「じゃあ、戦闘の準備だ…みんな武器とか
ソラ「オーケー。」
アカリ「タクミはアユミのそばから離れないでね。」
タクミ「了解。」
みんなが闘う準備をしているうちにツグミたちが見つけた獣の姿が肉眼でも見えてくる。
アイ「あれがそうみたい…」
アカリ「オオカミか野犬みたいね…」
やがてその姿は草の
灰色の毛皮を
初めて
ゴブリンの時と違って目の前にいるものが如何なるものなのか、誰もが分かっていた。恐怖で手足ががくがくと震える。
オオカミの群れは
その視線の強さにツグミやモアは少し後ずさりしてしまう。
間合いが縮まる時間が誰にも永遠のように感じられた。
ウォ~ン!
その鳴き声を合図に、何匹かのオオカミが一気にアイたちに向かってきた。
アイ「石を投げて、魔法を出して‼」
前列に並んだメンバーはオオカミ目掛けて石を投げ、後ろからは火の玉が次々と飛んだ。
石や火の玉のいくつかはオオカミに当たったが、それを避けて向かってくるものがいる。
アイとアカリが
ナオ「まだ向こうにいるよ!魔法を続けないと!」
ナオやツグミ、モアやソラがまだこちらにこないオオカミたちにも火の玉を投げつける。
ルカも向かってくるオオカミに
アイもアカリも最初に自分たちに向かってきたオオカミは槍を一突きするだけで倒すことができた。
だが、その後からやって来たものは最初のオオカミより大きく、動きも激しく、簡単には槍で倒すことはできない。
アイもアカリも強烈なオオカミの攻撃に必死で応戦する。
ツグミ、ナオ、モアも魔法を繰り出すが、辺りの草を燃やすだけでなかなかオオカミに当たらない。
それでもオオカミたちも燃え広がった火を恐れ、近づいてこられない。
時間が経つに連れ、次第に武器で闘う者と魔法を使う者がバラバラになってきた。
アイとアカリがオオカミと闘うために前に出過ぎて、ナオたちが取り残されてしまっている。
タクミが大声を出した。
タクミ「ダメだ!離れすぎてる。もっと仲間どうし近寄って戦わないと!」
その声を聞いて魔法ではなく、槍で闘っていたソラがタクミとアユミのそばに戻ってくる。
アイとアカリも自分たちが相手にしていたオオカミを倒したところで、一旦戻ろうと後ずさりした。
アユミ「危ない‼」
突然、自分たちの横からまだ身体の小さいオオカミが飛び出してきて、前に気を取られていたソラの右腕に
「あっ‼」
全員の視線がソラに
「ダァー‼」
ソラのすぐそばにいたタクミは、手にした剣をソラに咬みついているオオカミに振り下ろした。
オオカミはあっという間に首と胴が別々になる。
それを見たアイはすぐにソラのところへ走り出し、タクミのそばにいたアユミも
アカリ「まだ別のオオカミがいるよ!」
ツグミはそばにいるナオとモアの目を見る。
ツグミ「いっしょにいくよ!『ファイラ』‼」
するとツグミとモアとナオが
辺り一面の乾いた草が一瞬で炎に包まれ、黒い煙が周辺を
この時偶然だが、ツグミやアイたちは風上にいてオオカミの群れは風下にいた。
そのために炎や煙はオオカミたちにだけ向かう形になり、オオカミの群れは炎と煙に
黒い煙の向こうからオオカミたちが
アイがソラに駆け寄ると、その腕にはまだオオカミの咬みついた頭が残っている。
アイがすぐにオオカミの口を開けてソラの腕から離す。
するとソラの腕から血がプシューと吹き上がった。アイとタクミは一瞬、血を避けようと身体をのけ
だがアユミは吹き出る血を避けず、すぐに彼女の腕にストレージから出したタオルを
タオルはあっという間に真っ赤になり、タオルとソラの腕から血が
ソラの白い顔から血の気がなくなっていく。アイは彼女の身体をずっと支えていた。
いつの間にかみんながソラのところへやって来た。心配そうに
タクミもソラを襲ったオオカミが突っ込んできた方向に目を光らせる。
やがてアユミの
アユミがソラの腕にかけたタオルを取ると、ソラの腕に赤い傷跡が点々と見える。
アユミは真っ赤になったタオルをその場に捨てて、再び別のタオルをソラの腕に被せると今度は『ケアラ』をかけた。
だが、今度はアユミの顔色が変わってくる。
その様子に気づいたモアが今度はアユミに代わる。モアがソラに『ヒーラー』をかけているそばで、フラフラするアユミの肩をナオが
モアが『ヒーラー』をかけていると、ぐったりしていたソラの顔にだんだんと血の気が戻ってきた。
そんなソラの顔色を見てアイがアユミやナオに眼で大丈夫かを確かめる。ナオがうなずいた。
アイ「ソラ…どう、動けそう?」
ソラは申し訳なさそうに弱々しくうなずいた。
ナオは真新しいタオルを何枚か出すと一枚を怪我の部分に当てて、その上から別のタオルを包帯のように巻きつけた。
ナオがタオルを巻いたのを見て、アイはすぐにソラの前に背中を出してしゃがむ。
その姿を見てナオやタクミが手を貸してソラをアイの背中に乗せる。
ルカはまだフラフラしているアユミを同じように背負った。
アイ「走ろう!急いで!」
アイはソラを背負ったまま、元来た道を戻るように走り出した。
アユミを背負ったルカがその後に続き、他のメンバーもその後を追いかけて全力で走り出す。
アカリはソラの槍を
草を焼く炎の向こうからはまだオオカミたちの鳴き声がする。
真っ黒な煙がたなびく草原を後にして、全員がただひたすらに走った。
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