最強スーパーヒロインの正体が、クラスのクールで真面目な委員長で、夜な夜なチン媚び腰振りダンスをしている爆乳淫乱牝ペットなのを知っているのは俺だけ。 作:ユリイカ
朝の教室。三々五々に分かれ自由に談笑する生徒たちで、教室内は雑然としている。一日の始まりから疲労感の強く滲む顔で大柄な青年が現れても、ほとんどの者は気にも留めない。
だが、一人の女子生徒が足を踏み入れた瞬間、空気が変わる。
「委員長! 久しぶり!」
「もう体調は良くなったの?」
「凛もやっと復活かー。寂しかったよぉ」
通学鞄を携えて現れた黒髪の美少女。大きな胸を制服で包み、微笑を浮かべて靴音を鳴らす。一週間ぶりに姿を現した2年A組の委員長は、瞬く間に生徒たちに取り囲まれた。
親を迎える雛のように口々に喜びを口にする生徒たち。そんな声の多重奏を、凛は清らかな笑顔で受け止める。
「多少は覚悟してたが、ここまでとはな……。騒がしくて寝れないじゃないか」
あっという間に黒山の人だかりに包囲された凛を眺め、頬杖を突いた繋は呆れていた。生徒たちからの人気も凄まじいが、凛も凛である。よくあれだけ矢継ぎ早に放たれる声を聞き分けて返せるものだ。
ほとんどの生徒が一箇所に集まるなか、繋と同様に冷ややかな視線を送る者がもうひとり。最後列の席に腰掛けて気怠げな顔をしている咲であった。彼女もまた、昨日まで忙しくしていて休む暇もなかった。繋はてっきり登校してこないものだと思っていたが、どうやらしっかりと言いつけは守ったらしい。
繋があくびを噛み殺しながら騒ぎを眺めていると、やがて黒山の中から凛が現れる。彼女は大名行列のようにクラスメイトを引き連れたまま、繋の席までやってくる。
「おはようございます、把輪君♡」
「あー、おう」
クラス内では過度に接触するな。そんな言いつけなど容易く蹴り飛ばし、清純な笑顔を向ける凛。繋もまさか無視するわけにもいかず、生返事を返す。凛はそれでも満足げに笑みを深め、意味ありげに首元のチョーカーに触れるのだった。
教室内で迂闊な行動は避けてほしいと眉を寄せる繋。彼とはまた別に、凛に対して冷めた視線を送る者がいた。
「けっ。うまく誤魔化してんな」
珍しく教室に現れ、机に頬杖をついて大きな胸を潰した咲である。シェルター所属のスーパーヒロインとなった彼女は、凛の裏の姿も知っている。それだけに、優等生の委員長として級友たちと談笑する彼女がより滑稽に映って見えるのだ。
しかし、そんな悪態を吐いた直後、彼女の首元のチョーカーがきゅっと締まる。
「んぐっ!? てめ――何すんだよ!」
「不用意な発言もやめろ、吠崎」
チョーカーを絞めたのは、彼女の
「やっぱりアイツの方が可愛いのかよ」
「何もそんなことは言ってないだろ。契約を交わした以上、吠崎も凛も同じ立場だ」
咲が不満げなのは、繋に窘められたからというのが唯一の理由ではないようだった。ツンと唇を尖らせる彼女の些細な気配に気付く様子もなく、繋は真面目な仏頂面で答える。それが余計に咲を苛立たせた。
「……咲」
「なんだ?」
「咲でいい。……というか、咲って呼べ」
「クラス内であんまり親密に見えるようなことは――」
「うっせぇ! いいから咲って呼べ!」
キッと睨みつける咲。その気迫に押されるようにして、繋は思わず頷いた。それを見て、彼女は少しだけ胸のすいた様子だった。
「ふんっ、それでいいんだよ。……で、分かってんだろうな」
「なんだ?」
話題が変わり、主語の抜けた詰問に繋は首を傾げる。その瞬間、再び咲の機嫌は下がった。
「約束しただろ。今日はこの後――」
「はーい。皆さん、席に着いてくださいねぇ」
咲が何かを言う前に、タイミング悪く担任の夢島が教室へ入ってくる。朝のホームルームが始まり、凛を取り囲んでいた生徒たちもゾロゾロと自席へ戻っていく。繋は咲の言葉の続きを聞こうとしたが、結局彼女は何も言わず、再び頬杖を突いてしまった。
パンパンという手を鳴らす音で、夢島が注目を集める。眼鏡の奥に眠たげな糸目をした夢島は、微睡むような笑みをたたえたまま口を開く。
「今日はぁ、皆さんに大事な連絡がありますぅ」
ざわつく教室。
特筆すべき行事など誰も思い当たらない。
そんな中で凛と咲だけが、ぴくりと僅かに眉を揺らしていた。
直後。
「それではぁ、入ってきてくださぁい」
夢島が教室のドアに向けて声をかける。
数秒おいて、遠慮がちな勢いでドアが開き、もさもさとした髪が現れた。
「あひゅっ、し、失礼しましゅ、すっ!」
舌がもつれたように噛みながら、身を屈めて入ってきた一人の少女。当然ながら、誰もが見慣れない謎の人物である。ひょこひょこという擬音が付きそうな足取りで教壇の前までやって来た彼女は、ちらりと三人を見てヒクッと笑った。
「い、岩室こもり、です。親の都合? で転校してきました。よ、よろしゅく、お願いしましゅ、す!」
岩室こもりと名乗った少女。その姿、相貌、何より声を聞いた瞬間、三人の目が見開かれた。凛はぎゅっと拳を握り、咲も思わず腰を浮かせている。
「なぜ……」
呻くように繋が、口の中で漏らす。
その少女は巷を騒がせ、ミラクルキャットを翻弄した強力なヴィラン――ファントムバットその人だったのだ。