※この作品はR-18です。

最強スーパーヒロインの正体が、クラスのクールで真面目な委員長で、夜な夜なチン媚び腰振りダンスをしている爆乳淫乱牝ペットなのを知っているのは俺だけ。   作:ユリイカ

24 / 30
第24話「欺かれる嗅覚」

「マッピング地点を起点に広域の立ち入り禁止命令を。警備部も使って。――現時刻より新たな獣血保有者のコードネームを"ワイルドウルフ"とするわ」

 

 シェルター星船支部の中央指揮所(CCP)では多数のオペレーターたちが慌ただしく職務を熟す。それを後方から見下ろしながら矢継ぎ早に指示を送るのは、支部長ミローネであった。

 CCPの大画面ディスプレイにはドローンから送られてくる星船市の鳥瞰映像が映し出されている。昼下がりのビル群の合間を猛烈な勢いで駆け抜ける、金髪の少女がそこにいた。

 

「ワイルドウルフは認識阻害衣装を着用してないわ。目撃者はできるだけ排除しなさい」

 

 ハンドラー、繋と契約を結ぶことで新たなスーパーヒロインが誕生した。吠崎咲は"ワイルドウルフ"という新たな名前を与えられ、一心不乱に街中を走り抜けている。

 おかげでシェルターの人員は上から下まで大騒ぎだ。急いで交通規制を敷き、獣血保有者も投入してワイルドウルフの予想進路上から人を退かせなければならない。

 唐突に獣血を覚醒させた咲は、ミローネさえ驚くほどいきなり動き出した。繋から連絡を受けたのは、すでに星船高校を飛び出した直後であった。

 

「支部長、人払いが終わってません!」

「目撃者がカバーしきれない量に増えてます!」

 

 オペレーターを通じて現場の悲鳴が次々と飛んでくる。

 

「全く、若い子はちょっと激しすぎるわね」

 

 妖艶な笑みを浮かべ、ミローネは支部長の強権を行使する。

 

「――ワンダーシープの緊急出動を要請するわ。とりあえずその辺一帯まとめてやっちゃいなさい」

「わ、ワンダーシープを動かすんですか!?」

 

 その命令に、オペレーターがどよめく。しかし逡巡している暇はなかった。即座に連絡は伝えられ、シェルターが管理下に置くスーパーヒロインが動き出す。

 

『それじゃあ、やりますねぇ』

 

 CCPに響く間延びした声。

 その直後、画面に映し出された街並みをピンク色の霧が覆い尽くした。

 強力ながらも獣血保有者自身にさえ制御ができない厄介な能力が発動され、町全体が穏やかな眠りに落とされる。動くことができるのは眠りを忘れた興奮状態にある者か、事前に対策を取れた者のみ。

 疾走するワイルドウルフの後方を、霧を貫いて追跡するマスタードイエローのバイクがあった。

 

「警備部は居眠り事故が起きないように気をつけなさい。住民は保護して安全の確保を第一に」

 

 ミローネの指示で警備部員たちも動きを変える。

 ドローンの眼下で、新たなスーパーヒロインが吠えた。

 

 

「すごいですねぇ、あの身体能力。あれだけでも一級の獣血ですよぉ」

「全くだ。俺は賭けに勝ったらしい」

 

 エンジンを轟かせ、大型バイクがアスファルトを削る。ライドスーツに身を包み、フルフェイスヘルメットを被った夢島の驚く声に、繋も誇らしい気持ちが疼く。

 二人が追いかけるのはビルの間を駆け抜ける新たなスーパーヒロイン、ワイルドウルフの後ろ姿だ。荒々しく飛び跳ねた長い金髪に、引き締まった肉体。魅惑的な胸部と臀部はウエストを経由して大きな曲線を形作っている。だが特徴的なのは、その頭部から生えた三角形の耳と、臀部から伸びる尻尾だろう。

 

「犬みたいだな。いや、狼か?」

「コードネームもそれに応じたものでしょうねぇ。私もああいうかっこいいものが良かったですよぅ」

「アンタも大概ぶっ飛んでるだろうに」

 

 夢島が唇を尖らせたその時、フルフェイスヘルメットに亀裂が走る。鈍い音と共に砕けた覆面の下から現れたのは、ウェーブしたボブを掻き分けて伸びる羊の角だ。

 夢島唯。またの名をワンダーシープ。街は今、彼女が生み出した霧によって深い眠りに落ちている。

 

「とにかく見失わないように追いかけてくれ。今はワイルドウルフだけが頼りだ」

「はふぅ。分かってますよぅ。――でも、ハンドラーも忘れないでくださいね。わたしも後でご褒美を所望しますぅ」

 

 眼鏡の奥のねっとりとした視線が、後方に座り唯の腰にしがみ付いた繋に向けられる。

 

「抜け目ない奴め……。分かったから、よそ見するな」

 

 ワンダーシープとは契約こそ交わしていないが、彼女はその能力の強力さ故に強い衝動が後から襲ってくる。それを解消してやるのは、繋の仕事のうちだ。

 普段は後方支援要員として繋と凛を支える唯も、獣血保有者に違いないのである。

 獣血に覚醒した咲は繋の指示を受けて猛然と走り出した。高校を飛び出し、迷う素振りすらなく駆けている。向かう先に何がいるのか確証はない。しかしハンドラーとして、繋は信じていた。

 

『も、もうすぐ星船支部の管轄外に出ますよ!?』

「緊急事態だ。事後承諾でいいから隣に連絡だけしろ。この先にヴィランがいる」

 

 オペレーターの悲鳴も跳ね除け、ただ追いかける。バイクは料金所のゲートを吹き飛ばし高速道路に乗ったかと思えば、ガードを貫いて降りた。凄まじい乗り心地ではあるが、唯のライディングテクニックは安心感さえ抱かせる。

 

「んふふー。これが終わったらぁ、一緒にツーリングしましょうねぇ」

 

 鼻歌まじりでそんな余裕すら見せるワンダーシープに呆れつつ、繋は前方のワイルドウルフの動きが少し変化したことに気付く。彼女は鼻先を掲げ、何かを探るように周囲に視線を巡らせる。

 星船市の隣町にある郊外の住宅地である。無個性な灰色のマンションが等間隔で並ぶ団地のようで、ワンダーシープの催眠霧によって異様な雰囲気を醸し出している。

 

「何か見つけたか、咲」

「――あそこだ」

 

 バイクから降りた繋の声に、ワイルドウルフとなった咲は視線を外さずに答えた。彼女はマンションの上階を睨みつけている。

 

「警備部、宵月マンション6号棟の6階、6号室だ」

『了解。30秒後に突入するわ』

 

 通信機による報告に、間髪入れず高羽からの応答がある。直後、静かなローター音と共に黒々とした機動ヘリが襲来した。そこに乗り込んでいるのは、コスチュームを身につけ変身した警備部の三人組である。

 彼女たちは上空からちらりと繋たちを一瞥した後、宣言通り30秒後にマンションの窓を蹴破った。

 

『αチーム現着。室内には――うぐっ、何この臭い……』

『くっさ……。というか汚いわね』

『生活感はいっぱいですけど。ヴィランらしき形跡は……、こ、これは!?』

 

 通信機から高羽たちの声がする。室内を探っていた彼女たちは、何かを見つけたようだった。

 繋たちの期待も高まる。

 

『ものすごい量のアダルトグッズです。これは確かにヴィランがいた形跡ですね』

『というかこの臭い、オナニーしまくった女の匂いじゃない。汚いわね!』

『これだから野良は嫌なんですよ』

 

 シェルター所属の獣血保有者ならば、衝動に対してもいくつかの対策が用意できる。しかしそのバックアップが得られないヴィラン、通称"野良"が取れる対策は限られる。

 だからこそヴィランは破壊活動などで無聊を慰めようとしたり、市販のアダルトグッズに頼ろうとしたり、むなしく足掻くのだ。

 警備部員たちは嫌悪感の滲む声で室内の検分を進める。しかし、肝心のヴィランの姿は見つからない。

 面々がやきもきとした時間を過ごしていたその時、咲がぴくりと耳を揺らした。

 

「違う、ここじゃない」

「咲? どういうことだ」

 

 ワイルドウルフは愕然とする。繋が真意を確かめようと歩み寄る。直後、通信機から由良の驚く声が響いた。

 

『きゃあっ!? は、ハンドラー、凛ちゃんがいます!』

「何だって!?」

 

 由良の持つハンディカムの映像が送られる。

 そこに映し出されていたのは、汚れた女物の服の中に埋もれるようにして拘束されて眠る黒髪の少女――九瀬凛の姿だった。

 

『まずいわね。全員、支部に帰投しなさい!』

 

 CCPのミローネが叫ぶ。それを覆い隠すように、爆発音が響き渡った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。