ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
早朝、もう全員がそうした時間に起きるのに慣れ、みんなで朝食の準備をして余裕を持って食事をすませた。
まだナニとの約束の時間には早いが、とりあえず宿の外で待つことにする。
宿の一階へ降りると、
そんな女将の顔を見て、アユミが何かを思い出す。
アユミ「ねえ、どうせ今日はこの町を離れたりしないでしょ…」
アイ「うん?もちろんこの町にいるけど、どうしたの?」
アユミ「今晩もここに泊まりたいって、言っとくほうがいいんじゃない?」
ナオ「そうだね…戻ってきて部屋が空いてない、ってなると困るし…」
アユミは女将に尋ねる。
アユミ「おはようございます。私たち、この後お店やギルドに行くんですが、今晩もここに泊めてもらっていいですか?」
女将「ああ、おはよう。今日も泊まるんだね。その場合は
アユミ「わかりました。」
アユミが振り返ると、話が聞こえていたアイやナオはうなずいて大丈夫と知らせる。
アユミは9人分の宿泊費を支払った。
女将「お金は
アイ「ありがとうございます。行ってきます。」
アイたちが宿屋の前でしばらく待っていると、
全員「おはようございます。」
ナニ「ああ、おはよう。ちょっと早いと思ったが、みんな
ナニはすぐに先頭になって歩き出す。先をドンドン歩いていくナニにアカリが声をかけた。
アカリ「まだこんな早い時間ですけど、お店って開いてるんですか?」
ナニ「おいおい、お
それにそこは武器を売ってるだけじゃないって言ったろう。
一度足を止めたナニは、笑いながらまた先頭をドンドン進んでいった。
アイたちも
ナニが案内する店にみんなが着いた時には、中年で少し小太りの女性がもう店先で女性客の相手をしていた。
店の正面は昨日泊まった宿屋や両替所と同じように
店から客の女性が帰るのを見て、ナニが話しかける。
ナニ「おはよう、おかみさん。オヤジさんはいるかな?客を連れてきたんだ。」
全員「おはようございます。」
おかみさん「やあナニ、いらっしゃい。久しぶりだね。
こちらの人たちがお客さんかい?うちの人は奥にいるから中に入りな。」
おかみさんは宿の女将と同じぐらいの
そのおかみさんが案内するように中に入るので、アイたちもナニの後について店に入った。
すると正面から見ると狭い一軒家に見えたのが、実は中で壁が半分ほど無くなっていて右隣の家と
家の中は昨日訪れた場所と同じで奥行きが非常に深く、向かって左手の
上に上がる階段も宿屋では入り口を入ってすぐだったのが、ここはどうやらずっと奥にあるようだ。
すると右手の奥から小柄で気難しそうな顔をした中年の男性が出てきた。
オヤジ「おうナニ、久しぶりだな…あんまりうちに来ないから、どこか
ナニ「なに言ってんだ、そうそうここに寄れるほど
女どころか、尻の
オヤジ「うるせぇ、余計なお世話だ。」
アイたちはナニと店のオヤジが
ナニは後ろを指差してアイたちがいることを店のオヤジに知らせる。
ナニ「今日は客を連れてきたんだ。ここで武器を揃えてからギルドで勇者パーティーの登録をするんだ。」
オヤジは様子をうかがうような
オヤジ「なるほど、武器が
だが、その前にフードを脱いで
店のオヤジがギロッとにらむのを見て全員がフードを脱ごうとするが、アイはそれを手で制止して自分だけがフードを脱ぐ。
髪は散髪のせいかベリーショートっぽくなっていて、道中の日焼けで顔も黒くなってはいるが、それでも
アイはそんな自分の顔を店のオヤジにしっかりと見せてから頭を下げた。
アイ「どうも失礼しました。私がこのグループのリーダーのアイと言います。よろしくお願いします。」
オヤジはアイたちのことを女性と思ってなかったのだろう、アイの整った顔を見てちょっと
オヤジ「そうか、あんた女だったのか、それはすまなかったな…
勇者パーティーと聞いて、てっきり野郎の集まりと思ったんでな。
あんたたち、みんなフードを被ったままでいいよ…」
ナニ「一人を除いて、全員女ばかりだ…」
おかみさん「お客さん、すまないね。この人はせっかちでいつもこうなんだ、申し訳ないね…」
バツが悪そうにするオヤジに対して、おかみさんがアイたちに
アイはまたフードを被りなおす。
アイ「いいえ、気にしていないので大丈夫です。
私たち、武器のことは何もわからないのでいろいろ教えてください。お願いします。」
ナニ「武器の他に、
オヤジ「魔法使いか…そいつは珍しいな。まあ、ちょっと見てみよう。」
ナニ「まあ、簡単な回復魔法ぐらいだがな…
じゃあ、この人たちのことはよろしく頼んでいいかな?
俺は厩舎に戻らなくちゃならないんでね…」
おかみさん「わかったよ、ちゃんと世話しとくからね。あんたは仕事に戻りな…」
ナニ「おかみさん、悪いな。レアの村長からよく
オヤジ「わかった、わかった。
ちゃんと合うような武器を
ナニ「じゃあオヤジさん、よろしく頼んだぜ。
おい、あんたたちもよくこのオヤジさんの言うこと、聞くんだぜ。」
ナニはそう言うと、もう厩舎の方へ戻ろうと店を出ていく。
アイたちは慌ててその後を追って店の外へ出た。
アイ「ナニさん、何から何まで本当にありがとうございます。ご迷惑をおかけしてばかりで、すいませんでした。」
アイたちが並んで頭を下げるのを見て、ナニは手を振る。
ナニ「いいって。俺みたいなもんの知ってることで役立ったんなら良かったよ。
まあ、ここからもいろんな人の話を聞いて、無理せずにやってくんだぜ。」
ナオ「本当にありがとうございました。」
ナニ「じゃあな。」
ナニはアイたちに丁寧に挨拶されたのに、ちょっと恥ずかしそうにしながら厩舎の方へ歩いていってしまった。
アイたちが歩き去ったナニの後ろ姿をずっと見ていると、店のオヤジが声をかける。
オヤジ「おい、もういいだろう。さっさと武器を探すぞ、中に入りな。」
オヤジの言葉にアイたちは
オヤジはムスッとしたままアイたちを武器が並んだ棟の方へ案内する。
そしていくつもある、武器を並べた
オヤジ「あんたたちは背がそんなに高くないから、この中ぐらいの長さのがちょうどいいだろう。
最近はやたらと長い剣を振り回してるのもいるが、だいたい魔獣や盗賊と戦うには邪魔になるだけだ。」
オヤジは抜いた剣を上から下に2,3回振る。
オヤジ「この剣だと一振り3ゴールドだ。安物だが、
だからとりあえず最初の2,3度のクエストには問題ないだろう…」
ソラ「え~とその…
店のオヤジはナニと同じでよくしゃべるが、ナニよりずっと早口なのでアイたちには時々何を言ってるのか、よく聞き取れない。
そんなアイたちの様子に気づき、おかみさんがオヤジをしかった。
おかみさん「あんた、この
オヤジ「わかったよ…元々こういうしゃべり方なんだよ、まったく…」
オヤジは口の中でもごもごと文句を言うが、おかみさんには逆らえないようだ。
意識して、少しゆっくり話そうとする。
オヤジ「
例えばあんたが
つまり、いい
ナオ「そんなものが売ってるんですか?」
オヤジ「売ってるも何も、気をつけなきゃそんなもんばっかりだ…
質の悪い鉄なんかを使ってるイカサマ品が出回ってるからな…」
ルカ「そんなー…」
オヤジ「まあ、この剣はそんなイカサマなもんじゃないが、それでも安物は安物だ。
簡単に折れはしないだろうが何度か獣や人を切ったら、すぐに切れなくなるだろうな。
だからしっかり
で、剣は何本要るんだ。」
オヤジはそんな話をしながら、剣を必要な数だけ棚から取り出してアイたちに渡した。
アイがアカリやタクミ、ソラやルカに剣を渡している間に、オヤジはもう別の棚を
オヤジ「次は
ここにある普通の長さのを持ってけばいい。これも値は一本3ゴールドだ。これは
だから突くだけじゃなくて槍を伸ばして相手を上から
だいたい槍ってのは、相手と距離を取って戦うための武器だからな。
だから無理に
気難しそうな顔をしたオヤジだが、意外にもそれぞれの武器の使い方を丁寧に教えてくれる。
槍をアイとソラ、タクミに渡すと、アカリとルカには別に探した
オヤジ「まあ、先っぽの形は違うが使い方はだいたい同じだ。
気にいったヤツを使えばいい…槍と同じ値段だ。」
アイ「次は弓矢を見せてもらえますか?」
オヤジ「わかった、こっちへ来な。」
店の奥の方へ行くと弓が何
オヤジはそのいくつかを手に取ると、弓を軽く
オヤジ「弓はいくつ要るんだい?」
アイ「え~と、いくつだろう?…」
アイがアカリとルカに聞いて、とりあえず五張りと指で示すとオヤジは別の弓も調べてから渡していく。
オヤジ「弓はどれぐらい
アカリ「レアの村の
オヤジ「そうか…初心者が使うにはちょっと上等かもしれんが、弓はそれぐらいの方がいい。
値はそれでも一張りで2ゴールドだ。
まあ、いきなり獣や人に使うんじゃなくて、林の木を射って練習するんだな。」
アイ「猟師さんたちにもそう言われました。」
オヤジ「分かってるんなら、それでいい…」
オヤジは店の奥にある階段を上っていき、矢が入った箱を5つ持ってきた。
矢はそれぞれ太い
オヤジ「これ一箱で矢50本だ。矢は一本2シルバーだから、こいつ一つで1ゴールドだな。」
アイ「ありがとうございます。」
オヤジ「別にまけてるわけじゃないぜ…」
オヤジは無愛想に言うが、どれも値段の付け方が分かり易い。
アイが振り向いてアユミやナオと目が合うと、2人もうなずく。
オヤジ「さて、魔法使いとやらにはこれだな…」
オヤジは矢と一緒に持ってきたものをそこに立て掛ける。
それは木の杖で、長さはナオの身長とほぼ同じぐらい、アユミやツグミには少し長い感じだ。
オヤジ「こいつも
硬くて丈夫だし、尻の方もそんな簡単に
この辺りじゃ魔法使いなんていないから、こんな杖なんてなかなか売れない。だから、一本20シルバーでいいよ…」
アユミやナオが慌ててその杖を手に取ると、少し太めだががっしりとしていてしっかりした強度を感じる。
頭の先は平たいが、地面を突く尻の方はちゃんと
アユミたち4人がその杖を受け取る。
アユミ「本当に20シルバーでいいんですか…」
オヤジ「いいんだよ…俺がそう言うんだから…」
アユミがおかみさんの方を見ると、おかみさんはニッコリしてうなずいた。
オヤジ「あとは何が要るんだっけ?」
アイ「え~と、
ソラ「鎧って、鉄の重いヤツしかないですか?」
ソラが慌てて言ったのを聞いて、オヤジは黙ってまた階段を上っていく。
そして何度か一階と上の階を行き来して、茶色の鎧をいくつも持ってきた。
オヤジ「これは
胸と肩を守る鎧と、それに手と腕を守る
こいつはちゃんと処理してある革だから強度も十分ある。おまけに値段も手ごろだ。
あんたたちのようなのにもってこいだろう。
鎧は全員がするんだ。魔法使いだからって矢は
鎧は形もいろいろあるが、どれもシンプルなデザインのものばかりだ。
みんなは急いでオヤジが持ってきたものから自分に合うサイズのものを探す。
上背のあるアイやアカリ、背の低いソラやアユミにはすぐに合うものがあるが、身長の割にバストの大きいツグミやモア、ルカに合うのがなかなか見つからない。
ツグミ「これだとちょっとおっきいかな…」
ルカ「ダメ、これだと入んないよ…」
タクミ「こんなの着けたら、うまく動けない…」
モア「あれ?これ何か着れないけど…」
ソラ「モア、あんたそれ前後ろ逆じゃん(笑)…」
店の奥でアイたちはワイワイ言いながら
彼女たちが鎧を合わせている間に、店のオヤジはもう一度上に上がって別のものを運んできた。それは鎧と違って鉄製だ。
オヤジ「ほら、これは
頭はしっかりと守らないとダメだからな。これも合いそうなのを選びな。」
兜はマンガやアニメで見たような、何かの動物や虫を模した凝った形状ではなく、鉄製の鍋やボールをそのまま被るような単純な形をしている。
それでも全員が自分に合った鎧と兜を身につけると、みんな一人前の勇者の格好になってきた。
おかみさん「あんたたち、なかなか
オヤジ「まあ、安物を集めたわりにはいっぱしの格好だな。
本当は脚や下半身を守るのも付けた方がいいが、まあそこまでの金はまだねえだろう…
今はそれだけあればとりあえず大丈夫だ。」
オヤジは鎧と籠手はセットで一つ3ゴールド、兜はどれも一つ1ゴールドだと言った。
アイ「いろいろ探してもらって、ありがとうございました。」
鎧を
オヤジ「礼を言われることなんてねえよ。
剣といっしょで、鎧も兜も安物だから絶対に大丈夫なんてことはないからな。
だからしっかりと働いて、もっといいのを買わなきゃな。」
おかみさん「はいはい、こっちはもう終わりかい?
じゃあ、向こうへ行って旅に要りそうなものを探そうね。」
オヤジの話がまた長くなりそうなのを
オヤジは話の腰を折られて、
おかみさんはそんなオヤジの様子を見て、アイたちにウインクをして微笑んだ。みんなも2人の様子に誰ともなくクスクス笑う。
店の入り口を入ってすぐのところには、普段の生活に必要な調理道具や食器、それに小ぶりな椅子やテーブルまである。
そんな店の
ナオ「この小さな椅子って何ですか?」
おかみさん「ああ、これは近所の職人さんが休憩がてらに作ったからって店に持ってきたんだよ。誰か使う人がいたら持っていってくれ、って。
不思議だねー…仕事でも椅子作って、休みって言ってまた椅子を作ってんだから(笑)…」
よく見ると背もたれも小さくなっていて、大きさもキャンプの時に座るのにちょうどいいようだ。
ナオがアイやアユミに椅子のことを告げる。
ナオ「どう?石に座ってるとお尻が痛くなってくるでしょ?」
アイ「確かに…石よりずっと座りやすいだろうし…」
アユミ「どれぐらいの値段なんだろう?」
アユミがおかみさんに椅子の値段を聞く。
アユミ「この小さな椅子って、一つ幾らですか?」
おかみさん「そうね…買うって人がいなかったからね…」
おかみさんが言いよどむと、オヤジが顔を出す。
オヤジ「その辺に転がってる10個か20個全部で10シルバーでいいぜ…」
ナオ「10シルバーって…」
アイ「あの~、安すぎません?」
オヤジ「いいんだよ、邪魔で困ってたんだ。持っててくれればせいせいするぜ…」
オヤジがまた憎まれ口を聞いて奥へ引っ込むと、おかみさんが笑顔でうなずいた。
アイが椅子を拾い集めている間におかみさんはアユミとナオに他に要るものがないか聞いてくる。
おかみさん「小麦粉だって置いてるし、果物も少しだけならあるよ…」
ナオとアユミはルカやツグミも呼んで小声で相談する。
ルカ「小麦粉はある程度あるし…」
ナオ「果物って何だろう?」
アユミ「他に要るって薪ぐらいかな…」
ナオ「無駄遣いはしたくないし…」
おかみさんにはアユミたちの話が聞こえたのだろう、小麦粉の隣にある大きな袋を指差す。
おかみさん「小麦が要らないんなら、こっちはそば粉だよ…」
ルカ「そば粉って、
おかみさん「おや、そば粉の食べ方を知らないのかい?
水や牛とか
ナオ「クレープみたいにですか?」
おかみさん「そうそう、おんなじようにいろんなものを乗せて食べたらいいんだよ。」
アユミが小声でナオやルカに言う。
アユミ「そばは栄養が豊富だし、そばがきだって出来るから買っといたらいいよ。
小麦粉とはまた違った味だし…」
ナオ「わかった、バリエーションがある方がいいもんね…」
おかみさんがもう一つ別の袋も開けると、そこには小さな
アユミがそれを見てすぐにおかみさんに尋ねた。
アユミ「これってレンズ豆ですよね?」
ツグミ「レンズ豆?…」
おかみさん「そうそう。これは粒も小さいから他の豆と違ってすぐに
アユミ「レンズ豆って肉や野菜を炊いたり、スープにしたりした時に入れたらいいよ」
ルカ「へぇー…」
おかみさん「分かってるじゃない。これも少し持ってくかい?」
ナオがアユミの
ナオ「そんなに買って、食べれるの?」
アユミ「大丈夫。これって心配しなくても調理も簡単だし、栄養価も高いよ。」
ナオ「じゃあ、いいけど…」
おかみさんはナオたちが相談している間にもう果物の袋の口も開けている。
おかみさん「こっちはキイチゴやラズベリー、
ナオ「じゃあ、せっかくなのでそば粉も豆もその果物もいただけますか?」
おかみさん「人数はいるみたいだけど、どれぐらい要るの?多いと運ぶのが大変だろうし…」
ツグミ「あの~、ちょっと大きめのストレージがあるのでそれで運びます。」
ツグミが正直言ったので、ナオとアユミは慌てて言い
アユミ「それぞれのストレージに入れるので、小分けにしてもらえますか?」
おかみさん「そば粉も豆も果物もかい?」
ナオ「はい、どれもお願いします。」
おかみさんが袋を取りに奥に行ったので、ナオは胸をなでおろした。
ツグミ「ごめんなさい…そのまま言っちゃって…」
アユミ「大丈夫だよ…気にしないでね…」
ナオ「まあ、ストレージが大きすぎるのは言わない方がいいよ…」
ルカ「そうだね…魔法の話をしてもオヤジさんが気にしてたから…」
そこに店を見て回っていたアイやアカリ、ソラなどがやって来たので、ナオがこれまでの事情を説明する。
ナオ「そば粉に豆にキイチゴとかを買うんだけど、小分けにしてもらってそれぞれのストレージに入れたいんだけど…」
ソラ「いっぺんに全部タクミのストレージに入れりゃいいんじゃないの?」
アユミ「あんまり大きすぎるストレージがあるって知られたら、
アカリ「そうだね、分けてもらう方がいいみたいね…」
モア「ちょっと
みんなが話しているところにおかみさんが小さめの麻の袋をいくつも持ってきた。
その袋いっぱいにそば粉を入れていく。
おかみさん「まけとくからたくさん持ってきな…」
ツグミ「すいません…」
おかみさん「いいの、いいの。あんたたちみたいに
アイ「ありがとうございます。」
アユミら5、6人がそれぞれに3㎏ほどそば粉やレンズ豆が入った袋を受け取り、アカリがラズベリーやキイチゴが入った袋をもらう。
それ以外にも薪の束をタクミやソラ、モアがそれぞれのストレージにしまった。
そんなところに、今度は店のオヤジが大きな袋を
オヤジ「これは投げナイフだ。ずっと店に置いてたが誰も買わないんで、持っていってくれ。」
オヤジが持ってきた麻袋を開けると、投げナイフというよりも手裏剣と呼ぶ方がいい武器がたくさん入っていた。
ソラ「これって、相手に向かって投げればいいんですよね?」
オヤジ「ああそうだ。サン王国から入ってきた武器で、一時はみんな使ったんだが今はすっかり
あんたらはどうだ、こんなもん要らないか?」
ソラがアイやアカリに耳打ちする。
ソラ「私たち、『投げナイフ』って能力があるし、使えるんじゃない?」
アカリ「確かに…安くで手に入ったらラッキーだよ…」
アイ「そうだね…
オヤジ「おい!コソコソ話してんじゃないよ…買うのか買わないのか?」
オヤジに大声で呼ばれて、3人はビックリしてオヤジの顔を見る。
おかみさん「あんた、そんなおっきな声出すんじゃないよ!お客さんがビックリしてんでしょ!」
オヤジ「わかったよ……そんで、どうすんだい?…」
アイがおずおずとオヤジに尋ねる。
アイ「値段は幾らぐらいですか?…」
オヤジ「これも
アカリ「あ、ありがとうございます。」
アイ「い、いただきます…」
おかみさん「ほらー、あんなデカイ声を出すからビビっちゃってるじゃないか…
まったく、ごめんなさいね…」
おかみさんはまた奥から麻の小袋を持ってきて、オヤジがその手裏剣をその袋に入れ替える。
アユミとナオが武器とそば粉などの食べ物のお金を纏めて精算している間に、オヤジは別にそれぞれの鎧兜や矢を入れるための大きな麻袋をいくつも持ってきた。
おかみさん「これで必要な物はだいたい
ナオ「はい。いろいろ見てもらってありがとうございました。」
オヤジ「この後はどうすんだ?」
アイ「この後は冒険者ギルドへ行って、勇者パーティーの登録をします。」
おかみさん「ギルドの場所は知ってるんだよね…」
おかみさんの言葉を聞いて、アイはしまったという顔をしてアカリやナオの顔を見る。
他のみんなにもみるみるうちに困惑の表情が浮かんだ。
オヤジとおかみさんはその様子でどうしたのかを察したようだ。
オヤジ「ギルドの場所をナニから聞きそびれたんだな…」
アイ「はい…お手数ですが、教えてもらえませんか。」
アイは店のオヤジに向かってフードを下ろしてから、頭を下げた。オヤジはアイのそんな様子に、いい、いいという感じで手を振る。
オヤジ「そんなに
オヤジはそう言うとおかみさんと一緒に店の外へ出た。アイたちもそれについていく。
オヤジ「あんたたちはどの辺りから来たんだ?」
ナオ「昨日は両替所の傍の宿屋に泊まって、今朝はそこから来ました。」
オヤジ「じゃあ、やっぱりこっちからだな…」
オヤジはそう言うと、アイたちがやって来た道の方を指差す。
オヤジ「この町は小さいからそんなに迷うようなことはない。
この道は
ここを宿屋の方へ戻っていくと、そのまま町の門の方へ行く。
冒険者ギルドは門と両替所のちょうど間ぐらいの場所だ。」
おかみさん「あんたたち、昨日この町に来たのかい?」
アユミ「はい、夕方ぐらいに着いて、ナニさんに両替所を案内してもらいました。」
オヤジ「その時に冒険者ギルドには気づかなかったのか?」
ソラ「夕方で、人がいっぱいだったし…」
タクミ「両替所が閉まるかもって、かなり急いでいたんで…」
モア「ナニさんについてくので精いっぱいだったよー…」
モアの返事を聞いて、おかみさんは笑顔になる。
オヤジはわかった、わかったというしぐさをした。
オヤジ「まあ、今言ったように両替所を通り過ぎてもう少しだけ門の方へ行けば、こっちから右手に3階建てのちょっと大きめの建物が見えてくる。
それが冒険者ギルドだ。この時間だと変な奴らが建物の前をたむろってるかもしれねえが、だいたいが酔っぱらってるからほっときゃいい。」
おかみさんはオヤジの話を聞いて、ちょっと心配そうな顔をする。
おかみさん「いいかい、酔っぱらった奴らに
あと、フードをしっかりと
アカリ「女だとちょっかいをかけられるってことですか?」
オヤジ「酒飲むしか能がねえのに、いちゃもんだけは吹っ掛けてくるからな…
しょうがねぇ奴らだ。とにかく相手にしちゃダメだ、いいな。」
アイ「わかりました。」
アイは改めてメンバー全員の顔を見渡す。
みんなお互いの顔を見合わせて、忘れていることがないかを確認し合った。
オヤジ「どうやら忘れてることは無さそうだな。」
アイ「いろいろ親切に教えていただいて、ありがとうございました。」
おかみさん「こちらこそ、たくさん買い物をしてもらって助かったよ…」
オヤジ「ナニの野郎は忙しいだろうから、この町やこの辺りにいる間に困ったことがあったらここに来りゃいい。
知ってることは教えてやるから。」
おかみさん「この辺りは初めてなんだろう?遠慮せずに聞きに来たらいいからね…」
ナオ「親切に言っていただいて、本当にありがとうございます。
お言葉に甘えて、またお邪魔します。」
オヤジ「そんなに堅苦しく言わなくていいんだ…」
おかみさん「そうだよ、気軽に来てくれたらいいからね。」
アイ「ありがとうございます。」
アイたちは店のオヤジとおかみさんに何度も頭を下げて、ギルドへと向かった。
ツグミ「よかったね…親切な人で…」
ソラ「最初はナニさんとケンカしてるのかと思った…」
アカリ「口はずっと悪かったね(笑)…」
ナオ「半分は
アユミ「だよねー…」
アイたちは手に入れたばかりの武器や杖を手に、今度は冒険者ギルドへ足を運んだ。
楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、お気に入りや評価をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。