最強スーパーヒロインの正体が、クラスのクールで真面目な委員長で、夜な夜なチン媚び腰振りダンスをしている爆乳淫乱牝ペットなのを知っているのは俺だけ。 作:ユリイカ
「グオオォオオオオッ!」
地の底から響くような雄叫びを上げ、傀儡怪人がミラクルキャットに襲いかかる。筋骨隆々の巨人が力の限りに迫る様は、茂みの陰から見ている繋さえも肝を冷やすほどだ。
しかし、そのプレッシャーを最も受ける真正面に立つミラクルキャットは、威風堂々と胸を張る。
「相変わらず単調な動きしかできないようね。――クレセントムーンキックッ!」
「ギィワアアアアアッ!?」
冷静にタイミングを計り、放たれたのは直上への蹴り技。しなやかな脚が三日月の軌道を描き、爪先が鋭く怪人の顎を砕いた。堪らず仰け反った怪人に、ミラクルキャットが更に追撃を加える。
「ネイルパンチ!」
彼女の得意技であるネイルパンチは、打撃に鋭利な切れ味が乗せられている。猫の爪のような三本の傷が、傀儡怪人の胸を引き裂いた。
獣血活性化状態のミラクルキャットは、常人を超越した能力を様々有する。クレセントムーンキックはただの蹴り上げではないし、ネイルパンチもストレートを放っているだけではない。
そして、そういったビーストホルダーの攻撃でなければ、怪人は倒せない。
「やったぁ! お姉ちゃん、かっこいい!」
「がんばれー、ミラクルキャット!」
規制線を乗り越えそうな勢いで、前のめりになった園児たちの声援が聞こえる。シェルターの職員は必死に押し留めているが、ミラクルキャットはちらりと彼らを一瞥し、可愛らしくウィンクをしてみせる余裕すら見せていた。
「繋くん、ミラクルキャットに戦いに集中するよう言ってくれない?」
「これくらいは自由にやらせた方がいいでしょう」
警備部の方から苦情でも上がったのか、無線のミローネが繋に陳情する。しかし、ハンドラーとしての彼は、ミラクルキャットの自主性に任せる方が良いと判断していた。
「はっはっはっ! 多少力をつけて来たみたいだけど、まだまだ全然足りないわよ。出直して来なさい!」
「ギュワーーーーッ!」
二体目の傀儡怪人も、あっけなく破壊される。これまでよりも一回り大きくなり、凶暴性も増した怪人たちであったが、それでもミラクルキャットには遠く及ばない。そもそも、ファントムバット本人ですらない以上、その力は他のヴィランよりも弱いほどだった。
瞬く間に敵を半減させ、ミラクルキャットは勢いづく。しかし、仲間たちが身を挺して稼いだ時間で、他の傀儡怪人たちは動き出していた。
「ギギャギャギャギャッ!」
「イヒャーーーーーッ!」
下品な嘲笑にも聞こえる声を上げ、怪人二体が並ぶ。ミラクルキャットも警戒し、距離を取った直後、怪人たちが肩を組む。次の瞬間、彼らは胸を膨らませ、凄まじい声を発した。
「「ギィイィイイイイイイイイアアアアッ!」」
「くっ、超音波攻撃か!」
お互いの声量だけでも凄まじい。それを彼らは共鳴させ、更に強烈な振動へと変化させる。全方位無差別の破壊行動により、公園内の遊具や塀が次々と崩れていく。距離を取っている繋でさえも耳を抑えて蹲るほどの響きであった。
獣血保有者は、ヒーローに変身すると常人を超えた膂力を得る。その能力増強効果は、基礎的な身体機能や感覚にまで波及している。つまり、
「にぎゃああっ!? み、耳が!?」
ただでさえ至近距離で音波を浴びたミラクルキャットは、頭頂部の猫耳を抑えて悲鳴を上げる。鋭敏な聴覚に直撃した音波は、もはや殺傷能力さえ感じられるほど凶悪なものと化していた。
傀儡怪人たちは勝利を確信し、笑みを浮かべる。このまま音波を出し続ければ、ミラクルキャットは負荷に耐えきれず昏倒するだろう。しかし――
「このっ、もう許さないっ! サイレントウォーク!」
身体が痺れるほどの衝撃に耐えていたミラクルキャットが、怒りの表情で顔を上げる。次の瞬間、煌めく光と共に、彼女の姿が掻き消えた。
「ギャギッ!?」
「アアアッ!?」
目の前から消え失せた敵に、傀儡怪人たちも驚く。共鳴音波攻撃を中断して周囲を見渡すが、ミラクルキャットの影はどこにも見つからない。
「攻撃を継続してれば良かったものを……」
狼狽える怪人たちを見て、繋は思わず憐憫の情を抱く。せっかく全方位無差別の攻撃ができていたのだ。わざわざそれを中断し、隙を晒すなど、愚の骨頂という他ない。
とはいえ傀儡怪人の知能はカラスにも劣ると言われているほどだ。破壊と凶暴性に特化しただけの怪人であり、臨機応変な対応を求めるのは酷というものだった。
「背中がガラ空きですよ」
「ギギャーーーーーーッ!?」
玲瓏とした声が響いた直後、怪人の一体が吹き飛ぶ。その悲鳴にもう片方が気付いて振り返るも、それはあまりにも遅すぎた。
何もない空中から、ミラクルキャットが姿を現す。一瞬にして場所を変えた彼女は、硬く握り込んだ拳を容赦なく叩き込んだ。
「グワーーーーーッ!」
最後の怪人もあっけなく叩き潰され、断末魔を境に公園は平穏を取り戻す。
「正義の猫は幸運を運ぶ……。ミラクルキャットが成敗したわ!」
びしり、と決めポーズまで取って、勝鬨をあげるミラクルキャット。報道陣が次々とシャッターを切り、観戦していた人々の黄色い歓声が響き渡る。
しかしミラクルキャットはそんな彼らの反応にはクールな横顔を見せ、颯爽と公園を去っていく。そんな後ろ姿もまた、彼女の絶大な人気を支える要因のひとつなのであった。
「うふふっ♡ 怪人はウザいですけど、おかげで今日は繋君としっぽり楽しめますね。ああ、考えただけでもオマンコが疼いてしかたありません♡」
ただし、その脳内はすでにこの後に待ち構えるご褒美でいっぱいになり、じゅるりと溢れ出る唾を舐めている。繋は無線で筒抜けになっている彼女の言葉を聞き流しつつ、これが報道にすっぱ抜かれないことを祈るのだった。
「今夜はよろしくお願いしますね、ご主人様♡」
「はぁ……。とりあえず帰るまでが任務だからな」
「分かってますよう。――ああもうっ、公園は羽虫が多くて煩わしいです」
勝利の余韻に浸るのもいいが、ミラクルキャットと久瀬凛の関連性を気取られるわけにはいかない。周囲に待機しているシェルター職員が欺瞞工作を展開するのを待ち、ミラクルキャットはコスチュームを脱いでいく。
露出の多い痴女じみた格好は、人間には認識阻害の効果を与えるものの、虫にとってはいい的なのだろう。公園という緑の豊富な土地柄もあり汗ばんだ首元へ寄ってくる羽音に、凛は口をへの字に曲げる。
「俺も明日は、虫刺されが増えそうだよ」
「どういうことですか?」
繋が今夜のことを想像して疲れた声を溢すも、凛はきょとんとして首を傾げるだけだった。