ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
アイたちは結局この後もさらに二日間この山の
アユミ、ルカ、ナオがみんなと協力してもう一度レンズ豆のスープを作ったりもして、全員が久しぶりにリラックスした日々になった。
最後の夜。他のみんながスープを口に運んでいる中、アユミとルカが互いに
アユミ、ルカ「あの~…皆さんに報告があります…」
2人が急に改まった様子で話し出したので、他の子は驚いて顔を上げた。
アイ「えっ、なに?」
ナオ「うん?なんかあったの?」
ソラ「なに、ちょっと改まって…コワイよ…」
だが、アユミとルカはまた小さく笑ってから話を続ける。
アユミ「え~と…実は…カレールーが出せるようになりました!(笑)」
モア「やったー!」
アカリ「マジでー!スゴイ!」
ツグミ「やった!」
全員が拍手をしたり横の人とハイタッチをしたりする中、ルカも改まった様子で言う。
ルカ「えー…私の方は…お米が出せます!」
アイ「っていうことは…」
ソラ「カレーライスが出来んじゃん‼」
アユミ、ルカ「そーでーす‼(笑)」
ナオ「やったね!」
モア「やったやった!」
やっとカレーが食べられると知り、全員が爆笑して拍手をしたり隣の人に抱きついたりする。ニコニコのソラがアイに提案した。
ソラ「ねえねえ、じゃあ明日ここでもう一泊しない?」
アカリ「カレー作るためだけに?」
モア「大サンセー!」
ソラ「ねえ、いいじゃん。」
ナオ「アイ、どうする?」
アイ「気持ちはわかるけど…」
ソラとモアは胸の前で両手を合わせるが、アイは少し腕組みをして考えてから首を振った。
アイ「昨日とか、今日の早い時間に分かってたら変えてもよかったんだけど…」
アカリ「2人ともいつわかったの?」
アユミ「私は今日の夕方…」
ルカ「私も同じぐらい…」
ナオが他の子にここで過ごした日数を確かめる。
ナオ「ここに来て、どれぐらいだっけ…」
ツグミ「クエスト抜きで?じゃあ、四日目?」
ソラ「たぶんそれくらい…」
タクミ「クエストも含めると、結構経ってると思う…」
アカリ「まあ、確かに…」
ソラやモアだけでなく他のみんなもカレーが食べたい気持ちはあるのだが、タクミが言うようにかなりの日数ここにいるというのも分かっていた。
アイはまだしばらく黙っていたが、うなずいて口を開く。
アイ「やっぱ明日は村に戻ってドムニの町に帰ろう。
それでドムニでまた新しいクエストを決めて、行った先で今度こそカレーを作ろうよ…」
誰もがアイの言葉に黙り込むが、ナオやアカリは少し考えてから顔を上げてうなずく。
ナオ「まあ、アイの言う通りかな…これ以上ここにいるばっかりじゃねー…」
アカリ「確かに…まあ次のクエストを探して、そこで作るのでいいんじゃない…」
モア「…ゔゔゔゔ…カレー…」
ルカ「まあまあ…カレールーもお米もここでしか出せないとかじゃないから…」
アイ「じゃあ、みんな明日出発でいいね…」
ソラ「仕方ない、り(了解)!」
アユミ「了解です(笑)…」
アカリ「オーケー(笑)…」
カレーへの心残りはあるものの全員がとりあえず明日の朝、ここを引き払うのを了解し、みんなは食事を終えた。
食事の片付けをしていると、ナオがアイに聞く。
ナオ「明日はいつぐらいに出発する?」
アイ「う~ん…どうしよう?」
2人の話を聞いてアカリとソラも加わる。
ソラ「朝食終えたらすぐ出発?」
ナオ「それでもいいんだけど…村に戻ってすぐに駅馬車があるわけじゃないでしょ…」
アカリ「朝に村に戻って…村長さんと話しても…」
アイ「確かに明後日に馬車が出ても、明日の午後は丸々空いちゃうね…」
ソラ「駅馬車がいつ出るのか、聞いとけばよかった…」
ナオ「いや、元の世界みたいにその日にやって来るとは限らないよ…」
アカリ「いろいろ不便だね…」
アイはナオに言われて少し考えるが、今度はナオに尋ねる。
アイ「ナオはどう思うの?もうお昼に出る?それとも夕方にする?」
ナオ「お金のこと、つまり
それが気になってて…その話が長くなると困るから…」
アイ「じゃあ、やっぱり昼食を食べたら出発しようか…」
アイがそう言うと、他のみんなも集まってきた。アイは改めてみんなに伝える。
アイ「明日は昼食を食べてから村に戻ろう。」
モア「じゃあ、その間にカレー作ろうよー…」
アユミ「カレーは煮込む時間がいるから、半日じゃちょっと無理だよ…」
モア「…ゔゔゔゔ…」
ルカ「だから…今度ちゃんと作るから…待っててね…」
モア「…無理かも…」
ソラ「なに言ってんの(笑)…」
モア「いいよ…今晩、夢に見るから…」
全員「(笑)」
モアが多少
次の日。みんなは朝食を終えると、それぞれ分担して食器を洗ってテントの周りを片付けると、午前中は武術や魔法の練習をした。
クエストに費やした日数も含めて1週間ほどの短い期間だったが、それでもほとんどのメンバーが自分たちの実力が上がっているのを実感していた。
陽も高くなり昼食も終えるとみんなはテントを
一時間ほどで村に着くとすぐに村長の家を訪れる。
だが、村長は畑仕事のためにいない。村にいた女性がわざわざ彼にアイたちが戻ってきたことを知らせてくれた。
村長は15分ほどで戻ってきた。
村長「ようこそ戻ってきてくださいました。村を離れての日々はいかがでしたか?」
アイ「わがままを言って、すいませんでした。いろいろなことができたので、充実していました。」
村長「それは良かった…では、こちらへお
村長が戻りがけに村人たちに声を掛けたのか、彼の家の前には人数分の椅子が置かれていた。
彼は手でそれらの椅子を
そして家からまた出てきた時には、手に
彼はそれをアイの目の前に置く。
村長「皆様が留守にされている間に村の者と話をして、できるだけのお金を用意いたしました。
十分とは言えないかもしれませんが、今この村ではこれが精一杯です。どうかお受け取り下さい。」
アイは一度ナオとアユミの顔を見る。2人もうなずいたので、アイは頭を下げてその麻袋を手に取った。
村長「100ゴールド、入っております。どうか、お確かめを…」
アイ「わかりました…では、失礼します…」
アカリとソラ、そしてタクミが立ち上がり、すぐにアイと一緒に袋に入っているお金を数える。
麻袋の中には金貨が20枚ずつ入った小さな麻袋が5つ、確かに入っていた。
それぞれが小さな袋の中の金貨を数えると、アイはもう一度全員の顔を見渡す。
みんながアイの意図を
アイ「確かに100ゴールド、受け取りました。これで今回のクエストが完了ということでよろしいでしょうか?」
アイたちが渡したお金を受け取ったので、村長はホッとした表情をする。そしてアイの言葉を聞いて、大きくうなずいた。
村長「今回は
元々の
村長はアイたちの前に
アイたちはその丁寧な礼に
アイ「こちらこそ話を聞いて頂いて報酬を増やしていただき、ありがとうございます。今回はこれで十分だと思います。」
村長はアイの話を聞きながらしばらく
村長「皆様がいつお戻りになるのか分からず、お食事などはご用意できておりませんが、宿屋には話をいたしますので今日はそちらでお休み下さい。
ドニアへ向かう馬車は明朝出発と聞いております。」
アイは駅馬車の出発時間のことを聞いてナオやアカリに目配せすると、改めて村長に近づいて握手をした。
村長も笑顔で全員と握手をした。
村長「私はまだ仕事がありますので、申し訳ありませんが失礼いたします。宿屋には必ず連絡をしておきましょう。」
アカリ「今回は本当にありがとうございました。」
村長「こちらこそ十分なお礼もせず、失礼いたしました。皆様が村を守ってくださったこと、村の者にはしっかりと言い伝えたいと思います。」
アユミ「そんな…」
村長はもう一度頭を下げると、また畑の方へと戻っていった。
アイは受け取ったお金をアユミに渡すと、みんなに合図する。
アイ「じゃあ、ちょっと早いけど宿屋に行こう。」
ルカ「今からなら夕食の準備がちゃんとできるよ…」
ナオ「何が食べたい?」
ソラ「肉は焼ける?」
アユミ「了解しました(笑)…」
アカリ「食べることばっかり(笑)…」
モア「楽しみって、それぐらいしかないよー…」
アイ「それは確かにね(笑)…」
さっきまでの改まった雰囲気も終わり、みんなはリラックスした様子で宿屋に向かった。
まだ陽が高い間に宿屋に入ったので、アユミとルカ、ナオを中心に全員で協力して準備をして、夕食はソラが希望した焼肉にみんなで
食事が終わるとアイがナオの隣に座った。
アイ「ねえ…報酬のことだけど…あれでよかったのかな?…」
アイの問いにナオは少しの間彼女の顔をジッと見て、ホッと息を吐きながら下を向いた。
ナオ「正直に言って、わかんない…
たぶんだけど、もっとクエストをしていったらもしかしたら今度のは少なかったとか、思うかもしれないけど…」
アイ「あれぐらいだった気がするけど…」
ナオ「私もね…でもホントのところは分からないよ…」
2人のすぐ横にいたアカリも話を聞いて首を振る。
アカリ「私も分からないけど…でも、結局あの
ナオ「まあ、私もあれ以上の交渉なんて仕方も分からなかったから…」
アイ「う~ん…」
3人とも押し黙ってしまうが、しばらくしてアイがポツンと言う。
アイ「お金って…難しいね…」
いつの間にか他のみんなも3人の話に耳を
アユミ「でも…私たちって
アカリ「まあ、そうした基本的なものを求めてあくせくしなくても大丈夫だからね…」
ナオ「それはそうだけれど…これからも宿屋に泊まったり、馬車も利用したりするから…やっぱりお金は必要だよ…」
ルカ「問題はどれぐらいがちょうどいいぐらいの報酬なのか、ってことだね…」
タクミ「9人もいると、油断してるとお金も無くなっていっちゃうから…」
全員が最後のタクミの言葉に大きくうなずく。それでもナオは首を大きく振ってから言う。
ナオ「まあ、報酬のことはもっとクエストをやっていかないと分からないから…
地道にこれを続けてこう…」
ナオの言葉を合図に、みんなは立ち上がって毛布を出し、それぞれが横になって眠りについた。
そして次の日。部屋から出ると早朝から空はどんよりとしていた。
アイたちは急いで食事をして互いに『ヒール』を掛け合うと、宿屋にお金を払って厩に向かう。
ドニア行きの駅馬車の御者はここにやって来る時に載せてくれた、あの目つきの悪い男だった。
彼は行きの時と同じようにほとんど何も
エブルの村ではクエストの間もそれ以外の時もほとんど雨は降らなかったのが、駅馬車に乗るとすぐにまた雨が降り出した。
ルカがツグミに聞く。
ルカ「ねえ、この雨ってどれぐらい続きそう?」
ツグミ「う~ん…どうもしばらく続くみたい…」
アカリ「じゃあ、また行きの時みたいにずっと雨?」
ツグミ「たぶんそう…」
ツグミがまるで自分のせいのように申し訳なさそうに言うので、アイは首を振る。
アイ「何もツグミのせいじゃないって…
ツグミだってソラだってモアだって、雨が降るかどうかとか、雨が続くかどうかが分かるだけだから…
だからそんな顔しなくていいよ…」
ツグミ「アイちゃん、ありがとう…」
それでもモアは
モア「あ~あ…雨を止ませる魔法とかないのかな~…」
モアの正直な言葉に何人かが「ククク」と笑う。
ソラ「気持ちはわかるけど…」
アユミ「雨も降らないといけないから…」
アカリ「っていうか、そんな魔法って結構大げさなやつじゃない?」
ツグミ「何となく分かるかも…火をつけるとか水を出すとかと違って、空全体に影響するわけだから…」
ソラ「なんか使った後、寝込みそう…体力使い果たして…」
アユミ「大変そうだもんねー…」
モア「寝込んでもいいよー…雨止めー!…」
全員「(笑)」
だがモアの願いもむなしく、雨は一向に止む気配もなく駅馬車はまた
行きも3日の旅程が5日だったのと同様に、帰りもまたドムニの町まで5日掛かることになったのだった。
それでも5日目。陽が傾き始めた頃に馬車はようやくドムニの町に戻ってきた。
9人はみんな雨ばかりの旅程にすっかり疲れ果てていたが、それでも町の門が見えてきてやっと一息ついた。
アイ「とにかく前に泊まった宿に行こう…」
アユミ「後は日が暮れるまでに両替もしないと…」
ソラ「クエストとおんなじか、それ以上に疲れた…」
ナオ「さあ、もう着くよ!…降りる準備しよう」
アイたちは2週間以上を
(第三章 終わり)
*やっと初めてのクエストも終了。しかし、タクミとアイたちの冒険はまだまだ続きます。
次はどこへ行くのか?
そしてみんなはいつカレーを食べられるのか? (^m^ )クスッ。
これからもよろしくお願いします。
楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、お気に入りや評価をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。