最強スーパーヒロインの正体が、クラスのクールで真面目な委員長で、夜な夜なチン媚び腰振りダンスをしている爆乳淫乱牝ペットなのを知っているのは俺だけ。 作:ユリイカ
「凛ちゃん、体調不良だって」
「そういえば様子おかしかったもんなぁ」
凛は翌日から体調不良という名目で欠席することとなった。シェルター職員であり、クラス担任も兼務している唯からの説明で、クラスメイトたちもざわつきながら納得する。普段から自己管理を怠らず、風邪のひとつもひかない委員長が珍しいな、と思う程度のことであった。
一方で繋としては気が重い一日の始まりである。彼はちらりと教室後方の席へ視線を向ける。そこには、退屈そうに屈んで肘をつく褐色の不良少女がいた。
「吠崎咲。本当に獣血保有者なのか?」
シェルターの調査部によって、彼女の身辺調査は完了している。シェルターも国家直属組織であるため、そのあたりの情報はむしろ調べやすい。両親と中学生の弟、小学生の妹がいる五人家族の長女だが、素行はあまり褒められたものではない。学校もサボりがちであり、授業を受けずに屋上や体育館裏で昼寝をしていることも多いという。
髪は褪せた金髪で、頭頂部に黒が残っている。ぶっきらぼうな目つきと噤んだ唇は、周囲から人を遠ざける。分かりやすく不良であった。
しかし、着崩したブラウスからはち切れんばかりの胸や、丈を短く折ったスカートから覗くむっちりとした尻など、肉付きの良さは凛のそれにも匹敵する。その女性的な凹凸に富んだ肉体を見て、繋はなるほどと浅く頷く。
「たしかにその可能性がありそうな体はしてるな」
獣血保有者の特徴には、一般には知られていないが強い性的衝動が挙げられる。獣血によって性的な刺激を渇望するようになり、その充足によって能力発動に必要な力を得る。シェルターの職員の多くは、日に五回以上の自慰行為を行なっているという。一般職である彼女たちでさえ、そうしないと耐えられないのだ。
そして、強烈な性的衝動と連立するように、獣血保有者は男性から見て魅力的に映ることが多い。より男を効果的に誘惑できるような変化を遂げているという説もある。乳房と尻が豊満になり、ウエストがくびれ、独特の香気さえ纏うのだ。
ハンドラーである繋は、咲の気怠げな様子からもそんな獣血保有者の雰囲気を感じ取った。
「とりあえず、ちょっと探りを入れてみるか」
繋は書類上の身分こそ高校生だが、実年齢はもう少し嵩んでいる。ボロが出ないよう気を付ける意味も込めて、寡黙な性格で通していた。男子生徒とは付き合い程度に話すこともあるものの、女子生徒、それもクラスの中でも人を寄せ付けない雰囲気を放っている吠崎とはほとんど接点がなかった。
今から突然話しかけても、良好な関係を築くのは困難だろう。しかし、仮に吠崎が獣血保有者であるならば、早急にシェルターの管理下に置く必要もあった。
繋は意を決して席を立ち、机に肘を突いてスマホを弄っている吠崎の方へと歩み寄る。
「よ、よう」
「あ? ……な、テメェ!」
少しぎこちない第一声を放った繋に、吠崎は胡乱な顔を持ち上げる。しかし直後、彼女は目を見開いて椅子を蹴って立ち上がった。予想外の反応に、繋も思わず数歩下がる。
身長は繋より少し低い。凛よりも数センチは高く、女子にしては長身の部類だろう。着崩したブラウスは大きく揺れる爆乳を苦しげに抑え、丈を短くしたスカートから滑らかな褐色の太ももが見える。長い睫毛の下、オレンジがかった瞳は警戒心をあらわにし、すっきりとした眉の間に皺を寄せていた。
身を庇うように両腕で胸を抑え、腰を捻っているせいで、その艶かしい肉付きのよい身体がより強調されているのは皮肉だろうか。
「俺、なんか悪いことしたっけ」
吠崎と話すのは初めてのはずである。首を傾げながら繋が言うと、彼女はくすんだ金髪で飾られた顔を歪めた。
「べ……別に、なんでもねぇよ。用がないんなら、どっか行けよ」
「いやぁ。ちょっと、吠崎と話がしてみたくてな」
「はぁ?」
最初から警戒心マックスの吠崎に内心で困惑しながら、繋はなんとか彼女との接点を作ろうと話し続ける。脈絡のない接近は繋自身苦しいと感じるほど不自然だ。当然、吠崎は疑り深い目を向ける。
この警戒心を解いて、まずは獣血の存在から確定させなければらない。単刀直入に質問してよいことでもない以上、慎重を期す必要があった。
「ほら、吠崎ってたまに授業を休んでるだろ。夢島先生にも頼まれたし、保健委員として何か相談に乗れないかと思ってな」
一応、事実ではある。
先日の凛を保健室へ連れて行ったのも、建前上は繋が保健委員を任じられているからであり、担任であるところの夢島が吠崎を案じていることも間違っていない。そこにシェルターという存在が一枚噛んでいることもまた事実ではあるが、こちらは語る必要もない。
それなりに自然な導入で話しかけられたのではないか、と繋は自画自賛する。しかしながら、吠崎の目は依然として警戒感を露わにしていた。
「保健委員ね……。はっ、よく言うよ」
「うん?」
貶すような吠崎の口調に、繋は些末な違和感を抱く。だが、その正体を探るよりも先に彼女が立ち上がった。
同年代の女子と比べると少し長身で、肉付きもいい。凛の白い真珠のような肌とは対照的な褐色だが、瑞々しく若さを象徴している。
繋が驚いて仰け反るなか、吠崎はきっと睨みつける。
「テメェみたいな下劣野郎に構ってもらうほど暇してねぇよ。目障りだから話しかけてくんな」
「えっ。ちょ、まっ――」
けんもほろろとはこの事か。吠崎は厳然とした態度で繋を跳ね除け、そのまますたすたと教室を出て行ってしまう。もうすぐ授業が始まると言うのに。
繋はその後を追いかけたい衝動に駆られるが、周囲の視線も集めていた。平凡な一生徒として目立つわけにはいかない彼は、チャイムの音に責め立てられるようにして自席へ戻るのだった。
「繋、吠崎狙ってんの?」
げんなりとしながら着席した繋に、前の席の田崎がニヤけた顔を隠す気もなく話しかける。吠崎は不良ギャルだが、容姿はいい。田崎自身が以前言っていたように、凛に匹敵する巨乳でもある。逆に不良なところもいいとすら言われ、男子からの人気は高い。
田崎は繋が保健委員を口実に、吠崎を口説こうとしたのだと思ったようだった。
「そう言うわけじゃない。夢島先生に言われたからだよ」
獣血保有者候補であると吐露するわけにもいかず、用意していた答えをそのまま返す繋。田崎はつまらなさそうに唇を尖らせ前を向いた。
「しかし、あんなに嫌われてるとは思わなかった。何かしたか……?」
一限目の教師が入ってくるのを眺めながら、繋は密かに思考を巡らせる。これまで、凛のちょっかいを交わしながら平凡な生徒を演じてきたはずだ。田崎でさえ、繋が年上であることにすら気付いていない。あまつさえ、吠崎などこれまでほとんど接点もなかった。
あの不良少女はあの態度が基本なのかと疑う。だが、下劣野郎と誹られる謂われはないはずだった。
「……分からんなぁ」
どうにもままならない。
繋はやり場のない鬱憤を抱えたまま、ゆっくりと過ぎ去る時間に耐え忍ぶのだった。