ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
その晩、アイたちは久しぶりにハムを焼いて野菜と一緒にサンドウィッチにして食べた。
クエストの緊張感もなく、互いにパンやハムや野菜を回してワイワイ騒ぎながらサンドウィッチを作り、ちょっとした校外学習のような気分だ。
ソラ「ハア~、スープも
モア「いいねぇ~」
アカリ「あんたたち、何でも美味しいって言ってんじゃん(笑)…」
ルカ「そうそう(笑)…」
ナオ「でも、なんかサンドウィッチも食べ慣れてくると、アボカドとかも食べたくなる…」
アイ「わかる…」
アユミ「アボカドって(笑)…」
アカリ「アボカドはさすがに無理しょ(笑)…」
タクミはサンドウィッチを口いっぱいに
タクミ「…こういう食べ物って、何が出てくるか、誰が決めてんだろう…」
ソラ「でもさ、出てくるものって結構私たちの世界のヤツも多いから、もしかしたら私たちの近くにいたんじゃない?」
ツグミ「魔法使いが傍にいたってこと?」
ソラ「じゃないと、マヨネーズとかドレッシングとかおかしくない?」
ナオ「あと計量カップもダッチオーブンも(笑)…」
アイ「それじゃあ、何でもかんでもだよ(笑)…」
ソラが言うように元いた世界で使っていたり、食べていたりしたものが魔法などで手に入ってはいるが、それでもさすがに元の世界に魔法使いがいたとは誰にも思えない。
みな夕食を口にしながらいろいろと考えてみるが、やはり
ナオ「まあ、とにかく次の街に行って少しでいいから何か手がかりがないか探してみよう…」
ルカ「まだわかんないことだらけだもんね…」
アカリ「先は長そうだよ…」
モア「ヤダよー…」
風が起こって辺りの草がざわざわと鳴り、
大変だったクエストを終えたとは言え、当てのない旅はまだまだ終わりが見えない。
最初の明るさもどこかへ行って、誰もが黙ってしまった。
アイも一度大きくため息をつくと、口を開く。
アイ「とりあえずドムニの町に戻って、ギルドに今度のことを知らせよう…」
ツグミ「またお店のおじさんやおばさんのところへも寄るの?」
アユミ「レンズ豆が
ナオ「次に行く街のことも聞かないと…何て言ったっけ?…」
タクミ「リとかレとかで始まらなかったかな…」
モア「レア!」
アカリ「それは最初に行った村だよ…」
モア「違うの?」
アイ「だから違うって(笑)…」
ルカ「(笑)…」
みんながモアの答えにクスクス笑いだすと、アユミが立ち上がって片付けを始める。
アイも立ってもう一度言った。
アイ「じゃあ、ドムニに戻ったらまたギルドとおじさんのお店に行こう…ってことで、明日は早起きして村へ行くからね…」
全員「ハーイ!(笑)」
みんなは一斉に返事をして笑い出すと、それぞれに夕食の片付けと寝るための準備をしてテントへ入っていった。
次の日はいつも通り早朝に起きて食事や馬車
この日も空はどんよりとした
アイたちがテントも
村の中へ入って
だが、厩に来ても2人の姿はどこにもなかった。3人は内心ホッと息をつく。
厩では何人かが馬車に荷物を積み込んだりしていた。
1人か2人、どうやら事情を知っていそうな者がアイやアカリに
アイたちもただ御者の男と話をして馬車に乗り込む。みんなが乗り込むと、しばらくして馬車は動き出した。
馬車が出発してしばらくすると外は雨に変わった。ただこれまでのようなザーザー降りではなく、しゃばしゃばとした雨が降ったり止んだりする。
彼女たちは行きしなと同じように毛布を出してお互いに身を寄せ合う。
だが
次の日は空も晴れ上がり、すっかり天気も良くなった。
今まで駅馬車にはアイたちしか乗ってなかったが、この村で初めて相乗りの客が乗ってくる。
客はこの村の農婦2人で、40ぐらいで小柄だが身体はがっしりとしている。2人とも作ったイモをドムニの市に売りにいくという。
それぞれが
アイ「お手伝いしましょうか?」
農婦1「いいの。これぐらい運ぶのなんて普通なんだから…」
彼女が言うように、2人とも
農婦2「まあいっぱいいるんだね…ちょっと
アユミ「こっちの奥へ来てください…」
農婦1「じゃあ遠慮なく…」
2人はアイたちがフードを
この辺りは貧しい農村ばかりだということ。
最近
勇者パーティーなんて大体が盗賊と同類みたいなものだということ。
彼女たちはそんな
アイやナオやアユミはそれでも何か手がかりになるような話がないか、多少我慢しながら2人の農婦の話に付き合っていたが、残念ながらほとんどが貧しい村の生活の
馬車はこの日も遅れることもなく、次の村に着いた。
御者の男が言うにはこのままの天気でいけば、明日の夕方にはドムニの町に到着できるという。アイたちは礼を言って宿屋に向かう。
宿の部屋に入るとすぐ、一日中女性たちの話に付き合ったアイが寝転がって伸びをした。
アイ「あー、大変だったぁー…」
ツグミ「(笑)…」
アユミ「お疲れ様(笑)…」
ナオ「ホントに(笑)…でも、仕方なかったよね…」
アイ「いい人たちだったけど…大事そうなことはやっぱ何にも知らなかった…」
アカリ「(笑)…まあ、当然っていや当然なんだけど…」
タクミ「世間話をずっとしてたけど、オレたちの知らない村の人の愚痴ばっかだった…」
ルカ「何かを聞き出すって、意外と大変だね…」
アイ「そうだよー…」
アユミ「わかったから、すぐ食事にしよう(笑)…」
ずっと話を聞いていたアイはもちろんのこと、他のみんなもやはり馬車に一日揺られていたこともあって疲れていたのか夕食を終えるとすぐに床に入った。
そして
アイたちも農婦の女性たちも乗り込むと、馬車はまたすぐに出発した。
疲れ気味のみんなに対して農婦の2人は何事もなかったかのようにこの日もずっと話し続けている。
さすがにアイもこの日はあまり話に加わらず、毛布に
そうして次第に太陽も高くなってきて、馬車もいくつかの草原を抜けて森に差し掛かってきた。
するとそれまで静かにしていたツグミが突然顔を上げて
ルカが驚いてツグミに聞いた。
ルカ「ツグミちゃん、どうしたの?」
ツグミ「ねえ、何かが後ろから追いかけてきてる!」
アイ「なに?」
アイやアカリが馬車の後方に行き、外を
しかし、ソラやナオやモアにもその何かが
モア「馬で追いかけてきてない?」
ツグミ「だと思う…5、6人、もしかしたらもっと多いかも…」
ナオは前にいって御者の男に状況を告げる。
ナオ「誰かがこの馬車を馬に乗って追いかけてきてます!」
御者の男「なんだって?こんなただの駅馬車を追ってきてる?」
ソラ「私たち、魔法でそれが見えてるんです…」
御者の男「そんなこと言っても、これでスピードは精一杯だ!」
御者の男はそれでも馬たちを
ツグミ「ダメ!だんだん近づいてる!」
アカリ「分かってる…もう見えてきた!」
モア「ねえ、前にも何かがいるよ!」
アイ「しまった!」
モアがそう言うやいなや、馬車はスピードを落としだす。どうやら先の方で待ち伏せをしていたようだ。
アイが大声で指示をした。
アイ「アユミはここにいて。他のみんなはすぐに外に出て、武器を出すよ!」
アユミ「おばさんたちは奥に
馬車が広くなったところで止まると、アイたちはみな大急ぎでマントを脱いだ。
彼女たちがパラパラと馬車から降りて武器を取り出した頃には、後ろから追ってきた男たちも姿を現し、前で待ち伏せしていたヤツらも馬に乗ったまま、馬車を
みな薄汚れた麻のシャツとズボンに
ほとんどが
アイたちが武器を
盗賊「ほー、なかなか
この馬車にローフの村長から大金を
それが誰かとかは、聞かなくてもいいようだな…」
ダンと名乗った男は30代ぐらいで眼が
ダンが背負う斧の頭の部分は彼自身の頭がすっかり隠れるぐらいの大きさをしていて、その分厚さも普通ではとても片手で
だがダンは平気でそれを
ダン「おい、悪いことは言わねえからすぐに村長から奪った金を出せ!
そうすりゃ、もしかしたらこのまま大人しく帰るかもしれねえぜ…」
アイは剣を
アイが何かを言おうとした瞬間、ナオが
ナオ「金なんかない!こんなただの駅馬車にそんな大金を持ってる人間なんていない。」
ダン「ほー、じゃあオレたちの間違いかな…どうやら力づくでそれを調べないといけないようだな。
野郎ども!
アイたちはみな、自分たちの武器をもう一度握りしめた。
だが今まで魔獣とは戦ってきたが、人間を相手にするのはこれが初めてだ。誰もが今までとは
アイがそんなみんなの気持ちを
アイ「みんな、腕や
アカリ「わかった!」
ソラ「り(了解)!」
ナオ「わかった!」
アイ「いけー!」
盗賊たちは馬に乗ったままアイたちに突っ込んでくる。
それに向かってツグミやモアやナオが火の玉を次々に飛ばした。
盗賊たちは魔法使いがいるとは思ってなかったのか、火の玉で衣服や髪の毛に火がついたり、その火の玉を
アイやアカリやルカがそれに飛びかかって手や脚を狙って剣を振るう。
落馬した盗賊も武器を
アイたちは魔法と武器の
子分「ダ、ダメだ…逃げろ!」
武器が使い物にならなくなり、魔法にもやられた盗賊たちは、手足を切られて倒れている仲間を
その様子をずっと見ていたダンが叫ぶ。
ダン「バカヤロー!こんな小娘どもになんてざまだ…仕方ねえ、オレ様が相手だ!」
ダンは大斧を背負ったまま馬から降り、アイたちの方へ歩み寄ってくる。
アイたちは息を整えようと大きな息をしながら、武器を構えてその様子をうかがう。
やがてダンはアイの正面へやって来た。
ダン「どうやらてめえがリーダーのようだな。そこそこの腕前だが、オレ様にそれが通用するかな…」
ダンは身長だけでもアイよりも10㎝以上大きい上に、腕も肩も胸も筋肉が山のようになっていて手足も
子分たちは
だがダンにはそういう様子が全くなく、彼がこうした闘いの場に慣れているのが感じられた。
アイはダンの
ダンはその様子を見て、フッと笑う。
子分「
子分の誰かが声を出すとダンはアイから目を離さずに
ダン「バカが!お前らはそこにいて黙って見てろ!」
アイはダンに剣を向け、ダンは肩に大斧を背負ったまま互いにジッと睨み合う。
アイはじりじりと間合いを
アイ「やあっー!」
アイは一気に間合いを詰めて、ダンに剣を振り下ろした。
だが、身体も大きく大斧も背負っているダンはいとも簡単に
アイは相手に反撃する間を
アイ「えい、えい、えいっ!」
アイは剣を振り下ろしたり、
しかし、彼は小山のような大きな身体に加えてドデカい大斧まで背負っていながら、まるで体操の選手ように軽々と彼女の
アイはスピードや一瞬の速さなら
アイ「ハアハア、ハアハア…」
ダン「フフフ(笑)…どうした、もうスタミナ切れか?
そんな剣じゃあ、オレ様には当たらねえな(笑)…」
アイは全力の攻撃を全て避けられ体力を奪われているのに対して、ダンは
アカリ「アイ!」
ダン「さあ、今度は本当の技ってやつをオレ様が見せてやるぜ!」
アイの動きが
ダン「ほら、ほらほら、ほらよっ…」
アイ「ふん、ふん、えい、えい…」
ダンはドデカい大斧を軽々と
アイは何とかその攻撃を避けるが、ダンの大斧は思っている数倍の速さでアイを襲い、その攻撃から逃げるだけで精一杯だ。
ダン「どうした小娘!さっきの威勢のいいのはどこへ行った?ほらっ!」
アイ「うわあっ!」
ナオ「アイ!」
突然、アイは大斧を避けるのに気を取られ、
受身で頭こそ打たなかったが、剣を落としてしまう。
ダン「フン!」
ダンはアイの顔のすぐ横に斧を振り下ろすと、アイの脚を
アイはダンを睨みつけるが、もはや
アイ「グッ…」
アカリ「アイ!」
ダン「おめえら、動くな!もし動けば、こいつの首をぶち切るぞ!」
ダンはアイを見下ろしたまま、アカリたちにそう怒鳴る。
ダンの子分たちは自分たちの頭領がアイを踏みつけるのを見て、再びニヤニヤしながら武器を構えた。
ダン「どうした?…これで勝負あったな…」
アイ「うううう…」
ダンはアイを踏みつける足に力を
ダン「悪いようにはしねえって、このままオレたちのアジトに来りゃあいいだけよ。
そうすればこれからずっと
アイ「ちくしょう…」
ダンは
ゴンッ‼
ダン「痛てえ!誰だ⁉」
突然ダンの、ちょうど右側のこめかみ辺りに石のようなものが飛んできて当たった。
ダンが右側に振り向くと、馬車に乗った農婦が両手にイモを持っている。
ダン「てめえ‼」
ダンが馬車に向かって怒鳴った、その瞬間だった。
アイはストレージから
ダンは2,3歩
ダン「ぐっ…」
アイ「えーいっ‼」
ダン「グワーッ!」
アイはその
ダンの
アイは頭から返り血を
アカリ「アイ!」
ツグミ「アイちゃん!」
アユミ「アイ!」
みんなは一斉にアイのところへ走り出した。
それに対してダンの子分たちはあまりのことに
子分1「ダ、ダメだ!頭領が…」
子分2「逃げろ!」
盗賊の子分たちは今度こそ自分たちが乗ってきた馬のところへ走っていくと、まだ倒れている仲間たちのことも
アユミ「アイ、大丈夫?」
アカリ「大丈夫?」
馬車から文字通り飛び降りたアユミに続いて、アカリやナオがアイの傍へ行く。
アイは膝立ちのまま、放心したように倒れているダンのことを見ていた。
アユミはすぐにアイの背中を
アカリ「アイ、しっかりして…」
ナオ「大丈夫?」
ルカ「アイちゃん?」
顔を拭くアカリやナオが肩を揺さぶって、アイはやっと
アイ「アカリ…」
アカリ「アイ?」
アイ「私…人を斬っちゃった…この手で…」
ナオ「アイ…」
アイが剣を持ったままの手を持ち上げると、その手は
アイは何かに気づいたように剣をその場に落とした。
ナオはそんなアイを見て、アユミの方へうなずく。アユミもうなずき返して、今度はアイの背中に『ケア』をかける。
みんながアイの周りに集まってきた。
御者の男「お、おい!こいつは大斧のダンじゃねえか⁉」
アイたちが戦っていた間、馬車の
ソラとルカがその声に振り返る。
ソラ「そういや、この男もそう名乗ってたけど…」
ルカ「何でこの男の名前を知ってるんですか?」
御者の男「こいつはこの辺りじゃ有名な
モア「賞金首…」
御者の男「そうだ…あちこちで商人の馬車が
何度か
タクミ「それであんなに強かったのか…」
タクミやソラが御者の男の話を聞いて、顔を見合わせた。
御者の男は倒れている男の顔を指差す。
御者の男「この顔の傷と大斧の星の
男が言うように、ダンが持っていた大斧の実の真ん中に大きな星の模様が浮かび上がっていた。
ルカが大斧を引っ張るが、それはルカが引きずるのがやっとなぐらい重い。
ルカ「持っていってどうすればいいんですか?」
御者の男「守備隊の兵士に起こったことを説明して、死体と斧を見せれば
ただ、ドムニの町はダメだ…」
タクミ「どうして?」
御者の男「みんな100ゴールドの褒美が欲しいから、ドムニの町の兵士に言うと横取りされちまう。
ご領主様がおられるリラの街へ行って、そこの守備隊に言う方がいいだろう…」
ナオ「リラの街…」
アイは血を拭いてもらい、回復魔法もしてもらってやっと立ち上がるが、まだ少しふらふらしていた。
アイに代わってアカリがタクミに言う。
アカリ「じゃあ、タクミはそのダンの死体と大斧をストレージにしまって…」
タクミ「でも、こんな血塗れじゃ…」
ルカ「じゃあ、毛布を出してそれに
タクミとソラとルカは
大斧も同じように毛布に
アカリがアイの剣を
アイはみんなに支えられながら馬車の方へ乗り込んだ。
農婦1「あんた、大丈夫だったかい?…」
2人の農婦はアイが無事だったのを見て、やっと声をかけた。その手にはまだイモが握られている。
アイは2人を見て、ふらふらしながらも頭を下げた。
アイ「ありがとうございました…お二人がそれを投げてくれなかったら、私たち、盗賊の言いなりになるしかなかったです…」
農婦2「こんなので間に合うかどうかわかんなかったけど…
うまくアイツに当たってよかったよ…」
農婦1「ホント、こんなので何とかなるか、わかんなかったけど…
あんたが無事でホントよかった…」
2人が少し
そこに御者の男が声を掛ける。
御者の男「さあ、すぐに出発しよう!このままじゃ、夕方に町にたどり着けないぜ…」
ツグミ「でも…あの人たちは…」
ツグミはアカリたちにやられて向こうに倒れている盗賊たちを見る。
御者の男「オイオイ、アイツらはあんたらを殺すか犯すかするつもりだったんだぜ、それを、何を人のいいこと言ってんだ(笑)…
アイツらはあそこに
盗賊なんてそんなもんだぜ…さあ、早く乗った乗った…」
ツグミ「はい…」
ツグミはまだ
すると馬車はすぐに出発した。
馬たちがいなないて馬車が発車すると、すぐに倒れていた男たちの姿は見えなくなった。
楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、お気に入りや評価をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。