ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
朝。
タクミはまどろみから目覚めて薄目を開けた。
まだ両手には昨日
昨日のことが夢なのか現実なのか、寝ぼけている頭には分からない。
タクミが重たい身体を動かそうとした、その時……。
「タクミ、いつまで寝てんの!もうとっくに夜が明けてるよ!」
タクミが
アイ「ほら、さっさと起きなよ!食事もあるし、テントもしまわないといけないし…」
タクミが起き上がると、女の子たちはみなとっくに起きて出発の準備を始めていた。タクミも急いで毛布をしまう。
タクミは朝食の用意をしながら、パンと飲み物を回している女の子のたちの横顔をそれとなく盗み見る。
と、そんな彼女と偶然視線が合う。
ソラ「おはよう…どうしたの?私の顔になんか付いてる?…」
タクミはごまかすために勢いよく頭を振る。
タクミ「ううん…ソラさんがもう大丈夫なのかな~、って思ったから…」
ソラはタクミの言葉を聞いて
ソラ「ありがとう…もうすっかり元気だし、ほら、
ソラがそう言いながらオオカミに咬まれた右腕をぐるんぐるん回すと、その腕がコップにぶつかりそうになって、ナオが慌ててコップを動かした。
ナオ「よかったよ…もう完全に元気だね…」
ソラ「ゴメンね…でもおかげで寝過ぎで、ちょっと腰が痛い…」
アカリ「でも出発してから結構大変だったから、いい休みになった気がする…」
アイ「じゃあ、ソラだけじゃなくてみんな元気いっぱいだよね…」
モア「元気、ありありだよー…」
女の子たちの会話からは、昨日一日中SEXしたような雰囲気はどこにもない。あのSEXのことはやっぱり夢だったのだろうか。
タクミだけがモヤモヤしている中、全員が食事を終えるとテントをしまっていよいよ2日ぶりに出発する。
アイ「こないだのことがあって、まだオオカミがいるかもしれないから、辺りの様子を確かめながら進もう。」
ナオ「了解…」
ツグミ「…『
モア「こないだみたいに見つけちゃったらどうするの?」
アイ「その時は全力で逃げる。」
ソラ「またバックするの?」
アカリ「それより、川に直角に逃げてもいいんじゃないかな…」
アユミ「これ以上、先に進めないのもねー…」
アイ「とにかく、先に進むのも大事だけど自分たちのことを守るのが最優先ね。」
全員「分かった。」
天気はすっかり良くなったが、誰も前のように歌を歌ったりふざけ合ったりしない。
皆、オオカミの群れが現れないか、辺りに気を配りながら進む。
2、3時間ほど進むと、オオカミの群れと
ツグミたちの魔法で辺りの草は焼けてしまって一面黒く
アイやアカリが倒したオオカミの死骸がそのまま転がっていて、名前の分からない鳥たちがその死骸に
全員が何も言わずにそこを通り過ぎた。青い顔をしているソラに気づき、アカリとアユミがソラの腕を持ってその身体支える。
草の焼けた辺りから遠く離れて、始めてみんなホッと息をついた。
ツグミとモアとナオが何度もうなずいて辺りに何もいないことを知らせる。
ナオ「ちょっと休憩してもいいんじゃない…」
ナオの言葉で全員が腰を下ろして水を一杯ずつ飲んで気持ちを落ち着けると、再び先を目指す。
まるでこの間のオオカミの群れや降り続いた雨ことなどどこのことだ、というぐらい
雨の日は寒かったほどだが、今日は逆に陽が差して暑いくらいだ。みんな毛のチョッキを脱ぎ、シャツの袖をたくし上げる。
途中で昼食も済まし、一行はほとんど話もせずに前に進んだ。だが、家や村の影すら見えてこない。
結局この日もまだ陽が高いうちに進むのを止め、テントを張ることにした。
テントも張り終わってみんなが集まってくると、ルカとナオがミルクティーを作ってみんなに
ナオ「…一体どこまで行けばいいんだろう…」
アユミ「ホントに誰にも会わないねー…」
アイ「何日ぐらい経ったんだろうね…」
何人かが実際に指を折って数える。
ナオ「歩いたのは今日で5日になるけど…」
ツグミ「オオカミから逃げるのにだいぶ後戻りしたから…」
アカリ「実質的に進んだのは4日分とちょっとぐらいかもしんない。」
ソラ「う~ん…」
アイ「それが多いのか少ないのかが、分からないんだけど…」
アユミ「そろそろ人に会いたいね…」
ルカ「確かに…」
アカリやルカやモアは、何も見えないと分かっていても立ち上がって草原をぐるっと見渡した。
ソラ「何も見えてこないからね…」
タクミ「全然誰も居そうにないよ…」
アイ「『地図』にも何も出てこないの?」
ツグミ「うん…モアは何か見える?」
モア「私の『地図』でもな~んも見えない…ずっと草原だよ…」
アカリ「仕方ないよ…何かが出てくるまで、とにかく川を下ろう…」
タクミが大きめの焚き火を組むと、アユミが夕食にスクランブルエッグを作った。
野菜にはレタスが加わっている。
モア「タマゴ~‼」
アカリ「卵、好きなんだ…」
モア「だ~い好き!」
モアが満面の笑みを見せるので、みんなもつられて笑顔になる。
ナオ「パンと飲み物も行きわたってる?」
タクミ「こっちに紅茶と牛乳を下さい…」
ツグミ「はい…パンもある?」
タクミ「ありがとう…パンももう一つ、ちょうだい…」
ツグミ「はい(笑)…」
アイ「メニューが増えて、うれしいねー…」
ソラ「ありがたいよ…」
アイとソラが心の底からうれしそうに言うのを聞いて、アユミは少し申し訳なさそうにする。
アユミ「焚き火がないとダメだから…」
アカリ「できる時だけでいいよ…それだけで十分
アカリがアユミに言うと、タクミやツグミも何度もうなずいた。ルカはアユミの焼いたスクランブルエッグをお皿に入れて回していく。
ルカ「最近、みんな食欲がちょっと無かったから…」
ソラ「ゴメンね…心配かけちゃって…」
モア「このタマゴ、最高に美味しい~!」
全員「(笑)」
モアがいただきますも言わずにスクランブルエッグを口にしたのを、みんな半ば
アイ「でもこのスクランブルエッグ、ホントにうまいよ…」
タクミ「確かに…フワフワしてるし、甘いし…」
ルカ「ちょっとマヨネーズ入れて、フワフワにしてるから…」
アユミ「卵、まだあるから、いっぱい食べてね…」
全員「ハーイ」
久しぶりに違ったものを食べて、全員が満腹になってその夜は眠りについた。
次の日も朝から快晴。
いつも通り、夜明けと共に準備をして出発する。
誰も口に出さないが、本当にそろそろ人家を見つけるか人に出会いたい、そういうじりじりとしたものがみんなの間に
だんだんと陽も高くなってきた頃、ツグミとモアがまた足を止めた。他のみんなもすぐにストップする。
ツグミ「…この先に何かいるみたい…」
モア「何かおっきい生き物と…それと…」
ツグミ「それよりも小さな生き物…でも、おっきいのと小さいのは別の生き物かもしれない…」
アイ「こっちへ向かってくる?」
ツグミ「…ううん…こっちへは向かってきてない…」
ソラ「どうしよう…」
ルカ「逃げる?…」
みんなが
アカリ「ちょっと静かに…」
アイもアカリと一緒に耳をそばだてる。
他のみんなには風で草が
アイ「…人の声かもしれない…」
ナオ「ホントに?」
アカリ「ちょっと急ぎ足で、このまま進もう。」
アイ「みんな、武器を出して、注意して。」
全員が武器や
アイ「確かに人の声…」
アカリ「それもやめて、って…」
2人がツグミの顔を見ると、彼女が杖で真っ直ぐ先を指す。
ツグミ「このまま真っ直ぐ行くと、何かいる。」
その時、もう一度音が響く。明らかに人の声だ。アイとアカリはすぐに走り出した。
アイ「みんなはツグミに従ってきて!」
ナオ「気をつけて!無理しちゃダメだよ!」
他のみんなも2人を追って走り出す。草を
そこでは巨大なクマが人を襲っていた。
クマは前足を伸ばして、倒れ込んでいる人物にもう一度攻撃をしようとしている。
アイは走りながら、ストレージから出した
クマは目の前の人間に気を取られていたのだろう。2人の手槍は両方とも見事にクマの首元に突き刺さった。
モア「やったー!」
アユミ「アイ!」
アイとアカリはクマに槍が刺さったのを見て、倒れている人の元に行こうとする。
ナオ「ダメ‼気をつけて‼」
クマは倒れそうになったが、何とか
全身が銀色のような灰色で、眼は釣り上がり、体長は3mを優に超えていそうだ。
全員がそのあまりの勢いに息を
アユミ「ダメー、2人とも逃げてー!」
ツグミ「みんな、こっちへ来て‼」
ツグミが走ってアイとアカリに近づきながら、ナオとモアとソラを呼ぶ。
ツグミ「急いで!クマの顔めがけて、いくよ『ファイラ』‼」
集まったツグミたちの杖や槍の先から飛び出した炎の帯が、アイとアカリの近くまで来ていたクマの顔面に当たった。
バチバチという音とともに毛と肉が焼ける
グワッー、ゴワッー!
クマは顔を押さえて絶叫した。
顔は焼け、目も見えなくなったようだが、手探りでアイたちを捕まえようと両前足を交互に振り回す。
ツグミ「次は『サンダラ』!」
ツグミたちの杖と槍から今度は
雷電が当たるとクマは全身を
アユミ「タクミ君!」
アユミはタクミを呼ぶとクマが動けなくなった
アユミとタクミが近づくと倒れているのは20代か30代のまだ若い男性で、そのそばに姉妹らしき女の子が2人、座っている。
年上の方は10歳か11歳ぐらい。年下の方は姉よりも2つか3つ幼く見える。
2人とも
クマへの恐怖のためだろう、少女たちは真っ青な顔をしたままジッと身を寄せ合って動かない。
男性はがっちりとした身体をしていて、少女たちと同じような麻織物の上着とズボンを身につけていた。
倒れているその横には弓と剣が転がっていて、その向こうには矢が散らばっている。
どうやら狩りの途中で襲われたようだ。怪我が
アユミとタクミはすぐに男性のそばに行こうとする。
だが、女の子たちはアユミとタクミを見るとまるでクマが戻ってきたかのように驚き、姉の方は手にした弓に矢をつがえ、
アユミとタクミは驚いて顔を見合わせる。
しかし、男性を見るとどうやら足元には血だまりが出来ているようだ。アユミはしゃがんで少女たちに言う。
アユミ「私たち、
アユミの
アユミは少女の様子を見て、急いで男のそばに行く。
恐らくクマにやられたのだろう、左側の太ももが服ごと大きく
足元には血がかなり
アユミ「動かないで下さい。今から魔法で治療しますから…」
アユミは男性にそう声をかけると、動揺することなくストレージからタオルを出し、ソラの時と同じように怪我の部分にタオルを掛けてからそこに『ヒーラー』をかける。だが、ソラよりもずっと
タクミは立ったままアイたちが
ツグミやモアたちの『サンダラ』を受けたクマは尻をつけて座るような
2度大きな魔法を使ったツグミたちは疲れて次の魔法を出せない。
アイとアカリとルカはツグミたちの前に立って彼女たちをクマから守るような
アイたちもクマも動けない。クマの首の右側にはアイとアカリが投げた槍が突き刺さったままぶらぶらと
やがてアイが意を決し、アカリとルカから離れてクマの左側に回った。
クマはずっと激しい息づかいだが、アイの気配を感じるのか、
アイはクマから十分に距離を取ると今度はクマの左側を
ガァー‼
クマは絶叫して頭を左右に大きく振る。だが急所には当たっていないのか、まだ身体を動かしている。
今度はルカもクマの左側へ回って勢いよく手槍を投げ込む。またもクマの首に命中するが、クマはゼイゼイと激しい息を続けた。
ソラ「クソぉー…」
アカリ「なんてヤツ…」
クマのあまりのタフさにその場にいる全員が驚くが、もう自分たちも
アイ「みんなはここにいて、動かないで…」
ツグミ「…アイちゃん…」
アイは剣を手に走り出してクマのそばまで行くと、クマを左から右へと横切るような形でジャンプしてそのまま剣を振った。
アイ「エーイッ‼」
グワッー!
アイの
クマはアイを捕まえようとするかのごとく両前足を突き出していたが、アイは間一髪のところで逃れた。
クマは前のめりに倒れて、今度こそ動かなくなった。
アカリ「アイ!」
ソラ「アイ!」
ツグミ「アイちゃん!」
アイはクマの返り血を
みんながすぐそのそばに走り寄る。
ソラ「大丈夫?」
ナオ「今、『ヒール』をかけるからね…」
ナオの言葉を聞いてモアがすぐにアイに『ヒール』をかけた。
アイは大きな息をついて話しもできない。だが、『ヒール』が効いてくると顔を上げた。
アイ「…みんな…大丈夫……誰も…怪我…してない…」
アカリ「大丈夫、みんな無事だから…」
アイ「…よかった……なかなか…死ななかったから……」
みんな、お互いが無事なのを確かめてホッとする。そこにアユミのそばにいたタクミが走ってくる。
タクミ「クマに刺さってる槍、すぐに抜かないと抜けなくなるよ。死後
アカリとルカがうなずいてすぐにクマのところへ行き、手槍を引っ張り抜く。ソラもそこに加わった。
ナオ「…あの人はどう?」
タクミ「男の人はアユミさんが『ヒーラー』をしているけど、かなりの
ナオ「そんな何人もいたんだ…」
タクミの話を聞いてナオとモアがアユミの方へ向かう。
アイも行こうとするが、ツグミが押しとどめて血だらけの顔や身体を
アイ「タクミ、あの化け物熊、ストレージに入れといて…」
タクミ「ああ…分かった…」
アカリ「ねぇ、ちょっとこっちへ来て!」
アカリの呼び声にアイ、タクミ、ツグミがそこまで行くと、そこには両手の
アカリ「これって、魔石でしょ?」
アイ「ということは…このクマは
ルカ「だからあんなしぶとかったんだ…」
タクミ「
ソラ「そう、私たち凄いでしょう(笑)…」
タクミが魔獣熊の死骸をストレージにしまっている間に、ツグミがストレージからタオルを出して青い魔石の上にかけ、その上から何かの魔法をかけた。
ツグミはかなり慎重にしっかりと魔法をかける。魔法がちゃんとかかったのを確認してから、ツグミは魔石を手に取った。
アイ「大丈夫?…」
ツグミ「たぶん、もう大丈夫だと思う…アユミちゃんが前に、大きな魔石にはちゃんと魔法防御の魔法をかけないといけないみたいなことを言ってたから…」
ルカ「それであんなしっかりとかけてたんだ…」
ツグミ「うん…この魔石、どうしよう…」
アカリ「ツグミが持ってたらいいじゃん…」
ツグミ「え~、私なんか…」
アイ「いいよ…今日もツグミが声かけして出した魔法のおかげでクマを退治できたんだから…」
ソラ「そうそう。ツグミのおかげだよー…」
ツグミ「……じゃあ…とりあえずしまっとくね…」
アイたちも手槍を回収し、クマの死骸も魔石もストレージに入れ、男性のところへ向かった。
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