※この作品はR-18です。

最強スーパーヒロインの正体が、クラスのクールで真面目な委員長で、夜な夜なチン媚び腰振りダンスをしている爆乳淫乱牝ペットなのを知っているのは俺だけ。   作:ユリイカ

10 / 30
第10話「勇猛果敢なスーパーヒロイン」

 人の噂も七十五日。杉池撃沈騒動も、数日経てば次第に風化していく。星船高校二年A組の教室では、今日も今日とて平穏な学生生活が織りなされ、凛もまた優等生としての株を上げ続けていた。

 クラス担任でもある英語教師、夢島唯の眠りに誘うようなゆるりとした声を聞き流しながら、把輪繋はレポートを書き綴っていた。

 

「とはいえ、ここ数日は平和なもんだな」

 

 有事となれば即座に出動する義務のあるビーストブラッドではあるが、ヴィランが最後に暴れたのは1週間ほど前のファントムバットまで遡る。ここのところは平和そのもので、おかげで凛の獣欲衝動も比較的落ち着いていた。

 そもそも凛は今のような清純無垢な性格が本来である。繋にだけ晒す淫乱牝猫姿は、獣血が発現した後に現れた新たな一面だ。獣血の能力を行使しなければ、性的欲求のままに繋に媚びるということも……多少は減る。それでも、毎晩彼の部屋を訪れては、二、三発求めてくるのだが。

 

「このまま平和な時間が続いてくれれば、俺も楽できるんだがなぁ」

 

 現実とは無情なものである。繋が呑気にそんなことを口走った矢先、学校中にけたたましいサイレンの音が鳴り響く。騒然とする教室で、繋が顔を上げると、後ろを振り返った凛とちょうど目が合った。

 

「み、みんな落ち着いてぇ。慌てずにシェルターに避難しますよぅ」

 

 おっとりとした夢島の声で生徒たちはゾロゾロと教室を出発する。その人混みに紛れるようにして、凛と繋は群衆から離れ、ひとけのない校舎の陰へと移動した。

 

「繋君、今回は?」

「ファントムバットだ」

 

 対ヴィラン対策組織である方の“シェルター”から、飼い主(ハンドラー)である繋へと警報の詳細が送られる。目標に定められたヴィランのコードネームを聞いた凛は、露骨に表情を歪ませた。

 

「またコウモリ女ですか!」

「ここのところは大人しかったはずなんだがな。――凛、行けるか?」

「もちろんです。今日こそ本体ごとぶっ飛ばして差し上げますよ!」

 

 繋が尋ねるまでもなく、凛は可愛らしい猫の財布から、銀色のビニールを取り出す。封を切ると、パープルのコンドームが現れる。

 

「変身ッ!」

 

 獣血が瞬間的に沸騰し、凛の内側に宿る力が解放される。鮮やかなゴムは勢いよく伸びて彼女の凹凸に富んだ肢体へと絡みつき、胸や大腿を締め付ける。

 

「あぁっ♡ んっ♡ ふぁっ♡」

 

 ぎちぎちと締め付けられる凛は、もどかしげに熱い吐息を漏らす。胸が持ち上げられ、尻が強調される。絡みついたゴムは次第に変化し、数秒後、そこには巷で話題のスーパーヒロイン、ミラクルキャットが立っていた。

 

「場所は今送った。俺も追いかける」

「分かりました。――とぅっ!」

 

 仮面のスーパーヒロイン、ミラクルキャットへと変身した凛は、常人を遥かに超越する身体能力を得る。軽やかな跳躍で易々と四階建ての校舎を飛び越え、機敏な動きで目的地へと向かう。繋はその姿が途中で幻のように消えてしまうのを見届けて、校門へと急いだ。

 精力は強いものの、ただの人間には違いない繋は、何らかの移動手段を使って現地に赴く他ないのだ。校門ではすでに、厳つい400ccを遥かに超えた排気量を有するバイクがエンジンを吹かして待っている。そこに跨るのは、黄色いフルフェイスヘルメットをかぶり、黒いライダースーツを纏った女性だ。

 

「ハンドラー、ヘルメットはきちんと締めてくださいねぇ」

「さっさと出してくれ! ――うぉおおおおおっ!?」

 

 悠長なことを言うライダーに呆れながら、繋は後部座席へ飛び乗る。運転手の柔らかな体に抱きついた瞬間、アクセルをベタ踏みされたバイクが雄叫びを上げ、アスファルトに黒い轍を刻みながら走り出した。

 

「繋くん、聞こえてるかな」

 

 ヘルメットに内蔵されたスピーカーから、支部長ミローネの声がする。繋が応答すると、彼女は単刀直入に状況説明を始めた。

 

「今回の下手人はお馴染みファントムバットだ。相変わらずのことだが、今回も本体は現地周辺で確認できず、傀儡怪人どもが暴れ回っている」

「芸がないことで。それで、警備部は?」

「張り切って緊急出動してるさ。事前の作戦に従って、広域を調べている」

 

 何度も辛酸を舐めさせられているヴィラン、ファントムバットは、その正体がいまだに掴めていない。シェルターはその身柄を確保すべく、日夜牙を研いでいた。平時から捜査を行なっていたシェルター警備部の連中にとっても、今回は千載一遇のチャンスである。ヴィランであれ、活動中は獣血の能力を発動させていることには変わりない。探知・探索系の獣血保有者で固められたタスクフォースが腕まくりをして飛び出していた。

 ファントムバットは現場に姿を表さず、その獣血由来の部下であると推察される灰色の人型存在、通称“傀儡怪人”を暴れさせている。凛もといミラクルキャットが対処するのはこちらの方であった。

 

「ちょっと()()()()()よぅ」

「えっ? うおわあああっ!?」

 

 軽快に風を切っていたバイクが、突如揺れる。かと思えば、二人を乗せた機械の獣が、大空へと飛び出した。シェルターによって交通規制が敷かれ、一般車両の立ち入りが制限された道を、マスタードイエローの獣が駆け抜ける。高架道路の柵をブチ破って一般道へと降りたバイクは、特注のサスペンションで衝撃を吸収し、再び地面を削るように走り出す。

 

「もうちょっと安全運転してくれよ!」

「何のためのヘルメットだと思ってるんですか?」

「そういう話じゃないだろ!?」

 

 平然と無茶苦茶なことを言う運転手に、繋は思わず白目を剥く。

 しかし、大胆なショートカットをしたおかげもあり、二人を乗せたバイクは想定よりも早く現場へと到着しそうだった。

 

「あそこか」

 

 現場は住宅街からも程近い公園だ。平日の昼間ではあるが、間の悪いことに近所の幼稚園から子供達が散歩に来ていた。

 

「危ないから立ち入らないで!」

「園児の安否を確認しなさい。人数は揃ってる?」

 

 すでに広い範囲にわたって規制線が張られ、シェルターの職員が一般人の侵入を阻止している。シェルターは秘密組織であるとはいえ、獣血保有者を管理する警察に準じた治安維持組織という程度には知られていた。

 どこからか続々と集まる野次馬を、武装した職員たちが押し留める。頭上では猛禽のように旋回する報道ヘリも見えた。ヴィラン対ヒーローの戦いは、今や一種の娯楽的側面さえ見出されている。

 

「このあたりでいい。助かったよ、唯さん」

「はふぅ。では、頑張ってくださいねぇ」

 

 バイクから飛び降りた繋が、運転手にヘルメットを投げ渡す。自身のフルフェイスを脱いだライダー――2年A組の担任として高校に潜入しているシェルター職員、夢島唯はにへらと笑って青年を送り出した。

 

「傀儡怪人は五体か。数は少ないが、デカいな」

 

 現場に先行していた職員たちから情報が集まり、繋にも共有される。公園に出現した傀儡怪人はこれまでより少ないが、代わりに2メートル近い屈強な体格をしているようだった。

 その風貌に違わぬ膂力と凶暴性を有しているようで、園児たちが遊んでいた遊具を次々と破壊している。

 

「一般人への被害はなし。やっぱり、人殺しはしないタイプのようね」

 

 ミローネがいくらか安堵した声で言う。

 ヴィランが暴れる理由や目的も千差万別ではあるが、殺しをするか否かは大きなラインの一つだ。仮に見境なく意欲的に一般人も殺傷するタイプのヴィランであれば、正当防衛としての殺傷処分も許されている。

 その上で、ファントムバットが繰り出す傀儡怪人たちは、破壊活動こそ積極的に行うが、死傷者を出したことはない。

 

「ギーヒッヒッヒッ!」

「グヒヒャハハハッ!」

 

 緑溢れる公園で、下品な笑声が響き渡る。茂みの陰からそっと様子を窺った繋は、五体の土人形のような人型が暴れ回っているのを確認する。胸元にコウモリのようなマークを戴く怪人たちは、間違いなくファントムバットの配下だ。

 

「砕け散れ! ネイルパンチッ!」

「グワーーーーーッ!?」

 

 果敢な声が響いたかと思うと、突然怪人が吹き飛ぶ。キラキラとその周囲の空気が輝き、仮面で顔を隠したミラクルキャットが拳を突き出したポーズで姿を現す。

 

「ミラクルキャット、今回も素晴らしい活躍です! すでに怪人を一体、軽く蹴散らしてしまいました!」

 

 規制線の側で、マイクを持ったリポーターが興奮気味にカメラへ語りかけている。繋より一足先に現着したミラクルキャットは、早速獅子奮迅の活躍を見せているようだった。

 

「凛、今回の怪人も問題なさそうか」

「任せて。こんなの、いくら集まっても雑魚よ!」

 

 ミラクルキャットへ変身した凛は、上擦った声で繋の無線に応える。全身に力が漲った彼女は、四方を取り囲まれても一切臆する様子はなかった。

 

「どこからでもかかって来なさい。ミラクルキャットが全部引っ掻いてあげるわよ!」

 

 朗々とした声は中継に乗り、全国へと拡散される。その勇猛果敢で凛とした姿に、数万とも言われるファンたちが熱狂する。

 胸を強調し、ほとんど尻を丸出しにしたような、体のラインも明け透けな衣装に身を包みながらも、園児たちでさえ無邪気に応援している。痴女のような格好は、コスチュームそのものに宿された認識阻害の影響で一般人には“当然のもの”と受け入れられるのだ。

 

「はぁ、はぁ♡ 見てますか、繋君!」

「ああ、しっかり見えてるよ。無駄にデカい乳を揺らしながら、張り切って戦えばいい」

「んんっ♡ ――はいっ、頑張りますよ!」

 

 ただし、本人にはその認識阻害効果も発揮されない。

 公衆の面前で露出するような背徳感さえも、獣血を滾らせる燃料となる。凛――ミラクルキャットは紅潮した頬を仮面の下に隠し、屈強な怪人たちへと飛びかかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。