最強スーパーヒロインの正体が、クラスのクールで真面目な委員長で、夜な夜なチン媚び腰振りダンスをしている爆乳淫乱牝ペットなのを知っているのは俺だけ。 作:ユリイカ
緊急事態を報せるアラートがシェルターの施設全域に鳴り響く。中央指揮所は騒然となり、オペレーターたちが情報の収集を急ぐなか、ミローネは爪を噛んで苛立ちを押さえていた。
壁面ディスプレイには支部施設の各所に設置された監視カメラの映像が次々と映し出される。やがて、爆発によって吹き飛び焼け焦げた壁が現れた。設置場所を確認したオペレーターが驚きの声をあげ、ミローネは眉をひそめる。
「ミラクルキャットの収容室です!」
即座に施設内に残っていた警備部員が急行する。
異常な性的衝動の発露によって手がつけられなくなり、治療法が判明するまで鎮静剤の投与によってミラクルキャットを勾留していた部屋である。スーパーヒロインの膂力にも耐え得るようにかなり頑強な造りになっていたはずだが、それを嘲笑うかのように大穴が空いていた。
「γチーム現着。状況確認を行います」
瓦礫が散乱し、粉塵が舞う爆発現場は焦げ臭い。警備部の第三部隊であるγチームは獣血保有者ではあるものの、ミラクルキャットどころか高羽たちαチームと比べてもその力は低い。
特殊部隊じみた黒い武装と銃火器を備えて急行したγチームは、サーチライトの光を巡らせて周囲を探る。ここに囚われていたはずのミラクルキャットは、星船市外の団地の一室で見つかった。それが意味することは、つまり。
「ふ、ふへっ。ここがシェルターかぁ。案外呆気なく侵入できちゃったな、ふへへっ!」
「っ!」
煙幕の向こうから少女の声がした。ミラクルキャットのものではない、甲高く耳が痛くなるような声だ。γチームは銃口を持ち上げるが、声はあちこちに反響して出所を特定することができない。
壁に背中を預けて警戒する警備部員たちに声の主も気付いていない様子だ。誰に向けたものでもなく、独り言を話し続ける。
「ここにきっと、獣血を抑えるための何かがあるはず……。ふへへ」
ミラクルキャットに成りすまし、医療部の精密な検査さえクリアした存在だ。その偽装能力はかなり高いことが予想される。γチームに課せられた任務はその撃退ではなく、情報を集めることにあった。
隊長以下全員がそのことを肝に銘じ、腹を括る。彼女たちは大きな音を立てないように細心の注意を払いつつ、近くにいる侵入者を探り続ける。
「くそぅ。シェルターのペットばっかりズルいなぁ。把輪君の極太チンポ食べ放題なんて♡ あー、思い出しただけでマンコが疼いて来ちゃう♡ んぉっ♡ おおほっ♡」
緊張の糸を張り詰めて神経を尖らせるγチーム。彼女たちの耳に、ベチャベチャと水っぽい音が届く。彼女たちは首を傾げ、獣血による何らかの能力かと懸念し、そして気付く。
それはγチームにとっても馴染み深い、というか毎夜の如く聞いている音だ。その身の深くから湧き上がる抗い難い欲求を抑え慰める音。獣血が覚醒したその日から、一日と欠かしたことはない。
「隊長、あいつ……」
「仕方ないだろう。ヴィランは性欲抑制剤も玩具も支給されないんだ」
困惑する隊員を、隊長はヴィランへの同情を抱きながら諌める。ヴィランとは、シェルターの庇護下にない獣血保有者のことである。彼女たちは獣血により日々強烈な性的衝動を抱いているにも拘らず、それを発散する術を持たない。だからこそ、破壊衝動へと転嫁する。
ミラクルキャットに成り代わってシェルターに侵入してきた声の主も、そういったヴィランの一人なのだろう。
彼女たちヴィランには、ひとつの特徴がある。性欲抑制剤もなく、優秀な雄を模した玩具もなく、市販のアダルトグッズで慰めるしかない彼女たちは、刺激の低さを量で補おうとする。
「おほぉおおっ♡ いっぐ♡ 敵地のど真ん中でマンズリしてイグゥウッ♡」
ショアアア……、と爽やかな水音。甲高い声が構内に響き渡る。
「隊長っ!」
「聞かなかったふりをしてやれ。敵にも情けというものがある」
宿舎で集団生活をしている彼女たちにも、身に覚えがあった。
夜、仲間たちが寝静まったと思って衝動の発散に着手したところ、思ったより興が乗ってしまうことが。これは獣欲保有者にとってはお互い様である。γチームの面々も、シェルターに拾われなければヴィランとなっていたのだ。
「――ところで、さっきからゴチャゴチャとうるさいね」
「なっ!? がっ!?」
γチームたちが敵に憐憫の情を抱いた、その時だった。
むわっと濃い淫臭が彼女たちの鼻先をくすぐる。熟成と発酵を重ねたような、濃密な女の香だ。同性どころか、異性にとっても強烈すぎるような、酸味すら微かに感じる臭い。
直後、隊長が崩れ落ちる。
「貴様――ぎゃあっ!?」
「オナってた癖に! きゃああっ!」
部下たちも次々と死角から強撃され、昏倒していく。床に倒れた彼女たちが携行していたカメラだけが映像を送り続ける。
「ふひぃっ♡ あんたたちの音、うるさすぎるのよ。それじゃ……次はどの顔にしよっかなぁ」
カメラの画角に、半裸の少女が映し出される。凛とはまるで違う貧相で小柄な体つきで、長いブルーグレーの髪をツインテールにしている。彼女はγチームの隊員一人に歩み寄り、その首筋に噛みついた。
「ちぅ……。なるほどなるほどー。じゃ、変身♪」
立ち上がった少女の足元から、コンクリートや鉄筋といった建物の建材が迫り上がる。形を失い、ドロドロに溶けるようにして、それは彼女の表面を薄く覆っていく。
「ヴィラン、ファントムバット。人形遊びだけが能じゃないよ」
γチームの隊員と寸分違わぬ姿となった少女は、にやりと笑って歩き出した。