※この作品はR-18です。

ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~   作:イジー・ムラシロ

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63 二度目の宴

 太陽はすっかり高くなり、鳥の声と虫の声がひっきりなしに聞こえくる。

 アイたちは昼食を食べながら、改めてこれからのことを話し合った。

 

アイ「ツグミが言うみたいにずっと何も言わないわけにはいかないけど、それでも2,3日はここにいてもいいんじゃないかな…」

ソラ「クエストは終わってるからね…」

ナオ「もし村の人が見にきたら?…」

アカリ「そん時は正直に言えばいいんじゃない?」

アユミ「うん、別に変なことしてるわけじゃないし…」

アイ「それぞれの練習なわけだから…」

 

 多くはこのままここにいるという意見に(かたむ)くが、やはりツグミには引っかかるようだ。

 

ツグミ「でも、お願いした方なら…すぐに結果を知りたいと思うの…」

ルカ「…それは確かにそうだよね…」

ソラ「う~ん…」

 

 また議論が堂々巡(どうどうめぐ)りになってきたところで、ナオが急に立ち上がる。

 

ナオ「ねえ、何かが村の方からこっちへ向かってくる…」

 

 アイとアカリも立ち上がって、村への一本道の方をうかがう。ツグミとモアも同じように立ち上がった。

 

ツグミ「こっちへ来るのは人みたいだから、村の人じゃないかな?」

アイ「確かに人だね…」

アユミ「村で何かあったのかな?…」

 

 こちらへやって来る人影がだんだんとはっきりとしてくると、それはここまで案内してくれたキトルだった。

 アイたちは(あわ)てて自分たちから彼の方へ近づいていく。

 

キトル「皆様、ご苦労様です。」

 

 キトルはアイたちが自分を(むか)えにやって来たのを見て皆に会釈(えしゃく)するが、フードしていないアイ以外のメンバーもほとんどが若い女性と分かって少し驚く。

 それでも彼は礼儀正しい様子を崩さなかった。

 

アイ「こんにちは、キトルさん。どうされましたか?」

ナオ「何か問題でもありましたか?」

 

 アイたちがこわごわ顔を(のぞ)き込んでくるのを見て、キトルは手を振って笑う。

 

キトル「勇者の皆様にご心配をおかけするようなことではありません。

 実は村人から昨日まで山で(ひび)いていたゴブリンたちの鳴き声が聞こえなくなったとの話があり、村長が私に山の様子を確認し、皆様から話をうかがうようにと申し付けられました。」

 

 キトルはそう答えると、改めて山の方を見上げる。

 

キトル「私がここまで来る間に山の様子を見ておりましたが、やはりゴブリンの群れは見当たらないように思いますが、いかがでしょうか?

 ゴブリンの群れはいなくなりましたか?」

 

 アイはみんなの顔を見渡すと、キトルの眼を見てうなずいた。

 

アイ「おっしゃる通りで、ゴブリンの群れは山の向こうへと去っていきました。

 群れをこの山の向こう側の、もう一つ奥の山の方へ追い立てていってそこでクマのように大きなゴブリンに遭遇(そうぐう)して…」

ナオ「アイやアカリやソラがその大きなゴブリンを倒したところ、群れ全体が奥の山の方へ逃げていきました…」

キトル「そんな大変ことが…」

 

 話を聞いたキトルは何度も大きくうなずいた。

 

アユミ「昨日と今朝と、ゴブリンの死骸や魔石をみんなで手分けして片付けましたが、その間にゴブリンがまたやって来たりはしなかったのでもう今回は大丈夫だと思います。」

 

アイ「彼女の言う通り、大きなゴブリンを倒してからはゴブリンの姿は見ていないのでもうここまではやって来ないでしょう。」

 

 アイとアユミが断言したのを聞くと、キトルは慌ててアイたちの前に(ひざまづ)いた。

 

キトル「勇者の皆様、村を救っていただき、本当にありがとうございます。

 あれだけのゴブリンの群れをわずか3日で追い返すとは見事としか言いようがありません。

 村の者に代わって、心から感謝を申し上げます。このことを急いで村のみんなに伝えようと思います。」

 

 キトルが丁重(ていちょう)に礼を言う姿を見て、アイたちは当惑(とうわく)気味にお互いの顔を見る。

 キトルは立ち上がると、すぐにそんな彼女たちの様子に気づいた。

 

キトル「まだ何か問題がおありでしょうか?」

アユミ「あの~…」

 

 みんなが言いにくそうにするので、仕方なくアイが口を開いた。

 

アイ「実は少しだけここに残って、自分たちの武術などの練習をしようと話し合っていたんです…」

ナオ「村だと皆さんのお邪魔になると思ったので…」

 

 アイたちが口ごもる様子に、キトルは黙ってうなずく。

 

キトル「そうですか、武術の訓練をなされようと…それですぐに報告に来られなかったのですね。」

ソラ「いや~、後片付けも全部終わったのはホントにさっきなんで…」

 

アユミ「そうなんです。それでクエストの結果を報告するために村に戻るのか、しばらくここへ残るのか相談していたんですが、決められなくて…」

アイ「やっぱり、村の皆さんはクエストの結果を知りたいですよね?…」

 

 恐る恐る尋ねるアイに、キトルは笑顔を見せた。

 

キトル「皆様のおっしゃることはよく分かります。

 ですが村長を始め、村の者はゴブリン退治がどうなったのか、その結果を知りたがっておりますので、やはり私と共に村にお越しいただくのがよろしいのではないでしょうか。」

ナオ「そうですよね…」

アイ「私たちの勝手を言う訳にはいかないですよね…」

 

 アイやナオが少しうなだれるのにキトルは笑顔で首を横に振る。

 

キトル「どうでしょうか…村で今度のゴブリン退治を(いわ)った後、またここへ来られて武術の訓練をされれば良いのでは。

 そうすれば村のことも気にせずに、じっくりとご自身のことをなされることができるのではないかと思いますが…」

アカリ「でも、そんなこと…」

ルカ「いいのかな?…」

 

キトル「皆様は村の恩人です。村長が皆様がここにおられるのを許せば、誰も文句など申さないでしょう。

 それにここは畑ではありませんし、猟師(りょうし)たちが山に入るとしてもこの辺りだと特に猟の邪魔にはならないでしょう。

 どうですか、一度私と村へ戻っていただけますか?」

 

 キトルの言葉を聞いて、アイたちは並んで頭を下げた。

 

アイ「ありがとうございます。私たち、何となく能力はあるんですが、まだまだ世間知らずなので…

 すいません、自分勝手なことばかり言ってしまって…」

 

 アイの言葉を聞いてキトルは軽く笑う。

 

キトル「私はまだ皆様とわずかしかお話しておりませんが、皆様は少し周りのことを気にし過ぎではないでしょうか。

 皆様が村で訓練をされても村の者は自分たちのことに(いそが)しく、何も気にしないと思います。

 

 村への報告のことも、皆様が終わったと思うタイミングでおっしゃられても全く(かま)いません。

 もちろん村の一員としてはすぐにおっしゃっていただければありがたいですが、何を持ってクエストが終わったのかは我々には分かりませんので…。

 

 結局のところ、勇者パーティーである皆様が終わったと言わなければゴブリンの姿が見えなくなっても終わりではありません。

 クエストに関しては皆様の専門なので、我々には理解しがたいのです。

 ですから、もっと堂々と振る舞われても構わないのではないでしょうか。」

 

 キトルの話を聞きながら、アイたちはお互いの顔を見合った。

 キトルの態度には一体誰に遠慮をしているのか、よく分からないという様子が見て取れる。

 

 彼女たちは元の世界にいた時から周りの人の顔色をうかがうのが普通になってきたが、必ずしもそんな必要などない。

 彼の言葉の端々(はしばし)にそうしたものが誰にも感じられた。

 

アイ「ありがとうございます。キトルさんのおっしゃる通りだと思いますが、わざわざ着てくださったので、今はキトルさんと一緒に村に戻ってクエストのことを報告したいと思います。」

 

 キトルはアイの言葉に深くうなずいた。

 

キトル「では、早速村へ参りましょう。」

 

 アイたちは急いでテントをたたみ、辺りを片付けてキトルと共に村へ向かった。

 村へ向かう道すがら、アイとアユミが交互にキトルにクエストのあらましをかいつまんで話す。

 

キトル「そうですか…それ程大量のゴブリンがいたとは…」

アイ「はい…でも、その巨大ゴブリンを倒すと噓のように森からいなくなりました。」

 

 キトルは巨大ゴブリンと聞き、足を停める。

 

キトル「実は私がまだ小さかった時、巨大なゴブリンを私の祖父(じい)さんが見たと話していた記憶があります。

 村の長老にはその時のことを知ってる者がいるかもしれません。一度聞いてみるといいでしょう。」

アユミ「今回、私たちがやって来るまでに大きなゴブリンを見かけたという話はなかったですか?」

キトル「私が聞いている範囲では、そうした話は知りません。

 村長もそんな話はしなかったので、誰もそんなものがいるとは知らなかったと思います。」

ナオ「やっぱり…」

 

 キトルと話している間に一行は村に戻ってきた。

 村に入るとすぐに若い男たちがアイたちのところへやって来て、先頭の男が頭を下げる。

 

男「村長が首を長くして皆様をお待ちです。すぐにこちらへ…。」

 

 キトルもうなずき、一同は急いで初日に行った村長の家へと急いだ。

 村長の家の前にはもう20人ほどの男たちが集まって、アイたちの到着を待っていた。

 アイたちはそんな人たちに並んで頭を下げる。

 

アイ「皆さんをお待たせして、申し訳ありません。

 もうお気づきと思いますが、無事にゴブリンの群れを山の向こうへと追い払うことができました。

 当分の間はゴブリンがあの山までやって来るはないでしょう。」

 

 村長を始め、そこにいた一同がゴブリンの群れが去ったと聞いて胸をなでおろしたようだが、なぜかアイの言葉に怪訝(けげん)そうな様子をしている。

 村長も不審(ふしん)そうに口を開く。

 

村長「ゴブリンたちを追い払っていただいたことはありがたいですが、当分はやって来ないとおっしゃられるのはなぜでしょう?」

 

 アイは傍にいるナオやアカリの顔を見る。2人が黙ってうなずくので、改めて話し始める。

 

アイ「実はゴブリンの群れは200匹から300匹ほどのかなりの大群でした。

 私たちがゴブリンたちを手分けして倒していくと、ゴブリンたちは山頂の向こう側の奥の山にある森の中へと逃げていきました。

 私たちがその後を追っていくと、その森で体長が2メートルはありそうな巨大なゴブリンが出てきたんです。」

 

 アイが巨大ゴブリンのことを口にすると、村長を始め、その場にいた男たちはみな顔を見合わせ、「う~ん」と(うな)った。

 アイは話を続ける。

 

アイ「私たちが何とか力を合わせてその巨大ゴブリンを倒すと、いつの間にかあれだけいたゴブリンたちが一匹残らずいなくなっていました。

 私たちにはよく分からないんですが、恐らく倒した巨大ゴブリンが魔獣たちが大群で現れた理由の一つだったのではないかと思っています。」

 

 村長はいつの間にか腕組みをしてアイの話を聞いていたが、彼女が話し終わるとアイたちに尋ねた。

 

村長「巨大ゴブリンを倒されたとおっしゃられたが、その倒した(あかし)はありますか?」

アイ「はい、ゴブリンの死骸を持ち帰ってます。」

 

 アイがそう言ってタクミに目配せをすると、タクミはすぐストレージからその場に巨大ゴブリンの死骸を出した。

 そのゴブリンのあまりの大きさに村人たちは大声を上げながら近寄り、ある者は実際に触ってその様子を確かめる。

 すると、腰が曲がり(つえ)をついている老人が低い声で話し始めた。

 

老人「わしがまだ子どもだった頃、それこそ山を(おお)いつくすほどのゴブリンが現れた時があった。

 村の者総出で追い払おうとしたが、少しも減らなかった。

 

 そこでわしの祖父(じい)さんが人を集めて山の奥へ入っていき、とうとうクマのように大きなゴブリンの死骸を持って帰ってきたのじゃ。

 その時から確かにゴブリンの群れは山からいなくなった。

 わしの祖父さんはこのデカいゴブリンを「ビックゴブリン」と呼び、ビックゴブリンが出てくる時には大量のゴブリンを連れてくるのだと言っていたのう。」

 

 老人はそう話すと、改めてタクミが出した巨大ゴブリンの死骸を見て、何度も首を振った。

 

ナオ「じゃあ、やっぱりこの巨大ゴブリンがゴブリンの大量発生の原因なんですね?」

老人「わしには難しいことはわからん。

 だがわしが子どもの頃も今度も、同じようにゴブリンが山のように出てきて、ビックゴブリンを倒すといなくなったのじゃから、やはりこのビックゴブリンが出てきたのがゴブリンが群がって現れた理由(わけ)なんじゃろうな…」

 

 老人の言葉を聞いて、アイたちも村人たちも少し黙ってしまう。

 それを見て村長が口を開いた。

 

村長「今の話を聞くと、確かにこのデカいゴブリンを勇者の皆様方が討ち取られたことでゴブリンどもがいなくなったのは間違いあるまい。

 皆、この勇者の皆様に礼を言わんと…」

 

 村長がそう言ってアイたちの前に(ひざまづ)くと、他の村人たちも全員が彼女たちの前に跪き、頭を下げた。

 

村長「皆様のお言葉を疑い、申し訳ありません。

 この度は大量のゴブリンを山から追い払い、このような巨大なゴブリンまで討ち倒して頂き、村の者一同、皆様に心より感謝申し上げます。

 本当にありがとうございました。」

 

 レアの村でも村長やドニアたちに礼をされたことはあったが、村人たちの多くにここまで丁重な礼をされて、アイたちは戸惑(とまど)いながらも自分たちも頭を下げた。

 

アイ「ゴブリン退治の報告が遅くなり、申し訳ありませんでした。山に散ったゴブリンの死骸などの片付けもありましたので…」

 

 アイの言葉を聞いて、村長は顔を上げて何度も首を横に振る。

 

村長「遅くなったなど、滅相(めっそう)もありません。

 皆様が山に向かわれてわずか三日であれだけの数のゴブリンが瞬く間にいなくなるなど、神業と言っても過言ではありません。

 皆様は村の恩人です。多くの村人に代わり、改めて感謝申し上げます。」

 

 こちらが何か言うと村人たちがますます丁寧に頭を下げるので、アイたちはすっかり下を向いてしまった。

 やがて村長が立ち上がると、その場にいる村の男たちに指示を出し始める。

 

村長「村を救ってくださった勇者の皆様のために、今晩は(うたげ)(もよお)さなければならない。

 畑に出ている者たちにも伝え、すぐに準備をするように。」

アユミ「あの~…私たちのことは皆さんのお仕事が終わってからで結構ですので…」

ルカ「宴会も無くていいですけど…」

 

 アユミやルカの弱々しい言葉は村の者たちには全く聞こえてないようで、男たちは次々に畑に向かって散っていく。

 キトルもアイたちに会釈をして、どこかへ行ってしまった。

 タクミが急いでゴブリンの死骸をしまっている間に、村長は笑顔でアイたちの方へ向き直った。

 

村長「何もない村ですが、どうかおくつろぎいただけるようにすぐに準備をさせますので…

 宿屋へ案内させますので、しばらくそこでお待ちください。」

 

 村長が大声を出すと、女性が一人やって来る。村長がその女性に何か言いつけると、彼女はアイたちにこちらへ来るようにという身振りをする。

 彼女についてアイたちは先日泊まった宿屋へ向かい、その一室で宴会が始まるまで待つことになった。

 

 せっかく村に戻ってきたのだが、宴と言われて誰の顔色も(さえ)えない。

 ツグミが他の女の子に聞く。

 

ツグミ「またお酒が出るのかな?…」

ナオ「お酒は前といっしょで断ろう…」

アユミ「だね…」

モア「あん時みたいな肉だったら食べれないよ…」

アカリ「それは分かるけどさ…」

アイ「せっかくの歓迎というか、お礼でしょ…」

アユミ「それは断れないよ…」

モア「え~…」

ソラ「ヤバ…」

ルカ「心配だね…」

ツグミ「確かに…」

 

 みな自分たちのための宴だと分かってはいるが、レアの村で出たクマの肉のことを思い出すとあまり気が晴れない。

 

アイ「とりあえずお酒はちゃんと断るから…

 でも食べ物はとにかく出てくるまでは分からないから、どうしてもダメな時はまた考えよう…」

アカリ「そうするしかないね…」

ナオ「ミギアさんがくれた鳥みたいに食べれるものかもしんないし…あんまり心配しないでおこう…」

モア「そうだけど…」

 

 モアだけでなく、ツグミやソラも暗い表情のままだが、アイやナオの言うように宴になるまで分からないことも多い。みんなは黙ったまま宿で横になった。

 

 みんないつの間にか眠ってしまっていて、女性の呼び声で眼を覚ました。

 

女性「勇者の皆様、大変お待たせいたしました。

 宴の準備ができておりますので、こちらへお越しください。」

 

 アイたちは慌てて起き上がり、女性のあとについていく。

 ソラやモアはまだ起き抜けの顔のままだ。

 

モア「う~ん、目覚ましにお酒を一杯(もら)おうよ…」

ソラ「う~ん、今はちょっとだけサンセー…」

アカリ「二人とも、なに言ってんの(笑)…」

アイ「ダメに決まってんでしょ。」

 

 アユミとルカがそれぞれモアとソラの肩や背中を何度も軽く叩く。

 

アユミ「はいはい、しっかり眼を覚まして…」

ルカ「ソラちゃん、しっかり…」

ソラ「ああ、ありがと…」

ナオ「どっかで顔洗う方がいいんじゃない?(笑)…」

 

 そう言ってる間に、タクミも大きく伸びをする。

 それを見て、アイが止まって軽く彼の頭をはたいた。

 

タクミ「あっ、イテッ。」

アイ「あんたもまだ顔が寝てるよ。しっかりしな…」

アカリ「(ほほ)を引っ叩かれた方がいいんじゃない?(笑)」

 

 タクミは大きく首を横に振る。

 

タクミ「もう大丈夫だよ…そこまでしなくても…」

アイ「ホントにー?しっかりしてよ…」

タクミ「…ハイ…」

 

 アイたちがお互いの目を覚ますように声を掛け合っている間に、宴の場所である広場へ到着した。

 まだ陽は高いが、もう多くの男女が集まっている。

 いくつもの焚き火の横には何羽もの羽根をむしられた鳥と(つぶ)されたと思しき豚の頭が並んでいた。

 

 豚の頭を見てツグミとアユミは顔を見合わせるが、何人かの女の子はクマでないことにちょっと安心した素振りを見せた。

 アイたちが案内された椅子に座ると、そのすぐそばに村長がやって来る。

 まだ村人たちは各々勝手に話をしているのだが、村長はそんなことを全く気にせずに大きな声で話し始めた。

 

村長「ここにおられる勇者の皆様のおかげで、山を(おお)うほどいたゴブリンの大群はいなくなった。

 今日はそれを(しゅく)してみなで祝いの宴を始める。」

 

 まだ皆にお酒も回っていないまま、村長の言葉で宴は始まった。

 アイは慌てて、そばに来た女性に声をかける。

 

アイ「あの~、私たちみんな、お酒を飲むと気分が悪くなるので、申し訳ないのですがお水をお願いします。」

 

 それを聞いた女性はアイに会釈をしてどこかへ行くと、やがて別の女性と共にいくつもの木のコップが載ったお盆を手に戻ってきた。

 

女性「村の井戸水ですが、どうぞお()し上がりください。」

 

 何人かがそう言われて口をつけてみると、確かに入っているのは水だ。ホッと胸をなでおろしていると、焼けた肉も配られる。

 周りの村人たちがしているようにそのまま手づかみで口に運ぶと、それは豚肉を塩とコショウだけして焼いているようだ。

 今まで食べてきた肉と比べるとまだ動物(くさ)さは残っていたが、レアの村で食べたクマ肉と比べると十分に食べられるものだった。

 

 村長の言葉で何となく始まった宴は、盛り上がりもなく、淡々(たんたん)と続いたが、それでも時々アイたちに感謝を言いに来る村人の様子を見ているうちに、自分たちの行動が村の人々の役に立ったのだという実感が少しずつ彼女たちにも()いてきた。

 宴は日が暮れても続いた。

 

 

 

 

 

 

 




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