ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
テントを張ってかまども組むともう陽が高くなっていた。
アカリ「ここにいるための準備って、こんなもんでしょ?」
タクミ「小さいテントも張っとく方がいいと思うけど…」
ソラ「なんで?」
モア「戦うんだから、SEXのことはいいよー…」
アイ「全くなに言っての…」
タクミの言葉をモアと同じように受け取ったメンバーは少なくなく、アイもタクミを
タクミ「えっ?違うって…もしかしたら怪我する人もいると思うから、その人のためにもう一つテントがあるのがいいと思って…」
モア「う~ん…ヤルためじゃなくて?」
ソラ「それならそうと先に言ってよー…」
ルカ「言う前に誤解した人もいるけど(笑)…」
タクミ「いや、それは…」
タクミが誤解を解こうと一生懸命に首を振る、そのしぐさをアユミとナオはクスクス笑う。
ナオ「まあ、それならタクミの言う通りだね(笑)…それにまだ元気なうちに準備しとくべきね…」
アイ「で、戦う時のことだけど…」
全員が一通り食事を終えたのを見て、アイが切り出す。
アイ「最初に思ってるのが、タクミとアユミのことで…
私は、ちょっと厳しい言い方だけど…2人は戦いに参加しない方がいいと思ってる…」
アイに言われてアユミとタクミは顔を見合わせる。他の子も2人の方を見た。
アユミはしばらくの間下を向いていて、タクミは口を一文字に結んだままでいる。
ナオ「決める時は全員で戦おうって言ってたのに?」
ナオが他のみんなが聞きにくそうにしているので、アイに疑問をぶつけた。
アイ「だから、それはそれぞれの持ち場でそれぞれの能力を活かしてっていう意味であって…
特に今度はオオカミの数がかなり多いから、アユミは危険な気がするの…
タクミももしかしたら危ないんじゃないかって…」
アユミ「うん、私も自分のことならそう思う…自分の身も守れるかどうかわからないから…」
アカリ「それは分かるけど…誰かが怪我した時にはアユミの力はかなり大きいよ…」
ナオ「それもそうなの…
私とモアよりもアユミの方がずっとレベルが上だから…」
ソラ「う~ん…」
いきなりみんな腕を組んで考え込んでしまう。
それを見てタクミが口を開いた。
タクミ「ねえ、まずどんな戦い方を考えてるの?
アユミさんが一緒にいるかどうかはそれによると思うけど…」
アイ「戦い方って言われると…」
アイが少し
他のみんなも彼のそばに集まってしゃがんだ。
タクミ「まず今の状況を見ると、一番大事なのは橋のすぐそばのところだと思う。
結局戦場から脱出してここへ戻ってこれる場所がこの橋しかないわけだから、橋のすぐ前にオオカミたちが集まってくると出口がなくなっちゃう。
だから、逆算すると橋のすぐ前に固まって後ろを取られないようにして戦わないとダメだと思う…」
ナオ「確かに…逃げ道がちゃんと
次にタクミは地面の図の橋らしき場所のすぐ前に半円を書く。
タクミ「オレらには『バリア』ていう防御魔法があるから、それを
まず向こうの方が数が多いし、力も強いだろうから『バリア』で身を守りながら石や魔法を使って距離を取って当てるようにしよう。
それに『バリア』のこちら側からはいろんな攻撃ができるから、こっちは『バリア』を盾にしながら
ルカ「それだといきなり襲われたりはしないよね…」
ツグミ「大事なのは『バリア』が
ソラ「オオカミと戦ってばかりじゃ危ないってことか…『バリア』が無くならないように注意しなきゃ…」
ナオ「この半円が『バリア』の位置?」
タクミが図のことを言わないのでナオが聞いた。
タクミ「そうそう…一人用の小さな盾にするんじゃなくて、大きな『バリア』で橋のすぐ前を
そうすれば自分たちももちろん、橋のすぐ前のところも守れるんじゃないかなあ…」
アイ「でも闘える場所は
アカリ「それは『バリア』を張る場所によるんじゃない?」
ナオ「ここで図を書くだけじゃなくて、実際にあそこでやってみたらいいんじゃない?
そうすれば大体どれぐらいの大きさで『バリア』を張ったらそれぞれが動けるぐらいになるのか、そんなのも分かんじゃないの…」
モア「あー、それいいよー…なんか言われてるだけじゃ、よくわかんないから…」
モアとツグミとルカはナオの
ソラとモアが
アカリ「タクミが言うのは分かるんだけど、もしオオカミが『バリア』のところまで来なかったら?」
ソラ「来ないってことある?」
アイ「それは…可能性はあるかも…」
ルカ「でも、さっきの話だと橋を渡ったところからオオカミの
ツグミ「私たちのこと見たら、こっちへ来ないかなあ…」
ナオも立ち上がって、もう一度川べりのところまで行く。ツグミもその後について彼女の傍に寄る。
ナオ「う~ん…『
ツグミ「もしかしたら橋を渡ったら、アイとかアカリなら群れが見えるかもしれない…」
ナオとツグミが川の向こう側をうかがいながら話すのを聞いて、他のみんなも立ち上がって向こう岸を
アイ「もし『バリア』のところまで来なかったら、こっちから誘い出すしかないかも…」
アユミ「そんなの大丈夫?」
モア「誘い出すって?」
アカリ「私とアイがオオカミに見えるとこまで行ってみるよ…」
ツグミ「ダメだよー…そんなの危険過ぎるよ…」
ツグミがアカリの
アイ「私とアカリなら大丈夫だよ…これでもかなり足も速くなってっから…」
ルカ「私とソラちゃんは?一緒に行く?」
アカリ「2人も速くなってるんだけど、レベルがちょっと違うでしょ…私とアイは大体おんなじだから…」
アイ「2人がダメって言うんじゃなくて、足並みを
タクミ「危険だけど…それしかないかなあ…」
他のみんなが心配そうにアイとアカリの顔を見る。
ナオ「まあ、とりあえずここで『バリア』の張る位置とか、張る『バリア』の大きさとか、『バリア』の範囲でどう動くとかをシミュレーションしておこう…」
アユミ「アイとアカリが誘い出すんだとしたら、そのことも多少はシミュレーションしとこうよ…」
アイとアカリもうなずく。その時ツグミが何かを思い出す。
ツグミ「『バリア』だけじゃなくて、それより強そうな『バリラ』も出せるけど…」
ソラ「私も出せるよ…」
モア「私も~」
ナオ「じゃあ、それでやってみる?」
アイ「考えられることはできるだけ考えておこうか…」
ルカ「全員の命が
ルカの言葉でこれからの作業の重要性が実感され、みんなの目の色が変わった。
アイ「よし、じゃあまずあの橋を
アイの言葉を合図に全員が橋のところまで行き、まずは盾となる『バリア』を魔法使いのメンバーが張ってみる。
ツグミ「じゃあソラちゃん、そっちに行って…」
ソラ「2人で全部するの?」
ナオ「こっち側を私とモアがして、半分ずつだしたら…」
モア「オッケー。」
ソラ「で、半円ってどう動くの?」
ツグミとソラ、ナオとモアがコンビになって『バリア』を出すが、高さが合わなかったり、上手く半円形にならなかったりする。
分かれてそれぞれが半分ずつ出そうとすると、それぞれの『バリア』がずれてしまう。
他のメンバーが動きを指示したり、『バリア』の場所や高さを提案したりして、ちょうど良い『バリア』ができるまで何度も
ツグミ「やっとこんな感じかなあ…」
半時間以上かけ、二組でやっと高さも揃った『バリア』が張られた。
ソラ「あー、ちょっと休憩―…」
アイ「大きさとしてはどう?動ける?」
ルカはストレージから自分の矛を出して半円形の『バリア』の中を動いてみる。
その様子を見て、アカリとタクミがすぐに剣を抜いてルカの傍まで行く。
ルカ「う~ん…」
タクミ「この大きさだと横がすぐに詰まっちゃうかも…」
アカリ「タクミの言う通り、全体的にもう少し大きい方がいいよ…
ここに7,8人入ると動けなくない?」
アイ「確かに…」
アイも3人の傍に行くと、もう半円形の『バリア』の中はそれでいっぱいになった。
ナオ「もう一回り大きく?」
アカリ「闘うってことを考えると、もう少し動き回れるのがいいから、あと二回りかな…」
モア「二回り大きいって、どれぐらい?」
座って休憩していたモアは少し不機嫌そうに言うが、それでも立ち上がってアイたちの示す大きさを自分で確かめる。
ツグミ「もっとグィーンと大きく場所を取ってもいいみたい…」
ナオ「それよりも正面を大きく一枚の、それも『バリア』じゃなくて『バリラ』にして、両サイドも同じように大きな『バリラ』で防ぐっていう形はどう?
そうしたら、もっと広く出来んじゃないかな?」
アイ「三方を板で防ぐような感じ?」
ルカ「それの方がいいよ…」
アカリ「闘いの時は大きく動けるのがいいからね…」
ソラ「よ~し、もう一回だー!…」
ソラの言葉通り、それから何度も『バリラ』の位置や大きさ、『バリラ』の中での動き方などを時間をかけて全員で確かめ合った。
いつの間にか頭の上にあった陽も
アユミ「ねえ、飲み物出したよ…休憩しよう…」
とにかく橋の前でどんな準備をするのか、大体の戦い方はどうかなどが分かってきて、みんなは座り込んでアユミから飲み物を受け取る。
モア「あ~あ、シミュレーションだけで疲れちゃった…」
ツグミ「でも、こういう準備が出来て良かったんじゃない?
ぶっつけ本番だったら、あたふたしてるうちにオオカミに襲われてたかもしんない…」
アカリ「ホント、そう…やっぱ事前の準備って大事だよ…」
ソラはオレンジジュースを飲みながら何回も足元の小石を
タクミはびっくりしてコップのコーヒーをこぼしそうになった。
タクミ「ちょ、ちょっと…」
ソラ「(笑)…ねえ、タクミは何でそんなに戦い方みたいなのに
アカリ「あー、分かるー…何で?」
モア「何で、何で?(笑)…」
タクミ「いや、詳しいって程じゃないけど…」
タクミは急に注目されて、みんなの方を見ずに拾った小枝で砂地に丸や三角を書く。
タクミ「まあ、強いて言えば『三国志』をマンガでも本でも読んだし、あとマンガの『キングダム』読んだり、歴史小説とかが好きだったからかな…
それと戦略シミュレーションみたいなゲームもちょっとはやったし…」
ソラ「エロゲーばっかじゃないんだ(笑)…」
タクミ「まあ、エロゲーだってしたけど…」
ソラ「へぇー、ねえどんなエロゲーやったの?」
モア「あー、聞きたいー!」
アイ「ねえ、なんか話が変わっちゃってるんだけど…」
ソラとモアのせいで話題が
ナオ「タクミがそう言うのを思い出してくれたのはありがたいんじゃない?
ツグミが言うみたいに今日のシミュレーションをしているのとしてないのとじゃあ、これからが全然違ってきたはずだから…」
ルカ「それで、アユミちゃんはどうするの?」
戦いのシミュレーションに一生懸命で、最初のアユミやタクミが参加するかどうかということをみな忘れてしまっていた。
アユミ「う~ん…さっきの準備を見てると…私はここにいる方がいいみたい…
『バリラ』の中に私がいるだけで、みんなが動ける場所が狭くなっちゃうと思う…」
アイ「そうだね…私たち、ずっと橋の前にいることになるからアユミには対岸の橋のところに居てもらって、もしもの時には橋を渡って来てもらうっていうことにしようか…」
アカリ「タクミはどうする?あんたもここに残る?」
タクミ「いや~、迷うけど…参加はしたい…」
ソラ「あんた、ホントに大丈夫?」
ソラは疑い深そうにタクミをジロジロと見る。
ルカ「そうでもないんじゃない?ソラちゃんが怪我した時もタクミ君が
ツグミ「それに結構大事なことをいつも教えてくれるよ…」
アイ「まあそうだね…大事なとこで大事な声かけしてくれてるよね…」
ソラ「そうか…」
さすがにソラもみんなの意見にうなずく。
アカリ「じゃあ、タクミは戦闘に参加ってことで…アユミは対岸で待機ってことでいいかな?」
アイ「そういうことにしようか…」
アユミ「了解しました。」
ツグミ「なんか緊張してきた…」
ルカ「分かるよ…大変な戦いだもん…」
ツグミの声にルカだけでなく、モアやナオも
ソラ「大丈夫だよ…準備だってしてるし…」
アカリ「どう、このままで大丈夫そう?アイ、どうする?」
アイ「う~ん…」
やる気満々なのはどうやらソラだけのようで、他のメンバーは実戦を意識して余計に緊張している。
アイも難しい顔をした。
アユミ「今日はまだ続けるの?…」
ルカ「今日はもう終わらない?昨日のこともあるし、ちょっとは休む方がいいよ…」
ツグミ「私もそう思う…」
アユミやルカが話してもアイはまだ腕組みをしたままでいる。ナオがそんなアイの傍に行く。
ナオ「ねえ、今日はもう終わりにして、明日もう一度シミュレーションしない?」
ソラ「えー、まだすんの?」
口を
ナオ「みんなが緊張してるのは、やっぱり戦いで上手くやれるが不安だからで、シミュレーションをしてある程度どうするのかが分かると、もう少し安心できると思うの…
もちろん実戦は相手の勢いもあるし、実際のパワーやスピードだってあるから不安が100%無くなることはないだろうけど…
でも準備をしておくのは悪くないと思う…」
ソラ「う~ん…」
ツグミ「ナオの言う通りだよ…少しだけでもどうすればいいのか考えられたら、実際の闘いでも上手くできると思うの…」
アカリ「確かに…どうやって動くのかとか、どうやって武器を使うのかって身体を動かしてみるだけでもかなり違うんじゃないかな…」
アイはナオたちの言葉にうなずくと、まだ少し不満そうなソラの肩に手を置く。
アイ「ソラの気持ちは分かるけど、ここはもう少しだけ準備をしようよ…
やっぱり危険な相手なわけだし、軽く見ない方がいいよ…」
ソラ「軽く見てるわけじゃないけど…でも、みんながそう言うなら分かった…」
ソラはみんなの顔を見渡して、しぶしぶうなずく。アイやナオはそんなソラの様子に胸をなでおろした。
アユミ「じゃあ、夕食の用意をするね…」
ルカ「手伝うよ…」
ツグミ「私も…」
アカリ「みんなでやればすぐにできるよ…」
ソラ「ハイハイ、タクミもやらなきゃ…」
タクミ「は、はい…」
その日の夕食はアユミが焚き火でソーセージを焼いたが、戦闘への緊張からか誰かが今日もそれほど食は進まなかった。
その夕食の間もオオカミたちの遠吠えが聞こえる。
川の向こうから聞こえる遠吠えは昨日村で聞いたものよりもずっとはっきりしていて、その腹から出されたような声の持つ
結局夕食は少ししか取れなかったものの、早朝からいろんなことがあったせいでみんな食事を終えるとすぐにテントに入って眠った。
次の日も朝早くに朝食を終え、アユミ以外のメンバーたちは再び橋の前で戦いのシミュレーションを始める。
アイ「よーいドンでツグミとソラ、モアやナオが組んで『バリラ』を張ってみて…」
ツグミ「できるだけ速くしなきゃね…」
ナオ「速さも大事だけど、両方が上手く合うようにしないと…」
ソラ「多少の
ツグミ「そこは後で別の『バリラ』で
モア「じゃあ、準備オッケー…」
アイ「じゃあ、よーいドン!」
アイたちは『バリラ』がどれぐらいの速さで張れるのか、『バリラ』の中でそれぞれがどんなふうに並ぶのか、どんな順序で攻撃をしていくのか、直接攻撃された時はどうやって戦うのか。
そういったことを一つひとつ確かめる。
できるだけ実戦のことを想像して、武器の使い方や『バリラ』の中での動き方、魔法を出すタイミングのようなことも試してみた。
ソラ「タクミ、ちょっとオオカミの役やってよ…」
タクミ「オオカミの役?」
アカリ「そう、身をかがめてオオカミになったつもりで『バリア』の前まで来て…」
タクミ「ああ…」
ナオ「普段の武器じゃなくて、木槍とか木剣とか使わないとダメだよ…」
ソラ「わかってるって…」
タクミはオオカミ役になって、かがんでソラやアカリがいる『バリラ』の前までやって来る。
2人はそこからタクミに向かって木槍や木剣を突き出して振り回す。
アカリ「う~ん…それじゃあなんか雰囲気出ないんだよね…」
ソラ「ねえタクミ、ちょっとそこで
タクミ「えっ?吠えるって…」
ソラ「だからー、吠えて襲ってくるような感じ出して…」
アカリ「ちゃんと四つん
アイ「そこまで
アカリ「要る要る…ねえ、やってよ…」
タクミ「マジか…」
それでもタクミはしぶしぶアカリとソラの言う通りに、四つん這いになってオオカミっぽくしながらまた2人の前まで行く。
タクミ「ガオー、ガオ、ガオー…」
ソラ「エイ、エイ!」
アカリ「オラ、オラオラ!」
タクミ「あ、
四つん這いになって
タクミは予想外の攻撃をまともに受けてしまい、頭を
モア「キャハハハハ(笑)…」
タクミ「あたたたた…」
ソラ「わ、悪い(笑)…」
アカリ「ゴメン、ゴメン…」
アイ「コラッ、2人ともふざけてんじゃないよ!」
ソラ「ちょっと手元が狂っちゃって…」
ナオ「真面目にしないと…」
ツグミ「ちょっと休憩しようよ…」
ルカ「そうかもね…」
疲れて緊張がなくなってきたのもあって、みんなが腰を下ろすとそこにアユミが温めたミルクティーを持ってきた。
アユミ「みんな、お疲れ様…」
ツグミ「ありがとう…」
ソラ「あー、ありがたいよ…」
アイ「アユミ、いつもありがとう…」
アユミ「ねえ、上手くいってる?」
アイ「まあまあかな…」
タクミ「
モア「ハイハイ、『ヒール』だよ…」
アイやアユミが話している向こうでは、アカリとナオが2人で何かを確認していて、ソラもその傍に立っている。
長時間の準備で緊張感が無くなってしまうことはあっても、みな自分たちの安全が
ツグミは疲れたのか、フーと息を吐いた。
アユミ「ツグミ…」
ツグミ「う~ん…不安なのは、これでホントに大丈夫なのかがわからないことかな…」
ルカ「分かる…オオカミが実際にどう襲ってくるのかとか、ちゃんと知ってるわけじゃないし…」
アイ「それはそう…知らないことばかりだから」
アユミ「じゃあ、もっと『バリラ』を何重にもする?」
モア「それいいかも…」
タクミ「…それだと襲われはしないけど…こっちからの攻撃も遠くなるから、オオカミを退治するのが難しくなっちゃう…」
ルカ「そうだよね…」
自分たちの身を守ることは大事だが、閉じこもってしまうと相手をやっつけることもできない。
ゲームとは違う、実際の戦闘というものをまだオオカミと
アイたちが黙り込んだところに、向こうで話していたアカリとナオとソラが加わる。
アイ「ん、何の話してたの?」
ナオ「アカリがね、魔法がどれぐらい遠くまで届きそうかって聞いてきて…」
アカリ「私たち、まだ弓矢を十分使えないでしょ…
だから石とか投げ槍とかを投げるよりも魔法の方が遠くまで攻撃できるのか、ちょっと知りたくて…」
ルカ「で、どうなの…どれぐらいまで攻撃できそう?」
ソラ「う~ん…魔法のレベルで結構違うから…」
アイ「誰が一番遠くまでいけそう?」
魔法使いのメンバーは互いに顔を見合うが、ツグミ以外は彼女を指差す。
ツグミ「私?…そうかなぁ…」
モア「え~…クマと戦った時だって、ツグミの魔法が一番勢いがあったじゃん…」
ナオ「モアが言うんだからそうだよ…」
アカリ「まあ理屈から言ってもツグミだよね…攻防の魔法がメインだから…」
ツグミ「まあ、そうなるかな…」
アイ「オーケー…」
アイは立ち上がると、ここまでのことを確認する。
アイ「まず向こう側に渡ったら、今日確認したぐらいの大きな『バリラ』の盾を橋の前に張る。
それでオオカミが近寄って来なければ私とアカリで確認しにいく。
そして、オオカミが近寄ってきたら距離がある間に魔法で攻撃する。多分それが当たらないのがやって来るから、それには石を投げるか、投げ槍を投げつける。
そして傍まできたら私たち武術の能力があるメンバーは槍か矛で戦って、魔法使いのメンバーは魔法でそれをサポートする。
大事なのは『バリラ』から出て前に行ったりしないこと。魔法使いのメンバーは『バリラ』が弱くなる前に新しいのを張って、できるだけ『バリラ』を盾にして戦おう。」
ナオ「接近戦になったら、私たち魔法使いのメンバーはアイたちとの距離に気をつけなきゃね…
アイたちが槍とか剣を使うのを邪魔しないようにしないと…」
アカリ「ソラは前に出ないように気をつけてね…ちょっとやる気があり過ぎる感じだし…」
ソラ「わかってるって…もう怪我はしたくないよ…」
アカリに注意されて、ソラはちょっと
アイ「もう一つ大事なのは、戦ってる途中で仲間に魔法を当てたり、剣や槍で仲間を傷つけたりしないこと。
闘うと目の前のことばかりになるから、だれかは一歩引いて相手のことや仲間同士のことを見ててほしい…」
ツグミ「タクミ君がその仕事をするのがいいんじゃない?」
ルカ「確かに…今までもそう言う目で見てくれてたから…」
タクミ「ああ…じゃあ、ちょっと気をつけるよ…」
モア「ねえ…」
普段は聞き役に回ることが多いモアが少し
モア「で、襲ってきたオオカミを倒したらそれで終わりってこと?…」
ナオ「でも、群れ全体がやって来ない可能性はあるよ…」
ソラ「じゃあ、残ったヤツらはどうすんの?後を追っていくの、ゴブリンの時みたいに…」
ルカ「それは無理だよ…大体30頭ぐらいでしょ…半分でも15頭だからまだ結構な数じゃない…」
モア「でも15頭残して、ハイ、終わりましたって言うの?」
アイ「それはいくら何でもまだ終わりとは言えないよ…」
アカリ「じゃあ、どうしよう…」
アイはみんなを見ていた視線をオオカミたちがいる向こう岸へと向ける。
タクミ「それは一回々々の戦いをしながら考えるしかないよ…
ここで準備してることもかなりの部分が想像であって、実際に戦ったら考え直さなきゃならないことがたくさんあると思う…
オレたちに何ができて、何ができないか、確かめながらやっていくしかないよ…」
タクミの言葉にアイだけでなく、ナオやアカリもうなずいた。
ソラ「クソぉ~…RPGみたいにはいかないな~…」
ソラはちょっと
タクミ「仕方ないよ…実際に攻撃されたらHPみたいなものが減るんじゃなくて、どこかに怪我をするわけだし…
そう言うのをできるだけないようにしていかないと…」
アイ「とにかくみんなが無事でこのクエストを終えないと…」
アイは自分に言い聞かせるように大きな声を出し、もう一度向こう岸を見た。
他のメンバーもそれぞれにこれから起こることを考えながら、アイと同じように川の向こうをジッと見る。
川の向こうからは相変わらずオオカミたちの鳴き声が聞こえていた。
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