ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
アイたちは2,3時間の間、これまであまり使ってこなかった魔法を
太陽がだんだんと高くなってくる。
あまりに戦闘の準備に時間をかけてるので、アユミは心配になってアイやアカリに声をかけた。
アユミ「今日は練習だけにするの?…」
アカリ「それはちょっと…」
ルカ「だよね…」
アイ「今って何時ぐらい?」
ツグミ「まだ9時半ぐらい…」
アユミに言われてアイは山の方をジッと見つめ、他のみんなはそんなアイと山の様子を交互に見ていた。
やがてアイは振り返って仲間の方を向く。
アイ「とりあえず
もし難しかったら無理に進まずに何が悪かったか考えよう…」
ナオ「まあ、オオカミみたいに戦ったらある程度上手くいくまでやらないと危ない、っていう相手じゃないからね…」
アカリ「いつまでも準備、準備って言ってても、
ツグミ「そうだね…」
それでもナオは慎重にどうやってゴブリンと戦うのかを頭の中で検討している。
ナオ「う~んとね…まずオオカミに襲われた時に分かったけど、バラバラになると危険だからある程度グループを作って、固まって動かないとダメね…」
アカリ「9人いるから、4人と5人に分かれる?」
ナオ「アユミとタクミがいるから、5人のグループにアユミが入って、4人のグループにタクミが入るようにしよう…
それで直接戦う人と魔法を使う人のバランスがあるから…」
アイ「オーケー。じゃあ、こうしよう。」
アイはナオの意見を参考にしてメンバーを二つに分けた。
アイ「アユミは私とルカ、そしてナオとモアのグループに入って、タクミはアカリとソラ、ツグミのグループにしよう。
一応私のいるグループは私が指示をして、もう一つの方はアカリが指示をして。」
アカリ「了解。」
アイ「私もそうだけど、それぞれでしっかりと話し合って、それでも最終的に私とアカリが指示をするということでいいかな?」
ソラ「オーケー(笑)…」
ナオ「分かった…」
アユミ「で、それでどうすればいいの?」
アカリ「一応最初は
それで攻撃してみて上に逃げるのか、それとも降りてくるのか、その辺りを探るのはどう?」
モア「前は山に逃げていったけど…」
ナオ「そうなったらいいけど、あれだけ数がいると…」
ツグミ「ねえ、そう言ってたらこっちへ来てるよ!」
みんなが固まって話しているうちに、ゴブリンが山から降りて群れになってこちらへ向かってきた。
どうやら10匹ほどの群れが二ついるようだ。
アイ「よし、みんな
ナオ「グループ同士はバラバラにならないようにね。」
タクミ「直接攻撃の人が前になって、魔法使いの人はその後ろから
アユミ「でも、前の人に当てちゃダメだよ…」
ルカ「気をつけてね。」
モア「分かった…」
アカリ「それぞれのグループで一つずつの群れに当たるから。」
アイ「了解。」
ソラ「オーケー。」
そう言っている間に、ゴブリンはぞろぞろとアイたちのそばにまで近づいてきた。
ソラがやる気満々で向かっていこうとするのをアカリが制する。
アカリ「ソラ!そんなに
ソラ「わかってるって。」
ゴブリンは山の小屋で見たのと同じように、茶色の毛皮を
前は暗闇の中で『光源』の光に
何も知らないと釣り上がった眼や
アイ「いくよ!」
ルカ「わかった。」
アカリ「こっちもいくよ。」
ソラ「いけー‼」
それぞれが手にした木剣や棍でゴブリンを
ゴブリンは最初こそ抵抗するようなしぐさを見せるが、仲間が何匹もやられるとすぐに
アイ「タクミとアユミは倒れてるゴブリンを出来るだけストレージに入れてきて。」
タクミ「わかった…」
アユミ「了解。」
アカリ「逃げてくゴブリンは
ソラ「わかった。」
アイたちはゴブリンの後について、ヤツらが山に逃げ込んだ後はどうするのかをよく観察した。
だが降りてきたゴブリンたちが再び山に逃げ込んでも、他のゴブリンは木々の間からこちらをうかがっているだけだ。
ナオ「う~ん…仲間が逃げてきたら自分たちも逃げるかなとも思ったけど…」
アイ「それとも群れで向かってくるかなってちょっと思ってたけど、違うなー…」
アカリがアイに手を振って合図する。
アカリ「私たち、右手の方を進んでいくから。」
アイ「オーケー…」
アユミ「無理しないでね…」
ツグミ「わかった。」
いよいよ二手に分かれてゴブリンたちのいる山に入っていく。
アカリたちは木と木の間に
ゴブリンは慌てて木々の奥の方へとぞろぞろ逃げ出した。
逃げずに向かってこようとした一団に、ツグミが「ウィンド・ブロウ」を出す。
ブオー、ブオー
ウギャ、ウギャ、ウギャ…
ソラ「風の勢いにびっくりして逃げ出した…」
アカリ「上へ行ってる?」
タクミ「上にも下にも行ってるみたい。」
ソラ「ツグミ、こっちきて…」
ツグミ「わかった。」
アカリ「待って、まだこっちにも
ゴブリンは牙を
だが足が遅く、背も低い上に牙にも爪にも怖さが無いので、アカリたちにその攻撃は全く通じない。
アカリもタクミもソラも
木剣で叩かれたゴブリンは血を流すものもそうでないものもいるが、どれも一発で伸びて動かなくなった。
アイたちも木剣と魔法で山の中、木々の間の道なき道を伝ってゴブリンたちを追い回す。
アイ「クソー、またあいつら下に逃げた…」
ルカ「こっちはいいよ、また下から追い立てるから…」
ナオ「「ウィンド・フラッシュ」!」
ナオが起こした風に驚いて、ゴブリンたちはバラバラになって逃げていく。
あるものはパニックになったのか、アイたちに向かって走ってきた。
ゲェー、ゲェー…
ウギャ、ウギャ、ウギャ…
モア「こっちへこないでよ!もう…「ウィンド・ブロウ」!」
ルカ「あっちから上へ行ってるみたい…」
どれだけいるのか分からない程のゴブリンたちは叫びながら上にも下にもぞろぞろと逃げていき、なかなか山の上に追い立てるというわけにはいかない。
しばらくの間、ゴブリンを
流石にアイたちも疲れてくる。
ソラ「ダメだー…殴っても殴っても追いつかねえ…」
タクミ「どんだけいんだよ、こいつら…」
ツグミ「疲れてきちゃった…」
アカリ「このままじゃあ、疲れ切っちゃうね…とりあえず一回山を降りよう…」
アカリが指示して木々の間を抜けて道のところまで出てくると、ちょうどアイたちもゴソゴソいいながらそこまでやって来たところだった。
アカリ「そっちは大丈夫だった?」
アイ「ああ、ありがとう…こっちは大丈夫。そっちは?」
ソラ「こっちも大丈夫。」
モア「全然ダメだよ…棒で叩いても、魔法してもちっとも減らないよ…」
アユミ「まあまあ、文句は降りてからにしよう…」
ナオ「とりあえず山を下りたところまで戻ろう…」
アイ「だね…」
アイたちは皆、山を下りてきたところでもう一度山を見上げた。
「ギャー、ギャー」と鳴いているゴブリンたちがまた山の少し上の方から降りてきているのを見て、改めて山にいるゴブリンの数の多さを感じる。
そのせいか、みんな山から少し離れた場所まで来ても言葉一つ発さない。
ソラやモアが地べたに座り込んだのを見て、アユミはすぐにストレージから食べ物と飲み物を出す。
その様子を見て、タクミも自分のストレージから同じように食べ物や飲み物を出し、座っているみんなに配った。
アユミ「みんな、お疲れ様…」
アイ「ごめんね…アユミも疲れてるのに…」
アユミ「ううん…私はみんなにくっついてただけだから…」
タクミ「はい、これ…」
ソラ「ああ…あ、タクミなんだ…ありがとう…」
ツグミ「タクミ君、大丈夫?…」
タクミ「ああ、大丈夫だよ…」
アカリ「それにしても…どんだけいんだよ…」
ナオ「ちょっと50や100って感じじゃないね…」
モア「全然違うよー…」
アイやアカリ、ソラはパンや飲み物を口に運びながらもずっと山を見つめている。対してモアやツグミはもう疲れたのか、飲み物を手にしたまま下を向いていた。
そんな様子に気づいて、ナオとアユミがそれぞれ2人の肩を抱くとツグミは少し微笑んだが、モアはちょっとイヤそうに口を
ルカはモアの正直なしぐさにちょっと笑った。
食事が一段落すると全員が山の方をジッと見つめた。
アイ「う~ん…これはどうしよう…」
ソラ「マジでやり様ないよ…」
アユミ「ちょっと単純すぎるかもしんないけど…とにかく最初はできるだけ叩いて、数を減らすようにしてったらどう?」
アユミの提案にアカリとモアは首をかしげる。
アカリ「叩いても叩いても減らない気もするけど…」
モア「減らないよー…」
ルカ「そうかなぁ…時間はかかるかもしれないけど、無理に追い回すよりもいい気がするけど…」
ナオ「確かに…やることが分かりやすくなるよね…」
タクミ「とにかく叩いて倒して、数を減らすか…」
みんなは山を見つめながら黙ってしまう。しばらくして、アイが口を開いた。
アイ「いろいろ考えてみたけど、やっぱりアユミが言うのがいいかもしんない…っていうか、他のやり方が思いつかないんだけど…」
ナオ「わかる…私もとりあえず今はそのやり方しかないと思う…」
ソラ「タクミが言うように、わかりやすいね…確かに…」
アカリ「切り替えて、それでいこうか…」
ツグミ「分かった…」
アイやアカリはその作戦でいこうとするが、モアは納得できない。
モア「えー、それって終わるー?」
アイ「終わるかどうかじゃなくて、終わらせるの。」
アユミ「アイの言う通りだね…終わらせなきゃ、ね…」
ソラ「仕方ねえなー…」
ルカとツグミがモアの肩を叩いて、互いに不安を打ち消し合うようにうなずき合う。
ルカ「(笑)…がんばろうよ…」
ツグミ「うん、がんばろう。」
モア「…うん…」
アカリ「そうと決まったらお腹にもっと入れて、もういっちょがんばろう!」
ソラ「よっしゃ!」
ルカ「アカリはわかるんだけど、ソラも結構体育会系なんだね(笑)…」
さっきから誰よりもやる気満々のソラを見て、ルカが半分
ソラは元の世界だと何をするにもあまりやる気を見せなかったのを思い出したのかもしれない。
アユミは元々運動部だったルカがそんなことを言うので、ちょっと不思議そうな顔をする。
アユミ「ルカもそうじゃないの?(笑)…」
ルカ「えー、どうなんだろう?(笑)…私、バレー部だったけど自分はそんなノリじゃないから(笑)…」
ソラ「えっ?こんな剣とか持ったら、燃えてこない?」
ルカ「こないよー(笑)…」
ナオ「こない、こない(笑)…」
モア「燃えるー‼」
ルカと違って、さっきまで不安そうな顔をしていたモアがなぜか気分を高めて棍を振り回す。
そんな様子にみんなついつい笑ってしまった。
アユミ「モアはソラに合わせてるだけじゃん(笑)…」
アカリ「いや、あんたは絶対に燃えちゃダメだよ(笑)…」
モア「いいじゃん、燃えるー‼」
ツグミ「なんで、急に?(笑)…」
ソラ「よっしゃ、燃えて行くぞー‼」
アイ「なんか、あんたらだけノリが違うけど(笑)…」
アイたちは食事を取って身体を休めると、もう一度ゴブリンの群れへ向かっていくことにする。
ルカ「どれぐらいまでするの?まさか陽が沈むまで?」
モア「それはさすがに無理だよー…」
アイ「え~と…」
ナオ「じゃあこうしようよ。まだ昼を過ぎたぐらいだから、あと2時間ぐらいゴブリンをやっつけて今日は終わりにしよう。その後にテントを張ったりもしなきゃだめでしょ…」
ソラ「そうか、終わったら帰って寝る、じゃなかった…」
ナオに言われて、みんなやるべきことはゴブリン退治だけでないことを思い出した。
アユミ「テント張るって、終わってもここに残るの?」
タクミ「村まで戻ってもそう遠くないけど…」
アカリ「でも、宿に泊まったらお金が
ツグミ「確かに…」
アイ「やっぱりここにテントを張ろう。相手はゴブリンだけどどんなことが起こるかわからないし、ここだと朝夕わざわざ移動しなくてもいいし…」
食事も終え、エネルギーも十分に補給し、これからすることがはっきりしてきて、みんな立ち上がって山を見上げる。
誰の眼にもやる気がみなぎっていた。
ナオ「じゃあ、今日戦うのはあと2時間ぐらいでいいかな?」
ソラ「わかった。」
アユミ「うん。」
モア「り(了解)、り、りー‼」
ツグミ「(笑)…」
アカリ「モアはふざけてんじゃないよね?(笑)…」
ソラ「やる気の
アイ「まあいいよ(笑)…じゃあ、始めよう!」
今度も最初に分けた組になって、再び山へ向かう。
ゴブリンは山の上へと逃げていったりはしていないが、樹々のすき間から何かこちらをうかがっているような感じがする。
そしてアイたちが山の中へと入っていくと、一斉に散らばって逃げ出した。
ギャー、ギャー、ギャー…
アイ「上に行ったとか、下に行ったとかは気にしないで。」
ルカ「とにかく数を減らすのね。」
ナオ「気をつけて!こっちに向かってくるのもいるよ。」
モア「あ~ん、近寄ってこないでよー!」
アイとルカはゴブリンを追いかけていって、一匹々々木剣で倒していく。モアやナオ、アユミは「ウィンド・ブロウ」で距離を取りながら、棍で離れつつ殴っていく。
アカリたちも同じように無理してゴブリンを追い払うことはせず、とにかく近くにいるのを倒すことに専念した。
ウギャ、ウギャ、ウギャ…
ギャー、ギャー…
アカリ「えい、えい。タクミ!そっちに一匹行ったよ!」
タクミ「わっ、飛び出してくんなよ、コイツ!」
ソラ「「ウィンド・フラッシュ」‼よし、こっちは二匹やったぜ。」
ツグミ「あー、ソラちゃん!そっちへ群れが行ったよ!」
ソラ「大丈夫。まかせなさい。」
タクミ「俺も今、行くよ!」
アカリ「バラバラにならないでね。」
最初は逃げてばかりのゴブリンも固まって反撃しようとしてくる。
だが、アイやアカリたちはモアやツグミの防御魔法も使ってうまくゴブリンの突進を
多くの仲間がやられたせいか、ゴブリンたちは徐々に群れ全体で山の上の方へと逃げ出した。
その様子を見てアイが仲間に声をかける。
アイ「ねえ、ゴブリンたちが山の上へ逃げ出してるよ!追いかけて、もっと上へ行くようにしよう!」
アカリ「わかった!」
ナオ「「ウィンド・ブロウ」で上へと追い立てようよ!」
モア、ツグミ「了解‼」
ウギャ、ウギャ、ウギャ…
ナオやモア、ツグミやソラが木々の間からゴブリンへ向けて「ウィンド・ブロウ」を放つと、ゴブリンたちはその風の勢いに驚き、更に山の上へ向かって逃げ出した。
無数の獣たちが山をぞろぞろと上っていく様子はちょっと
ナオたち魔法使いはゴブリンたちを「ウィンド・ブロウ」で
二つのグループに分かれていたアイたちも、いつの間にか合流して逃げていくゴブリンを追っていた。
ジグザグになっている山道を
ルカ「ここでちょっと休憩しない?」
ソラ「っていうか、もう言ってたぐらいの時間じゃない?」
モア「じゃあ、ここで終わり?」
アイ「せっかくゴブリンが逃げてるのに、ここで止めたらまた元に戻っちゃうかも…」
ナオ「言ってることは分かるけど…」
ナオがアイにそう言いながら山の向こうへと視線を向けると、太陽はてっぺんから少しずつ
ナオ「アイの気持ちは分かるけど…深追いはマズいんじゃないかな…」
アカリ「確かに…これ以上がんばって、もし暗くなって山の中でゴブリンに囲まれるとどうなるか分からないし…」
アイ「う~ん…」
アイが首をかしげて考え込むのを見て、アユミは他のみんなを見渡す。
アユミ「モアやツグミはどう?疲れてない?」
ツグミ「えっ…まだ、それほどでも…」
ツグミが言いよどんだので、ルカは彼女に近寄る。
ルカ「ツグミちゃん、気にしないで正直に言った方がいいよ…無理しちゃダメだし…」
ツグミ「う~ん…実は結構疲れちゃってる…」
モア「私も疲れたー…」
アカリ「(笑)…」
モアもツグミも正直に疲れていると言ったので、アユミはアイに歩み寄った。
アユミ「アイが言ってるのもよく分かるんだけど、もう疲れている人もいるし、ここは無理せずに元の場所に戻る方がいいんじゃないかな…」
アカリもうなずく。
アカリ「疲れてる人が怪我でもしちゃったら、しばらくゴブリン退治もできなくなるし、そうなるとまた一からになっちゃうから、ここはアユミの言う通り、一度
ナオ「そうだね…無理は禁物だね…」
みんなに言われて、アイもやっとうなずいた。
アイ「そうだね…無理しないってあんだけ言ってたのに…
今日のところは一旦山の麓まで戻ろう。」
ソラ「了解!じゃあ、その前にちょっと水飲んでいい?」
ルカ「(笑)…ソラ以外に水飲む人は?全員かな?」
アカリ「全員にお願い(笑)…」
全員がその場に座って水分を
ソラ「フー、この感じ、これ以上あいつらを追いかけるのは無理そう…」
ルカ「やっぱ疲れてんだよ…」
アカリ「私が最後尾になるから、下りる時も気をつけてね。後ろから逆襲されないようにね…」
ナオ「わかった…『
ツグミ「私も…」
アイ「じゃあ、まだ元気があるうちに、山を下りよう!」
アカリとルカが最後尾になって後ろに注意しながら、アイたちはそろそろと山を下り始めた。
モアとツグミは山の上にいるゴブリンが気になるのか、何度も振り返ってその様子を確認しようとする。
アカリ「モアもツグミも、こっちは大丈夫だよ…」
ナオ「2人ともしっかり前見てないと、足元危ないよ…」
ツグミ「わっ⁉」
ナオの言葉が終わらないうちに、ツグミが足を
隣にいたモアとすぐ前にいたアユミが急いでツグミの身体を支える。
アカリ「ほら、言わんこっちゃない…」
アユミ「ツグミ、大丈夫?」
ツグミ「2人ともありがとう…2人のおかげでこけずに済んだ…」
モア「もう大丈夫だよー…」
モアが笑いながら手を離すと、今度は自分が足を滑らせた。
モア「キャー‼」
アユミ「モア!」
アカリ「モア!」
あまりに一瞬のことだったので、ツグミもアユミも反応できなかったが、モアは何とかすぐそばの木につかまって
アカリが坂を飛び降りるようにしてモアのところまで来ると、モアは少し傾いた木に必死にしがみついていた。
モアが大声を出したので、アユミやツグミだけでなくアイやナオもやってくる。
モアはアカリの腕につかまりながら木から離れた。
モア「あ~ん、マジ怖かったー!」
アカリ「気を抜くからだよ…」
アイ「大丈夫?」
アユミ「大丈夫みたい…うまく木につかまったから…」
モア「もうヤだよー…」
ツグミ「モアちゃん、一緒に下りよう…」
モア「うん…ありがとう…」
元々運動があまり得意ではないツグミとモアだが、疲れで余計に足元がおぼつかないのかもしれない。
ルカ「後ろは大丈夫だから、ゆっくり下りたらいいよ…」
ナオ「そうそう。何も感じないからね…」
アカリ「アユミもナオも先に行っていいよ…私がそばにいるから…」
アユミ「ありがとう…」
モア「アカリ、危なくなったら助けてね…」
アカリ「オーケー(笑)…」
アイ「自分でも気をつけないと…」
アイたちが疲れた身体を引きずりながら山から下りてくると、太陽は目の前の山の、更に向こうに連なる山の方へと傾いていた。
アイ「とにかくテントを張って、今晩はここで泊まろう。」
タクミ「じゃあ、すぐに出すね。」
ソラは気合いを入れ直すように一度大きく伸びをする。
ソラ「よおし、もう一仕事がんばろう。」
アカリ「みんなでやるとすぐに出来るよ。」
大きいテントを建て、火と食事の用意をすると辺りはもう暗くなってきていた。
危険な反撃を受けるような
食事が終わると誰もが飲み物を手にぼんやりと山を見上げた。ツグミがポツリと言う。
ツグミ「明日じゃ、終わらないね…」
みんな同じことを思っていたのか、ツグミの言葉に黙ってうなずく。
ソラ「思ってたのと全然違った…」
アカリ「マジそう…」
ナオ「危険じゃないけど…」
ルカ「こんなの、いつ終わるんだろう…」
誰もが深くため息をつく。アイだけがずっと山の方を見つめたままだった。
アイ「とにかく地道に一匹ずつやっつけていこう。
今日はそうしたら山の上へ逃げ出したから、ひるまずにやってくと絶対に山の向こうへ逃げてくよ…」
アユミ「そう信じるしかないね…」
アカリ「そう、
モア「もう、サッサと山の向こうへ行っちゃってよ…」
ソラ「じゃあ、大声でそう言ってみたら?(笑)」
モア「わかった。明日、山に向かって叫ぶから…」
ルカ「モアちゃん(笑)…」
モアが意外に真剣にそう言うので、みんなはクスクス笑ってしまう。
アイがそんなモアをなだめる。
アイ「モアの気持ちは分かるけど…そのエネルギーを魔法に使ってね…」
ナオ「だよね(笑)…」
モア「じゃあ、叫ぶつもりで「ウィンド・ブロウ」を出す!」
ソラ「お願いします(笑)…」
全員「(笑)…」
変わらず真剣なモアの表情に、みんなは笑いをこらえられなかった。
ナオ「今日はもう休んで、明日に備えよう。」
テントに入ったアイたちは無駄話もせずに、みなすぐに眠りに落ちていった。
楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、お気に入りや評価をいただければ励みになります。
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