ワンダラーズ・イン・アナザー・ワールド ~男子は僕ひとりだけがクラスの女子といっしょに異世界へ送られたけど、僕が抱くことで彼女たちは強くなります。~ 作:イジー・ムラシロ
これまでのことのあらましはほとんど話してしまったので、アイたちは椅子から立ち上がろうとした。
すると店のオヤジが笑顔で尋ねる。
オヤジ「ところで聞きそびれたが、お前たち、どうしてこんな所に魔法で呼び出されたんだ?
一体誰が何のために連れてきたんだ?」
みんなは改めて
ナオ「私たちもよく分からないんです。
気づいたらレアの村のずっと向こうの山の中の小屋にいて、そこにあった
オヤジ「やっぱそうだろうな…じゃなきゃ、わざわざ
アユミ「この辺りには「
オヤジ「「彷徨い人」の話ね…」
オヤジはまた腕を組んで何かを思い出そうとし、おかみさんも首をかしげる。
おかみさん「この辺りは本当に田舎だから、そういった言い伝えみたいなのもあまりないのよ…」
オヤジ「そうだな…この地域は15年ほど前に反乱があって、今のご領主様がまだ
アイ「そうですか…」
この辺りの事情に
そんなアイにナオが気にしないようにと肩に手を置いた。
オヤジ「まあ、ドムニのような田舎じゃあ仕方ねえ。リラの街はご領主様のお城もあってデカいし人も多い。
貴族もたくさん住んでるからそうしたとこから
まあ、あんまり気を落とすな…」
アイ「はい…」
おかみさん「さあさあ、今度はリラに行くんでしょ。何か必要な物がないか向こうに見にいこう…」
おかみさんは重くなった空気を変えようとみんなを食料や生活用品のある
アユミとナオとルカはうなずきあって、立ち上がっておかみさんについていく。ツグミもそれに気づいて3人に続いた。
オヤジも残っている者に言う。
オヤジ「武器はどうだ?何でも
ソラ「そんな言い方されると…」
オヤジ「ハハハハハ(笑)…」
アカリ「(笑)…ここで買った弓矢や投げナイフは使っています…
それと武器の手入れのことを聞きたいんですが…」
オヤジ「(笑)…よしっ、裏に出て武器の手入れのことを教えてやろう…」
オヤジが椅子から立ち上がったので、アイたちもオヤジについてすぐそばにある裏口から外へ出ていった。
アユミたちはおかみさんと一緒に食料を見て回る。
おかみさん「あんたたち、
アユミ「あの~、いくつか自分たちの世界の調味料が魔法で出せたりしますし、食べ物も飲み物も多少は魔法で出せるので…」
おかみさん「へぇー、そりゃ便利だねー…じゃあ、私が
ツグミ「ううん…ここで買ったレンズ豆、
おかみさん「そうかい!」
アユミ「前のクエストの時も今回も、私がスープにして出したら好評でした。もう残りも少ないんで、また貰えますか?」
おかみさん「レンズ豆ぐらいならいくらでもあるよ…他は何かないかい?」
ナオ「ここでいただいた
甘いものが食べられて…」
ルカ「
おかみさん「そう言ってもらえると
蜂蜜は残念ながら無いけど、木いちごやラズベリーなら少しはあるよ、持ってくかい?」
アユミ「じゃあ、お言葉に甘えて…」
おかみさん「いいのいいの…いくらでも言っておくれ…」
おかみさんが
ナオ「なんで?もう「彷徨い人」って知られてるんだから、大きな袋のまま貰ったら…」
アユミ「ううん、それぞれ分けて持ってる方がいいって…こないだみたいに誰が寝込むかわかんないから…」
ルカ「だよね…アユミちゃんが具合悪いと、出せなくなっちゃうから…」
ナオ「そうか…」
おかみさん「ハイハイ、お待たせ…」
おかみさんは小さめの袋をいくつも持ってきて、レンズ豆をその袋に入れていく。
アユミたちが一人々々それを受け取ると、おかみさんはそのまま
一回々々アユミたちが丁寧に頭を下げる様子を見て、おかみさんが言う。
おかみさん「…あのねぇ、あんたたちはホントに丁寧だし、礼儀正しいし、いい
でもね正直に言うと、ちょっとあんたたちがレアの村からやって来たとは前々から思えなかったの…
あんたたちってこの辺りの村の出にしちゃあ礼儀も知ってるし、うちの人の言うややこしい話でもちゃんと分かってるし、それに何より
アユミ「おばさん…」
おかみさん「あんたたちを見てるとどっかの御貴族様の出じゃないかなって、そんなふうに思っちゃって…
だから、あんたたちが「
ナオ「私たちって、そんな感じですか…」
おかみさん「まあねえ…うちの人だってナニだって、あんたたちに気をつけろって言うけどさ、あんたたちのその品の良さってのは自然なことでしょ…
だから、そういうことって気をつけようがないよね…」
おかみさんから思ってもみなかったことを指摘され、アユミとナオとルカとツグミはお互いに顔を見合う。
自分たちは当たり前と思って毎日振る舞っているので、それが自分たちの
おかみさんの言う通り、そんな普段のことを変えるのは自分たち自身では
ナオ「ありがとうございます。自分たちじゃあ、そんなこと考えてもみなかったので…
どうすればいいのかわからないですけど…
でも、おばさんの言葉は忘れません…」
おかみさんはそうナオに言われてまた心配そうな表情をする。
おかみさん「悪かったねえ、なんか気になるようなことを言っちまったようで…
私はあんたたちにそのままでいてほしいんだけど…
でも、こんなことを聞いたらそのままじゃあいられないね…」
おかみさんが申し訳なさそうにするのをツグミやルカが手を取って首を振る。
ツグミ「そんなことないです…」
ルカ「そうです…いろいろ言って
自分たちの態度のこともどうかできるかはわからないですけど、そうやって見えてるって教えてもらえてホントに助かります…」
おかみさん「そうかい…そう言ってもらえるとこちらこそありがたいよ。余計なことを言っちまったと思ったからね…
それじゃあ、神様にあんたたちのこれからの安全を祈っといてあげるよ…」
ナオ「神様…ですか…」
おかみさん「そう、ニディアの神様って言うんだよ…知らないかい?」
アユミ「あの
おかみさん「そう、それがニディアの教会だよ…
ニディアの神様はね、
それで教会で一生に一度、
そうすれば神様からその特別な光翼をいつも与えてもらえるの…
私たちが一日に二回神様にお祈りをするとその日の光翼が得られるの。
それで毎日が幸せになるんだけどそれだけじゃなくて、その光翼を与えられると、死んだ後に神様がいらっしゃって私たちを天国へ連れていってくださるの…
だから、私たちは毎日神様に
ルカ「へぇー…」
ナオ「そうなんですか…」
おかみさん「あんたたちの世界には神様はいなかったのかい?」
アユミ「いえ、私たちの世界にもいます…私たちはそうした儀式は受けてないですが…」
おかみさん「そうだよね…神様はどこにでもいらっしゃるから…」
ルカとツグミは今まで聞いたことがないことをおかみさんが言って、顔を見合わせる。
ナオとアユミは忘れないようにしっかりとその話を聞いていた。
おかみさん「さてさて、なんの話をしてたのかしら?」
ナオ「さっきおじさんが「成人して」って言ってたんですけど、ここだといくつからが成人何ですか?」
おかみさん「そうね、
まあ、貴族の方々とかは一応15歳から成人って言うから、私たちもだいたいそれぐらいかな…
それでも身体が大きくなったら、もう大人みたいなもんだけど…」
ルカ「お祝いとかしないんですか?」
おかみさん「お祝いってなんの?成人になってのかい?
そんなことしてる余裕もないし、子供はみな、勝手に大きくなるもんだからねー(笑)…」
ツグミ「そうなんですか…」
ナオ「15歳で成人…」
ナオとアユミはここでも顔を見合わせ、しっかり覚えておこうとうなずいた。
アユミ「おばさん、
アユミたちがそう言うと、おかみさんが先に立ってみんなで薪を置いている方へ移動した。
裏ではアイたちが武器の手入れや
アイやアカリが使えるようになっていた『
アカリ「う~ん…こんな感じですか…」
オヤジ「そうそう…やっぱりスキルがあると違うな…まあ、基本的なやり方さえ分かってれば後は応用だ。
それと武器のことをもっとよく見て、どんなふうに使うのかを考えるんだ。
誰かに聞くのが一番いいが、それが出来ない時は武器自体から学ぶんだ…」
ソラ「へぇー…」
オヤジ「実際に草や枝を切ってみて、どんな切れ味なのか、武器のどの部分が使えるのか、どんな切れ方や刺さり方をするのか、そうしたことを見りゃあいい…
それを獣や人に対してどうなるのかを想像するんだ…」
アイ「なるほど…」
オヤジがナイフや剣を
オヤジ「剣は上等なヤツならちゃんとした
前に買ったようなヤツなら切れなくなったら捨てた方がマシだろうな。
ナイフや投げナイフはちゃんと研いでるといざという時にしっかりと役に立つはずだ。」
タクミ「ちゃんと研いだりして準備してると、相手にもダメージがある、か…」
ソラ「はあ~、意外と大変だー…」
オヤジ「何を言ってる、戦場で自分の命を
そう思えば
モア「確かに…」
オヤジ「よし、ちょっと一服だ…」
休憩ついでにアイたちはオヤジが研いだナイフや剣をそれぞれ回して見ている。
オヤジは家から水差しとコップを取ってきてみんなに
アイ「すいません…私たち、飲み物もあるのに…」
オヤジ「まあただの井戸水だ、気にしなくていい…
そうだ、オレはリラの街の貴族や兵隊には
そん中でもバグっていう武器商人がいる。」
タクミ「バグさんですか…」
オヤジ「そう…リラの街でも一、二の
ドムニの武器屋のオットから
モア「オット?…」
ソラ「おじさんってオットさんって言うんですか?」
オット「そうだ…そう言わなかったか?」
モア「名前聞いたの、初めてだよ(笑)…」
アカリ「モア…」
オット「そうか(笑)…まあ、オレの名前なんぞどうでもいいが、リラのバグって商人のことは覚えておいた方がいい…いいな。」
アカリ「わかりました…」
アイ「ありがとうございます、いろいろと…」
オヤジ「いいってことよ…」
オヤジはコップの水を飲み干しながら
それぞれに分かれて武器のことや食料、生活用品のことなどを聞き、必要なものも購入し終わってそれぞれが用意を
アイたちが店から出るとナオが思い出してみんなに武器を出すように言い、準備をすると送りに出てきたオヤジとおかみさんに皆で何度も頭を下げた。
オヤジ「これからギルドに行くんだな…」
アイ「はい、お話して下さった方に会いに行きます。」
オヤジ「リラに行く駅馬車なら毎日出てるだろう…話さえ聞きゃすぐに行けるはずだ…」
アカリ「ありがとうございます…」
おかみさん「大変だろうけど、身体には気をつけなよ…」
アユミ「ホントにすいません…」
オヤジ「また来いって言っても、リラの街に行きゃ何でも
何より知りたいことはここにはもうないから、この町に戻ってくるこたあないだろうな…」
おかみさん「あんた…」
おかみさんはちょっと
オヤジ「ここへ戻ってくるより、お前たちが探してるものを見つける方が大切だ…だからオレらのような者のことなんてどうでもいい。自分たちのことをしっかりするんだ…」
ルカ「おじさん…」
アイ「わかりました…本当にいろいろお世話になりました。お二人のことは決して忘れません…」
おかみさん「本当に、みんな元気でね…」
みんなは改めて二人に頭を下げて、ギルドの方へ向かった。
店のオヤジさんとおかみさんはアイたちの姿が見えなくなるまで店先で見送っていた。
久しぶりに武器を
ソラ「この腰の剣がどうも邪魔だよ…重いし…」
タクミ「
ルカ「まあ、何でも注意しなきゃいけないからね。ここにいる間はちゃんと武器も持ってないと…」
アイ「そうそう、自分たちを守るためだよ…」
ソラ「はあ~、全員に大きなストレージがある世界がよかった…」
アユミ「(笑)…」
ツグミ「(笑)…」
それぞれがソラの様子をクスクス笑うが、ナオは真面目な顔でアイの隣に並ぶ。
ナオ「とにかくギルドでおじさんが言ってた人に事情を話さないとダメね…」
アイ「この間の使いのこともあの人が私たちに頼んだから、その人に全部言うのが一番早いよ…」
アカリ「確かに…」
アイ「まあ、いつもその人がいるから大丈夫だと思うけど…」
アカリ「名前、何て言ったっけ?」
アユミ「アドス、アドスさん…」
アイ「アドスさんか…」
そんな話をしているうちに、ギルドに近づいてきた。
今日はお店でゆっくりと話してきたので、またガラの悪い奴らが建物の前にたむろっている。みんなはフードをまた深く被った。
以前の男たちは最初は大人しかったが、今日はアイたちを見つけるとすぐに騒ぎ立てた。
一人目の男「おうおう、何かちっぽけなヤツらが来たぜ…」
二人目の男「こいつら、だいぶ前にここへ来なかったか?」
三人目の男「なんもできねえのに、まだうろうろしてやがるのか…」
四人目の男「さっさと自分の村に帰って、母ちゃんにおっぱいでも吸わせてもらえ(笑)…」
全員「(笑)…」
最後の男がそう言うと、全員がドッと笑う。
ソラがいきり立ちそうになるのをアカリとルカが両側から押さえて、何とか騒ぎを起こすことなくギルドの中に入った。
ギルドのドアを閉めると、ソラがすぐに
ソラ「なんだよ、アイツら…私たちの方がよっぽど大物と戦ってきたっていうのに…」
ルカ「まあ、ソラちゃんが言うのは分かるけど…」
アカリ「こっちが勝ってんのは明らかだから、そんなにカリカリしない…」
2人がソラをなだめながら、みんなは階段を上っていく。
二階の受付へ行くといつものように頭の
アイ「あの~、すいません…」
受付の男「はいはい…」
アイに声をかけられて、男は書類から顔を上げる。
そこで彼を呼んだのがアイたちだと分かると、男はびっくりして文字通り椅子から飛び上がった。
受付の男「あんたたち、無事だったのか!」
アイ「すいません…遅くなって…」
受付の男「手紙を渡したっきり何の
無事で戻ってきてよかった…」
アカリ「はあ…」
男の言葉にみなバツが悪くなってそれぞれ
アイ「実は…本当に
受付の男「なんだって!手紙を渡してくるだけでいいって、あれほど言ったじゃないか…」
アイ「まあ、例の村長にかなり馬鹿にされてちょっと腹が立って…それに…」
受付の男「
ツグミ「それだけじゃないんです…
村長は手紙を読んでも
受付の男はアイたちの顔を見回すが、とりあえず全員が無事な様子にちょっと息をついてまた椅子に座った。
受付の男「で、クエストは上手くいったんだな…」
アイ「上手くいきました…
それに村長は私たちなら十分な報酬を出すと言って、確かにクエストに見合うだけの
受付の男「あのどケチ…
アイは少し固い表情になって受付の男に尋ねる。
アイ「あの~…あなたのお名前はアドスさんでよろしいでしょうか?」
受付の男「うん?誰にその名前を聞いたんだ?」
ナオ「町の武器屋のおじさんに聞きました。」
アドス「オットにか…で、オットは何で私のことを?」
アイ「実はちょっと大切なお話があって…他の人に聞かれたくないんですが…」
アドス「ふむ、何かわからんが…ちょっと待ってな…」
アドスは一度部屋の奥へと行ってしまうが、すぐに
アドス「こっちへついてきてくれ…」
そう言うとアドスは廊下の突き当たりの部屋へ向かい、ガチャガチャと音を立てて鍵を開けた。
部屋はそれほど広くなく、部屋の真ん中に真四角の机と4つの椅子が置いてある。
アドス「入ったら、最後の人は必ずドアを閉めて…」
彼に言われたように、最後に入ったタクミがドアを閉める。
アドスはそれで、という顔でアイたちを見た。
アイ「実は私たちが帰りに乗ってきた駅馬車が盗賊に
アドス「大斧のダンに襲われた?」
アイ「はい…それで何とか協力してそのダンを
アドスはアイがダンを討ち取ったと聞いて大声を出しそうになり、自分で自分の口を押さえた。
だが、目を真ん丸にしてアイたちの顔を改めてしげしげと見つめる。
アドスはしばらくの間自分自身を落ち着かせるために口を押さえたままでいたが、ようやくその手を離して口を開いた。
アドス「あんたたちがあのダンを…そりゃ大したことだ…で、オットに何て言われたんだ?」
アイ「乗っていた馬車の御者さんにこの町でダンのことを言うと
店のおじさんも同じことを言ってくれて…それでリラの街に行くのがいいけど、その前にアドスさんに話をした方がいいって…」
アドス「ダンを
アドスに言われてタクミが床にダンの大斧を出す。
アドスはその大斧を
アドス「うむ…これはどうやらダンの大斧に間違いなさそうだ…で、私に何ができるっていうんだ?」
ナオ「店のおじさんはアドスさんならリラの街にいる知り合いに
アドスはしばらくジッと黙って考え込んでいたが、フッと息を
アドス「私はただギルドに
だが、リラの冒険者ギルドに1人だけ話ができる人がいる、その人に手紙を書いてやろう。
その人ならそのダンのことをちゃんとしてくれるはずだ…」
モア「ギルドの人…」
アドス「そう、リラのギルドの
ちょっとここで待ってな…すぐに手紙を書いてきてやろう…
少し時間がかかるかもしれんが、ここにいてくれ…」
アドスはそう言うと
ルカ「店のおじさんが言ってた通りだね…」
ソラ「でも、あの二人が知り合いだってねえー…」
ナオ「そうかな?ここって小さな町でしょ、大体の人はお互い知り合いじゃないかな…」
アイ「多分そうだよ…」
ツグミ「でも、親切な人ばかりでよかった…」
アユミ「そうだね…知らない世界でこんなに助けてくれる人がいるって…」
アカリ「ありがたいね…」
アドスがまだ戻ってきそうないので、その間にアユミが他のみんなに店のおかみさんに言われたことを伝える。
自分たちの礼儀や態度でレアの村の出身でないと思われていたということだ。
アイ「そうなんだ…」
ソラ「そんなにちゃんとしてる、うちらって?」
ナオ「この世界じゃあ、ちゃんと
アカリ「そうか…みんな多少大きくなったらすぐに家の仕事を手伝うからね…」
ルカ「レアの村の女の子もあんな小さいのに弓矢で
ソラ「そうだった…」
タクミ「そんなこと、考えたことも無かったけど…」
アイ「でも、確かにそういうのって隠しようがないよね…
わざとちゃんとするように振る舞ってるわけじゃないし、この世界の普通なんて知らないし…」
モア「そんなことも違うんだ…」
ソラ「どうしろっていうんだよ…ったく…」
最初はこの世界のことを知りたい、この世界の人に会いたい、そんな単純なことしか思っていなかったのが、旅が進むにつれて正に難問が次々と浮かび上がってくる。
それでいて、自分たちがなぜここに来たのか、なぜこんな力を与えられたのか、その疑問には何の答えも見つからない。
ただ単にゲームの中のような世界に入り込んだだけと思っていたのが、現実は予想以上に複雑で誰もがその困難さに言葉を失った。
アイたちが黙り込んでいるところにアドスが部屋に入ってくる。
アドス「さあ、手紙ができたぞ…うん?あんたたち、どうしたんだ?…」
アイ「あっ、いえ何にもないです…ちょっとみんな疲れていて…」
アドス「そうか…まあラウンドウルフ退治に盗賊に襲われて、っていうと本当に大変な旅だったな…
そんな
ナオ「はあ…」
アイはその場をごまかすために言ったのだが、アドスは本気でアイたちに
アイたちはまた互いに顔を見合わせる。
アドス「さあ、これが手紙だ。リラの冒険者ギルドは街の
一階が勇者パーティーの
ジミーさんって人はもう初老ぐらいだが背が高くてがっしりした体格の人で、私の記憶だと
知識も経験も
この手紙はジミーさんに直接渡すんだ。他の人には絶対に渡しちゃいけない。
守備隊の兵士にも渡しちゃダメだ…いいな。」
アドスから手紙を受け取り、アイは深くうなずく。
アドスは確認するようにもう一度聞く。
アドス「それでローフの村のクエストは完了して、褒美も貰ったんだな…」
アイ「はい、魔獣のオオカミを退治して報酬も受け取りました。」
アドス「じゃあ、また受付に来てくれ…」
アイたちはアドスについてまた部屋を出ていく。
アドスは途中、壁に
そしてそのクエストの紙を持っていつもの席に座ると、アイはギルドのカードを取り出して彼に渡した。
アドスはギルドのカードとローフの村のクエストの紙を重ねて横の箱に乗せる。
箱は一度白く光って、その後にもう一度より強く光るとまた元に戻った。
アドスはギルドのカードを手に取ってアイに渡す。
アドス「これでこのクエストを
アイ「わかりました…」
アドスは改めてアイたちの顔を見回して言う。
アドス「そんなつもりはなかったが、えらく大変なことを頼んで申し訳なかったな。あんたたちが無事でよかった…
まあ
今度だって大層な怪我とかになるかもしれなかったからな…
自分たちの力に自信があるのかもしれんが、過信にならないように気をつけるんだ…
これからも腹が立つことはしょっちゅうあるだろうから、黙って頭を下げとくようにするんだ。
ホントに気をつけてな…」
アイ「ありがとうございます…十分に気をつけます…」
アドス「それと褒美は十分だったのかい?
ナオ「大丈夫です…十分過ぎるぐらい頂きました…」
アドス「そうかい…じゃあ、これ以上立ち入ったことは聞かねえでおこう…」
アドスはわかったというふうに何度もうなずいた。アイたちも
アイ「お手紙、ありがとうございました。」
アドス「じゃあ、リラまでの旅も気をつけてな…ジミーさんなら必ずちゃんとしてくれるから、間違っても他の人に手紙を渡さないようにな…」
ナオ「わかりました…必ずジミーさんに渡します…」
アユミ「ありがとうございました。」
アドスは珍しく、アイたちが階段の方へ行くまで何度も何度もうなずいていた。
アカリ「いよいよ、次は大きな街だ…」
ルカ「貴族もいるって言ってたね…」
ツグミ「何かすごくなってきてる…」
アイ「まだだよ、気をつけて!」
アイが言うように、ギルドの外にはまだたくさんの男たちがたむろしている。
アイたちはフードを深く被って少し
一人目の男「なんだ?コソコソとして…」
二人目の男「
三人目の男「ビビってんだよ…」
四番目の男「キンタマの小さな奴ばかりだ(笑)。」
二番目の男「確かにな(笑)…」
全員「(笑)…」
大勢の男たちがアイたちを指差しながらゲラゲラと笑っているが、みんなは相手にならずに宿屋に向かった。
宿屋に戻るとアイたちは食事をしながら明日からのことを話し合う。
ナオ「リラに行く駅馬車は毎日あるって言ってたね…」
アユミ「じゃあ、また明日の朝出発だ…」
ツグミ「リラの街ってどんなとこなんだろう…」
タクミ「ギルドがあるぐらいしか聞かなかった…」
アカリ「それ以外のことも、もっとちゃんと聞けばよかったね…」
ソラ「デカイ街って言ってたじゃん。」
ルカ「それだけじゃダメだよ(笑)…」
ソラは疲れて面倒くさくなっているのか、パンを食べながら足を投げ出して天井を見る。
そんな様子を見て、アユミが足を軽く叩いて注意した。
アイが真面目に言う。
アイ「街の様子は
だから、さっきアユミが聞いてきたことだけど、自分たちでもいろいろと注意して過ごさないといけないよ…」
モア「注意って言われても…」
アユミ「だから、出来ることだけでいいから、自分たちでクエストのことを言ったりとかそういうことはしないように、ってことでしょ…」
タクミ「わざわざ自分たちで明かさなくてもいい、ってことだね…」
アカリ「そうそう…」
ナオはパンくずをパンパンと音鳴らして
ナオ「まだ時間があるから、食べ物とか飲み物とか日用品とか、またそれぞれに出してみんなに分けておこう…」
ルカ「洗濯が
アカリ「今だけ干しとけば…手伝うし…」
ツグミ「私も…」
アイたちはそれぞれに分かれて一日の残りを旅の準備に
そして夕食も終えると明日のことを考えて早くに床に入った。
そして翌朝。
また教会の
ドムニの
リラ行きの馬車には同じように街に向かう人が3人すでに乗り込んでいた。アイたちも急いで馬車に乗り込む。
ツグミ「何か、この町へ出発した時よりドキドキする…」
アカリ「なんでかな…」
アイ「わかんないけど…私も…」
アイたちが話している間に、馬車はゆっくりと動き出した。
(第四章、ならびに第一部 終わり)
*第一部が終了しました。物語はまだまだこれから。次章からは新キャラが続々登場します!
楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、お気に入りや評価をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。