※この作品はR-18です。

ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~   作:イジー・ムラシロ

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45 村での夕べ

 ニコの案内でアイたちがギリアの家を訪ねた時、入口でアイたちを出迎(でむか)えたのはやはりさっき人混みからギリアの元にやって来た女性だった。

 

アイ「ギリアさん、お加減(かげん)はいかがですか?…」

アユミ「あの~、少しでも早く良くなっていただこうと思って、お邪魔しました…」

 

 ギリアの家も板壁、板(ぶき)だったが、村長の家よりはずっと小さかった。

 アイとアユミ、ナオが入口から室内を見ると板張りの床にキツネや野犬のような獣の皮があちこちに()かれている。

 ギリアはそんな獣の皮の上で横になっていたが、その女性に支えられながら起き上がった。

 

ギリア「あんた方には、何とお礼を言えばいいのか…化け物熊から子供たちを守ってもらっただけでなく、オレの怪我まで直してもらったのに…

 しかも途中まで運んでもらいながら、オレは何の礼も言わずに…本当に申し訳ない…」

 

 頭を下げるギリアの隣で、例の女性も深々と頭を下げた。

 

女性「私はギリアの妻でミギアと申します。今日は主人と子供たちを助けていただき、本当にありがとうございます。

 不作法(ぶさほう)な主人が何のお礼も申さず、本当に申し訳ございません。」

 

 アイとアユミは2人の丁重(ていちょう)すぎる礼に言葉が出ない。ナオがその様子を見て助け舟を出す。

 

ナオ「ミギアさん、私たちはギリアさんにまた魔法をかけるために来ました。担架(たんか)で運ばれていた時もまだ傷が(いた)むご様子でしたので…」

アユミ「先ほどドニアさんからも(うかが)いましたが、この村には(まじな)い師のような方もおられないと聞きましたから…」

 

 ギリアとミギアは思ってもみなかったのだろう、お互いに顔を見合わせる。

 

ギリア「いや、あんた方にはもう十分にしてもらった…クマから助けてもらって傷も直してもらった…これ以上のことをしてもらうわけには…」

 

 断ろうとするギリアに対してナオが言う。

 

ナオ「私たちは最初にいた小屋を離れてからずっと人に会いたいと思ってました。

 あんな形でしたがギリアさんたちにお会いできましたし、そのおかげで村長や長老の皆さんからお話を伺えました。

 私たち、ギリアさんにも村の皆さんにもお礼をしたいんです。」

 

 ナオがアイやアユミの顔を見ると、2人もうなずいてギリアに頭を下げた。

 

アユミ「どうか治療をさせてもらえませんか?…」

 

 ギリアはしばらく黙っていたが、ナオやアユミの真剣な顔を見て口を開く。

 

ギリア「…分かった…申し訳ないが、また魔法をかけてもらいたい…」

ミギア「本当にありがとうございます。」

 

 2人はまた頭を下げると、ナオとアユミ、そしてモアを家に向かい入れた。

 ギリアの家はそれほど広くないので他のメンバーは外で待つことにする。

 

 ミギアは家の外まで来て、アイや他のみんなにギリアと子供たちを助けてもらったことに対して何度も礼を言った。

 すると、ニコがそばに寄ってくる。

 

ニコ「皆さん、ギリアさんの家にいる方は後で私が案内しますので、皆さんは先に用意した小屋へ参りませんか?」

 

 ニコの言葉にアイはソラに小声で話しかける。

 

アイ「どうしよう…」

ソラ「この人の言う通りにしようよ…」

 

 ソラがそっと辺りを見渡すと、こちらに寄ってこないがさっきからずっと村の者が家の(かげ)や物陰から自分たちのことを見ている。

 

アカリ「とにかく、いったん小屋へ行こう。」

アイ「分かった…」

 

 アイがうなずいてニコに小屋への案内をお願いすると、みんなで小屋へ向かった。

 村が用意してくれた小屋も他の小屋と同じく板葺、板壁で多少古く見えたが、9人もいるからだろう、他のものよりはずっと広い。

 

ニコ「ここは以前、他の村へと移っていった者の家でした。汚い家で申し訳ありません。」

 

 ニコはそう言うが、家の中はきれいに掃除されていて板張りの床には(ほこり)一つなく、ずっと誰も住んでいなかったとはとても思えない。

 それでも小屋の中には机や椅子のようなものは何もない。アイたちはみんなでニコに頭を下げた。

 

アイ「ありがとうございます。私たちのためにこんなにきれいにしていただいて…本当に助かります…」

 

 ニコはにっこり笑うと、どうぞごゆっくりとだけ言ってギリアの家の方へ行った。

 小屋に入るとソラがすぐに毛布を出して寝転がり、大きく伸びをする。

 他のみんなも同じように銘々(めいめい)が毛布を出して座ったり、寝転がったりした。

 

ソラ「あー、疲れたー…大変な一日だった~…」

アカリ「残念だけど、まだ終わってないみたい(笑)…」

ルカ「なんか、歓迎の(もよお)しをするみたいなこと言ってたね…」

タクミ「…あ~、オレ、もうこのまま寝たい…」

アイ「まあ、そうはいかないねー…私たちが主賓(しゅひん)だからね…」

 

 みんな、しばらくの間ぼんやりとしている。と、ツグミがぼそっと言う。

 

ツグミ「…村長さんの家でもらった水って、大丈夫かなぁ…」

 

 アイが怪訝(けげん)な顔をして身体を起こす。

 

アイ「大丈夫って、どういう意味?」

ルカ「なに?毒でも入ってるような感じだった?」

 

 ツグミが(あわ)てて首を振った。

 

ツグミ「そう言う意味じゃなくて…生水って、あんまり飲むな、って言うでしょ…」

タクミ「ヤバいかな…」

ソラ「確かに…結構飲んじゃったけど…」

アカリ「心配し過ぎだよー(笑)…後でアユミかモアに『ケア』でもしてもらおう…」

 

 全員が毛布の上に転がっていると、そこにアユミとナオ、モアがニコに連れられてやって来た。

 アイがすぐに立ち上がって聞く。

 

アイ「ギリアさん、どうだった?…」

アユミ「大丈夫…私とモアが『ヒーラー』をしたら、かなり痛みも収まってきたみたい…」

ナオ「いつ、ここを離れるのか分からないけど…とりあえず居る間はしてあげようって、ここに来る時に話し合ってたから…」

アカリ「せっかくだったら、元気に歩けるようになってほしいね…」

モア「そう、そんなこと、私たちも言ってたの…」

ルカ「良くなってきてよかった…」

 

 最初に会った時のギリアの様子を思い出して、みんな安心する。

 

 そんなことを話している間に、(うたげ)の用意が出来たという使いがやって来た。

 全員でゆっくりする間もなく、みんないそいそと案内されるがまま歓迎の場所へと向かう。

 

 外は段々と暗くなってきていた。家々が並んでいる、その向こう側はどうやらすぐに森になっているようだ。

 アイたちがぞろぞろと歩いていると、またツグミが不安そうに言う。

 

ツグミ「…宴って…お酒とか出るのかな…」

 

 お酒という言葉を聞いて、何人かが顔を見合わせる。

 

ナオ「お酒が出ると思う?」

アイ「この感じだと、出そうな気がしない?」

ツグミ「…そんな気がする…」

アカリ「みんな、どう?お酒、飲めそう?…」

ソラ「私はちょっとぐらいなら、イケるけど…」

タクミ「オレもまあ少しぐらいは…」

アユミ「私はぜんぜんダメ…」

ツグミ「私、飲んだことないよ…」

ルカ「私も…」

 

 アユミやツグミ、ルカが暗い表情をするのにモアはニコニコして言う。

 

モア「え~、あんなの全然大丈夫だよー…」

アイ「あんたはいいかもしれないけどねー…」

ナオ「無理して飲んで悪酔(わるよ)いしたりしたら、マズいかも…」

アカリ「アイ、どうする?…」

 

 アイは一瞬立ち止まるが、案内の女性が少し急かすようなしぐさをするのでとりあえずまた歩き出した。

 

アイ「私たちが別の世界から来たってことは村の人も知ってるわけだから、無理せず、お酒は飲めないって正直に言おう…」

アカリ「変に我慢しないで、正直に言うのが一番だね…」

ナオ「私もそれがいいと思う…それに何が出てくるか、私たちには分からないから…」

 

 ナオはうなずいて、アユミやツグミはホッとした様子を見せる。

 

アイ「分かった…私から村長に言うね…」

モア「どんなお酒か、ちょっと興味あったけど…」

ソラ「あんた、ねぇ~…」

 

 村の広場にはもうたくさんの人が集まっていて、その真ん中に3つの大きな()き火がもう炎を上げていた。

 その焚き火のそばを見るとアイたちが倒したクマは色々な大きさの肉に変わっていて、いくつかはすでに焼き(あみ)の上に乗っている。

 今にも宴が始まりそうで、アイが急いで村長に言う。

 

アイ「あの~、ちょっと言いにくいんですが…お酒が出ると思うのですが…」

村長「おー、皆様はそれぞれどれほどお飲みになりますか?」

アイ「実は…私たちの世界では私たちの年齢だとまだお酒は飲まないので…

 実際に仲間にはお酒が飲めない者もいまして…」

村長「う~ん、それは残念ですね…ですがお話を(うかが)った以上、無理に飲んで(いただ)くことはないようにいたしましょう。」

アイ「勝手なことを言って、本当にすいません…」

 

 アイは恐縮(きょうしゅく)して何度も頭を下げるが、村長は何の問題もないというふうに手を振る。

 

村長「お酒のことぐらい、気にしないで下さい。先ほどの()き水ぐらいしかありませんが…」

アイ「ありがとうございます。さっき頂いたお水でお願いします…」

 

 アイがみんなのところへ戻ってお酒は出ないと伝えると、ほとんどのメンバーが胸をなでおろした。そこへ別の案内の女性がやって来て、アイたちは椅子の席に通される。

 皆が席に着くとすぐに木のカップに入った水が運ばれてきた。

 アイたち以外で椅子に座っているのは村長だけで、あとの村人はみんな地べたに腰を下ろしている。大人に子ども、男女合わせて50,60人か、もっといるようだ。

 そこにいる大人全員が飲み物を手にすると、村長が立ち上がって話し始めた。

 

村長「今日は悲しい日になるかもしれなかった。ギリアとその子供たちが猟の途中で魔獣のクマに襲われたのだ。

 だが、幸いにもここにおられる勇者と魔法使いの皆様が、偶然にもギリアたちの窮地(きゅうち)に居合わせ、彼らを助けて下さった。

 ここにあるクマ肉は勇者の皆様が倒したクマである。このクマ肉を振る舞って村人を助けて頂いた感謝の(しるし)としたい。

 では、乾杯!」

 

 村人たちは一斉に声を上げて酒を飲み、アイたちを歓迎する宴が始まった。

 するとアイたちに準備されていた、もう焼けている肉が皿に()せられ、配られた。一見してどの部位なのか、誰も分からない。

 

 みんなヤバいところの肉でないことを願っているが、なかなか聞き出せない。

 そんな様子を察したのか、配膳(はいぜん)役の一人だったニコが微笑みながら言う。

 

ニコ「これはクマの心臓の肉です。心臓には魂の力が詰まっています。どうぞお召し上がりください。」

 

 アイたちの中には脳みそや股間のような部位を想像していた者もいたので、心臓と聞いて安心してその肉を口にした。

 

アカリ「結構硬いけど、味はあるよ…」

アイ「しっかりした、肉っていう味…」

タクミ「ホント、肉々しくて美味いよ…」

ツグミ「…よかった…普通の部分で…」

ナオ「フフフ(笑)…」

 

 しかし本格的に出てきたクマの肉はどれも思った以上に獣臭(けものくさ)い。

 そんな臭みを消すのに使われているのはニンニクだけで、味付けも塩だけ。

 これまで元の世界で臭みのない食べやすい肉に色々な味を付けて食べてきた彼女たちには、到底(とうてい)食べられるものではなかった。

 

 辺りが暗くなると松明(たいまつ)があちこちで()かれて、酒を飲んだ村人が大声で歌を歌い出した。

 アイたちは気づかれないよう四苦八苦して肉を口にするが、どうしてもその臭さにはかなわなかった。

 そんな彼女たちが苦労している様子にニコが気づいて、アイたちに声をかける。

 

ニコ「肉はお口に合いませんか?…」

 

 アイがニコの言葉に正直にうなずく。

 

アイ「…すいません…どうしても臭みが強くてこれ以上食べるのは…ちょっと…」

ニコ「わかりました。村長にお話して、もうお休みになられるのがいいと思います…」

ナオ「せっかくの歓迎の会なのに…」

アユミ「本当にすいません…」

 

 ニコは微笑みながら答える。

 

ニコ「どうかお気遣(きづか)いなく…少しお待ち下さい…」

 

 それでもニコの言葉を聞いて全員がホッとした。そこに村長がニコの話を聞いてやって来る。

 

村長「ニコから事情は聞きました。どうか無理されずに今夜はお休み下さい。」

アイ「本当に失礼で、どうお()びすればいいのか…」

村長「いいえ…どうかお気になさらないでください…村の者には疲れてこれ以上ここに居られないと言っておきましょう。」

ナオ「お気遣い、本当にありがとうございます。」

 

 全員、立ち上がって村長に頭を下げた。村長は村の人々に向かって、客人方は疲れてお休みになられる、と大声で伝えた。

 それを聞いて、さっきまで歌ったり、大声で話していたりした村人全員がその場に(ひざまず)いてアイたちに頭を下げる。

 アイたちも(あわ)てて村の人たちに深く頭を下げ、ニコの案内でさっきの家へと向かった。

 

 ニコは松明を持ってアイたちを先導する。そしてアイたちのために用意した家に着くとその松明を渡そうとした。

 

アイ「あの~、松明はありがたいんですが…」

アユミ「…実は私たち、魔法で明かりを出せるので…」

ニコ「それはすごいですね…では、松明がなくてもよろしいでしょうか。」

アカリ「はい、ありがとうございます。」

アイ「ニコさん、今日は何から何までご迷惑をおかけしました。本当に助かりました…ありがとうございます。」

 

 アイの言葉を聞いて全員がニコに頭を下げる。ニコは何度も首を振って言う。

 

ニコ「どうか気になさらないでください。皆様は村の恩人です。どのようなことを(おしゃ)って下さっても結構ですので、明日からも気にせず仰って下さい。」

 

 ナオとアユミが明かりを灯すのを見ると、ニコは「ゆっくりとお休み下さい」と言って村の広場へと戻っていった。

 アイたちは家に入ると、全員が倒れ込むようにそれぞれの毛布の上に寝転がる。

 

ソラ「あー、疲れた…」

モア「もうダメだよー…」

アイ「みんな、本当にお疲れさま…」

ツグミ「お疲れさまはアイだよ…」

アユミ「ホントだよ…闘いから挨拶(あいさつ)まで…お疲れさま…」

 

 さすがにアイも疲れているのだろう、柱にもたれかかると、ぐでぇーと身体の力を抜く。

 その時誰かのお腹が「グゥー」と鳴った。

 

ソラ「ごめん…私だ(笑)…」

ルカ「(あやま)らなくていいよ…今、食べるもの出すね…」

アカリ「あの肉はキツかった…」

ナオ「ジビエって、ちゃんと処理しないと臭いって聞いてたけど…」

 

モア「あれは臭すぎて食べれないよー…」

アイ「でも、村の人は普通に食べてたからねー…」

アユミ「さあパンだよ、みんなどうぞ…」

タクミ「あー、腹減ったー、いただきま~す…」

ソラ「私もー…」

ルカ「飲み物もあるから…」

 

 アユミやルカ、ナオがパンと飲み物を並べると、誰もがほとんど話もせずにパンと飲み物を胃袋に流し込んでいった。

 みんな、村の人たちに失礼なことをしたという思いで一杯だったが、それでも食べ慣れたものを口にして心の底からホッとする。

 

 ツグミがボソッと言う。

 

ツグミ「…私たちって、恵まれていたんだね…」

 

 全員が黙ってうなずく。

 

ナオ「美味しい肉も色んな味の調味料も、元からあるんじゃないんだね…」

アカリ「何でも美味しいのが当たり前だと思ってから…」

ソラ「でもさ…食べ物でこんな感じだったら、これから大変じゃない…」

モア「分かる…」

 

 それぞれが何かを思い浮かべて、厳しい顔つきになった。アイが空気を察して言う。

 

アイ「とにかく今日はもう寝よう…明日からのことは、また明日考えよう…」

アユミ「…そうだね…とにかくしっかり休もう…」

ルカ「ちょっと待って。」

 

 ルカが何かを思い出す。

 

ルカ「みんな、寝る前に『ケア』をかけてもらった方がいいよ…」

ナオ「何で?誰か、具合悪いの?…」

 

 ナオとアユミが不思議そうな顔をする。

 

アカリ「違うの。私たち、ナオたちがギリアさんの家から来る前に、村で出された水が生水じゃないか、っていう話をしてたの…」

ツグミ「そうなの…だからみんな念のために『ケア』をしたほうがいいと思って…」

ナオ「分かった…じゃあ、みんなに手分けしてかけていこう…」

 

タクミ「…オレもお願いします…」

モア「私もして欲しいんだけど…」

アユミ「分かってるって…その代わりに私にもしてね…」

モア「分かった!」

アカリ「フフフ(笑)…」

ルカ「(笑)…」

 

 全員がそれぞれ『ケア』をかけてもらうと、もう睡魔(すいま)()えられない。

 

ソラ「明日はどうすんの?」

アイ「明日のことは明日!」

アカリ「了解(笑)…」

 

『光源』の灯りが消されて、長い一日が終わった。

 

 

 

 

 

 

 




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