最強スーパーヒロインの正体が、クラスのクールで真面目な委員長で、夜な夜なチン媚び腰振りダンスをしている爆乳淫乱牝ペットなのを知っているのは俺だけ。 作:ユリイカ
二人だけの保健室。スツールに腰掛けた吠崎は、我が耳を疑った。
彼女にとっての把輪繋は空気のようなものだった。雑然とした教室の中に紛れ、居ても居なくても自分の生活には何ら影響を及ばさない。極めて成績優秀というわけではなく、特筆すべき悪評もない。無味乾燥。路傍の石といった表現がよく似合う。
だがそれも、数日前までの評価である。
「何を企んでやがるんだ……」
正面に立ち、直角に腰を折って頭を下げる青年を、咲はじっと睨みつける。その頭頂部から真意を覗けないかと、そんな気持ちだった。
空気のようだった印象は、数日前にがらりと変わった。きっかけは、ヴィラン出没の騒動に紛れて保健室でサボっていた時のことである。授業も始まり、教室から離れたこの保健室はしんと静寂に満ちていた。これ幸いと窓際のベッドで携帯を弄っていると、突然二人が飛び込んできたのだ。
把輪繋と、九瀬凛。意外な組み合わせだった。二人が話しているところを見たことがないわけではないが、それは凛が誰とでもフレンドリーに接する優等生であるからだ。繋の方から話しかけている様子は見たことがないし、二人が親密な関係にあると思ったこともなかった。
そんな二人がやって来て、何事かとカーテン越しに様子を窺っていると……始まったのだ。清廉潔白、才色兼備の優等生として知られる凛と、空気のような繋の、過激なセックスが。
授業中の校内に響き渡るような嬌声は、咲を唖然とさせた。
隣のベッドにクラスメイトがいるとも知らず、二人は熱く交わっていた。普段は可憐な笑みを浮かべる少女が雌の顔となって男にすがりつき、男もまた人前で晒すことのない屈強な体でそれに応える。お互いに求め合い、貪り合うような性交だった。
始めはこれをダシに脅してやろうかと考えていた咲は、いつしか夢中になっていた。ベッドが悲鳴をあげるほどのセックスに釘付けになっていたのだ。
「獣血? ヒーロー?」
「吠崎には色々説明しないといけない。まずはどこから話したものか……」
「それなら、委員長との関係について教えろよ」
迂遠な話は嫌う性質である。咲が単刀直入に切り出すと、繋はあからさまに動揺していた。
「委員長?」
「ずっと休みっぱなしの九瀬凛だよ。あいつとお前、ここで何ヤってたんだ?」
繋の目が鋭くなる。心臓まで見透かすような眼光に咲は思わずどきりとする。それでもここで退くつもりはなかった。最悪の場合、やはり二人の情事を公開すると脅してもいい。
腹を括り睨み返す咲に、繋は穏やかに返した。
「……そうか、ここにいたのは吠崎だったんだな」
自分に向けるように小さくつぶやき、彼は頷く。それならば話が早い、と笑みさえ浮かべていた。
「荒唐無稽なことを言うように聞こえるだろうが、凛はミラクルキャットなんだ」
「はぁ?」
前置きの通りに荒唐無稽な言葉だった。
目を丸くする咲に、繋は苦笑しつつ続ける。
「俺はシェルターの職員で、凛をサポートするためこの学校に潜入している。本当の年齢は吠崎たちよりちょっと年上だ。凛はミラクルキャットとしてヴィランと戦闘し、その結果今は少し動けない状態にある。シェルターはこの現状を危険視していて、新たな獣血保有者候補を探してる」
「ま、待て待て待て! 話が急に進みすぎだ!」
怒涛の如く吐き出される情報の暴力に、咲は思わず立ち上がる。
皆が羨む高嶺の花である委員長が、巷を賑わせるスーパーヒーロー、ミラクルキャットの正体? 繋は年上? シェルターの職員?
次々と疑問が浮かび、咲の頭の中を埋め尽くす。
「そ、それとここで二人がヤってたことに何の関係が……」
「吠崎、お前もそろそろ感じてるんじゃないか?」
反論を展開しようとする咲の声を遮り、繋が指摘する。なぜか彼女は、肩を跳ね上げる。
「な、何を……」
「スーパーヒーロー、獣血保有者は特別な能力を発揮できる。その代わりに、彼女たちは強い性的欲求を抱く」
もぞ、と咲は無意識に太ももを擦る。短く巻き上げたスカートの下、蒸れた下着の奧がじんと疼いた。
不思議と繋の目から離れられない。
「獣血の発現が思春期に多いのも、それが理由だ。強い性的興奮が、覚醒のトリガーとなることは多い」
繋は淡々と語る。
自分と凛との情交が見られていたにもかかわらず、堂々とした姿だった。脅そうとしていたはずの咲の方が、息を詰まらせている。
「元々素養はあった。ただ、きっかけがなかった。――吠崎、いや、咲」
「っ!」
高圧的に、見下されるように名を呼ばれる。いつもならすかさず殴り返していただろう。しかし、繋の目が向けられると、咲は拍動を加速させてしまう。
「お前はあの日、獣血が覚醒したんだ。ただそのことに無自覚だろうし、能力を使ったこともないはずだ。けれど、衝動だけは抑えきれていない」
「な、何を……」
「ここのところずっと注意力も散漫になっている。友人と話すわけでもなく、何かに耐えるようにじっとしているな」
図星だった。
繋と凛のセックスを間近で見て、その光景が網膜に焼きついたあの日からだ。ふとすればそれを思い出し、身体が火照る。特に下腹のあたりが強く疼き、切ない気持ちになるのだ。
教室にいるだけで、繋の匂いを感じていた。それをトリガーにまた光景がフラッシュバックし、悶々としていた。
「咲」
「あっ……。や、やめ……」
繋の手が、咲の頬を撫でる。振り払いたいのに、振り払えない。咲は自分でも驚くほど情けない声をか細く漏らすだけだった。
ゴツゴツとした男の手が滑らかな頬を撫で、細い首筋へ。
咲は口を半開きにして、惚けている。
「俺と契約して、ヒーローになってくれ。そうすれば、抑鬱した気持ちも楽になる」
「い、いやだ。あたしは、そんな……」
耳元で囁かれ、震えながらも首を横に振る。咲はまだ頑強な理性を保とうとしていた。怪しげな男の言いなりになどなりたくないという、プライドだけで意識を保っていた。
それでも、胸が熱くなる。子宮が動くのを自覚してしまう。
敏感になってしまった鼻が、否応なしに彼の匂いを嗅ぎ取ってしまう。男らしい、汗の混じった匂いだ。空気のようにしか思えなかった青年の顔が、美しく精悍に見えた。
「俺がお前の飼い主になってやる。首輪を送ってやる」
「バカにしてんのかぁ……!」
本当ならブン殴りたいような言葉だ。しかし、何故かそれが魅力的な提案に聞こえてしまっていた。咲はいやいやと首を振りながら、その考えに夢中になっていく。
目の前の男に傅いて、その寵愛を受けたい。愛されたい。
自分でも説明ができない気持ちが溢れ出ていた。生まれた時から隠れていた気持ちに、今更気付いたような気分だった。
「凛と一緒だ。二人まとめて世話してやるよ」
「ふ、あっ♡」
繋の手が滑り、鎖骨へ。更に下がり、白いブラウスを押し上げる豊かな乳房を掴んだ。指が埋まる柔らかな果実。その先端はすでに敏感になっていた。繋がその周りを軽く撫でるだけで、咲は甘い吐息を漏らしてしまう。
じゅん、と股間が疼く。もぞもぞと内腿を摩ってこらえようとしても、温かい熱が滲み出す。
「今、決めるんだ。俺と契約するか、しないか」
「ひ、卑怯だぁ……んっ♡ こんなの♡」
少女の声が濡れる。
彼女はもはや抵抗の意思すら持てなかった。胸の奥から溢れる熱が、いまや全身を支配していた。頷けば、更なる快楽が得られると知っていた。
胸を揉みしだかれ、耳元で囁かれる。
咲は抵抗を忘れ、こくりと顎を引いた。