※この作品はR-18です。

ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~   作:イジー・ムラシロ

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51 村からの贈り物

 タクミとツグミ、ナオが横になってしばらく()って、外にいたアイとモアが(あわ)てて小屋の中に入ってきた。

 

アユミ「どうしたの?」

アイ「今ニコさんが来て、駅馬車が来たって村長から伝えてくれって…」

アカリ「分かった…タクミ、もう起きて…駅馬車が来たんだって…」

タクミ「ううう…うっ、うん、わかった…」

アユミ「タクミとツグミとナオが着替えるまでちょっと待ってて…」

アイ「分かった。」

 

 3人が着替えて全員が(そろ)ったところでみんなはニコの案内する場所へ向かった。

 

 アイたちがニコが案内する(うまや)に着いた時には荷物を下ろす人が集まっていた。遠目に村長もいるのが分かる。

 彼女たちは作業の邪魔をしないようにと、しばらく離れたところに立っている。

 

 そんなアイたちの様子を見たニコが村長に彼女たちのことを告げると、村長もアイたちに気づいて自分の方へ来るように手招(てまね)きをした。

 村長がニコに何か耳打ちすると、ニコはうなずいて馬車の方へ行った。

 

 アイたちが近づくと村長は笑顔で迎える。と、そこにニコに連れられて一人の男がやって来た。

 身長は175㎝ぐらいだが手足が太く、顔はすっかり陽に焼けている。下はこの辺りの皆が()いているような(あさ)のズボンを、上半身には麻のシャツだけを着ていた。

 年齢は30歳半ばぐらいだろうか、精悍(せいかん)なわりに表情はニコニコしていて柔らかい。

 

村長「お待たせしましたな。こちらが今日着いた駅馬車の御者でナニと申す者です。

 以前お話したように、この村の出で、おまけに昔は勇者パーティーにおりました。先ほど皆様のことは少しだけ話しています。」

 

 アイたちが揃って頭を下げると、ナニと紹介された男はアイに近づいて手を出し、握手を求めた。

 

ナニ「やあ、はじめまして。この駅馬車の御者をしているナニだ。

 村長からはあんた方が「彷徨(さまよ)い人」でギリア親子を助けたということは聞いたよ。それにドムニにある冒険者ギルドに行って勇者パーティーになりたいそうだね。

 

 出発は明日の朝だが、それまでは荷物の積み下ろしで忙しいんだ。話は出発した後、馬車を止めた時や夜でいいだろう?」

 

 ナニはテキパキと話して無駄なことは言わない。アイがナニの言葉に答える。

 

アイ「分かりました。明日からよろしくお願いします。明日の出発は何時ぐらいになりますか?」

ナニ「まあ、夜明けには出発したい。天気も良さそうだが何があるか分からないからな。それまでに集まってもらえるか?」

アイ「分かりました。」

ナニ「オーケー。ギルドのことや勇者パーティーのことは食事の時にゆっくり話そう。それと、馬車の旅は初めて?」

アイ「全員初めてです。」

 

ナニ「じゃあ、あんた達に魔法を使えるメンバーはいるかい?」

ナオ「はい。何人かいますが…」

ナニ「それじゃあ、回復魔法はあるか?あるなら明日は全員にかけてから来てくれ。これは忘れない方がいい。いいかい?」

アイ「回復魔法…分かりました。」

アユミ「『ヒール』と『ケア』が使えます。」

ナニ「じゃあ『ヒール』だな。頭や上半身にしっかりとかければいい。」

ソラ「それって何かあるんですか?」

ナニ「馬車に乗ったらすぐに分かる…じゃあ、明日の朝にまたこの場所で…すまないな、忙しくて。」

アイ「こちらこそ、忙しいところありがとうございました。」

 

 ナニはそれだけ言うとまた馬車の方へ戻っていった。アイは村長にも礼を言う。

 

アイ「いろいろ気にしていただいて、本当にありがとうございます。

 明日の朝には出発することになりました。長い間お邪魔してすいませんでした。」

 

 村長はイヤイヤと手を振る。

 

村長「こちらこそ大したおもてなしもできず、大変申し訳ありませんでした。

 実は折り入ってお話があるんですが、ここでは人も多いので、どうぞこちらへ…」

 

 村長がそう言って歩き出したので、みんなはとりあえず村長の後についていく。

 ナオがアイに小声で聞く。

 

ナオ「なんの話か、思い当たることってある?」

アイ「いや、全然分かんないけど…」

アユミ「なんか、怖いことかなあ…」

 

 村長は村の家々から少し離れたところにアイたちを連れてきた。

 ニコもそのままついてきている。

 

村長「実はドニアや長老たちのような村の者とも相談をしたのですが、せっかくギリア親子を助けて(いただ)きながら大したお礼もできず、誠に心苦しく思っております。

 それでお礼として出来ることを探したのですが…」

 

 アイは仲間たちの顔を見渡すと、急いで手を振る。

 

アイ「あの~、私たち、もういろんなことをしていただいてます。

 この世界のことやギルドのことも教えていただきましたし、小屋もお借りしましたし、ギルドさんから鳥を頂いたり、弓を教えて頂いたりもしました。

 もう本当にこれ以上していただくと、私たちもお返しができなくて…」

 

 アイの言葉に村長は首を振る。

 

村長「皆様は分かっておられないようだが、あれほどの化け物熊を倒していただき、さらに瀕死(ひんし)のギリアを魔法で救っていただいた。どれだけのお礼をしてもし足りないぐらいです。

 我ら村の者としても、どうしてももっとちゃんとしたお礼をしたいのです。」

 

 アイたちは互いの顔を見合わせるが、誰も何も言わない。

 

村長「そこでですな…どうでしょう、皆様をこの村の者として(むか)えたいと思うのですが…いかがでしょうか。」

 

 みんなは村長の言うことの意味が今ひとつ理解できず、それぞれ首をかしげた。

 村長は笑顔になる。

 

村長「皆様はこれから勇者パーティーとして、この国のあちこちに行かれることでしょう。

 そうすれば行く先々でどこの出身か聞かれることになるかもしれません。今のままでは答えの仕様がないでしょう。

 

 我々としては皆様を我らの村の一員としてお迎えし、皆様にはこれからずっとこの村の者と言って頂ければと思っております。

 どうでしょうか?」

 

 村長の言葉を聞いて全員がやっとその意味の重大さを(さと)った。

 アイは改めて村長の手を取って強く握る。

 

アイ「ありがとうございます。あのー、何と言えばいいか分からないんですが…本当に(うれ)しいです。

 なんか、やっと戻ってこれる場所が出来たような、そんな感じです。

 本当にありがたいです。」

 

 村長はアイの手を握り返して何度も振った。

 

村長「皆様が「彷徨い人」だということは村の外ではあまり知られない方がいいでしょう。

 この村の出身と言っていただければ、皆様への疑いも少しは薄れることでしょう。」

ナオ「でも、私たちの言葉づかいはこの村の皆さんとは違わないですか?」

 

 どうやらナオは自分たちの話し方と村の者の話し方の違いに気づいていたらしい。

 

村長「確かに…皆様の話し方にはこの辺りの(なま)りはありませんな…

 ではどうでしょう。かつてこの村から出て南方の地域へ移ったものがおりましたが、数年前にその地域で疫病(えきびょう)流行(はや)り、その村の者はみな他所(よそ)に移って村も無くなってしまいました。

 皆様はその南方の村、ハルトからこの村を頼ってきた者の子弟といたしましょう。

 そうすればレアの出身でも訛りがないことの理由になるでしょう。」

 

アユミ「すみません。何から何まで考えていただいて…」

村長「いやいや、何度も言うようですが、皆様はこの村の恩人です。

 貧しいこの村では、皆様に出来ることは精一杯がこれぐらいです。本当に申し訳ありません。」

 

 村長が頭を下げて()びるのを見て、アイたちは全員が頭を下げた。

 

アイ「お金をたくさん(いただ)くよりもずっとありがたいです。」

ナオ「自分たちがどこの出身って名乗れるって、本当に助かります。」

アユミ「ありがとうございます。」

 

 村長は何度もうなずいた。

 

村長「皆様に喜んでいただけて、本当に良かったです。村の者たちも喜ぶと思います。

 本来ならば(うたげ)(もよお)して皆様を村に(むか)えることを皆に伝えねばなりませんが、明日出発されるとなればそれもできますまい。

 私から村の者たちに伝えておきましょう。」

 

 アイたちは改めてもう一度深く頭を下げる。

 村長はみんなに近づいてくると、もう一度それぞれの手を取って一人々々と握手をした。

 

村長「レアは最果(さいは)ての村ですので、明日皆様がこの村を出られれば、おそらく二度とここに戻ってこられることはないでしょう。

 皆様はご自分がおられた元の世界へ戻られることを望んでおられる。

 我々は皆様のその希望が(かな)えられることをここでずっとお祈りしております。」

アイ「この村の一員と認めていただいて本当にありがとうございます。

 何を頂くよりも嬉しいです。ここを離れてもこの村のことはずっと忘れません。」

村長「皆様の旅のご無事をお祈りしています。」

 

 村長は満足気に自分の家へと歩き去った。ニコも笑顔でアイたちに深く頭を下げ、彼の後についていった。

 

アイ「こんなこと、想像もしてなかった…」

アカリ「でも村長さんの言う通りだよ…」

ソラ「もし村長さんが言ってくれなかったら、私たち、出身地聞かれても何も言えなかったわけでしょ…」

タクミ「日本からなんて当然言えないし…」

ルカ「危なかったよね…」

 

モア「これからはこの村、え~と…」

アユミ「レア、ね(笑)…」

ナオ「名前ぐらい覚えておかないと(笑)…」

ソラ「最果てっていうのはすぐに覚えたんだけど…」

アカリ「(笑)」

モア「出身地はレア!」

アイ「だよ(笑)…」

 

 みんなは何となく気持ちが軽くなって小屋に戻ろうと歩き出す。

 

アユミ「ねえ、明日の朝出発だから、もう一度ギリアさんに挨拶(あいさつ)しようよ」

ナオ「そうだね…お別れも言っておかないと…」

アイ「じゃあ、ギリアさんの家へ…」

アカリ「了解。」

ツグミ「(笑)」

 

 アイたちはそのままギリアの家へと向かった。

 

 ギリアの家の前ではギリアといっしょにドニアもいて、何やら作業をしていた。

 アイたちの姿を見るとギリアもドニアも汚れた手を()いて立ち上がる。

 ギリアは家の方を向いて大きな声を出した。どうやらミギアを呼んでいるらしい。

 

 全員が頭を下げると、アイが切り出した。

 

アイ「あのー、ギリアさん、ドニアさん。私たち、明日の朝に駅馬車でこの村を離れることになりました。

 それでもう一度挨拶をしようと思って…」

 

 ドニアはギリアの背中を押して、アイたちと握手をするように(うなが)す。

 そしてギリアといっしょに自分もみんなと握手をした。そこにミギアとリカ、リアも出てくる。

 

ギリア「あなた方には本当に世話になりっぱなしだった。何の礼もできず本当に申し訳ない。」

アイ「そんなことありません。ギリアさん、ミギアさんにも、ドニアさんにも本当によくしていただきました。

 お礼を言うのはこちらの方です。ありがとうございました。」

ミギア「そんな…」

 

アユミ「それに先ほど村長さんとお話して、私たち、これからこの村の一員としてこの村の出身と名乗っていいと言っていただきました。」

ナオ「何よりもありがたい頂き物です。」

 

 ドニアはアイたちの話を聞いて何度もうなずく。

 

ドニア「皆さんがギリアとこの子たちを助けてくださったことだけでも、我々としては皆さんを村の一員として迎えることに異存(いぞん)はなかった。

 だが皆さんはそれだけでなく、それだけ立派なことをされたにも関わらず大きな顔ひとつされず、村にいる間もずっと目立たぬようにしておられた。

 それにギリアがわずかな鳥を渡しただけでも本当に喜んでくださった。

 

 この村にもご領主様が(つか)わされた役人のお(えら)い方が時々やって来るが、彼らは皆、村の者を見下していつも傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な振る舞いをして去っていく。

 皆さんはそんなお偉い方よりもずっと大きな力をお持ちだが、それを鼻にかけるような振る舞いをついぞされなかった。

 

 我らとしては、本当は皆さんにずっとこの村に居ていただいて村の力になっていただければと思っていたが、皆さんは別の希望をお持ちだ。

 だから我らとしてできるのは、皆さんを村の一員として迎えることぐらいだと考えたのです。」

 

 ドニアの言葉を聞いて、アイたちは始めて自分たちのために村の人々が真剣に話し合いをしてくれていたのを知った。

 するとミギアがアイの前に進み出て、頭を下げた。

 

ミギア「主人と子供たちをお助けいただいたこと、これからもずっと忘れません。どうか道中ご無事で…」

 

 ギリアはアイたちの前に(ひざ)をついて頭を下げる。

 ドニアもミギアも同じようにしてまた頭を下げた。アイたちももう一度深くお辞儀をする。

 

 みんなが頭を上げると、そこにリカとリアが寄ってきた。後ろ手に何かを(かく)しているようだ。

 

リカ「これ、あげる…」

リア「ひとつしかできなかったけど、おねえちゃんたちにあげるね…」

 

 リカとリアは背中から黄色の花で作った小さな花輪を一つずつ出してアイに渡した。

 リカは恥ずかしいのかそのまま家の中に走っていってしまう。

 リアは姉を追いかけながら、振り向いて小さく手を振った。

 

アイ「ありがとうございます…こんなにいろんなものをいただいて…」

ギリア「改めてあなた方の旅の無事をお祈りしたい。あなた方の望みが叶えばいいが…」

アユミ「ギリアさんもリカさんやリアさんもお元気になられて、本当にうれしいです。皆さんもどうかお元気でいてください。」

ドニア「皆さんもどうか息災(そくさい)で…」

 

 アイたちは改めて頭を下げて、ギリアの家を離れた。

 小屋に戻ってきた頃には辺りもう暗くなっている。ツグミやモアが灯りを出して、みんなは黙って腰を下ろした。

 

アカリ「なんかギリアさんとの話を聞いてたら、急に明日出発するんだって実感が()いてきた…」

ナオ「わかる…」

タクミ「ここで何かをしたってわけじゃないけど…」

ルカ「…これからどうなるんだろう…」

ツグミ「…怖い…」

 

 ツグミが身体を寄せてくると、ナオは黙ってその肩に腕を回した。

 

アイ「言ってること、わかるよ…何が起こるか、想像もつかないから…」

ソラ「山の中にいた時は、できるだけ早く人間に会いたいって思ってたけど…いろんなとこ、行きたいと思ってたけど…」

ナオ「まあオオカミに会ったり、クマに会ったりもしたからね…」

 

ルカ「でもその勇者パーティーってのになったら、しょっちゅうそんな動物と戦わないとダメだよね…」

アユミ「まあ、そうなるよね…」

ツグミ「大丈夫かなぁ…」

アカリ「怖い?」

ツグミ「うん…」

 

 全員がルカの言葉で何かを想像したのか、押し黙ってしまう。

 モアとルカとアユミもお互いに身体を寄せ合う。

 しばらくしてアイが口を開いた。

 

アイ「…言ってることはわかるよ…

 でも、私たちが元の世界に戻る方法を探して回るには勇者パーティーでいるのが都合よくない?

 旅してても(あや)しまれないだろうし…」

アカリ「(けもの)と戦うのはどう?」

ナオ「でもお金も()るし、獣を退治してお金を(もう)けるしかなくない?」

アユミ「能力があるって意味では、ナオが言う通りかもね…」

タクミ「あんまり選択肢はないみたい…」

 

アイ「とにかくオオカミに襲われた後にも言ったけど、勇者パーティーになったからって絶対に無理はしないから…そこはちゃんと話し合って決めよう…

 それにレア出身の勇者パーティーってことなら、とりあえず格好(かっこう)はつくでしょ…どこの出身でもない、何者でもないなんて言えないわけだし…」

ソラ「…RPGの職業みたいなものね…」

アカリ「ゲームよりずっとヤバいけど(笑)…」

アユミ「(笑)…まあ、アイの言う通りだね…

 出身地と職業が言えれば、そんなに怪しまれないだろうし…」

 

 ツグミがみんなに頭を下げる。

 

ツグミ「ゴメン…私が余計なこと言っちゃったから…」

アカリ「そんなことないよー…心配なことは言った方がいいよ…」

ルカ「そうだよ…私も同じこと思ってたし…」

タクミ「あのクマとの戦いもすごかったわけだし…」

ナオ「みんな、言えなかっただけだから…」

アイ「ツグミが思ってるなら、正直に言ってね…その方がホントのことが分かってありがたいよ…」

ツグミ「アイちゃん…」

 

 真剣な話が途切れた瞬間、「グゥー」という誰かのお腹が鳴った音が響いた。

 

モア「ねえ正直に言って、お腹減ったよー…」

アカリ「あんたは(笑)…」

アイ「真面目な話してたの、聞いてた?」

モア「だからー、動物倒してお金儲けするんでしょ…」

ナオ「ちょっと違くない?(笑)」

モア「いっぱい戦うから、とにかくご飯ー…」

アユミ「ハイハイ(笑)…」

 

ソラ「この子、大丈夫?(笑)…」

アイ「とりあえず、明日はまた早出だよー…」

アカリ「分かった…」

ルカ「じゃあ、ご飯の用意するね…」

モア「やったー!」

アイ「(笑)」

 

 全員が立ち上がってこの村での最後の夕食の準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 




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