ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
若い男女が言った通り、
何とか今晩の宿に入りみんなはやっと一息つくが、それでも村長とマヒナの
ナオ「ぼんやりしてても仕方ないよ…とにかく夕食にしよう…」
だがパンと飲み物を手にしても、今日は誰も食が進まない。
村長とマヒナへの怒り。そして、彼らの暴言にすっかり痛めつけられていた。
ソラが食べかけのパンを手にしたまま、誰ともなく尋ねる。
ソラ「…で、オオカミ退治ってどうするの?行くの?行かないの?」
ソラはかなり真剣に聞いたのだが、みな押し黙ったまま答えない。
アイもコーヒーの黒い表面をジッとのぞいていた。
ナオ「オオカミ退治をするかどうかの前に、
ソラが質問してからだいぶ
ソラ「じゃあ、聞いて難しいってなるとやっぱり止めるってこと…」
アユミ「そんなこと言っても数が多かったり、相手が
アカリ「ソラの気持ちは分かるよ…バカにされっぱなしじゃ我慢できないってのは…」
ルカ「でも、無理はダメだよ…前のソラちゃんみたいに
ナオ「ルカの言う通りで…
ツグミ「お店のおじさんも、手紙を渡すだけでオオカミと戦う必要はないって言ってたし…」
タクミ「分からないことが多すぎるよ、今の状態じゃ何とも言えないって…」
ソラ「う~ん…このままー?…」
ソラは村長たちに言われたことを思い出したのか、口を
アカリはそんなソラをなだめるように彼女の肩を
やがてアイがコーヒーを飲み干して、口を開く。
アイ「私も正直な気持ちを言えばソラと同じで、オオカミ退治をしてあいつらを見返したい…
でも、アユミやルカが言うのもそうで、無理して誰かが酷い怪我をしたりしたらみんなで無事に元の日本に帰るってことができなくなるから、やっぱり無理はできないと思う…」
ソラ「じゃあ…」
ソラが何かを言おうするのをアイが
アイ「とにかくナオやタクミが言うみたいに、何もわからないと決めらんないよ…
明日、話を聞いてみて、それから考えよう…」
ソラ「分かった…」
ソラにはまだ何かもやもやするものがあるのだろうが、無理に自分の意見を通そうとはせず、今はそのまま黙る。
ルカがそんなソラにジュースを
ナオ「とりあえず今日はもう寝よう…分からないことを考えても仕方ないよ…」
ツグミ「ナオ…ちょっと『ヒール』してくれないかな…背中が痛くて…」
モア「私も、私も…」
アカリ「じゃあ、モアは私にして…」
アユミ「それぞれ順番にしようよ…」
雨の中の旅の疲れもあるのか、それぞれがお互いに『ヒール』をかけ合ってから寝床に入る。
だが、午後のあの暴言が頭から離れない子はいつまでも寝返りばかりを繰り返していた。
翌朝、まだ暗いうちから宿の壁を通してオオカミたちの
上手く眠れなかった者が多かったのか、みんな朝からぼんやりとした表情をしている。それでもあの男女との約束を思い出して、何とか朝食をお腹に詰め込んで宿屋を出た。
村の門まで行くと、村人たちがぞろぞろと村の外へと出ていっている。昨日の静けさからこんなに人がいるんだと少し驚くぐらいの人数だ。
それでもレアやエブルで感じられたような快活さはなく、みな押し黙ったまま歩いている。アイたちも自然と口をつぐんで門の外へ出た。
アイたちは
アカリ「これで私たちのことは見られないけど…」
アカリやソラが
ツグミ「今は普通に人が多いから、『
ルカ「全然違う場所にいるんだとしたら、行き
ナオ「でも、門のすぐ外では待てないよ…」
アユミ「フードを
アイ「仕方ないよ…とにかくここで人がいなくなるまで待とう…」
みんなは林の奥へ入り、村人たちがいなくなるのを待つ。
すると突然、林のもっと奥からガサガサと何かがやって来るような音がした。全員が驚いて振り返り、音がする方に対して身
若い男「皆さんもここにいらしたんですか⁉」
よく見ると、昨日の若い男女が奥の木の陰から姿を現した。
男性は170代半ばぐらいの身長で顔は真っ黒に日焼けし、肩幅が広くて腕も脚も太い。
だが髪は茶色く眼は青く
女性の方も歳は男性と同じぐらいで、背が低くやや弱々しく見える。こちらもすっかり日焼けしているが赤みがかった茶色の髪にブラウンの
男性は頭を全部
互いに相手の正体が分かり、ホッと胸をなでおろした。
ナオ「よかった…上手く会えないかもしれないと思ってたので…」
若い男「本当によかった…では皆さん、私の後についてきて下さい。」
2人は先に立って林の奥へと入っていき、アイたちをどこかへ案内していく。アイたちも黙って彼らについていった。
2人についていくとやがて林が切れて広い草原に出た。だが、彼らはそこまで行ってもまだ辺りを注意深く見渡して歩みを止めない。
みんなはそのまま草原を突っ切り、その向こう側にあるもう一つの林の中へと入っていった。
こちらの林の方が最初の場所より広いのだろう。案内をする2人はそのまましばらく歩き、林のだいぶ奥まで来て始めて足を止め、アイたちの方を振り返った。
若い男「ここまで来れば大丈夫だと思います…」
若い女「申し訳ありません…こんな遠くまで…」
2人が頭を下げるのに、アイたちはみな首を振る。
アカリ「全然気にしてないですから…」
ナオ「こんなに気をつけないといけないんですか?」
ナオの言葉に彼らはうんうんとうなずく。
若い男「村長は
アユミ「ヒドイ…」
男が「座りましょう」とアイたちに
よく見ると辺りにいくつもの石が丸く並んでいる。
若い男「よくこの場所で仲間たちと話をしています。もう村の中や畑では話はできないので…」
女性も別の石に腰を掛けたので、アイたちも周りにある石を椅子
皆が腰を下ろすとすぐに女性が
若い女「皆さん、お願いします!魔獣のオオカミを退治して下さい。」
彼女はそのまま顔を
アイ「もしかしてその方のご家族か誰かがオオカミに
みんなは女性の姿を見てお互いに顔を見合わせるが、アイはできるだけ落ち着いた口調で男性に尋ねる。
すると男性はかぶりを振った。
若い男「…
ですが彼女の家族は
男性は泣き続ける女性の背中をやさしく
ナオは何かに気づいてアイに耳打ちすると、彼女もハッとした様子でナオにうなずき、フードを取って改めて男性の方を見た。
アイ「すいません、自分たちのことを何もお話しないままで…
私はアイと言います。レアの村の出身で、ここにいるみんなもいっしょです。勇者パーティーに登録したばかりで、まだクエストを一つ終えたところです。
今回はドムニの町のギルドに
男性は勇者パーティーという言葉を聞くと顔が明るくなったが、初めてのクエストを終えたばかりということや手紙を持ってきただけということを聞くと表情が
若い男「そうですか…私はツバスと言い、こちらにいるのはカレルで私の妻です。
こちらこそご
ツバスは自分の名前を伝えると、帽子を取って頭を下げる。その様子を見てアイが他のみんなに目配せすると、みなフードを取って挨拶をした。
ツバスはアイたちが若い女性ばかりなのに驚いたようだった。
アイ「それじゃあ、その魔獣オオカミのことを教えていただけますか?」
ツバスはうなずいて話し始めた。
ツバス「オオカミたちが現れたのはもう3ヶ月も前のことになります。
場所はここへ来る時、村の門を左手に曲がられたと思いますが、その逆の右手に曲がってずっと1時間ほど行った、川の向こう側になります。
最初は数頭程度だったので村の猟師たちが何とか追い払ったのですが、それから姿を現す度に数が増え、いつの間にか30頭ぐらいの
もう村の者では相手にできず、川に渡してあった橋を
ナオ「ギルドでも聞きましたが、それでやって来た何組かの勇者パーティーもオオカミの数を見てクエストを断ったんだと…」
ナオがそう言うとツバスは大きくうなずく。
ツバス「私たちは最初の勇者パーティーが来るまで村長がどんな条件でオオカミ退治を頼んでいたのか、全く知りませんでした。
なので、その勇者パーティーから相手が魔獣のオオカミだということや数がかなりいることから報酬が少なすぎると聞き、
私たちとしては死活問題で、一日も早く何とかしてほしいのですが、村長はそれよりもお金をケチることしか考えていないのです。」
ツバスは
ツバス「村長は川の向こう側へ行かなければいいと思っているようですが、川の向こう側で猟をするだけでなく、川で漁をする者もおります。
また乾季には川まで水を
ツバスの話を聞いている間、アイたちはみな腕を組んだり、下を向いたりして黙っていた。
アイもナオも
カレルと呼ばれた女性は泣き止むともう一度アイたちに言った。
カレル「皆さんも勇者パーティーなんですよね?
どうかお願いします、オオカミ退治を引き受けて下さい。」
カレルが少し
しばらくの間、誰も声を発さなかった。
すると突然、ソラが立ち上がる。
ソラ「ねえ!やっぱ引き受けようよ…ツバスさんやカレルさんも困ってるんだし、私たちだってあんなにバカにされて、黙ってらんないよ!
それにさ、私たちだとお金も出すってあの村長も言ったじゃない…」
ツバス「お金って、何のことです?」
ツバスは自分が聞いたことのないことをソラが言ったので、驚いて顔を上げる。アイとナオは
アイ「実は昨日、私たちも村長に会ってきたんですが…」
ツバス「それは存じています…皆さんがマヒナの後について村長の家へ向かっているのを見ましたから…」
ナオ「その時に私たち、見た通りまだ若いので村長とマヒナにさんざん小娘とバカにされて…」
アイの言葉にツバスもうなずく。
ツバス「わかります…村長はすぐに
アイ「それで私もちょっと頭に血が上って、私たちがそのオオカミを退治すればどうするのかと村長に聞いたんです…
そうしたら村長が500ゴールドでも600ゴールドでもいくらでも出すと言ったんです…」
その話を聞いてカレルの表情がパッと明るくなった。
カレル「では、皆さんがオオカミ退治をされれば十分な
カレルは
ツバス「問題は…皆さんがオオカミ退治を果たしても村長が本当にそれだけのお金を出すか、ですね…」
アユミ「じゃあ、村長は
アユミだけでなく、皆がツバスの顔を見る。
ツバス「彼は時々そんな約束を村人ともするんですが、村人が言われた通りのことをしてもあれは
だから正直に言うと、村長が今度もその約束も守るとは思えないですね…」
カレル「そんな…」
カレルやツバスの気持ちに
それぞれの頭の中で様々なことが
みんながすっかり黙り込み、しばらく経ってからアイがやっと口を開いた。
アイ「ツバスさん、カレルさん、そのオオカミがいるという場所まで案内していただけないでしょうか…」
ナオ「アイ?…」
カレル「じゃあ、オオカミ退治を引き受けて下さるんですか?」
アイは黙って首を振る。
アイ「正直に言うと、まだ引き受けるかどうか決めていません。
本当にこの仕事を引き受けるかどうかは仲間たちと話し合って決めたいと思います。
ただ、その場所をうかがっておかないといけないので…」
ツバス「おっしゃることはよくわかります。では、オオカミがいるところまでご案内しましょう…」
みんなはアイの
アイは真剣な表情でみんなを見回す。
アイ「さあ、みんな行こう!」
この言葉でソラとアカリが立ち上がり、他のみんなも同じように立ち上がった。ツバスは黙ってうなずくと、また先に立って歩き出す。
来た時の場所をそのまま戻って草原を通り、最初に入った林も抜けて村の門から通ってくる道に出ると、もうそこには人っ子ひとりいなかった。
風で木々がざわざわいう音しかせず、ここを朝にたくさんの人たちが通っていたとは思えない。
ツバスは手を伸ばして道の先を指差す。
ツバス「この道の先に広い畑が何面もあって、村のみんながそこで働いています。
私が子供の頃、まだ前の村長だった時は一日中みな歌ったり、大声で話したりしながら働いていました。
でも今の村長になってからは、誰も何も言いません…歌うこともありません…」
ツバスは話し終わると首を大きく振る。
ツバス「では、参りましょう。」
ツバスが再び歩き出したのに、みんなは何も言わずについていった。
彼が言う通り、道は門のところで左右に分かれていた。
ツバスはそのまま右手の方へと進んでいく。こちら側もしばらくは林になっているが、すぐに草原に変わる。
アカリ「なんか
ツグミ「ちょうど川岸のところみたい…」
道の先のものが大きく見えてくると、次第に遠くから動物の
ツバスとカレルは何も言わずに道を進み、アイたちはだんだんと大きくなってくるそれが何なのか、それぞれが目を
すると確かにアカリが言うような、看板のようなものが見えてくる。
それは太い丸太に大きな板を何枚か打ちつけたようなもので、文字も絵も書かれていない。
ツバスとカレルはちょうどそれのところまで着て足を止めた。
ツバス「この板のちょうど向こうに橋があります。
橋を落とすわけにはいかないので、この板で橋を
ツバスが言うように丸太に張りつけた板のすぐ向こうには長い丸太4,5本を結びつけた橋が向こう岸まで渡してあった。
板を張った丸太の元には一
ここを通れないようにして向こう岸にいるオオカミを食い止めているのだ。
丸太橋が渡してある川は幅は5,6mぐらいだが、両岸とも3、4mぐらいの切り立った
オオカミが川に飛び降りてもこの崖を上ってくるのは無理だろう。
ツバス「この川を渡れるのはここの橋だけです。私たちも川に下りる時には
そのおかげでオオカミどもは簡単にはこちらへ来れませんが、橋も
ソラ「オオカミが向こうにいるのは見えないですね…」
ソラやアカリが目を凝らしてオオカミがいないかを確認しようとするが、何も見えない。
しかし、動物の吠え声はさっきよりもはっきりと聞こえてくる。
ナオ「『索敵』だとだいぶ離れたところに何かが固まっているみたいだけど…」
ツバス「正直に言って、私たちにはオオカミたちがどのようにしているのか、
ただ、橋をしっかりと塞いでからは無理にこちらへやってこようとしたり、橋のところまで来たりはしないようです…」
アイ「でもナオの『索敵』に写っているってことは、この橋を渡ったところからはオオカミたちの
アイも向こう岸の様子を確かめようとジッと見つめた。
橋のこちら側の周りは低い草が一面に生えているが、所々に大きな石が顔を出している。木は背の低いのが1,2本生えているぐらいだ。
川の下流の方までこの草原が続いているが、上流の方を見るとずっと先に
橋の向こう側もどうやら同じような草原らしいが、低い
動物の声からすると橋を渡ったずっと左奥の方にその声の主がいるように思える。草原が続いたその先は森になっているようだ。
ナオとツグミとモアはお互いの『索敵』から分かることを確かめ合う。
ツグミ「やっぱり20,30頭はいるかもしれない…」
モア「私にもそう写ってる…」
アカリ「30頭ってなると、かなりの数だね…」
ツグミやモアの報告に加えて吠え声がひっきりなしに聞こえ、みな厳しい表情を崩さない。
ツバスもカレルも唇を結んだまま、ジッとアイたちの様子を見ている。
アイ「ツバスさん、ありがとうございました。とにかくここから向こうに魔獣オオカミがいるのは分かりました。
今日はここで仲間たちと話し合って、オオカミ退治を引き受けるどうか決めたいと思います。」
カレルは
カレル「ここまで来て、オオカミ退治はされないんですか?」
アイはゆっくりと首を振る。
アイ「おっしゃることはよくわかります。ただ、簡単なことではないので全員の気持ちを確かめないとダメなんです。
もし一人でも怖いというメンバーがいれば、無理にさせるのは難しいと思うし、もしそれぞれの気持ちが違っているとうまくいかないと思います。
カレルさんのお気持ちに
申し訳ありませんが、もう少しだけ時間をいただけないでしょうか…」
アイはそれだけ言うと、カレルに向かって頭を下げた。
カレルはまだ唇をギュッとつぐんでいたが、ツバスがその肩に手を置く。
ツバス「アイさんのおっしゃる通りです。私たちが無理にお願いするわけにはいきません。どうかじっくりとお考え下さい…
村の私たちの家には扉に丸を書いておきます。それを探して来てくだされば場所が分かると思います。どうかご無理のないようにして下さい…」
アイ「クエストが上手くいってもいかなくても、必ずお伝えしますから…」
カレルはまだアイからオオカミ退治をするという言葉が出るのを期待しているようだったが、ツバスは彼女の耳元に何かを
みんなは黙って2人を見送っていたが、その姿が小さくなるとソラが口を開く。
ソラ「ねえカレルさんも言ってたし、ここまで来たんだからオオカミ退治をしなきゃ…」
アユミ「…ソラ…」
アイは振り返ってソラの顔をジッと見る。
アイ「ソラの言うのは分かるよ…でもさっきカレルさんにも言ったけど、全員が本当にそう思えるのかが大事だと思う…」
ソラ「なんでそんなふうに言うの?みんながやらないんだったら、私だけでも闘いに行くから…」
ツグミ「ダメだよ、ソラちゃん!そんなの危険過ぎるよ…」
ナオ「ひとりだけなんて、そんな…」
ソラがきつい目つきでアイのことを睨んでも、彼女は目を
アイ「だから、そうじゃないんだって!
こんなに大きな仕事、全員が協力しないとソラだけでなんて絶対無理じゃん。
全員がそれぞれの力を出し合わないと駄目だから、だからみんながやろうと思ってるのかを確かめないといけないじゃない。
例えば私とソラとアカリだけでやるなんて言って、それでホントに戦えると思う?そうでしょう?
みんなの気持ちを確かめたいの…それでやるんだったら、全員でやらないと…」
アイはソラから目をそらして他のみんなの顔を見る。
アイ「ねえ、みんなどう?戦えそう?それとも怖くて無理?
戦うんだったら全員で戦って、でも誰か一人でも無理だって言うんならやらない…
っていうか、やれない…」
アイが言葉を切るとナオはツグミの傍に行ってその肩を
ナオ「…ツグミ…どう?やれそう?」
ツグミ「…わからない…やっぱり怖いし…それに前、ソラちゃんも怪我してるし…」
ツグミがまた以前にオオカミから受けた怪我のことを口にしたので、ソラは少し顔を
モアもまた硬い表情をしていて、それに気づいたアユミが傍に寄っていく。
アユミ「…モア…」
モア「怖いよ…ねえ、みんなはホントに怖くないの?
ルカ「怖い…いつだって怖いよ…最初にクマと戦った時から、オオカミでもあのデカいゴブリンでも…」
ソラ「それでも私たち、頑張って戦ってきたじゃん…」
アカリ「これまでは…上手くやってきたよ…」
モア「運が良かっただけかも…」
ソラ「運だけ?」
ナオ「運もあったし…それだけじゃあ無い部分もあったとも思う…」
タクミ「魔獣のクマと戦った時でもビックゴブリンの時でも、アイさんもソラさんも、みんなスゴかったと思うし、運だけじゃなかったと思う。
けど、じゃあそれだけで今度も大丈夫かって言われると、それは何とも…」
ソラ「それじゃあ…」
ツグミ「でも…」
ソラが全員に喰ってかかりそうになったところでツグミが何かを言おうとして、みんな黙って彼女を見た。
ツグミ「でも私たちがこのクエストを断ったら、もう誰も引き受けないよね?
村長は報酬を増やす気がないし、ギルドはそう伝えたらクエストを取り下げちゃうでしょ。
そうしたらもう誰も来ないし、ツバスさんやカレルさんが困っていてもどうしようもなくなっちゃうわけだよね?
だったら、怖いけど、私たちがそのオオカミたちを追い払うしかないと思うの…
ねえ、そう思わない?」
ツグミは恐怖をこらえるためなのか、唇をグッと
それでもいつもの少し不安そうな表情とは違って、固い決心を感じさせる顔つきをしていた。
ナオはツグミの話を聞いて、フッと息を吐く。
ナオ「ただ問題なのは、報酬のことね…ツバスさんが言ってたみたいに村長が無かったことにする可能性は高そうね…」
アイ「そのことは私に考えがあるけど…」
ルカ「考えって?」
アイは首を振ってルカの問いに答えずに言う。
アイ「とにかくその前に魔獣のオオカミを退治するのが先だよ…
じゃあ、みんなこのクエストを引き受けて、オオカミと戦うってことでいいかな?」
アユミ「モア、どう?大丈夫?…」
まだモア一人だけが不安そうな顔をしていた。それでもみんなに見つめられて、彼女はぼそぼそと話し出す。
モア「みんなが助けてくれるんなら、じゃあ私も頑張る…
私が襲われたら、もち、助けてくれるよね?」
ソラ「当たり前じゃん…私がやられた時だって、タクミも他のみんなもすぐに助けてくれたよ。
私もみんなもモアがやられそうになったら、すぐに助けにいくよ!」
ナオ「ソラ…」
アイはモアの前にいってその肩に手を置く。
アイ「ねえモア…私も、当然みんなもモアの力が必要なの…モアにも助けてほしいの…
だからモアが大変な時はみんなで助けるから…だからモアの力も
モアはまだ不安そうだが、それでもアイを見つめ、それから他のみんなのこともジッと見つめてから黙ってうなずいた。
アイもうなずいてから、モアを軽くハグする。
アカリ「じゃあ、決定だね。まずここにテントを張ろうよ。」
ナオ「後はしっかりと準備しないと…何も決めないで戦うなんて無謀だよ…」
ソラ「オッケー…」
ルカとツグミはまた川の向こう側にオオカミの姿が見えないか、目を凝らした。
やはりオオカミたちの姿は見えなかったが、それでもその吠え声が途切れることはない。
他の子もみな同じように川の向こうを見つめ、これから起こることをそれぞれが想像していた。
楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、お気に入りや評価をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。