ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
アイたちがギルドで依頼されたことについて話している間に、おかみさんの店先までやって来た。
そこに偶然店から出てきたおかみさんがいて、みんなは前と同じように頭を下げた。
アイ「こんにちは。ご
アユミ「おばさん、こんにちは。」
店のおかみさんはアイたちの姿を見て驚く。
おかみさん「まああんたたち、久しぶりだねー…
しばらく姿を見ないから、どうしてるのか心配してたんだよ…」
アイ「…ご心配かけてすいません…」
ナオ「エブルの村までクエストに行っていたので…」
おかみさん「まあ、なんもないけど入りな、さあ…」
ソラ「じゃあ、お邪魔します…」
みんながおかみさんのあとについて店の中へと入っていくと、奥からオヤジさんも出てきた。
オヤジ「おー、あんたらはいつかナニが連れてきた勇者パーティーの一行だな…
元気にしてたのか…」
アイ「ご無沙汰してます。実はエブルの村までクエストに行ってました…」
オヤジ「無事に戻ってきたってことは、クエストも上手くいったんだな…
で、どんなクエストだったんだ?」
アカリ「ゴブリン退治だったんですが、かなりの数いて…」
オヤジ「かなりの数?」
ソラ「200から300匹ぐらいはいたかもしんないです…」
オヤジ「300!そりゃ大層な数だ…」
ナオ「それに最後にはビックゴブリンも出てきて…」
オヤジ「ビックゴブリン!で、そいつはどうした?
アイ「何とかやっつけました。そうしたら他のゴブリンもいなくなって…」
店のオヤジはアイたちの話を聞いてしばらく腕組みをしていたが、やがて顔を上げた。
オヤジ「なかなか初めてにしては大変なクエストだったな…
ビックゴブリンってのは
アイ「それはエブルの村の長老も言ってました…」
ソラ「でもビックゴブリンを倒すといなくなるのも、長老の記憶といっしょでした…」
オヤジはそんな話に何度もうなずく。
オヤジ「とにかく無事でよかったな…それにいい経験をしたようだ、ビックゴブリンなんてオレのような武器屋でもあまり話に聞かないような珍しい
アユミ「そんなに珍しいんだ…」
おかみさんは心配そうに話を聞いていたが、クエストが上手くいったと聞いてホッとした顔に変わる。
おかみさん「初めてでそんな大変なのに会って、ホントにご苦労さん…まあまあ、みんな無事で何よりだよ…」
ルカ「ありがとうございます。」
オヤジは相変わらず
オヤジ「まあ、今日はヒマだからゆっくりしてきな…それとも急いで行くようなとこでもあるのか?」
みんなはそれぞれ出された椅子に座るが、店のオヤジに話を振られたのでアイはナオとアユミに目配せをする。
2人が黙ってうなずいたので、アイは店のオヤジさんに今日聞いたことについて切り出した。
アイ「さっきギルドへ行ってきたんですが…」
オヤジ「うん?そこで新しいクエストでも引き受けてきたのか?」
アイは少しだけどう話そうかと考えるが、とりあえず言われたままを話してみる。
アイ「実はギルドの人からローフの村長へ手紙を持っていくように
オヤジ「ローフの村長に?手紙を?」
アユミ「はい…」
オヤジ「何の手紙だ、そりゃ…」
アイ「ギルドの人の話だと、ワイルドウルフ退治のクエストをローフの村が頼んだそうなんですが、
で、ギルドは報酬を増やさなければそのクエストを取り下げると言ってるそうで…」
オヤジ「ローフの村長へそんな手紙を、な…」
オヤジはまた腕組みをして考え出した。
アイたちがしばらく黙って返事を待っていると、オヤジはぶつぶつ独り言を言いながら顔を上げる。
オヤジ「ローフの村長ってのはこの辺りまで聞こえてくるぐらい有名などケチでな、それに裏で盗賊どもと手を組んで何やら悪さをしているような
それに
ナオ「やっぱり…」
オヤジは腕組みをしたまま、難しい顔をする。
アイ「今からでも断った方がいいですか?…」
アイの言葉にオヤジは首を振る。
オヤジ「受け取ったのは手紙だけか?」
ナオ「後、お金も少し渡されました…」
オヤジ「お金って、いくらだ?」
アイ「20ゴールドです…」
オヤジ「う~ん…」
オヤジはまたしばらく黙っていたが、厳しい表情のままアイの顔を見る。
オヤジ「金を受け取ってる以上、今から断るのは難しいな。
そのお金を返すとしてもギルドが受け取らないといけないが、ギルドの人間は受け取らねえだろう…
いやらしいと思うだろうが、向こうとしてもそれぐらいしても引き受けて欲しい仕事なんだろう…まあ、やるしかねえな…」
アイ「そうですか…」
アイはアカリやアユミの顔をチラッと見て、
店のオヤジさんはそんなアイの表情を見てニヤリとする。
オヤジ「まあ、これも経験だと思うしかねえな…
勇者パーティーのようなことをやってて、いいことばっかりじゃねえよ。
これからもしこたま
ナオ「勉強、ですか…」
ナオも嫌な予感が当たって、難しい顔をする。オヤジはアイやナオを始め、話を聞いて暗い顔をするみんなへニヤニヤして言う。
オヤジ「いいか…相手はこの辺りじゃ評判の悪い村長だ。どんな
だがな、下手に反論したり、腹を立てるようなことはしちゃダメだぞ。
これからそんないやらしい奴と何回顔を合わせるか分からん。それに一々反応してたらたまらんからな…
せっかくの機会だ、いやらしい奴ってのはどんなのか、しっかりと顔を
おかみさん「あんた、そんなこと…」
おかみさんはオヤジさんの話を聞いて、また心配そうな顔をした。だが、オヤジは無愛想な顔に戻って言う。
オヤジ「なに言ってんだ、ギルドのヤツも手紙を渡すだけでいいって言ったんだろう?
だったら手紙を渡して帰ってくりゃいいんだ。後はお前さんたち次第だ…
難しいことになるのか、話を聞き流してここへ戻ってくるのか…」
アイ「確かに…手紙を渡して返事をもらってくるだけですよね…」
オヤジ「そうだ。後は嫌な奴の顔を、しっかりと拝んでくりゃいいだけだ。簡単なもんだぜ(笑)…」
オヤジは何か思うところがあるのか、またニヤニヤしたが、それ以上は何も言わなかった。
オヤジ「話はそれだけか?じゃあ、武器なり食べ物なりを探しゃあいい。
そのローフの村に行くんだろう?今日は何がいるんだ?」
店のオヤジの話を聞いてすっかり気落ちしたアイたちに、オヤジは話を変えるように声をかけた。
アイはまだ難しい顔をしていたが、アカリがその肩を軽く叩いてからオヤジさんに言う。
アカリ「少しだけお金が入ったんで、下半身を守るような
オヤジ「ああ、そういや前は上の鎧だけだったな…ちょっと待ってな、見てきてやるよ…」
オヤジが立ち上がって店の奥へ行こうとするので、アカリもそれについて行こうとする。
オヤジの真後ろに立ったアカリが振り返ってみんなにウインクするのを見て、ソラとアイとルカ、タクミも急いでその後に続いた。
おかみさんはまだ座っているアユミに尋ねる。
おかみさん「食べ物は何が
おかみさんに聞かれて、アユミはつい最近のキャンプのことを思い出した。
アユミ「前にいただいたレンズ豆をスープしたんですが、みんなにも好評で、
おかみさん「そりゃよかった…レンズ豆ならまだいくらでもあるよ。」
ナオ「じゃあ、もう少しいただきます。」
おかみさん「じゃあ、こっちへ行こうか…」
アユミを始め、残ったメンバーはおかみさんについて食べ物を見に行く。
オヤジは上の階から前回と同様に様々なサイズの
今度は腰に巻いて下腹部を守るものと太ももと
オヤジ「これもまあ大したもんじゃないが、それでもいざって時にしてるとしてないじゃ違ってくるからな。
特にオオカミや野犬なんかは脚を
それと…ちょっと剣を見せてみな。」
オヤジはそう言うと、すぐそばにいたタクミの剣を手に取って抜いてみた。
オヤジ「なんだ、全然使ってねえな…ゴブリンの時は使わなかったのか?」
アイ「はい、ゴブリンとは前も戦ったことがあって、それで木の棒で大丈夫だって…」
タクミ「それで剣はビックゴブリンと戦う時以外は使わなかったです。」
オヤジはちょっと顔をほころばせてうんうんとうなずく。
オヤジ「そりゃいいこった。武器ってのは相当上等なんじゃない限り、使った分からダメになってくからな…
そうやって使い分けると武器も長持ちしていくもんよ…」
何度もうんうんとうなずくオヤジの後ろで、アカリとソラが「上等な武器」という言葉に自分たちが本当に使っている特別な武器のことを思い出し、顔を見合わせてクスクス笑う。
オヤジといっしょにタクミやソラも他のみんなの分まで革鎧を
アイ「さあ、みんなでこれを付けてみて、自分に合うサイズのやつを選ぼう。」
足の太い子、細い子。長い子に短い子とそれぞれに太さや大きさが違って、それぞれに合う革鎧を選ぶのは結構大変だったが、みんなワイワイ言いながらも何とか自分に合うものを見つけ出す。
店のオヤジも全員が一通り下半身に革鎧を付けたのを確かめた。
オヤジ「まあ、今日もこんなもんだろう…こいつらは腹を
これからはゴブリンみたいに楽な奴らばかりじゃないからな。
だから戦う前にはちゃんと上下に
オヤジの言葉に全員が気を引き
おかみさん「さあ、これも持ってきな…」
みんなが身につけた革鎧を外していると、おかみさんが奥から
壺自体は両手で持てるぐらいの大きさだが、少し重くて1㎏近くはあるかもしれない。
口には木の
ツグミ「これって何ですか?」
おかみさん「いいから開けてごらん…」
アユミ「はい…」
布を外して蓋を取ると、中から甘い香りが
おかみさん「
是非あんたたちに、って思ってしまっていたんだよ…」
蜂蜜と聞いてナオやアユミは驚いておかみさんの顔を見る。
魔法の力で食事のためのものは何でも手に入っているが、そんなアユミたちでもこの世界で蜂蜜がどれぐらい貴重なのか、それぐらいは分かる。
アユミがアイとアカリの顔を見ると、アイが壺に蓋をしておかみさんに渡そうとする。
アイ「こんなにたくさんの蜂蜜、いただけないです…」
おかみさん「どうしてだい?蜂蜜は
アイ「嫌じゃないですけど…こんな
おかみさん「いいんだよ…慣れない土地で大変なことが多いだろうからね…」
アイ「そんな…」
アイは困ってナオやアユミと小声で相談する。
アイ「じゃあ、お代を
おかみさん「そうかい?お代なんていいんだけど…じゃあ、1ゴールドだけいただこうか…」
ナオ「1ゴールドなんて、そんな…」
ナオは5ゴールドは渡そうとストレージから取り出すが、おかみさんはやはり1ゴールドしか受け取らなかった。
おかみさん「いいんだよ…あんたたちが上手くいってくれたのを教えてくれれば、それが一番のお代だよ…」
アユミ「おばさん…」
おかみさんはアイやアユミたちの顔を見て、小さくうなずいた。
アイ「じゃあ、ありがたくいただきます…」
アユミ「大切にいただきます…」
おかみさん「好きなように食べればいいからね…」
アイたちはレンズ豆や蜂蜜以外に生姜やニンニク、
全てを終えて店を出ると、アイたちは全員で並んでオヤジさんとおかみさんに頭を下げた。
アイ「今日もありがとうございました。いろんなお話をしていただいて、本当に助かりました。」
オヤジ「まあ、手紙を渡すだけってことは忘れんようにな…」
アイ「わかりました。」
おかみさん「気をつけて行っておいでよ…」
オヤジ「気をつけてな…」
ナオ「じゃあ、ありがとうございました。」
みんなはそれぞれに2人に頭を下げて宿の方へ戻っていった。おかみさんはまだ心配そうに彼女たちの後ろ姿を見ていた。
おかみさん「ねえ、あんた…あの子たち、ホントに大丈夫かねー?…」
おかみさんが見えなくなったアイたちの後ろ姿を追いながら聞くと、オヤジは店の中に戻りながら答える。
オヤジ「さあな…まあ、大変なこともあるだろうがな…」
おかみさん「あんた…」
おかみさんは不安そうな声を出すが、店のオヤジは無愛想に言う。
オヤジ「なに言ってんだ…ゴブリン退治みたいな簡単なこと、あと100回したところでこれ以上何の身にもなんないだろうが…
おかみさん「でも、あんたが簡単なクエストからしろって…」
オヤジ「だから…わざわざ怪我をしに行くようなことはやめとけって言っただけで、楽なことをしろって言ったわけじゃないぜ…
いいんだよ、いろんな目にも会って、いろいろ考えりゃ…」
おかみさん「でも…」
2人は店に入っていくが、おかみさんはまだ心配そうにしている。
オヤジ「そんなに心配せんでも大丈夫だ…可愛らしい顔はしているが、なかなか
おかみさん「そうかもしれないかもしれないけど…」
おかみさんはまだ心配なのか、またお店の外へ出てアイたちが行ってしまった先を不安そうに見ていた。
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