※この作品はR-18です。

ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~   作:イジー・ムラシロ

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第三章 クエスト開始の篇
54 ドムニの町


 4日かけて馬車はやっとドムニの町へとたどり着いた。

 ナニは町の門が見えてくるとアイたちに言う。

 

ナニ「さああんたたち、マントを着てフードを被って顔を隠すんだ。」

 

 アイたちはみんな(あわ)ててマントを着る。タクミがフードを(かぶ)らずにいるとナニが注意した。

 

ナニ「おいタクミ、お前だけ顔を出してるとおかしいだろう。

 もしかしたら他のメンバーが女性だってばれるからお前もちゃんと顔を隠しておくんだ。」

 

 言われたタクミが急いで顔を(かく)した頃、馬車は門の近くで止まった。

 

 ドムニの町は140~150㎝ほどの高さの木の(さく)(かこ)われていて、門だけは2mぐらいの高さがある。

 門の両脇に(やり)を手にした衛兵が立っているが、特に出入りしている人々を止めて一人一人チェックしているわけではなかった。

 

 町に入っていく人々はみな農具らしき道具や(おけ)やたらいを手にしていたり、弓矢と共にウサギや野鳥のような獲物を持っていたりするので、農作業や狩りを終えて戻ってきているのだろう。

 そこに荷物を背負ったロバや駄馬(だば)なども混じっている。

 

 アイたちが馬車から降りて辺りを見渡すと、門を出入りしている女性たちはみんな頭からベールのようなものを巻いてすっかり顔を隠している。

 女性の姿を目で追っているアイたちに、ナニは言った通りだろうという表情をした。

 

ナニ「町に入る時には馬車に乗ったまま門は通れないから、そのまま馬車についてきてくれ。

 厩舎(きゅうしゃ)に馬と馬車を(あず)けたら宿屋や両替所へ案内しよう。」

アイ「お願いします。」

 

 町の門をゆっくりと通る馬車に続いて、アイたちはフードで顔を隠して黙ってついていく。

 ソラやアカリは顔を隠している自分たちを周りの人がどんなふうに見ているのか気にするが、どうやら誰も気にしていないようだ。

 ナニは厩舎に馬と馬車を預けるとアイたちを町中へと急がせた。

 

ナニ「早くしないと両替所が閉まっちまうからな。急ごう…」

 

 町中(まちなか)はちょうど外からたくさんの人が戻ってきていて、ごった返している。

 (せま)い道を人もロバや駄馬も一緒に通るので結構な人混みだ。

 

アユミ「あっ、ごめんなさい…」

ツグミ「あっ、あっ、ど、どっち?」

モア「待って、置いてかないでよ…」

アカリ「モアもツグミも、こっちだよ!」

ナニ「急げ、こっちだ。」

 

 ナニの案内で着いたのは一見すると周りの家とまるで代わり()えしないところだった。

 戸口が狭い3階建てか4階建ての木造の家で、看板(かんばん)のようなものもない。

 同じような家ずっと並んでいるが、よく見るとナニが言う家の戸には薄っすらと二重丸が書かれている。

 

ナニ「ここが両替所だ。狭いからあんたたち全員じゃ無理だな。3人ぐらいが行けばいい。

 今日の宿はすぐそこだ。誰か俺についてきてくれ。」

アイ「ちょっとだけ待って下さい。」

 

 アイたちは急いで相談し、ナオとアユミとツグミが両替所に行き、アイとルカとタクミが宿屋へ行くことにする。

 アカリとモアとソラは両替所の前で待っていた。

 

 ナオとアユミとツグミが両替所の中に入ると、表から見るよりもずっと奥行きが深いことに気づく。

 

 中は薄暗く、入って少ししたところに小さな机があって大柄な男が2人、黙って椅子に座っている。

 男たちの腰には大きな剣が差してあり、目つきの悪い2人は入ってきたナオたち3人の方をジロリと(にら)んだ。机の上の細い蠟燭(ロウソク)の光がゆらゆらと()れる。

 

 さらに奥まったところにもう一つ机があり、そこに中年の()せた男性が座っていた。  

 3人は入り口近くにいた男たちの(いぶか)しげな表情に完全に固まってしまう。アユミが何とかかすれた声で尋ねた。

 

アユミ「…両替はここですか?…」

 

 男たちは表情も変えずに、手を軽く振って奥へ行けと合図する。ナオたちは軽く頭を下げて部屋の奥へと向かう。

 奥の机の前に座っている男はずっと下を向いていて、彼女たちに気づいていないようだ。

 ここも細い蠟燭の光だけで、暗く陰気(いんき)な雰囲気に3人とも気圧(けお)されるが、ナオが何とか声を出した。

 

ナオ「あの~、両替をしたいのですが…」

 

 下を向いていた男性は黙って顔を上げてナオたちを見る。だが、声を掛けることすらしない。

 彼女たちが近寄ってこないのを見て、男は始めて低い声を出した。

 

男「いらっしゃい…(いく)()えるんだい…」

ナオ「えーと、金貨20枚を全て銀貨にお願いします。」

男「じゃあ、金貨を出しな…」

 

 ナオたちは慌てて男のいる机のところに行き、金貨20枚をその机の上に並べた。

 男は蠟燭の光で金貨を一枚ずつ確認すると、彼女たちの顔をじろりと見る。

 3人はその冷たい視線に身体をさらに固くした。ツグミはもう半分泣きそうな表情をしている。

 

男「金貨1枚で銀貨100枚だ。ただし、手数料が金貨1枚につき銀貨8枚になる。いいな。」

ナオ「わ、わかりました…」

 

 ナオはアユミの顔を見て、彼女がうなずくのを確認して答える。

 男はうなずくと立ち上がって部屋の奥へ行く。

 机のところへ戻ってくると、手には小さな麻袋(あさぶくろ)をいくつも持っていた。男はそれを机の上に並べる。

 

男「袋一つに銀貨100枚が入ってる。確認するか?」

 

 アユミがいいえ、と言いかけたのをナオが止めて「確認します。」と言ったので、男は袋の一つを開けて中の銀貨を机の上に広げた。

 3人が急いでその数を数えると確かに銀貨が100枚ある。

 

男「他の袋も調べるかい?」

 

 ナオがアユミとツグミの顔を見ると2人とも首を振る。

 ナオが「もう大丈夫です。」と答えると、男は広げた銀貨を集めてもう一度袋に入れて、残りの袋もナオたちの方へ押し出した。

 3人が袋の数も数えるとこちらも確かに20個ある。

 

ナオ「確かに銀貨100枚の袋を20個、受け取りました。」

男「じゃあ、手数料は()めて160枚だ…」

 

 男はそう言うと、並んだ袋から一つを取って自分の膝に置く。

 そして、もう一つ袋を取るとそこから銀貨を40枚数えてそれを机の上に並べる。

 そして40枚の銀貨を出した袋はそのまま、また自分の(ひざ)に置いた。

 アユミが急いでその銀貨40枚を他の袋に入れる。

 

男「で、銀貨だけでいいのかい?銅貨は()らないのか。」

アユミ「銀貨も銅貨へ両替をお願いします。」

ツグミ「でも、どれぐらいの数あればいいんだろう…」

 

 ツグミがアユミに囁いた声が店の男にも聞こえたのだろう、男が3人に尋ねる。

 

男「あんたたち3人だけなのか。それならそんなに多くは要らないだろう…」

ナオ「いや、全員で9人いるんですが…」

 

 ナオがそう言うと、男は黙って銀貨が100枚が入った袋をもう一つ取り上げ、立ち上がってもう一度奥へ行く。

 戻ってくると今度は小さな麻袋をたくさん(かか)えていた。

 

男「これで銅貨100枚の袋が100個だ。数えてみな。」

 

 3人は大慌てで袋を数えるとそれは100個ある。

 ナオが袋を一つだけ開けてみると、中は確かに銅貨だ。

 

男「そんだけありゃ、しばらく大丈夫だろう…また足りなくなったらおいで…」

 

 男の声色(こわいろ)が最後に優しくなったので、ナオたちはやっとホッとして彼に頭を下げた。

 男は何も言わずに銀貨の袋を持って奥へ引っ込んでしまった。

 

 ナオたちは顔を見合わせるが、仕方なくそのまま店を出ようとする。

 入り口の辺りに座っていた男たちは、今度はずっと(しゃべ)っていて3人の方を見ようともしない。

 3人は黙って男たちに頭を下げて店を出た。

 

 ナオたちが両替をしている間に、アイとルカとタクミはナニについてそばの宿屋へ向かった。

 そこも両替所と同じように戸口が非常に狭い。

 ナニが何も気にせずに戸を開けて中に入ると、宿屋の女将(おかみ)らしき女性が入ってすぐの木の机の前に座っていた。

 

ナニ「やあ、部屋は()いてるかい?」

女将「やあナニ、久しぶりだね。部屋は空いてるよ。で、その人らも客かい?」

ナニ「ああ、馬車でここまで連れて来たんだ。」

 

 女将は30代後半か40歳ぐらいで、小太りで頭には頭巾(ずきん)(かぶ)り、麻か毛織物らしいゆったりとした服を何枚も重ね着している。

 ナニのことは以前から知っているのだろう、挨拶(あいさつ)もそこそこに話し始めた。

 

女将「何人いるんだい?3人かい?」

アイ「いえ、全員で9人います。他の仲間は別のところにいて…」

ナニ「すぐそこで両替をしてるよ。」

女将「9人かい…じゃああんたたちは4階へ上がりな。ナニも一緒がいいのかい?ちょっと無理かもしれないね…」

 

ナニ「いや、俺は別で大丈夫だ。ここじゃ10人は無理だろう(笑)…」

女将「そう言ってくれるとありがたいね…じゃあ、ナニだけは3階にしておくれ。」

ナニ「この人らの金はちょっと待っててくれ。今両替して持ってくるから…」

女将「出ていったりしなきゃいいよ。とりあえず上に上がってみな。」

 

 アイたちは女将に頭を下げると、ナニについて階段を上っていく。ナニはそのままアイたちを4階に案内した。

 

 部屋は戸口から想像したよりもずっと奥行きが広かった。

 だがこれまで泊まってきた大部屋よりも明らかに狭く、ナニも一緒に寝るのはどうも無理そうだ。アイたちですら全員横になれるのか、ちょっと心配になるほどだ。

 だがナニは特に気にせず、部屋を指差した。

 

ナニ「まあ、これぐらいの広さならあんたたちも何とかなるだろう。俺は下の部屋で寝るからな…」

ルカ「何から何までありがとうございます…」

ナニ「何度も言ったろう、気にするなって。それと今日からは俺の夕食は用意しなくてもいいからな…

 俺は厩舎に戻って馬と馬車の面倒(めんどう)を見なくちゃならないからな。

 ここは隣が酒場だから飯のことも気にしなくていい。

 さあ、もう一度下に行こう。」

 

 ナニとアイたちが1階へ降りると、ナニは女将に銀貨5枚を支払う。

 ちょうどそこにアカリたちに案内されてナオたちも宿屋にやって来た。

 

アカリ「あの~、ナニさんに案内されたんですが…」

アイ「アカリ、大丈夫だよ、部屋あるよ…」

女将「この子たちかい、あんたたちの連れは?」

ナニ「おっ、よく来たな。金は両替できたのか?」

ナオ「はい、銀貨も銅貨もあります。」

女将「ここは一人一泊、銀貨5枚だよ。」

 

 女将に言われてアユミがすぐに銀貨を出し、9人分45枚を渡すと、女将はうなずいてその銀貨を自分が座っていた机の上の箱に入れた。

 その様子を見て、ナニはアイたちをもう一度上の階へと連れていく。

 

ナニ「じゃあ、ここで俺が立て替えていたここまでの宿代も(もら)っておこう。

 ここまでの宿もどこも一人一泊、銀貨5枚だった。」

 

ナオとアユミが急いで計算をする。

 

アユミ「え~と、45枚で3泊だから…」

ナオ「135枚ね。」

ソラ「こういう時にナオやアユミがいてくれると助かるよ…」

アカリ「自分で計算が苦手って白状(はくじょう)してる(笑)…」

ソラ「数学はキライなの(笑)…」

 

 ナオとアユミはナニに手間を掛けさせないように、銀貨が100枚入った袋を渡して、さらに銀貨を35枚を数えながら渡した。

 

ナニ「ありがとよ。確かに3日分いただいた。

 さっきも言ったが、俺は厩舎に行かなきゃならないんでもう夕食も要らない。

 ただし、まだ店に案内しなきゃいけないな。明日の朝は8時にこの宿の前でどうだ。

 それまでには起きてるだろう?俺もそれまでには馬の世話を終わるだろう。

 じゃあ、そういうことでな。」

 

 ナニは今日も無駄なことは一切言わなかったが、階段を降りてく時にアイたちに向かって軽く手を振った。

 

アイ「ありがとうございました。」

全員「ありがとうございました。」

 

 みんなはナニに頭を下げたが、ナニは何も言わずそのまま階段を降りていった。

 

アイ「とりあえず部屋で休憩しようよ。」

 

 4階の部屋に入ると全員がすぐその場に座り込んだ。

 アカリとモアはマントを着たまま両足を広げて座り、ルカやツグミはそれを脱いで壁にもたれる。

 すると町のどこからか(かね)の音が聞こえてくる。

 いつの間にか雑踏(ざっとう)の音もしなくなり、「カーン、カーン」という音がはっきりと聞こえた。

 

ルカ「この町には教会があるんだね。」

ソラ「お寺っていう可能性はない?」

アイ「「ゴーン」って音じゃないよ…」

タクミ「建物も歩いてる人の顔もメチャ西洋だけどお寺?…」

ナオ「どっちでもないかもよ(笑)。」

ツグミ「(笑)」

 

 アユミはマントを脱ぐと丁寧に(たた)んだが、アイは邪魔そうにフードを下ろしてマントを床に脱ぎ捨てた。

 

アイ「あ~ん、こんなの邪魔だよ!…」

 

 ソラも同じようにマントを脱いで、取り出した毛布の上に寝転がって伸びをする。

 他のみんなもマントを脱いで毛布を出して思い思いの格好をした。

 ソラもアイのようにうっとうしそうにマントを手に取る。

 

ソラ「このフード被ってると、前がよく見えないんだよね…」

アカリ「分かる…横から来る人とかがうまく見えなかった…」

ツグミ「…これからずっとこれでしょ?…」

モア「あー、もうイヤだよー…」

ナオ「まだ何時間もしてないけどね(笑)…」

 

 全員が慣れないフードを被らないといけないことに愚痴(ぐち)をこぼした。

 

アユミ「仕方ないよ…それとも周りの女の人たちみたいに、ベールを買ってする?…」

ソラ「それはそれで息苦しいよ…たぶん…」

ナオ「視界は良さそうだけど…」

ルカ「()き方が分からないよ…」

モア「適当に巻いたらいいんじゃない?」

アカリ「適当でいいかどうかが分からないねえ…」

 

 誰もが良い答えが出せずに黙ったのを見て、アイが口を開く。

 

アイ「私が愚痴を言ったからだね…ゴメン……このフード被っていくしかないよ…」

アカリ「まあ、正直に言えばそうするしかないね…」

ルカ「アイちゃんのせいじゃないよ…みんな慣れないから、愚痴も出ちゃうよ…」

ナオ「そうそう…こんな時だけ言いたいことを言っとこうよ…」

モア「やっぱこれからもこれするの?…」

 

 モアがうんざりした表情をするのを、ソラがイジる。

 

ソラ「じゃあ、モアだけベール巻いてみる?(笑)…」

アカリ「ちょっと面白そうだけど(笑)…」

モア「えー、私だけはちょっとイヤだよ…誰かいっしょにしようよー…」

ソラ「いいよー、面倒(めんど)いよー…」

モア「じゃあ私も面倒い…これでいい…」

ナオ「(笑)」

 

 モアが(あきら)めて毛布の上に大の字になったので、他のみんなも笑ってしまう。

 アイが確かめるように言う。

 

アイ「じゃあ、みんな明日からもフードを被るのでいいね(笑)…」

モア「…わかった…」

アユミ「(笑)…夕食の用意をしようか…」

 

 アユミの言葉でみんなは立ち上がって各々がパンや飲み物を出して食事の用意をした。

 そして、夕食を取りながら明日のことを確認し合う。

 

アイ「明日は朝からお店に行ってまず武器を(そろ)えることからだね。」

ナオ「武器は剣とか(やり)とか(つえ)とか…そんなんかな?」

アカリ「あとは弓矢かな…せっかく村で教えてもらったし…」

ソラ「それはいいけど、どんなのが良くて、矢もどれぐらい要るのかがよくわかんねー…」

ルカ「お店の人が教えてくれるって、ナニさんは言ってたけど…」

アイ「お店で聞くのが一番でしょ…ニセモノは売らないって言ってたし…」

 

 アイがミルクティーをすする間にソラはもう一つのパンに手を伸ばす。

 ツグミは何かを思い出したのか、オレンジジュースを飲む手を止めた。

 

ツグミ「(よろい)も要るのかな…」

タクミ「ああ、身を守るためのも要るかも…」

アユミ「あの、鉄板で出来たゴツイやつでしょ…」

 

 何人かはゲームやアニメで見たようなアイテムのことを思い浮かべたのだろう、お互いに顔を見合わせる。

 

アカリ「さすがにあれを着ては動けないよ…」

ソラ「分かる…あんなんで戦うって、どう考えても無理っしょ。」

タクミ「そんなスゴいのじゃなくてもいいと思うけど…」

ナオ「代わりになるのってないのかな…」

アイ「そういうのも、何でも聞いてみよう…」

アユミ「お金が足りるかな…」

 

 アユミはそれぞれのストレージを確認しようと、中空を(なが)める。ナオやアイ、ルカも同じようにする。

 

ナオ「9人だと、結構なんにでも要るからね…」

ルカ「1人あたま、50ゴールドぐらい?」

ナオ「予算ってこと?」

 

 ナオはちょっと顔をしかめてアユミの方を見た。宿代やなんやで思っている以上にお金が要るのを、2人は既に気にしている。

 

アカリ「50だと多すぎない?」

アイ「所持金の半分だもんね…」

アユミ「多くても30から40ゴールドには収めたいね。」

ソラ「値切(ねぎ)ったりする?」

ルカ「(いや)がられないかなー…」

アイ「う~ん…」

 

 スマホなどで値段を確かめながら買い物をするのに慣れているアイたちにとって、値段の予想もつかないものを買うというのは想像以上に難しい。

 だが、お金に限りがあるので予算は決めておきたい。何が正しいのか、誰もが頭を(ひね)った。

 

ナオ「それより、こっちの予算を言って、それで探してもらう方がいいよ…」

アカリ「確かに…本当に分かってる人なら、それがいい気がする…」

アイ「とりあえず、お店の人がどんな人か、会ってからでもいいんじゃないかな…」

ナオ「オーケー…まあ、目安は1人につき30から40ゴールドぐらいね…」

 

 ナオがうまく目安まで挙げてくれて、アイがホッと胸をなでおろしているところにソラが尋ねる。

 

ソラ「で、買い物の後はギルドへ行くの?」

アイ「そう。」

アカリ「クエストもその時に引き受けてくるつもり?」

アユミ「それはクエストを見てからじゃないかな…」

ツグミ「ナニさんは簡単なものからしろって言ってたし…」

タクミ「簡単ってのがどういうのかが、分かるかな?…」

 

アイ「だからそれも行って、見てからだよ…」

ソラ「別に分からなかったら、明日決めなきゃダメってこともないしょ…通って考えていいんじゃない?」

ナオ「ソラの言う通りだと思う…」

アイ「じゃあ、クエストも見て、考えて決めよう…」

 

 話が一段落して、アイやソラが手を突き上げて伸びをする。

 それに()られたのかナオとアユミが大きなあくびをした。

 

アカリ「ねえ、もう眠たい?(笑)…」

ナオ「疲れちゃった(笑)…」

ルカ「馬車は疲れるよ…」

 

 ルカは立ち上がって腰を左右に伸ばしたり、回したりする。

 アユミやナオも馬車で疲れたのか、同じように立って腰を伸ばしたり、腕を回したりした。

 他のみんなも座ったまま手足の(すじ)を伸ばしたり、ストレッチしたりした。

 

ツグミ「でも、ナニさんは親切だね…いろいろ教えてくれたし…」

アイ「確かに…あんなに丁寧に説明してくれて、両替所も宿屋も案内してくれて…」

ソラ「それで明日はお店、案内してくれるんだもんね…」

アユミ「レアの村の人はみんな親切だったね…」

 

モア「これからも、親切な人ばっかであってほしい…」

アカリ「気持ちはわかるけど(笑)…」

ナオ「ナニさんの話だと無理そうね…」

アユミ「何度も気をつけろって念押しされたもんね…」

モア「う~ん…」

 

 モアがしかめっ面をするのを、みんなはクスクス笑う。だが、アイはすぐに真顔になった。

 

アイ「ナニさんが来てくれるのは武器を買うお店までだから、そこからは自分たちで気をつけないと…

 あれだけナニさんが言ってくれたから、とにかく油断せずにいろいろ注意しようね…」

 

 他のみんなも真剣な顔でアイの言葉にうなずく。

 

アカリ「それこそ、お互いに注意しなきゃね…」

ナオ「そうそう、誰かが気づくだけで違うから」

アユミ「ツグミは結構いろいろ気がつくから、気にしないで言ってね…」

アイ「そう、村でもお酒のこととか言ってくれたからね…」

ツグミ「…う、うん、わかった…がんばるよ…」

 

 ルカが我慢できずに大あくびをした。

 

ナオ「ねえ、もう片付けて寝ようよ(笑)…」

タクミ「ふぁ~、もう眠い…」

アカリ「忘れてることってない?」

ソラ「日の出に起きたら、出発までに思い出す時間あるよ…」

アイ「大丈夫?思い出せる?」

ソラ「大丈夫、大丈夫(笑)…」

アカリ「ホントかよ(笑)…」

アユミ「さあ、片付けて、もう休もう。」

 

 駅馬車の疲れだろう、灯りが消えるとみんなすぐに眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 




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