ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
次の日、みんなは誰かの
「…う~ん…う~ん…」
アカリが声の主を
アカリ「アイ、大丈夫?…」
アイ「…う~ん…身体が痛いの…ダメだ…」
ナオが
ナオ「どうしたの?…どこか痛むの?…」
アイ「いや…身体中が筋肉痛みたい…ちょっと『ヒール』かけてくんないかな…」
ナオはホッとして、うつ伏せになったアイに『ヒール』をかけた。
ナオが身体全体にしっかりと『ヒール』をしたおかげでアイも
アイ「ありがとう…だいぶ楽になったよ…」
ツグミ「昨日は凄い闘いだったから…」
ルカ「そうだよ…あんなふうにジャンプしてクマを
ナオ「その後もみんなを代表して、話してくれたし…」
アイは立ち上がると腕を突き上げて大きく伸びをした。
他のみんなも毛布から起き上がるが、疲労で身体が重だるい。
ソラは眠気を覚ますためか両掌で軽く顔を叩く。アユミとルカはもうパンと飲み物をストレージから出していた。
全員で集まって朝食を取り出すが、昨日の疲れでみな口数が少ない。
ナオ「ねえ、今日はどうするの?…」
アイ「う~ん…あのね…」
ソラ「アイもお疲れだし、休みにしてもいいんじゃない?」
アユミ「休みって(笑)…」
モア「それ、賛成!」
アカリ「(笑)」
ソラとモアが
ルカ「でも…せっかく落ち着いたから…洗濯とかしたいけど…」
ソラ「その前に着替えたい…」
ツグミ「だったら、やっぱり洗濯だよー…」
モア(小声で)「…洗濯って…みんなで…するの…」
話が休みから遠ざかりだしたのを感じて、モアは心配そうな表情になった。
アカリは笑顔でそんなモアの肩を叩く。
アカリ「こんな世界にいたら、休みはないよ(笑)…」
ソラ「…だよね…」
アユミ「ガッカリしないでね(笑)…」
モア「…うん……」
全員「(笑)…」
モアの明らかにガッカリした様子に、他のみんなが吹き出した。
アイが笑いながら話を元に戻す。
アイ「(笑)…あのね、私が言おうと思ったのはもう一度村長さんに会って話が聞きたいってこと…」
アカリ「昨日、色々聞かなかった?」
アイ「でも、
あと、この村から一番近い町までどれぐらいだとか、移動手段は歩くしかないのかとか…
そういうことを聞かないとこれからのことが決められないから…」
アユミ「確かに…」
人に会った、その次のことを考えないといけないことに、みんな
ナオ「…で、私たち、これからどうすればいいんだろう…」
ルカ「ギルドにゴブリンを売りに行くだけ?…」
アカリ「RPGだとこれからどういう展開?」
アカリは冗談半分で言ったのだが、ソラは真面目に考える。
ソラ「ゲームだとザコキャラを倒しながらレベル上げて、あとアイテムとかお金とか手に入れる…」
タクミ「えっ、ザコキャラってこっから戦いに行くの?」
アカリ「そこまですることはないだろうけど…」
アユミ「今に当てはめると、お金を手に入れないといけないみたい…」
ツグミ「100ゴールドって、どれぐらいの価値なのかなあ…」
アイ「お金を手に入れるって言っても、私たちだとソラが言うみたいに武術とか魔法を使って何かを倒して、っていうことになると思うけど…」
タクミ「…何かって、魔獣のことだし…ザコキャラってなるとゴブリンだけど…」
ソラ「…魔獣…結構ヤバいね…」
タクミ「いや、魔獣もオオカミも相当ヤバかったよ…」
モア「魔獣もオオカミはもうイヤだよー…」
ルカ「でも、魔獣を倒したら誰かからお金が
アカリ「確かにアイが言うように、そういうお金のことも聞かないとダメだね…」
しなければならないことが次から次へと出てきて、みんな何から始めればいいのか、顔を見合わせたままになった。
ナオがそんなみんなを落ち着かせるように言う。
ナオ「アイが言ったように、まずは情報収集だね。私たち、この世界のこと、何も知らないわけだから…」
ソラ「そうか、RPGでもまずは村人たちに話を聞く、だった。」
ソラが真剣に言うので、何人かがクスクス笑う。
ソラ「えー?、何で笑うのー…」
アカリ「いや、ゲームのことを
ソラ「ダメ?役に立たない?…」
ナオ「いや、そんなことないよ(笑)…レベル上げに出る前に、出来るだけ色んな話を聞かないとダメだね…」
ルカ「ゲームのことだからって、笑うことじゃないよ…」
ソラ「でしょー(笑)…」
アイ「(笑)…」
アユミ「(笑)…」
話しているうちに全員が朝食を食べ終わり、ナオとルカが片付け始めた。その間にアユミが小屋の奥を見に行く。
アユミ「この奥、土間になっててかまども三つぐらいあるよ…
それにその奥は外に
ルカ「じゃあ、とりあえずコップ洗ってくる…」
ツグミ「私も手伝うよ…」
それぞれが作業を始めようとすると、ナオがアイの顔を見て聞く。
ナオ「村長のところって、全員で行かなきゃダメかな…」
アカリ「何人か、ここに残るってこと?」
アユミ「その間に洗濯とかできるけど…」
アイは腕を組んで少しの間考えてから顔を上げた。
アイ「やっぱり大事なことだから、みんなで聞きに行った方がいいよ。
昨日のツグミみたいに、他のみんなが思ってなかったことを思い出す人もいるかもしれないし…」
ナオ「それぞれ考えてることがちょっとずつ違うから…」
アユミ「そういうのって、意外と大事だよね…」
アカリ「それに全員の意思統一っていうのができるから…」
ツグミ「じゃあ、みんなでルカちゃんやアユミちゃんを手伝って、それから行こうよ」
アイ「オーケー。ツグミの言う通りだね。」
アカリ「それじゃあ、何をすればいいかな…」
ルカ「洗ってないままのコップが結構いっぱいあるから、それから片付けよう。」
ソラ「り(了解)!…行こう!」
アイ「ハイハイ、タクミも行って手伝いなよ、ヤッてるだけじゃダメなんだから。」
タクミ「…ハイ…」
ルカ「(笑)…」
アユミ「その前に、みんな、着替えてね。ここに来るまでの間、ずっとそのままだったでしょ。」
全員「了解しました(笑)。」
アユミに
そして、着替えた順から裏に行って食器洗いを片付けていく。ルカとツグミに、ソラとアカリが手伝う。
アイとナオはその間に村長にどんな話をするのか相談をして、アユミはタクミとモアに手伝わせ全員の洗濯物を整理してどの順番で洗っていくのかを考えていた。
モア「9人分って、すごくいっぱい…」
アユミ「洗濯のために、4,5日、ここに居続けたいね…」
それでもルカたちがコップやお皿を洗い終わると、みんなは村長の家へ行く準備をした。
アイ「村長の家って、どっちか分かる?」
アユミ「ギリアさんの家に寄ってから来たから…」
ルカ「それにもう、暗くなってきてたし…」
ナオ「みんな分からない?」
ソラ「村の誰かに聞くしかないよ…」
村長の家へどうやって行けばいいのか、分からないまま全員がぞろぞろと小屋を出ると、ちょうどそこにニコがやって来た。
ニコ「おはようございます。今日はどうされますか?」
こちらから何も言ってないのにニコが現れたことに皆、少し驚く。
アイ「おはようございます。」
ニコ「おはようございます。村長からお客様に何か御用がないか聞いてくるようにと言われましたので…」
アイ「よかった…実は改めて村長さんに伺いたいことがあって、それで村長さんの家へお邪魔しようと思っていました。」
ニコは微笑んで「ではご案内いたしましょう」と言うと、すぐに歩き始めた。アイたちもその後についていく。
村ではあちこちで女たちが洗濯をしたり、柴を切ったりと家事に精を出していた。
子供は子供だけで集まって遊んでいる。アイたちが村の女たちのそばを通ると、彼女らは会釈をしてくれるが、子供たちは何となく遠巻きにしてアイたちのことを見ているだけだ。
村長の家へ行くと、彼はすでにひと仕事終えたような様子で現れた。
村長「おはようございます。豚や牛の様子を見てこなければならなかったので、このような
ニコ「皆様は村長にお聞きしたいことがあるそうです。」
村長「おー、昨日は
村長は家族らしき女性たちに何か言いつけると、彼女らはすぐに外へ出ていった。
アイたちは頭を下げて礼をする。
アイ「お仕事のところ、朝からお邪魔して申し訳ありません。実はギルドのこととかを伺いたくて…」
アイが話を始めたところにさっき出ていった女性たちが椅子をいくつも
昨日思った通り、椅子のほとんどは周りの家からの借り物のようだ。
女性たちは椅子を並べると、アイたちに座るように
村長「申し訳ありません。私の家だけでは椅子が足りないもので…借り物ですが、どうぞお座り下さい。」
彼女らが昨日と同じように飲み物も用意しようとするのを見て、アイが
アイ「私たちも食事をしてきたので…飲み物は大丈夫です。」
アイたち全員が椅子に腰を下ろすと、村長も自分の椅子に座って話を始めた。
村長「では、改めてギルドのことですね…」
ナオ「実は昨日お見せした本に、ゴブリンの皮はギルドで売ることができると書かれていて…
でも、ギルドの説明は何も書かれていないので…」
村長「なるほど…ここは片田舎なのであまり
村長はそう前置きをしてからギルドについて説明をする。
村長「皆様が
この国では魔獣や盗賊に困った時に村や町でお金を
そうした退治の依頼を「クエスト」と呼んでいます。
村や町以外にも貴族の皆様やご領主様からもクエストが出ることもあります。
そうしたクエストがあることを冒険者ギルドが掲示すると、冒険者ギルドに登録している者がそれらのクエストを引き受けて魔獣や盗賊の
その登録している者たちを我々は「勇者」や「冒険者」と呼び、そうした勇者たちの集団を「勇者パーティー」と呼んでおります。」
アイたちは村長の話に真剣に耳を傾けている。
アイ「では、そのクエストというのは勇者パーティーとして登録しないと出来ないんですね?」
村長「そうです。勇者や勇者パーティーの登録はその冒険者ギルドで出来ます。
私がかつて聞いた話では、クエストは魔獣や盗賊の退治の他に旅に出る貴人や商人・
ナオ「そのクエストに出ている魔獣退治などをすれば、お金を得られるってことですか?」
村長「そうです。クエストに成功すれば比較的
モア「ソラが言ってたことだ…」
モアがひとり言を言うのを、隣にいたルカが静かにするように彼女の
村長「冒険者ギルドがあることで皆が得をしています。
村や町の人間はお金を出すことで危険な魔獣退治などで住人が傷つくことが無くなります。
貴族やご領主様方もわざわざ兵隊を出さずに済みます。
そして勇者パーティーの者共はお金を得られるだけでなく、難しいクエストをこなせば自分たちの名声が拡がっていきます。いいこと
アイ「じゃあ、魔獣や盗賊の退治はほとんどクエストとして行われるってことですか?」
村長「まあ、あまりにも魔獣や盗賊が
アユミ「その冒険者ギルドでゴブリンのようなものも買ってもらえるんですね…」
村長「あまり詳しくは知りませんが、クエストで倒した魔獣などを買い取っていると聞いています。」
村長は一度話を切ると、他に質問があるかという表情をする。アカリがすぐに聞く。
アカリ「この村の近くだと、どこに冒険者ギルドがあるんですか?」
村長「この近辺だと、歩いて最低6、7日はかかるところが一番近い町になります。そこだと冒険者ギルドがありますね。」
ソラ「歩いて6日か…」
ソラの言葉を聞いて村長がにっこりする。
村長「ここには村や町を
お金は
アイが隣のアカリに何か言おうとするのを見て、村長がすぐに言葉を
村長「次に駅馬車が来るの3、4日くらい後になります。
実は今、村に来る駅馬車の御者をしている者がこの村の出でナニと申しますが、この者は若い時に村を飛び出し、10年ほど勇者パーティーに加わっていました。
なので、冒険者ギルドや勇者パーティーについては私よりもずっと詳しいでしょう。
駅馬車が来るのを待たねばなりませんが、是非ナニに話をお聞きになるべきです。それにナニにはドムニの町に知り合いがいるようですし…」
朝にアイが知りたいと言っていたことが村長の話で何もかも分かった。
アイは立ち上がって村長に頭を下げる。
アイ「村長さん、本当にありがとうございます。正直、村にお邪魔になったものの、これからどうすればいいのかまるで分からなかったので…
村長さんのお話を伺って色んなことが分かってきました。本当に助かります。」
村長はアイの言葉を聞いて何度も首を振った。
村長「いやいや、村の者を助けて頂きながら、満足なお礼もできておりません。
我々の知っていることならば何でもお教えいたしたいと存じます。
どうか、どんな小さなことでも我々にお尋ねください。私がいなければ、村の誰にでもお尋ね下さって結構です。
村の者たちは外の者とあまり付き合いがないので
アイは仲間の顔を見渡して、他に聞くことがないか確かめる。
するとアユミが思い出したように村長に尋ねる。
アユミ「実はちょっと言いにくいんですが…私たちがお借りしている小屋の裏にある森で、焚き木を
村の方の必要な分を取ってしまうなら、無理にとは言わないんですけど…」
アユミが恐る恐る言うと、村長は笑い出した。
村長「(笑)…どうか気になされず森から焚き木を持っていって下さい。
森ならば皆様が最初に通った畑の向こう側にも広がっておりますので、足らなくなれば、村の者はそちらへ取りに行きます。
たくさん拾ってもらって大丈夫ですよ…」
アイ「村の皆さんの生活の場所なのに、すいません…」
村長はそんなアイたちの様子を笑っただけで、何も気にしていないようだ。
村長「では、また駅馬車が参れば皆様にお知らせいたしましょう。
今は他にお聞きになられることはないですかな。無ければ、とりあえずここまでといたしましょう。」
村長が立ち上がると、アイたちも立ち上がり、もう一度全員で頭を下げた。
アイ「ありがとうございました。」
村長自身が先に立ってアイたちを送る。彼女たちが外へ出るとすぐにニコがやって来た。
「お疲れ様です。皆様の小屋までお送りいたしましょう。」
またニコがタイミング良くやって来たので、アカリが聞く。
アカリ「あの~、ニコさんは私たちの話が終わるまで待っていらしたんですか?」
ニコは笑って首を振る。
ニコ「私は村長の家のすぐそばに住んでいるので皆様が出てこられたのが分かっただけです。
それに皆様の案内をするように申し付けられておりますので…」
ニコはやって来た時と同じようにアイたちを送ると、そのまま頭を下げて去っていった。
みんなは小屋に入ると床に腰を下ろす。
ナオ「…なんか、アイが言ってたことが全部分かったね…」
アイ「やっぱり話を聞くのは重要だよ…」
アカリ「じゃあ、私たちも町に行って登録して、勇者パーティーになるのね?」
ソラ「マジでRPGっぽくなってきてない?」
モア「ウケルって(笑)…」
タクミ「イヤイヤ、リアルRPGは結構マズい気がするけど…」
ルカ「でもそのクエストって、私たちに出来るのかなあ…」
ツグミ「クマとかオオカミとかばっかりだったら…」
モア「それはヤダよー…」
オオカミやクマとの
アイ「…まあ、それはクエストを見てみないと分からないから…」
アユミ「少ないお金のクエストもあるって村長さんも言ってたし…」
ソラ「…まあ、やるしかないよ…他にお金を得られる方法もないし…」
ナオ「そうだね…最初は簡単のを探していこうよ…」
村長の話を聞いて、次にやるべきことが全員に見えてきた。
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