ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
全員が橋を渡り切ると、アユミは橋の前で少し迷う様子を見せた。
アカリ「アユミ…どうしたの?」
アユミ「うん…あの橋を
ルカの肩を
アイ「まだあの板で橋は塞いでおいて…オオカミがホントにいなくなったのか、ちゃんと確かめないと…」
ルカ「そうだね…どうなったかって、まだ見てないもんね…」
だがアユミが言ったように、確かにオオカミたちの
アユミとアイのやり取りがあって全員がその場に立ち止まって川の向こうを
アユミが橋の前にいつも通りに板を立てると、ぼんやりと向こう岸を見ているみんなに声をかける。
アユミ「さあ、テントで
アユミの言葉でみな我に返ってテントに向かった。
テントで互いに鎧兜を脱がし合うが、誰ひとり言葉を発しない。
あまりに激しい戦いだったのと、あの巨大オオカミとの戦いでホントに全てが終わったのか、その確信が持てないことで疲労とモヤモヤがそれぞれの心の中を
アユミはそんなみんなにもう一度『ヒール』を順番にかけていく。
モア「ねえ、これでもう終わりだよね…」
だいぶ経ってからモアがテントに寝転がりながら誰ともなく尋ねた。だが、みんな難しい顔をして答えない。
ソラ「…ゴブリンの時はあのデカいのを
モア「今度もそうじゃないの?」
ナオ「あの時は周りにいたゴブリンがみんないなくなったから、それでもう大丈夫って分かったけど…」
アカリ「まだオオカミたちが本当にいなくなったのか、確かめてないからね…」
ルカ「それで橋もまだ塞いだままだもんね…」
モア「あ~あ…」
モアは不満そうな表情で寝転んだまま両手足をグィーと伸ばした。
ルカがアユミからお
ツグミ「うれしいんだけど…あんまり食べれない…」
ルカ「じゃあ、そのままストレージにしまっとけば…」
アカリ「私もそう…」
アイ「アユミに悪いんだけど…私も…」
アユミ「みんな、食べれるだけでいいよ…私のことは気にしないでね…」
ソラ「ゴメン…」
アユミ「だから、いいって…」
誰もが疲れ切って、食事もそこそこに毛布を頭から
どれぐらい眠っただろう。アイたちは誰かの呼び声で目を覚ます。
アユミ「ねえみんな、このまま夕方になっちゃうよ…」
アカリ「え~、もうそんな時間?」
ソラ「あ~、お腹空いたー…」
ルカ「なんか、すごく寝た…」
アイ「う~ん…とりあえず起きるよ…」
アユミに起こされ、テントから出てみると確かに太陽は
何人かは寝過ぎたのか、腕をいっぱいに伸ばして固まった身体をほぐす。
アユミ「食事はもう少しだけ待ってね…」
ルカ「あっ、何か手伝うよ…」
アユミ「じゃあ、その飲み物温めて…」
それぞれが
風で周りの草がガサガサと音を立てると、モアやアイがびっくりしてその方向を見た。
モア「あー、びっくりした…」
アイ「風が強いのかな?…」
アカリ「そうじゃなくて…オオカミたちの
ツグミ「そう言えば…すごく静かだね…」
少しずつ暗くなってくる周囲を見回すと、風が草を
するとかなり遠くから
誰もはっきりそうとは言わなかったが、アイたちは昨日までとは全く違う静けさを感じて初めて魔獣のオオカミたちとの戦いが終わったと実感した。
アユミ「さあ、できたよ…」
ナオ「今日はなに?」
アユミ「今日はシンプルに
ソラ「シンプルに、っていい
アイ「お腹空いたよ…」
アユミ「ハイハイ…」
アカリ「手伝って、回していこう。」
昼食をほとんど取れなかったので、みんな手にしたスープやパンを文字通りガツガツと食べていく。
おかわりも次々として
すっかり暗くなり、かまどの中でパチパチ言いながら燃える
アイ「多分もう戦うことはないと思うけど…とりあえず私とアカリとソラでオオカミたちが本当にどこにもいなくなったのか、それは確かめに行ってくる…
他のみんなは戦った辺りにまだオオカミの死骸や魔石があるから、それを集めておいてほしいの…」
ナオ「了解…」
ルカ「まだオオカミがいる可能性ってある?…」
ツグミ「これだけ静かだと…」
モア「昨日まであんなにうるさかったから…」
みんなは顔を見合わせながら、もう大丈夫なんじゃないかと言い合っているところにタクミが口を開く。
タクミ「アイさんが言うように多分大丈夫だと思うけど、最悪のこともあり得るから…
アイさんたちが戻ってくるまであまりバラバラにならないようにしておく方がいいと思う…」
ナオ「まあ、最悪のことは一応考えておかないとダメね…」
アカリ「
タクミが焚き火に入れた大きな木がバチバチと
珍しくアカリが大きなあくびをした。
アカリ「ふああ~…」
ルカ「フフフ(笑)…」
ソラ「でも、もう眠いよ…」
ナオ「あんなに寝たのに…」
ツグミ「今日は激戦だったよ…」
タクミ「ホントに
みんなが朝の巨大オオカミとの戦いのことをぼんやりと思い出していると、アユミがポツリと言った。
アユミ「みんなが無事でホントによかった…」
アイ「アユミ…」
アユミは後ろを向き、焚き火から顔を
アユミ「こっちで待っていたら、オオカミの声もみんなの声も凄かったから…
ホントは毎日心配でたまらなかったの…
だけど、今日は今までと全然
だから…声がしなくなったら、我慢できなくて…」
アユミがずっと涙を
みんなもそんなアユミの姿を見て、自然と涙が出てくる。
ナオとツグミは肩を寄せ合い、アカリは隣で泣き出したモアの肩を抱く。ルカとソラも泣きながらお互いの手を
アイは自分の胸の中で泣いているアユミの頭を
アイ「ありがとう…ゴメンね、ずっと心配させて…アユミと、みんなのおかげでクエストも終わりだよ…」
ツグミ「よかった…誰も怪我とか無くて…私の魔法が
ナオ「ツグミ…」
アカリ「ううん…ツグミが
ルカ「そうだよ…今日でも『サンダラ』とか『ファイラ』とか、あれが無かったら危なかったよ…」
モア「私も…役に立った?」
ソラ「もちろんモアも大活躍だったよ…」
モア「よかった(笑)…」
全員「(笑)…」
モアが泣きながらも少し自慢げに胸を張るのを見て、みんなは吹き出した。
モアのおかげで誰もが泣きながらも笑顔になった。
ナオ「じゃあ今日も『ヒール』と『ケア』をするから、それをかけた人から寝てね…」
モア「ハイハイ、順番に並んで~(笑)…」
モアの冗談半分の掛け声を合図にみんな立ち上がり、2人から回復魔法を受ける。
ツグミとルカは少しだけアユミのする片付けを手伝い、それぞれがテントへと入っていった。
次の日は静かな朝だった。
鳥たちはまるでどこかに
アカリ「なんか全然違うとこにいるみたい…」
ナオ「聞こえてくるのがオオカミの遠吠えじゃなくて、鳥の声だもんね…」
みんなは急ぐことなく、ゆっくりと食事をして今日一日に
食事を終えると、いつものようにアイがこれからのことを話した。
アイ「じゃあ、この後は戦いの後片付けをしに行こう…今日はアユミもついてきて…
昨日の晩に言ったように、私とアカリとソラは群れがいた
他のみんなはオオカミの死骸とか魔石とかを回収しておいて…」
モア「片付け終わったら、村に戻るの?」
いつも気が早いモアがこれからのことも聞こうとする。
アイ「後片付けが終わってからのことはまたテントに戻ってから話すから…
じゃあ、とりあえず向こう岸へ行こう…」
今日は
昨日までは戦うことに精一杯で辺りがどうなっているのか、よく見ることもできなかったが、辺りにはオオカミたちの死骸があちこちに転がっていた。
ツグミやナオは
アユミ「何かあったら、大声で知らせてねー…」
アユミがアイたちに呼びかけると、アカリが振り返って手を振った。
ルカ「こっちに魔石があるんだけど…」
ツグミ「は~い、今行く…」
最後に出てきた巨大オオカミの魔石は両手のこぶしを合わせたよりも大きかったが、みんなが倒した普通の魔獣オオカミの魔石も片方のこぶし大ぐらいはある。
ツグミとモアがそれら一つ々々に布を
オオカミたちの死骸はあるものは頭や肩を
アユミ「
ナオ「誰も怪我しなかったのは奇跡だよ…」
ルカ「ゴブリンなんかより、100倍は
ツグミやモアは気味悪そうに死骸を見たが、ナオは丁寧にその数を数えていく。
ルカ「ここまで集めたので何頭?」
ナオ「13頭」
タクミ「もっとやっつけなかった?」
ツグミ「火が付いたまま、逃げていったのもいたよ…」
タクミ「そうか…」
ナオもツグミもタクミも顔を上げてもう一度辺りを見回す。
橋の傍から川の上流を
こちら側はオオカミの群れがいた場所ではなかったが、ずっと見渡してもオオカミの群れのようなものは見えなかった。
ナオ「ここから見渡しても、オオカミがいるようには見えないね…」
タクミ「ゴブリンの時とおんなじ…ボスみたいなデカいのを倒したら、いつの間にか一頭も見えなくなってる…」
ツグミ「うん…」
3人がぼんやりと辺りを見ていると、モアが大声で呼ぶ。
モア「ねえ!ぼんやりしてないでちょっとこっち来て!」
ツグミ「あっ、ゴメン…」
ナオ「今行くよ…」
ナオたちが橋の前の周辺を片付けている間にアイたちはどんどんオオカミの群れが
するとその途中にも2,3頭、オオカミの死骸が草の間に倒れている。ソラが近寄ってみると頭や身体が焦げているものがほとんどだ。
ソラ「火が付いたまま、ここまで逃げてきたんだ…」
アカリ「傍に魔石が落ちてない?」
ソラ「う~ん…もうちょっとちゃんと探さないとわかんない…」
アイ「今はいいよ…後でツグミたちともう一度来よう…」
橋からしばらく真っ直ぐ進んでから、ほとんど直角に曲がると正面に草原の中にごつごつした岩がいくつか顔を出しているところが見える。
オオカミの群れはまるでその岩を目印にするようにその場所に固まっていた。アイたちはずっと遠目で見ていたその場所に恐る恐る近づいていく。
だが、岩が固まっているところまで来てもどこにもオオカミの姿はなかった。
岩の
岩はこの場所にだけ相当大きなもの7,8個が地面から直接顔を出していて、あとは川に
川を背にして向こうを眺めると更に草原が続いた先が森になっている。
アイとアカリとソラは目を
アイはオオカミが見当たらず、ホッと息をつく。
アイ「やっぱりいなくなったみたい…」
アカリ「確かにね…」
ソラ「…これだけ見回したけど、どこにも居そうにないね…」
アイ「うん…」
まだ遠くの森の方を見ていたアカリが振り返る。
アカリ「この辺りの死骸も魔石も持って帰ろうよ…」
ソラ「また来るのめんどいからね…」
アイ「いいけど…魔石をそのままって大丈夫かな…」
不安そうな表情をするアイの肩をアカリが軽く叩く。
アカリ「ずっと持っとくんじゃなくて、帰ったらすぐにツグミに渡せばいいんだから…」
ソラ「そうそう…大丈夫だって…」
アイ「じゃあ、そうしよう…」
ソラ「ハイハイ、魔石ちゃんはどこかなあ~…」
アカリが2頭のオオカミの死骸を回収している間に、ソラが辺りを
一応影響が無いように魔法を使えないアイがそれを
アカリ「行きに見つけた死骸も持って帰ろう…」
ソラ「アイ、もう帰るでしょ?」
アイ「そうね…これだけ見渡しても一頭もいないから…もう大丈夫だね…」
アカリ「オッケー、じゃあ戻ろう!」
3人は元来た道を戻っていき、途中で見つけたオオカミの死骸を回収して傍にある魔石も探して持って帰った。
アイたちが橋のところまで戻ってきたころにはナオたちは作業を終えて彼女たちを待っていた。モアがアイの顔を見るなり尋ねる。
モア「ねえねえ、オオカミいた?」
アカリ「いたらこんなにのんびり帰ってこないよ(笑)…」
ソラ「イヤ、いたよ!」
モア「えっ、今いなかったっていったじゃん?」
ソラ「死んでたのが何頭もいた(笑)…」
モア「死んでたのはちーがーうー…」
全員「(笑)…」
モアがソラの冗談に
ナオが真面目な顔でアイに確認する。
ナオ「向こうにもオオカミの死骸があったんだ…」
アイ「そう…アカリが言ってくれて、3人で見つけたのは集めてきた…」
アカリ「アイが魔石を持ってんでしょ…」
アイ「ああ…ツグミ、これお願い…」
アイはその場に
ルカ「こっち側からも辺りを見たけど、オオカミはいなさそうだよ…」
アカリ「向こうでも川の下流の方も上流の方も、あと向こう側に森があるみたいだけど、どこにもオオカミらしい姿は見当たらなかった…」
みんなはもう一度それぞれが周辺をぐるぐると見渡してみるが、時々鳥が飛んでいるぐらいで他に獣らしいものの姿も見えない。
これだけ確かめて、全員はやっと安心して胸をなでおろした。
ツグミ「ハイ、この魔石が6個だね…ちゃんとできたよ…」
アイ「それはツグミが持ってって…」
ナオ「魔石が6個ってことは、オオカミは6頭いたんだね…」
アカリ「こっちは何頭いたの?」
ルカ「え~と…何頭いたんだっけ…」
ナオ「最終的には14頭…」
アユミ「じゃあ、全部で20頭だから…言ってたオオカミのほとんどをやっつけたってこと?」
タクミ「最初に聞いたのは30頭ぐらいだったから…」
アカリ「ううん…アイと群れを誘い出そうとした時に言ってたのは、ホントは40頭ぐらいいたんじゃないかって…」
タクミ「40って…」
ナオ「かなりの数だね…」
アイ「だから…まあ、半分ぐらいじゃないかな…自分たちで倒したのって…」
ルカ「半分でも凄いよ…」
モア「それぐらいは戦ったよ…大変だったもん…」
ソラ「まあ、モアの言う通りじゃない?だいぶ大変だったから…」
もう一度自分たちが戦った場所を見渡すと、あちこちで草が
地面にもオオカミが暴れた
ツグミやモアは戦いのことを思い出したのか、フーと大きな息をつく。その様子を見てアイは口を開く。
アイ「さあ、もう片付けも終わったし、テントに帰ろう!」
みんなは深くうなずく、またぞろぞろと橋を渡った。
全員が橋を渡り終わると、またアユミが尋ねる。
アユミ「今度こそ、この板どうしよう?…」
橋を
アカリ「そのままアユミのストレージに入れといたら…」
ナオ「それでもいいけど…やっぱり村の人たちにここが無事になったっていうのが分かるようにしたいけど…」
ソラ「う~ん…」
アイ「アユミ、ちょっとそれここに出して…」
アユミ「うん…」
アイはアユミにその板を橋を塞がない、少し横の場所に出すように指差す。アユミは彼女の意図が分からないまま、言われた通りに指された辺りにそれを出す。
するとアイはその丸太に張られた板をゆっくりと草の上に横倒しにした。
ルカ「アイちゃん…」
ソラ「アイ…」
アイ「これでヨシッ、と…こうしとけば遠目にも橋が塞がれてないのが分かるし、ここまで来てこれを見ればもう大丈夫だって分かるんじゃない?」
アイが仲間の顔をぐるっと見回すと、みな黙ってうなずく。
アカリ「ヨシッ、それじゃあ任務完了!お昼ご飯にしようよ。」
モア「よ~し、休憩だ~…」
ナオ「パンと飲み物を出すよ。」
ルカ「私も…」
全員が大きく手を打って、昼食のために焚き火の周りを
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