※この作品はR-18です。

ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~   作:イジー・ムラシロ

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58 エブルの村

 次の日、雨はすっかり止んでいた。

 

 日の出前に起きたアイたちはとりあえず準備をして(そろ)って(うまや)へ向かう。

 厩の前には自分たちが乗ってきた馬車以外にもう一両、別の馬車も止まっていた。

 みんなはキョロキョロと見回して昨日乗せてくれていた御者の男を探すが、どこにも姿が見当たらない。

 と、そこに厩から男が出てくる。

 

アイ「あのー、私たち、昨日エブル行きの馬車に乗ってきたんですが…

 馬車の御者さんはどこにいますか?」

 

 男は突然声をかけられ、一瞬フード姿のアイのことをジッと見る。

 

男「あの馬車の御者なら、さっき村の者と一緒に川の様子を見に行ったよ。

 雨は昨日には止んでたが、なんせ(せま)い川なんでな。まだ水がついてるかもしれん…」

 

 アイが頭を下げると、男はすぐに集落(しゅうらく)の方へ行ってしまった。

 アイは今聞いたことをみんなに伝えて、しばらく厩の前で御者の男が戻ってくるのを待つことにする。

 

 すると半時間ほどして、御者の男が村の者らしき一団と一緒に厩に戻ってきた。

 彼は何人かの男とずっと話をしているのでアイたちは声を掛けられない。

 黙って馬車のそばで待っていると、男はやっと話を終わってこちらへ来た。アイが男に話しかける。

 

アイ「あのー…今日はどうなりますか?…」

 

 御者の男は昨日の朝のように一瞬アイを(にら)むように見るが、すぐに言った。

 

御者の男「馬車に乗ってくれ。すぐに出発する。」

アイ「じゃあ、大丈夫なんですね?」

 

 男は首を横に振る。

 

御者の男「いや、川の水位はまだ高い。だから川の前で一度馬車を降りてもらって馬車とあんたたちは別々に橋を渡ってもらう。いいな。」

アイ「わかりました…」

 

 アイが合図してみんなが馬車に乗り込むと、御者の男は本当にすぐ馬車を出発させた。

 雨のせいで道はどこも泥濘(ぬかるみ)水溜(みずたま)りだらけで進む度に左右に大きく揺れる。スピードもそれほど出ない。

 それでも御者の男は馬を()かして先に進もうとさせる。

 

 昨日の川のところまで来ると、男は黙って馬車を止めた。

 アイたちが馬車から降りると、馬車はゆっくりと橋の上を進んでいく。

 橋と言っても数本の丸太を荒縄(あらなわ)(しば)っているだけの原始的なもので馬車が進むにつれて真ん中が大きく(たわ)んだ。

 

 増水している川の水は丸太の橋のすぐ下を勢いよく流れていて、馬車は馬の足元や木の車輪を濡らしながら何とか向こう岸へとたどり着いた。

 

御者の男「さあ、さっさとこっちへ渡ってきてくれ。」

 

 男の言葉に(うなが)されてアイたちも橋を渡りだす。だが、丸太の橋の貧弱さと川の水量の多さにツグミやモアは足がすくんでなかなか渡れない。

 

御者の男「おい、急ぐんだ!ぐずぐずしてたら置いてっちまうぞ!」

アカリ「ツグミ、私が一緒に行くから、がんばろう…」

ツグミ「…うん、わかった………」

 

 御者の男はツグミやモアの気持ちなど気にせず、とにかく(いそ)がせる。

 アカリやアイがツグミたちに寄り()って、何とか全員が橋を渡り切った。

 男は休憩を取るようなこともなく、全員が乗り込むとすぐに馬車を走らせた。

 

アユミ「ツグミちゃん、大丈夫?…」

ツグミ「みんな、ごめんね…」

ソラ「仕方ないよ…結構ヤバかったよ、あの川…」

モア「怖かった…」

ルカ「わかる…まだ水も多かったし、勢いもあったし…」

 

アイ「正直、馬車が川に落ちちゃうんじゃないかなって思った…」

アカリ「私もそう思った…」

タクミ「かなりギリだったよ…」

ナオ「マジで心配したし…」

アユミ「馬車もみんなも、ちゃんと渡れてよかったよ…」

 

 だが雨のせいで悪路が続くだけでなく、別の川でもアイたちが馬車から降りて渡らないといけないことが続いた。

 他にも泥濘や水溜りで馬車を押したりしなければならず、なかなか先に進まない。

 馬車は休みなく進み、陽が(かたむ)いてやっと小さな村にたどり着いた。

 

御者の男「ここも普段は通り過ぎるところだが、今日はもうこれ以上進めない。

 今晩はここで泊まりだ。」

 

 昨日と同じように何とか小さな宿屋に入って、アイたちは一晩を過ごした。

 

 翌日もまだ道は泥濘と水溜りだらけだったが、川はようやくどこも水が引いてきたようで昨日のように渡る度に馬車を降りるようなことはなくなった。

 馬車は短い休憩をしただけで走り続けて、夕方にやっと目的地のエブルへと到着した。

 

 二日で着くと言われていたのが丸四日もかかって、みんな疲れ切って馬車から降りる。

 荷物を下ろすためにやって来た村人たちは、そんなアイたちを(いぶか)しげに見ていた。

 

アイ「とにかく村長の家がどこか、教えてもらおう…」

ナオ「それより、みんな(かげ)に行ってストレージから買ってきた武器を出さないと…」

 

 ナオが武器を出すように促すのに、何人かは不思議そうな顔をした。

 

ルカ「なんで?今度は剣とか(やり)は使わないんじゃないの?…」

ナオ「私たち、ただでもあんまり勇者らしくないわけだから、せめて武器だけでも持ってないとクエストのために来た勇者パーティーだって信じてもらえないよ…」

アカリ「確かに…なんか、なんで来たんだって目で見られてたもんね…」

ソラ「仕方ないなー…」

 

 みんなはナオの言葉に従って厩の建物の陰に行って、そこでストレージから武器や(つえ)を取り出した。

 一応武器を手にしてぞろぞろと出てくると、村人たちがあちこちで何やら話をしているのがわかる。

 と、若い男がこちらへやって来た。

 

若い男「もしかして、皆さんはゴブリン退治に来られた勇者パーティーの方々でしょうか?」

アイ「あっ、はい。ドムニの町のギルドでゴブリン退治のクエストを引き受けてきました。

 私がリーダーのアイと言います。」

 

 アイが名乗ると男はニッコリと笑った。よく見ると男はまだ20代の前半か、もしかしたら10代後半にも思える。

 背が高く、手足もゴツく肩幅も広いが、どこか(すず)やかな目が柔らかい雰囲気を出している。

 

若い男「遠いところ、ようこそおいでくださいました。村長の家へご案内いたします。」

 

 男はレアの村長がよくしたように、こちらへというしぐさをして先に立って歩き出した。アイたちはその後をぞろぞろとついていく。

 

 少し年長らしい男たちが先頭の若い男のそばにきて、何か話しかける。

 だが、若い男が答えるとすぐにうなずいて道を開けた。アイたちが横を通ると、男たちは少しだけ会釈をした。

 

 エブルの村は今回の旅で泊まった他の村と同じように小さく、どことなく貧しい感じがする。 

 家はどれもレアの村のように板張りの壁に板(ぶき)の屋根で、やや小さい家が多い。

 陽が傾いてきて、何人かは今日泊まるところがあるのか、だんだん心配になってきた。

 

 集落の中までやって来ると背の高い男性が一人、先頭の若い男のそばに近づいてきた。

 まだ40代後半か50代ぐらいでがっしりとした、いかにも農夫という出で立ちをしていて、顔は陽に焼けて真っ黒になっている。

 男性は二言三言若い男と話すと、アイたちの方へ向き直って頭を下げた。

 

背の高い男性「勇者パーティーの皆様、ようこそエブルにお越しくださいました。

 私がこの村の村長のハマンと申します。私の家はこちらですので、どうぞ私についてきて下さい。」

 

 ここまでアイたちを案内してきた若い男はもう一度村長と言葉を交わすと、アイたちに会釈(えしゃく)をして別のところへ行ってしまった。

 村長が歩き出し、アイたちは今度は彼についていく。

 

 村長の家は本当にすぐそこで、誰かが知らせたのだろう、家の前では女たちがレアの村の時のように手作りの椅子を並べていた。

 アイたちがその椅子のそばまで行くと、村長はしぐさで座るようにと(すす)める。

 

 みんなは普通に椅子に座ろうとするが、持っている槍や杖、腰につけた剣のやり場が分からず、それぞれにウロウロしてしまう。

 それでも全員がやっと椅子に座ると、村長は立ったまま話し出した。

 

村長「こんな外で申し訳ありません。私の家は狭く、むさくるしいのでどうかここで我慢(がまん)して下さい。

 また、皆様の宿は村の者に言いつけ、宿屋の部屋を取らせております。」

 

 アイは立ち上がってフードを下ろして顔を出すと、頭を下げた。

 

アイ「ゴブリン退治に来た勇者パーティーの、私がリーダーのアイです。こちらこそよろしくお願いします。」

 

 アイの言葉を聞いて、他のみんなも立ち上がって村長に頭を下げた。

 何人かはフードを下ろそうとするが、アイやナオがそのままというしぐさをしたのでアイ以外はみなフードを(かぶ)ったまま村長に頭を下げた。

 

 村長はアイが若い女なのを見て少し驚いたようだったが、すぐに言葉を()ぐ。

 

村長「我々の村のクエストを引き受けていただき、本当にありがとうございます。

 このような辺鄙(へんぴ)な村の、しかもゴブリン退治ということでなかなか引き受け手が現れず、村でもどうすべきか困っておりましたので…」

アイ「それでゴブリンが現れる場所はどんなところですか?…」

 

村長「村から半時間ほど離れたところから山が(つら)なっておりまして、元々ゴブリンなどはその山の奥の方に(ひそ)んでいるのですが、2ヶ月ほど前から村に近い山のところまで何十匹も出没するようになりました。

 最近では5匹、10匹と固まって村のすぐそばまでやって来るものもおり、村の女子どもは皆(おび)えております…」

ソラ「私たちも以前ゴブリンに襲われたことがあるんですが、村の男の人が集まって追いかければ逃げていかないんですか?」

ナオ「ソラ…」

 

 ナオがソラの発言をたしなめるが、村長はその言葉に首を振った。

 

村長「最初は20、30匹ぐらいでしたので、村の者が追い払っていましたが、いつの間にか100匹ぐらいにまで(ふく)れ上がり、とても村の者では手が出せないようになってしまいました。

 今はもしかしたらもっと多いかもしれません…」

アカリ「100匹以上って…」

ルカ「すごい…」

 

 アカリやルカの言葉を聞いて村長は頭を下げる。

 

村長「クエストには数十匹と書いておりました。それは決して(いつわ)りを書いたのではなく、その時はそれぐらいの数だったのです。

 ですが、今は現れるゴブリンも膨れ上がっており、報酬(ほうしゅう)も見合うものでなくなっているかもしれません。

 我らとしては出来るだけのことはいたしますので、どうか村のためにクエストをお引き受け下さい。よろしくお願いいたします。」

 

 村長はそう言って(ひざ)をついてアイたちに深々と頭を下げた。

 アイはその様子を見てびっくりして立ち上がる。

 

アイ「すいません…仲間はそんな意味で言ったわけじゃないですから。

 ゴブリンの数が増えていることは私も驚いてます…

 ですが、それでクエストをお断りするようなつもりはありませんので…どうか安心してください…」

 

 村長は立ち上がると、少し安心した表情になっていた。

 

村長「そう言っていただけて、安堵(あんど)しました。

 クエストの報酬についてはクエストが終わった後にまたお話したいと思います。」

 

 アイが村長に何か言おうとすると、ナオがその前に返事をする。

 

ナオ「わかりました。とにかくゴブリン退治が終わってからどのような状況だったのか、またお話しますので…

 報酬のことはまたその時にでも…」

 

 村長はその言葉に何度も何度もうなずいた。そんな話をしているうちに次第に辺りも暗くなってきた。

 

村長「今日はもう陽が暮れてしまいますので、また明日の朝、ゴブリンが出てくる場所へ案内したいと思います。

 村の者に宿屋へ案内させますので、少しお待ちください。」

アイ「明日はどれぐらいに出発すればいいですか?」

村長「明日の朝も村の者を宿に(つか)いによこしますので、早朝からでお願いできますでしょうか。」

アイ「わかりました。」

 

 アイが返事をすると村長が右手を見るように、というしぐさをする。

 みんなが立ち上がって村長が示す方を見ると少年が一人立っている。

 

村長「あの子供が宿まで案内いたします。今晩はゆっくりとお休み下さい。」

アイ「ありがとうございます。」

 

 アイたちは椅子から立ち上がってそれぞれの武器を取り上げると、改めて全員で村長に礼をした。

 村長はそんなアイたちに軽く会釈する。

 

 案内の少年は12,13歳ぐらいだろうか。仏頂面(ぶっちょうづら)をしているが、それでもアイたちが近づくと無理に会釈をしようとする。

 アカリやルカが緊張を和らげようと会釈を返すと、少し恥ずかしそうにして振り返って歩き出した。

 

 少年が案内してくれた宿屋もこの二晩泊まった宿と同じように小さく、古いものだった。

 それでも疲れ切ったアイたちは少年と宿屋の主人に礼を言って、二階の部屋へと向かう。

 部屋に入るともうすっかり真っ暗で、アユミとツグミが灯りを出して中を()らした。みんな、それぞれの武器をしまって床に座り込む。

 

ソラ「あー、やっと着いたよー…」

ナオ「(笑)…まだ宿に入っただけだよ…」

アカリ「まあ、ナオの言う通りだね…明日はここからゴブリンが出る山まで行かなきゃならないわけだし…」

モア「ねぇ、その山までまた馬車に乗ってくんじゃないよね…」

 

 モアが不安そうな表情で不思議なことを言い出したので、ツグミとアユミは顔を見合わせた。

 

ツグミ「えっ?歩いて行くんじゃないの?」

アユミ「モアは馬車で行きたいの?」

モア「違うよ~…もうあのゴトゴトに乗りたくないだけ…」

アイ「確かに(ひど)い道ばっかりだったからね(笑)…」

モア「もうイヤだよ~…」

 

 モアは毛布の上に大の字に寝転がって、もううんざりというしぐさをする。

 

アユミ「(笑)…」

アカリ「(笑)…でも、また雨が降ったら次もあんな感じになるんだろうね…」

ルカ「たぶんそうだと思う…」

モア「え~…」

アイ「仕方ないけど…やっぱり大変だね…」

ルカ「舗装(ほそう)道路を車で走ってくって、やっぱりすごいことなんだね…」

アユミ「とりあえず食事にしよう…」

 

 アユミの言葉にソラやアカリ、モアが立ち上がる。その時アイがナオに近づいた。

 

アイ「ねぇ、どうしてさっき報酬のこと、あんな言い方したの?…別に怒ってるわけじゃないんだけど…」

ナオ「あんなって?…」

アイ「だからクエストが終わった後に、また交渉するみたいな言い方…」

ナオ「じゃあ、アイは元のままでいいと思うの?…」

アイ「それは…わからないけど…」

 

 アイとナオのやり取りに、他のみんなも手を止めて遠巻きに2人のことをジッと見る。

 

ナオ「ねぇ、ナニさんにも言われたでしょ…お人好しになって言われるままじゃダメだって…

 ゴブリンの数が最初に書いてたよりも多くなってるわけだから、クエストの手間だって思っていた以上だと思う…

 だから、大変だったらそれなりに余計に(もら)うべきだよ…」

アユミ「余計に、って…」

ナオ「だから…20ゴールドでも30ゴールドでも…

 とにかく相手が(はら)えそうな分は貰うようにしないと…」

ソラ「ナオ…」

 

 ナオは全員の顔をジッと見渡す。

 

ナオ「私、別に(きら)われ役になりたいわけじゃないけど…

 やっぱりこんな(たよ)れる人もいない世界だとお金は少しでも多く持ってる方がいいと思う…

 だから、遠慮してる場合じゃないんじゃないかな…やった分はちゃんと主張して貰わないと…」

アカリ「まあ確かに…女ばかりでちょっと下に見られそうだしね…」

ナオ「そうでしょう…だから面倒(めんど)(くさ)がったり、いい人ぶったりしないでちゃんとお金を貰らうようにしていこうよ…」

ツグミ「ナオちゃん…」

アイ「…まあ…確かにナオの言う通りだね…」

 

 いつになく厳しいナオの言葉に他の全員が黙ってしまう。

 

ナオ「みんな、そんな顔しないでよ…クエストのために戦うのも大変なことだけど、お金の交渉だって情報を聞き出すことだって、おんなじぐらい大事なことだよ…

 私も好きでやりたいことじゃない…でも、先のことを考えたら頑張ってやっていかないと、これから何が起こるか分からないよ…」

 

 アイはナオの前にいって素直(すなお)に頭を下げた。

 

アイ「ナオ、ごめんね…なんか損な役割をさせて…ホントは私が言い出さないとダメなのに…」

ナオ「ううん、アイはしっかりしてくれてるよ…

 別にそんなこと決めたわけでもないのに、いつも自分から前に出て話をしてくれて…

 だから感謝してるの…私こそキツイ言い方になってごめんなさい…」

 

 アイとナオが2人とも下を向いたのを見て、アカリとアユミがすぐにそばにやって来た。

 

アカリ「ナオ、ありがとう…いつも大切なことを言ってくれて…

 私たちも甘えないでもっとアイやナオに(こた)えないとダメだね…」

アユミ「2人に頼り切りでゴメンね…大変なことはいつも2人にさせてばかりだよ…」

 

 他のメンバーもみんな集まってくる。

 

ツグミ「アイちゃんもナオちゃんもゴメン…私、黙って言われたことしかしなくて…」

ナオ「ねぇ、みんな、そんなこと言わないでよ…私やアイだけが頑張ってるわけじゃないよ…

 みんな、それぞれの仕事をしてきたんだから…

 ただ、お金のことはちょっと気になっただけだから…」

ソラ「でも、ナオの言う通りだよ…言われるがままで安いお金で働いてても、仕方ないわけだから…」

ルカ「主張ってのが、どんだけできるかが心配だけど…」

 

アカリ「それはさあ、正直に言えばいいんじゃない?

 やってないことまでやったってウソをつくわけじゃなくて、これだけのことをしたって言えばいいんだから…

 自分たちがちゃんとしたことなら、後ろめたいこともなんもないわけだし…」

アユミ「そうだよ…やったことをやったって言えばいいだけだから…」

アイ「わかった…とにかく今度のクエストをちゃんと片付けて、それで何をどれぐらいしたのかを説明したらいいよね…」

ナオ「そう…無理な駆け引きなんて、今は考えることないよ…

 それで報酬が少ないと思ったら、正直に言おう…」

 

 厳しかったナオの表情に笑顔が戻って、誰もがホッとした。

 

アユミ「とりあえず食事をして、今晩はしっかりと休もう。

 旅の疲れを取っておかないと、明日からは実際にクエストをしなきゃいけないから…」

 

 全員が改めて食事の準備を始める。アユミとルカが宿の主人に話して今日もかまどを使わせてもらい、温めた飲み物と焼いたハムが出てくる。

 疲れと馬車の揺れで食欲がなくなっていた者も匂いにつられてパンやハムを口に運んだ。

 食事を終えて一息ついたところで、ソラが口を開いた。

 

ソラ「で、明日からはどんなふうにするつもり?」

アイ「それは…」

ナオ「それは現地を見ないとわからないんじゃないかな…山って言ってたし…」

ルカ「確かにここで想像してるのと、だいぶ違うかもしんないね…」

アカリ「ゴブリンも100匹を超えるとなると、全然想像がつかないよ…」

タクミ「一匹々々、棒で叩いて追い払える数じゃない…」

アイ「う~ん…」

 

 全員が黙ってしまったのを見て、アユミが言う。

 

アユミ「ねぇ、とにかくここで悩んでも仕方ないよ…

 実際に案内してもらってどんな場所に、どんなふうにいるのかを確かめてからじゃないと…」

アイ「……確かにアユミの言う通りだね…」

ソラ「オーケー…今日はもう寝よう…しっかり休んで、明日からに備えよう…」

ツグミ「…うん……」

 

 村長の言葉で何人かは不安を感じながらも、みんなは旅の疲れを(いや)すために早めに眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 




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