惑星ラグナにある小さなバー。所謂穴場と言われる場所で雰囲気はある。完全会員制になっており、店主が恐ろしく口が堅い人物であることも相まって店内で何かをしても外に情報が出回ることは無い特殊なバーである。
そんな変わったバーの店内には店主が一人と客が二人。店主は客二名の会話に耳を傾けることなく作業を淡々とこなしている。
「ほら、これとか結構飲みやすいよ」
店主と顔見知りなのか、不思議な店内に気を配ることすらせずもう一人の客におすすめの酒を手渡しするのはカナメ・バッカニア。民間企業複合体「ケイオス」に所属する戦術音楽ユニット「ワルキューレ」のリーダーと同アイドルグループのマネージャーを努めている女性。アイドルとしての側面を持ちながら同時にマネージャー業務としてワルキューレの職務であるヴァールシンドロームの情報の処理など多岐にわたる業務をこなしている彼女だが最近頻発したヴァール被害により業務が逼迫する危険性が出たことで新しくマネージャーが雇われることになった。
それが隣にいる男──シルロ・バーンである。彼は正式な手続きを踏んでケイオスに入隊した訳では無い。戦争とヴァール被害で住んでいた村と家族を失い、アル・シャハルという辺境の惑星で運び屋の仕事をしていたが同惑星にてこれまた発生したヴァール被害に巻き込まれて衣食住を失った結果たまたまケイオスに保護されただけの普通の青年である。たまたま保護され、当然のように手が空いていたシルロが忙しそうにしていたカナメの仕事を手伝うようになったのは至極当然の話と言える。その後Δ小隊のアラド隊長の計らいで惑星ラグナに帰還する頃には新人マネージャーとして登録されていた。
最近二十歳を迎えたシルロはこうして職場の先輩となったカナメと二人で初めての酒を飲んでいる。銀河中に名前を轟かせるアイドルグループの一人と二人きりで飲むとなればこういった隠れ家のような店でないと安心出来ない。
「…ほんとだ、これ美味しいです!カナメさん!」
「やっぱり。君みたいな子はこういうのが好きだと思った」
初めて飲む酒に目を輝かせるシルロを姉のような、母のような目線で見守るカナメ。ちなみに年齢差はたったの2つである。
短い間とはいえマネージャーとして仕事をすると当然ながらワルキューレとの接触に加えて新人が入ったとはいえマネージャー業務を続けているカナメとの接触は増える。カナメが元々面倒見がいいのもあり、二人の関係性は恐ろしい早さで積み上げられていった。男女の関係となるとどうしても気にしてしまう恋愛観だが、シルロは既にカナメに好意を持っていた。仕事をしていく間に、というより出会ったその時からだったような気もする。
「これから君は付き合いでお酒飲むことも増えると思うし今のうちに慣れておいた方がいいよ」
「俺は、カナメさんとこうしているのが1番楽しいです」
「嬉しいこと言ってくれるわね」
雰囲気のいいバー、度数が高いとはとても言えないものとはいえ酒を飲んでいる。状況は悪くないと判断して「ここだっ!」と思い素直に好意をしめすものの、流石アイドル、カナメ・バッカニア。簡単にかわされてしまう。
アイドルという職業は人の好意を受けることが多い職業だ。特にカナメはワルキューレが出来る以前からアイドル業務をしていたらしい。その頃の話を同じワルキューレのマキナやレイナから聞こうとしたがカナメに速攻でバレてしまい大目玉をくらった。
「お世辞のつもりなんて全く無いんですけど」
カナメにとって同じ時間を過ごしているとはいえたかが一般難民の好意なんて既に慣れたものなんだろう。決して悲観することは無い。今が楽しいのは間違いないしケイオスに、というよりワルキューレに救われていなければアル・シャハルで死んでいたことは間違いない。そういう意味でも心の底から感謝している。
だがそれを差し置いても好きなものは好きなのだ。この気持ちに嘘はつけない。
「俺、やっぱりワルキューレ好きなんです。命を救ってくれたからとか、ヴァールと戦ってくれるからとはまた別で…その──みんな綺麗だなって」
印象が脳に焼き付く、と言うのが正しいのだろうか。一度目に入ったら忘れない美人揃いの上に可愛い衣装、ヴァールへの効果を確かめるという側面があるとはいえ様々な曲調の歌がメンバーの歌声を彩る。生死彷徨う戦場で聞くその歌は戦士を鼓舞し、死への恐怖を取り払いその力を増大させるまさに戦乙女。
耳以外でも心が聞いているような歌は知らない間に自分がヴァールにかかって治療してもらっているのかとすら思ってしまう。そんな歌声に知らないうちに惚れてしまったのが自分だ。悲しいかな、物理的には手の届く位置にいて精神的には決して届かない今の状況は「待て」とくらっているようでとてもむず痒い。
「…浮気者」
「え?上着?あーこの星暑いんですかね?アイテールで脱ぎました」
恋人でもないのに惚気のようなことを言ってしまいカナメにジトー、と効果音がつきそうな視線を向けられる。仮にも同じ船に乗って寝食共にするものが酒が入っているとはいえ急に愛を語ったら睨みたくなるのも仕方がない。今後は控えなければ行けないようだ。
──浮気者、と聞こえた気がするが言葉通りの意味ではなくおそらくラグナの方言か何かだろう。ラグナは初めてなので今後今のような方言等の文化の違いに苦しむかもしれない。覚悟するべきか。
「なんでもないよ。それよりほらこれとかどう?一口あげるよ」
カナメはそう言うと彼女の持っていたグラスを差し出してくる。カナメが飲んでいた中身は半分ほど減っている。つまり半分ほどカナメが飲んだことになる。
つまり関節キスになる訳だがカナメがそれを気にするようには見えない。
「ひゃぁっ!?」
対象的にシルロは生娘みたいな声を上げて立ち上がる。先程気持ち悪いほどにワルキューレへの感情を出した直後に当人からの関節キスの誘いに驚くのも無理はない。それはそれとして大の大人の男が生娘みたいな声をあげればカナメも首を傾げる。
「あ、人の飲みかけとかダメなタイプ?」
8年近くも低賃金のアルバイトで奴隷のように働いてきたシルロが今更関節キス程度で驚くような衛生観念をしているはずもないのだがまるで関節キスそのものに抵抗があるように聞く。しかし口の端は上がっており、カナメは揶揄って反応を楽しむ為にそう提案したことは傍目でも分かる。
シルロの反応を楽しんだカナメは差し出したグラスを自分の手元に戻して口をつけようとする──が直後にそのグラスは隣から伸びてきた腕に攫われる。
「い、いえ!そんなことありません!ありがとうございます!(?)」
取ったのは当然シルロだ。顔は熟したリンゴのように赤く染まり目線はあちらこちらに飛んで相当混乱しているのが目に見える。彼本人ですら自分が何を言って何をしているのか把握していない。
「あっ、それ度数高いやつ─」
混乱したシルロはカナメが止めるよりも前に持ったグラスの中身を喉奥に流し込む。酒に飲みなれていない若者が、アルコール度数の高い上級者向けの酒を感覚をあけずに一気に飲んだらどうなるか。
当然、その場に倒れる。
グラスを机の上に置くと先程まで赤かった顔が急速に青くなり足元をふらふらさせてその場に倒れる。店主が一瞬だけ視線を移すがすぐに何事も無かったように作業を再開する。
「大丈夫!?」
急に倒れたシルロの元に駆け寄るカナメ。急性アルコール中毒によって意識を落とした──訳ではなく、ただ急な酒に酔い足元が覚束無くなっただけのようですぐに体を起こす。
「頭痛い…クラクラする…」
「ちょっとそこで休もう?歩ける?」
「はい…」
病院に運ぶほどでは無いとはいえ、流石に店内にシルロを置いていく訳にも行かず、カナメは会計だけ済ませると肩を貸して店から出る。出る直前、仏頂面なまま黙っていた店主が憐れむよう顔で見ていたように見えたがきっと勘違いだとカナメは判断した。
◇◇◇
からかいすぎて度数の高い酒を飲んだ結果酔い潰してしまったシルロに肩を貸して店を出てしばらく夜風に当たる。
「大丈夫?」
「すみません…」
時間が経ったからか、最初より顔色は良くなっているように見える。とはいえまだ本調子とは言えず、時間は真夜中。今から裸喰娘々まで歩くには二人とも厳しく、迎えを呼ぶには時間が遅い。まだ起きている人がいたとしても今日は隠れて飲みに来ていたので呼べるような状況ではない。何よりその全てを解決したとしても酔って弱気になったシルロを一人にさせたくなかった。
シルロを近くのベンチに座らせてその隣に座る。酒を飲んで火照った身体に静かにあたる夜風は心地いい。美雲だったら突然歌い出しそうなシチュエーションだ。
「私こそごめんね、ちょっとからかいすぎちゃった」
「そんな、謝らないで下さい。俺今だって本当は楽しいんです」
彼が保護されてから私に気があったのはすぐに気付いた。アイドルとしてそういう視線や感情を向けられるのが珍しくないのもあるがそれ以上に彼が分かりやすかったのもある。ワルキューレのマネージャーの仕事を手伝ってくれたのも、手が空いていたからという理由以外に下心があったと言われても納得する。
それでも慣れない仕事ながら真面目にこなしたのは素直に好感が持てる。家族と故郷をヴァールで失ったと聞いていたので自分のような被害者を少しでも減らしたいという気持ちもあるのだろう。ほぼ同時期にΔ小隊に入隊したハヤテ・インメルマンとはバイト仲間だったらしいが彼のように戦う力を持っている訳でもなくワルキューレのメンバーになったフレイヤのように歌への情熱やフォールドレセプターの保菌者という訳でもない。ワルキューレのマキナやレイナのような専門知識を持つ訳でもない。難民として生き抜いてきた力なのか環境に慣れるのが早い順応性はあるものの、文字通りごく普通の人。一応一通りやらせては見たが才能も無く彼が出来ることを探しても今のような雑用係がせいぜい。それでも持ち前の真面目さから一つ一つ間違えながらもこなしていくのは彼の美点だと私は思う。
「いつもの仕事に加えて俺の教育までやってカナメさん忙しいのはわかってるんですけど。今こうして二人っきりでぼんやりしてるのもいいなって」
ちょっと反省足りないですね、と彼は笑う。彼にとっては夫婦が軒先でくだらない話をしながら笑ってるような光景が理想なのかもしれない。私は戦場に出て歌うことに抵抗がある訳では無いがこう能天気な話をするのも悪くないと思う。
「そうね。こういうのも、たまには」
視線の先には夜中でも輝く夜の街。毎日仕事をして疲れた体を酒と料理で誤魔化して次の仕事へと望む、社会人達の集まり。先程までの自分たちもあの中の一部で皆と変わらないと思い知らされる。
「カナメさん」
「何?」
ラグナの人々達を見て彼の口が開く。穏やかに、ただ覚悟の決まった声に心臓の鼓動が少し強くなる。
彼は近くにあるお城のようなホテルを指さす。
「今日、ホテル行きませんか?二人で」
裸喰娘々に帰るには少し遠く、迎えも期待できない状況。元難民の彼は路上で寝ること等慣れたものだろうが私が置いて帰れないことを知っている為かとんでもないことを言い出した。
関節キスでも大慌てしていた彼からの夜のお誘い。雰囲気も多少あったのかもしれないがドストレートにも程がある。ワルキューレの事はみんな好きとしか受け取れない言葉ばかり並べていたのでプレイボーイな面もあるのだろうかと思ったが考えてみれば彼がそんなに器用な訳が無いのでワルキューレをアイドルとしてみた時の感想だろう。そのアイドルとしては断るべき申し出なのだろうが、断ろうとした言葉は口から出ることはなかった。
個人として、私は彼の事が嫌いじゃない。むしろ好きだと言える。ちょっと情けない所はあるし、真面目ではあっても優秀ではない。しかしそんな欠点ですら可愛げがあるように見える。
──困ったな、こんなにストレートに口説かれるとは思わなかった。
今まで可愛げのある弟みたいなものだと思っていたのとあって先程の一言はかなり刺さった。ギャップ萌え、というものだろう。少し楽になっているとはいえ酔い潰されている状態で見える真面目な顔は普段よりキリッとしており、顔も相当いい。まるで別人のように変化した彼に心を射抜かれてしまったようだ。顔が赤くなっているのが自分でもわかる。そんなことを内心で考えている間に身体が自然と彼の言葉に頷いていた。
◇◇◇
肩を貸さなくても歩けるようになったシルロと二人で近くのホテルにチェックインする。一人部屋が二部屋はなく、二人部屋が一部屋。つまり同じ部屋で今日は寝ることになる。部屋は少し狭いがベットだけはちゃんとしている。部屋の隅にはシャワーと小さめのお風呂も完備されている。
これだけなら何処にでもある普通のホテルだがここはどうやら普通ではなかったらしい。ベッドは少し大きいが一つだけで二人部屋には見えない。シャワーのある浴室は大きめのガラスで中身が見えるようになっている。一応トイレは別室で隠れているがこれではシャワーすら浴びれない。
──これ、ラブホじゃない?
事前確認もなにもせず、手続きも彼に任せて入ったので部屋に入った時に初めて気付いたのだがこのホテルはどう見てもラブホテルである。とはいえ彼の言い方からして誘ってるのは間違いない。ならラブホも不思議じゃない、というより自然だ。部屋の構造は少し変わっているので少し変態的な趣味があるかもしれないがそれを受け入れる準備も心だけはできてしまっている。
「うわっ…どういう趣味だよこの部屋…」
しかし残念ながら彼はホテルに入ったことない元難民。ラブホテルと普通のホテルの違いどころかラブホテルの存在すら知らない。抱くのは精々「変な趣味で出来た部屋なんだろうな」というレベルである。
「先にシャワー浴びるね」
「はい!見ないようにしますね!」
彼がどんな趣味なのはか分からないが最初からそんな変態的なプレイをするつもりは無い。今はムードというものがあるし、何より私も経験が多い訳ではなく彼に至ってはどっからどう見ても素人童貞である。あの顔で何人もの女性を口説き落としたヤリ〇ンにはとても見えない。もしそうなら世界が間違っている、と言えるほど彼は異性に免疫がない。
誘ってきたのは彼からとはいえ、少しだけとはいえ大人な自分が主導でやった方が上手くいく。男の子らしく主導でやりたい、と考えるかもしれないのでそこの所は上手く調整してあげる必要があるだろう。
兎に角体についた酒と汗の匂いを取り除くのが先だ。特に女性器の匂いは初めての男の子相手にはかなりキツい。言葉通りに律儀に耳と目を塞いで浴室に背を向けているのを確認して脱衣所で服を脱いだ後浴室に入ってシャワーを浴びる。今日は別に危険日でもなく、体調も悪くない。狙ったこの日に二人で飲もうとした訳では無いがもしかしたら無意識のうちに、二人で過ごすならこういう日がいいと考えていたのかも知らない。
「私もちょっと気にしてたのかな」
シャワー室からベットの上で耳を塞いで背中を向けている彼に視線を送る。見ないようにする、という言葉通り背中を向けたままピクリとも動かない。こうした素直なところはすきだがそれはそれとしてちょっと魔が差して振り返ってくる…ぐらいの魔性はあってもいいと思う。
シャワーで全身くまなく綺麗にした後は髪の毛はもちろん全身の水気を拭き取りバックからちょっと高めの香水を出してつけてみる。肌や唇がカサついていないか確認する。今から準備出来るのはこの程度。数日前から覚悟できていれば勝負下着をつけたりしていただろうが今日はその気はなかったのでそこまで準備は出来ていない。着替えがあるようなホテルではないので当然着てきた服を着ることになる…のだが結局脱がされるのなら裸でいいのではないか。彼のような若い子相手ならその方が積極的になってくれそうな気がする。
「み、美雲じゃないんだから…」
ムードが大事だなんだ言って裸で出てきては性欲より肉欲を刺激しに行くようなものではないか。積極的になって欲しいのはあるが、あくまで愛ある行為をしたい。
着てきたケイオスの制服を着替えて脱衣所から出る。
「出た…よ」
未だに背中を向けている彼に声をかける。いままで意識こそしていたがここまで来ると思うことはある。緊張のあまり心臓の音が外にも漏れてしまいそうなほど強く鳴る。
──ああ、私。今からこの子に抱かれるんだ。
年上の女を抱くことになにか思うことは無いのか。下手で失敗したり嫌われたりしないか。身体の相性は大丈夫なのか。思わずネガティブな事を考えてしまう。
「はい、お疲れ様で…」
振り返った彼の目に私の姿が映る。シャワーを浴びた程度なので特に変わった事は無いはずだが言葉に詰まり顔を赤くしてしまう。こうして緊張してる姿を見るとこっちまで緊張してしまう。
「ほ、ほらシルロ君も…シャワー、浴びてきてよ」
「は、はい!失礼します!」
緊張でガチガチになりながらも浴室の方に歩き出すシルロの方を一瞬だけ見た後は彼のしたように浴室から背を向ける。考えてみればこの部屋の設計者はこんなことをさせるために浴室をガラス張りにした訳では無いので少し申し訳なくなる。彼の体も気になるし、先程まで酔い潰れていたので心配なところもあるので振り返ってシャワーを浴びている姿を見たいが自分で言った通りに見ないようにして筋を通したシルロに対して見てしまっては不公平に感じてしまう。
浴室から背中を向けて、変わりに浴室とは反対方向ベットの頭のほうにある机からコンドームを取ってポケットに入れる。シルロにコンドームの知識があるかどうかは賭けだ。恋人になるならともかく妊娠してしまっては戦場で歌うことも出来なくなるので当然コンドームを使うつもりだがそれを理解せずに言い出せなくなってなあなあにされる前に私が主導権を握って無理やりにでもつけさせる。そこは年上として譲る気は無い。
「お酒飲んだ後のシャワーって意外と気持ちいいんですね」
少し時間が経つと髪の毛を拭きながらシルロが浴室から出てくる。彼も裸になることはなくケイオスの制服で出てきている。積極的すぎて興奮のあまりブレーキが効かなくなり急に仕掛けられる、ということはしてこないみたいで安心した。
そして、同時にお互いの前準備が終わったことを意味する。誘われて乗った以上今更日和ることはしない。関節キスで緊張してしまう彼が勇気を出してくれたのだ。
「じゃあ…」
「はい。おやすみなさい」
───はい?
瞬間、時間が止まったような気がした。今、彼はなんと言った。「おやすみなさい」と言った。彼が過ごしていた惑星ではコトを始める時にそんな言葉を使うのか──否。ただ彼は言葉通り私とホテルで一夜を過ごしたかっただけでそういうことをする気はなかった──のだろう。ラブホテルをわざわざ選択して泊まることにしたのも違いがわからないから以上のものは無い。子供っぽい所があるとは思っていた。実際家族を失って一人で生きてきたのだから精神的な成長が12、13歳ほどで止まっていた可能性も考えられた。が、それはそれとしてこれはいくらなんでもデリカシーが無いのではないか。
こちらは覚悟してきたのだ。アイドルでありながら気になった男の子に抱かれる覚悟をしてきたのだ。
「シルロ君」
「はいっ!」
声をかけると本気で寝ようとしていたらしく枕に頭を置いて部屋の電灯のスイッチを探していたシルロの頭が上がる。いちいち可愛らしい反応をしてくるな──と思いながらその身体の上にのしかかる。
流石にパイロットのΔ小隊のメッサーやアラド隊長には劣るがいつもレッスンやトレーニングしている私達の身体なんてひょいと持ち上げてしまいそうなほど引き締まった身体をしているが、本人の認識からしてなんの前触れもなくのしかかったため対応が遅れて全身を抑え込むことに成功する。
「…ひゃい?」
「女の人と2人っきりでこういうところいると、何されるか、教えてあげようか?」
いつもは身長の高い男の子を上から見下ろす。シルロは急に上にのしかかられたので意味を理解できずに顔を赤くしながらもポカンと口を開けて驚いている。本当にその気はなかったらしい。
だが、私はもう止まれない。ここまでされて「待て」と言われても我慢出来ない。
「…ン」
自分の顔を口を開けたままのシルロの顔に近付ける。そしてその唇を奪ってみせた。柔らかいソフトキス。彼の初心な性格からしてまず間違いなくファーストキスである。彼の全身がピクっと跳ねる。初めての快感に身体が戸惑っているのだろう。
彼の口は、まだお酒の味が残っている。若い子が好きそうな甘めの果物酒が私と彼の間のファーストキスの味になった。
「…わかった?」
出来るだけ優しくキスをしてみたがシルロの反応は非常にわかりやすく、今日一番の反応を示した。もう耳まで真っ赤で冷や汗までかいている。
「カナメさん…僕…ちょっと、わかんない、です」
「へぇー分からないんだ。悪い子」
わざとなのか、それとも本当にわかっていないのか。どちらにしろ私の対応は変わらない。
体重をかけたままシルロの上半身の服をゆっくり脱がす。シルロは抵抗しない、というより先程のキスの衝撃で抵抗する力を失っている。力を失った抵抗はむしろこちらの興奮を掻き立てるだけ。
へそからお腹、胸から男の子も持っている赤い突起の周りを一周して唇まで舌を這わせる。さっきの絶望感を返すように腕と指でシルロを絡め取るように抱きつく。耳を甘噛みして反応を楽しんでみる。程よく引き締まった身体は触り心地もいい。まるで私に犯されるために作られたような身体だ、と内なる変態性が出てきてしまっているのを感じるが自分でも止めることが出来ない。メインディッシュ前の前菜を味わう気分は肉食獣。シルロは哀れな草食獣に見えるがまさか自分で更に盛り付けまでしてくるとは誰も思うまい。前菜を楽しみながらメインディッシュの仕込みは忘れない。足で当たりをつけてから空いた手で彼の股間についたソレに触れる。
ドクン、ドクンと血液がいきかっているのがわかる。平均的な男性器のサイズは知らないがこれは大きい方だと私は思う。ここまで触れたら興奮して勃起するのは当然だしそのためにこうしたのだがこうして結果が出ると嬉しくなるし、もっとしてあげたくなる。
「待って、ダメです。貴女──は!」
「ダメじゃないよ」
涙目になりながら訴えかけてくる彼の言葉を棄却してズボンとパンツをおろして肉棒を露出させる。抑え込んでいるものから解放されソレはバネのように動き出す。
先程触ったのでサイズはわかっていたがこうして見せつけられると生唾を飲み込む。
「おっきいね」
ポケットに入れたコンドームを嵌めてみる。彼のサイズが大きいからか、少しキツそうに見えるがこればかりは仕方がない。これで妊娠の心配はなく、挿入ができる。
準備が出来たので下着をズラしてゴムに包まれた肉棒を秘部に押し当てる。虐めている間に私も興奮してきたのかいつの間にか挿入の準備は出来てしまっている。
「…カナメさん」
「何?」
熱に犯されたのか息を切らしながらシルロが声をかけてくる。襲われた理由は未だに分からないのだろうが自分が襲われるだけのことをしたということは自覚したらしい。一歩前進だ。
そしてもう止める意思はないようだ。力も残っていないのだから当然と言えば当然だが今からの彼の言葉は最後の確認のように感じる。
「俺でいいんですか?俺はハヤテみたいに飛べませんよ」
「…」
──驚いた。この子、ずっとそれを気にしていたというのか。
驚きのあまり身体がピタリと止まってしまう。
しかしよくよく考えてみれば自然な話だ。ヴァールによって家族と帰る場所を失い、何とか手に職をつけるもそれすら失う。ワルキューレやΔ小隊のような戦う力を持たない。自由に空を飛べない重力に魂を引っ張れたただの人間、それが彼の中にある自分自身で胸の中にはずっと無力感があったのだろう。もしかしたら私のマネージャーの仕事を手伝いに来たのも「せめて正しいことをしたいから」という理由があったのかもしれない。後から入ったはずのハヤテ・インメルマンがΔ小隊でその頭角を現しているのも焦りの原因としてあるだろう。そんな自分が人を愛するのはともかく愛されていいはずがない。そう言いたいのが伝わってくる。
が、残念ながら少なくとも私に人の好き嫌いにその要素は関係ない。必死に快楽に耐えて好きな相手の魅了に耐えようと頑張ったみたいだが無駄だ。
「いいよ。私は君のこと、好きだから」
「───ッ!」
シルロの顔が興奮のような、多幸感のような、色んな感情がねじ曲がった顔になる。その頬に手をやって引っ掻くように撫でた後迷わずキスをした。最初の一瞬だけのソフトキスとは違う。もっと熱く、互いの心を交換するようなキスをする。舌を入れるのは流石に勘弁してあげた、がまたシルロの体がビクンと跳ね上がった。
「──好き──好き」
口を離すとうわ言のように私の言葉を繰り返している。今ままで満たされなかった分、余程嬉しかったのだろう。私も嬉しくなってきた。もう一度、唇同士を重ね合わせる。
その間に空いた手で彼の肉棒を秘部へと押し当てる。ジュワッと潤滑液としておりものが出てくる。ゴム越しでもわかる、彼のモノの存在感。入口にそっと当てるだけでモノはピクリと反応を示し、秘部からは期待の意味があるのかおりものが出てくる。
一旦身体を止めて、お互いの顔を見つめ合う。若干の恐怖と大きすぎる期待に胸が膨らむ。覚悟を決めて腰を下ろすとグチュ、と音を立てて大きなモノが中に侵入してきた。
「ん〜〜〜!」
中に入ってきた異物感と共に全身を稲妻のような快感が走る。初めてなわけが無いのに初めてに感じられる快楽に筋肉が痙攣し、上げていた腰が落ちる。当然その勢いで彼の摩羅は私の中に入っていく。体位のことは詳しくないがいわゆる騎乗位と呼ばれる体勢にあたる。
あっという間に先端が子宮口に当たり強制的なブレーキがかかる。先端が最奥にぶつかり口から喘ぎ声が零れる。シルロも腰の辺りに力が籠ったのが感じられる。一気に奥まで入ってしまい出そうになるのをこらえたようだ。ちょっと苦しそうに顔をしかめているのを見るの胸にクルものを感じる。
「あん…んっ」
少しばかり経験のある大人として、余裕のある姿を見せたかったが思わず零れた喘ぎ声は初めて体感する生娘のソレだ。恥ずかしくなって口元を手で覆うがそれでもなんだかんだちゃんと体裁を取り繕えてしまうもので必死に射精を耐えているシルロを見下ろす。
「はぁっ…童貞卒業おめでとう。どう、かな?」
「なんか、締め付けてきて…よく、わかんない、です…」
顔を赤くして、身体をピクピク反応させながら苦しそうに、しかし物欲しそうな表情を浮かべている。もう彼はともかく私は酒が抜けてもいい時間帯だろうに酔ったように身体が熱い。
──駄目だ。気持ちいい。
このまま強引にお互いの肉欲を貪り会いたい。
挿入させたまま、徐に着ていたケイオスの制服を脱ぐ。女の子らしい下着も脱いで隣に置くと隠されていた乳房が出てくる。流石にマキナには劣るが人並みに大きい自信はある。
「ほら、どうぞ」
シルロは男の子らしく胸が好きなようで上体を起こすと胸に優しく触れる。顔に似合わず少し太い指が胸に張り付くようにペタペタと触れ、また離れる。当然抵抗はしない、というより触れる程度ではこちらも満足できない。もっと力強く貪り尽くして欲しい。
「んっ…もっと、好きにして」
「は、はい!」
こういうタイプの子は遠慮しがちなのでちゃんと言ってあげないと分からない。そういう所がまた可愛い。マネージャーの手伝いしている時も似たようなことが多かった。
シルロは胸をしたから支えるように持つと手を沈みこませる。そのまま優しく揉み始める。柔らかいながらも肉感のある胸は揉まれる度に少し痺れる。本人にその気は欠けらも無いのはわかっているのだが焦らされているような気分だ。
「うわぁ…凄っ…」
子供っぽい反応を見せながらも、胸に夢中になって手が止まらない。ひとしきり全体を揉みしだくと必然的に赤く自己主張をする突起に辿り着く。
何も考えていないのか、本能的に乳首に吸い付き始めた。舐めるとか責めるとかではなく、本気で吸い出そうとしている。当然ながら妊娠もしていない私から出るのは母乳ではなく汗だけだが、その姿がたまらなく愛おしい。頭を撫でてあげると膣に入れたままの肉棒が更に大きくなる。
「んっ。赤ちゃんみたいだね…妊娠したら飲ませてあげようか」
「ふもっふ!」
何といったらふもっふと聞こえるのかは不明だが、吸い付いたまま離れようとしないシルロ。一応下半身は繋がったままなのだが、母性に弱いのか先程からずっとちゅーちゅー吸っている。
おっぱいならなんでもいいとは言わないだろうか。自分の身体の一部だと言うのに嫉妬してしまう。
「…触りすぎじゃない?」
「いやっ、好きにしていいって」
「言い訳無用」
指摘すると誤魔化すように
こんな悪い子は搾り取っても誰も文句を言うまい。吸い付かれたまま腰を上下に動かす。膣肉のヒダの一つ一つが中にある陰茎をこれは私のものだと自己主張するようにしっかりと締め付けて離さない。それを強引に引っこ抜こうとするとカリが表面を抉るように撫でる。
パチュン、パチュンと肉と肉がぶつかる音が妖艶な音にさえ聞こえる。
「ちょっ──キッツ──」
「んんッ、はぁん」
さすがに胸からは離したものの、上半身は抱きついたまま必死に喘ぎを我慢している彼の顔を見ていると胸の高鳴りは強くなる。抱きつかれているからか彼の心臓の音が感じられる。
互いにボルテージは上がってきた。同時に絶頂するのも、今なら難しくない。
「カナメさん!カナメさん!」
必死に射精を耐えているシルロの声が明らかに変わる。限界なんだろう。目も焦点が合っておらず、熱い息を吐いている。せめてもの抵抗として私の体を持ち上げようとする。が、それはさせない。伸ばしてきた両手をガッチリ掴んで指を絡める。所謂恋人繋ぎというやつだ。
そのまま耳元まで顔を寄せる。
「射精しちゃえ」
「───ッッッ!!」
囁くとほぼ同時にドクン、ドクンと脈打って膣の中に熱いものが流れ出す。コンドームで防いでいるのが嘘ではないか、実は行為の最中に破れてしまったのではないかと思えるほどに熱いものが体内に吐き出され、子宮口が受け入れようとする…もゴムにそれを阻まれる。直接子宮に入ることはなかったとはいえ出された精液に身体は敏感に反応する。
「イ、くぅっ──!!」
全身に快楽が電撃のように流れる。急に襲わたせいで反射的に身体がその快楽から逃れようと身体を海老反りに逸らす。絶頂したのはいつぶりだろうか。行為自体数はそう多くなく間違いなく童貞のシルロと大した違いがないが自慰行為も最近は忙しくてできていなかった気がする。少なくとも──こんなに気持ち良くて満たされた快感を私は知らない。この一瞬の快楽に脳がそのまま支配されてしまいそう。
全くの同時、という訳には行かなかったが二人で共に果てられた喜びが満足感となる。喜びと満足感で顔が緩み、口の端からはヨダレすら出てきてしまう。はしたないとは思うがそれを止める力は残されていなかった。
多幸感と極度な疲労感で身体がシルロの方に倒れてしまう。疲れた身体は愛しい男の少し角張った硬い身体に包まれる。快楽のせいで崩れただらしない顔を見せたくなくて顔を彼の胸板に押し付ける。
「あっ、ごめん、なさい─」
「いい…わよ」
互いに熱い息を吐きながら言葉を必死に繋ぐ。射精後の男性は賢者タイムで冷静になってしまうと聞くが彼の場合は挿入されたままの陰茎が臨戦態勢なのでそうには見えない。下手したら私より強くなりそうで困る未来が見える。
ゆっくりと下半身だけを動かして陰茎を引き抜く。被さっていたゴムは破れてはいなかったようで先端にぷっくらした液だまりが出来ている。見た目でしかないが量は相当多く、ほぼ同時に私も絶頂したせいかその場所だけ異様に濡れている。
「カナメさん──俺、頑張ります。ちゃんと父親になります!」
「──え?」
しばらく抱き合って落ち着いた時シルロが覚悟をした男らしい顔を見せた。性行為中は余裕のない時の可愛らしい(カナメ談)な顔が多かったがこの時は覚悟が決まったことで元来の男らしい表情を見せていた。
それはそれとして今はコンドームを付けているため妊娠の心配はそこまでする必要は無い。だが、可能性はゼロとは言えないしシルロはカナメがコンドームをつけている時覚悟しきっていなかったし何より12、13歳ほどで情緒が基礎的な知識が止まっているのならコンドームの存在すら知らない可能性も考えられる。
年上として、行為をした相手として説明するべきなんだろうが彼のセリフを聞いて嬉しくなって説明するのが勿体なく感じてしまう。いつか本当に彼の子を孕む時、説明する日は来るのだろうがもう少し彼には無知でいてもらおう。そっちの方が反応を楽しめるし可愛らしい姿を見ていられる。
「そうね。頑張ってね、パパ」
そう言って今日何度目かになる口付けを交わした。
◇◇◇
次の日。
そのままラブホテルで夜を明かした二人は残りのメンバーにバレないようにその場で別れてそれぞれの寮に戻った。
「お前、なんか変わったか?」
いつも通り周辺惑星のヴァール被害からワルキューレメンバーの体調など記録したデータを管理しているシルロの元に今日の訓練を終えたハヤテ・インメルマンが顔を出す。近くには他のΔ小隊のメンバーが軽く会話しており、普段はこういう場に居合わせないメッサーもいる。そのメンバーの中にワルキューレのマキナ、レイナ、フレイヤが加わりチラチラとこちらの様子を見ながら内緒話を始める。アラド隊長だけは席を外しているようだが訓練外だと少し珍しいメンバー編成だとシルロは思った。
『ケイオス』に所属する前の職場からの付き合いである二人は他のメンバーより気楽に言い合えることが多い。その為かハヤテはシルロにとある違和感について話す。
「変わったって、何が?」
「なんか大人になったなって」
「お前それ俺が子供って言いたいのかよ」
変わった事について聞かれ、昨晩のカナメとの交わりを思い出して声が震えるシルロだがハヤテがとんちんかんなことを言い出したので声の震えが亡くなり、代わりに鋭めのツッコミで返す。二人の関係が気安いからできる掛け合いだ。
あくまでハヤテは雰囲気が大人っぽくなった、というニュアンスで言ったのだがシルロは体が成長したと受けとりそのツッコミはヤケに攻撃的になる。当然もう20歳にもなるシルロの身体が成長するはずもない。だからもう変わることは無い、とシルロは言いたいのだがハヤテはまだ引っかかるようで顎に手をやり首を捻る。
「そういえばお前、昨晩は何処にいたんだ?裸喰娘々に帰ってなかったんだろ?」
「お、おいハヤテ。いいんだよ、そういうのは」
「はぁ?何がいいんだよ」
シルロが裸喰娘々に帰って無かった事に気付いていたハヤテは何をしていたかについて問いかける。直後ハヤテの後ろに固まっていた残りのΔ小隊のメンバーが一斉にハヤテの方向を向く。「お前そこは見逃してやれよ」と、言葉にすることはなかったが視線で訴えかけられるハヤテだったが気づくことはなかったのでΔ小隊のメンバーの一人、チャックがハヤテを引かせようと肩に手を置くがチャックの気遣いが分からないハヤテはその手を振り払う。
「マネージャーのお仕事で居残り。お前たちカナメさんに感謝しろよ、俺が来るまで一人で仕事回してたんだから」
「お、おう…」
チャックの気遣いは無為に終わるがシルロは想定内だと言うように仕事といいながら分かりやすく疲れたリアクションを取る。これはカナメと事前に話して決めていた事だ。裸喰娘々に帰られずにホテルで一夜を明かすとまでは考えていなかったが帰りが遅くなった事への言い訳として仕事を引き合いに出せば大抵黙るだろう、との事だ。これだけで納得されるあたりカナメの多忙さが伝わる。その為に自分がいるのだ、自分がちゃんとしないと──と気持ちを再度入れ直す。
「楽しそうな話してるな」
「アラド隊長」
そこに現れたのは髭が目立つ30代の男性、アラド・メルダース。Δ小隊の隊長。シルロの中では仕事の内容的に一番共にいる時間の長いΔ小隊の隊員である。その為Δ小隊ではなくても尊敬の念を込めて隊長と呼んでいる。
アラドはシルロの方を見るとすぐになにかに気付いたようでシルロの肩に手を置く。
「なんだ、お前。カナメさんに『漢』にしてもらったのか」
アラドの言葉が聞こえた範囲の人が一斉に身体の動きを止めた。会話も途絶え必然的に静寂が訪れる。まるで時が止まったようにピクリとも動かない周りにアラドが疑問に持つのと周りが反応したのはほぼ同時だった。
「──な、にゃに…!?」
一番最初に反応したシルロは恐怖を感じたのか震える目でアラドを見る。先程の事前にカナメと話して決めていた『言い訳』はアラドには聞こえていない。昨日裸喰娘々に帰って来なかったのも大方気がついているだろう。だが、それだけで行動の全てがバレるわけがない。
「アラド隊長、それは!」
「ああ、内緒か。それは悪かった」
Δ小隊の紅一点、ミラージュが動揺して震えるだけのシルロに変わりアラドにくってかかる。ミラージュの反応で自分の失態に気付いたアラドは素直に謝るがもう遅い。ハヤテですらアラドの言葉でシルロの変化の意味を理解していじるネタを手にして口元がニヤける。アラドが未だにシルロの肩を掴んでいなければニヤケ面のまま小突いていたのかもしれない。
「男にしてもらった?って?」
「シルロはカナメが好き」
「レイナァ!?」
「レイレイ、面白そうだから黙っておかない?」
その場にいる中唯一意味がわかっていないのか可愛らしく首を傾げたフレイヤにレイナが耳打ちで解説する、耳打ちこそしているも声のボリュームを下げているわけではないので当然のように周りに聞こえている。
一応アラドの言う『漢』にしてもらった、は童貞卒業なのでレイナの言い方はかなりマイルドかつ純粋なフレイヤが傷つかないように気を使った発言なのだがアラドに言われて以降混乱しているシルロがソレを気づくのは酷というもの。シルロの口から悲鳴のような声が出てくる。
「面白そうな話ですね、私も聞かせてもらっていいですか?」
騒ぎ始めたΔ小隊とワルキューレの間に再び静寂が訪れる。皆首を回して声がした方向を向く。そこにはワルキューレのリーダー、カナメが笑顔で突っ立っていた。笑顔は笑顔だがその表情は怒りが一周回った結果笑顔になっているようにしか見えない。笑顔は元々威嚇として使われていた、と無駄な豆知識を思い出す。
シルロからしてみればカナメの怒りの原因は自分しかありえない。わざわざ忙しい合間を縫って二人で飲みを企画してもらって酒に酔って失敗したらフォローまで回ってくれたのに後日そのフォローがバレたら怒るのは当然だ。
なにがなんでも弁明しなくてはならない。好きな人にここまで深い関係になれたのだ。こんなことで嫌われたくない。
「か、カナメさん。これはっ──」
余計なことを考えている間に周りはシルロから数歩開けた位置に集まって孤立されている。カナメは当然孤立したシルロの元まで歩み寄る。その様子はまるで地球の旧文明の登場人物海を割ったモーセのように見えた。
必死に言い訳を考えようとするシルロだがこれといったものは出てこない。それでも何とか言い繕うと手を適当に振るシルロの口をカナメが人差し指で塞ぐ。
何処かから黄色い声が聞こえるがカナメは気にせずシルロとの距離を詰める──否、その顔は若干赤くなっており、呆れや恥ずかしさが内にあるのが伺える。それでも周りにはその表情を一切見せず、まるでスポットライト舞台の上で歌う歌姫のように毅然な立ち姿を見せる。
「全く、仕方ない子…そんなに昨日が忘れられないんだ」
呆れ、気恥しさ。カナメの中にはこれらの感情が占める割合は大きい。昨日の晩の出来事を思い出して深夜特有の高揚感と若干残っていた酔いから起こった行為というのもあり思い出す度にそれらの感情が沸き立つ。しかし同時にこの子に抱かれたという優越感を感じるのも嘘では無い。
カナメもまさか性的な関係まで踏み込むとまでは思っていなかったが異性として純粋に好いてはいたし、先輩として気にしている存在でもあった。一度ヤってしまったのは仕方ないのでこの際だからこの関係をより良くしていこう、と半分ヤケっぱちで行動している節もあるとはいえヤケっぱちにさせたのは彼なのでここで引く理由も特にない。
「またシたくなったら言ってね」
カナメはシルロの耳元に口を近付けると小声で囁く。同時に周りから見えないようにケイオスの制服のポケットからラブホテルから取ってきたコンドームの袋を取り出す。当然個包装の袋がくっついており、その数はパッと見10回分ほど。
昨晩見た包装に気付きシルロの意識が下に向いたその瞬間、カナメとシルロの唇が重なる。傍からすればコンドームが見えていないのでカナメがシルロの唇を指でとめたと思ったら目の前まで接近して唇で塞いだように見える。普段は大人としてセーブしていることが多いカナメからの直接的かつ恋人らしい行動に黄色い声がさらに大きくなる。男性陣すら驚きの声が上がっている。
シルロの両腕がカナメの背中に回り、カナメは優しく抱きとめられる。カナメもシルロに少しづつ体重をかけていつの間にか全体重をかけていた。ケイオスでカップルが出来る事すらそうないのに今現在ケイオスの顔とも言えるワルキューレのリーダーとその新人マネージャーという異色という訳では無いが変わったカップルは異様に目を引く。
「またね」
永遠にも一瞬にも感じられるキスが終わり、カナメの体がゆっくりとシルロから離れる。そのまま何事も無かったようにカナメは軽く手を振って来た道を歩いて戻る。
「…フッ」
「何笑ってんだお前」
離れていくカナメの背中をしばらく見ていたシルロはカナメが行ったのを確認すると微かに笑いながら決め顔でΔ小隊と他のワルキューレがいる場所に振り向いた。「見なよ、僕の相手を…」とでも言わんばかりの表情にハヤテが呆れながらも一番最初にツッコミを入れた。
(いらないかもしれないけど)オリキャラ紹介
シルロ・バーン
年齢は20歳。こいつこれでハヤテやマキマキより年上でメッサーとほぼ同い年とかいう悪い意味でのバグ枠。酒が飲めるだけで精神年齢はフレイヤ相当な気がする。
だいたいメッサー君やアラド隊長が「カナメさんが結婚!?相手はこいつ!?…まぁいいか」って思ってくれそうなぐらいの情けなさとかっこよさを持つ感じの男ってのがイメージ。
決め方
カナメ・バッカニアから
カナメ→要石→(要石が押さえている)ナマズ→(バッカニアはメキシコ湾付近にいた海賊なのでメキシコの公用語であるスペイン語で翻訳)→シルーロ→シルロ
バッカニアの名前が使われた航空機、ブラックバーン・バッカニアからブラックバーンを拝借→人の名前っぽくないのでバーンに
以上3分で考えた
後ほど知ったがナマズは陰茎の隠語らしい。英語だとキャットフィッシュだしなんでそうなったってなる雑な名付けと隠語で可哀想になる。
バーンはアメリカ系の苗字として使われるらしいです。そういえばオードリーもオードリー・バーンだね
来歴
元々は辺境の惑星にある田舎村に住んでいたがある日村がヴァール被害によって壊滅。自身もヴァール化した家族をその手で殺めて村唯一の生き残りに。当然ヴァールを憎むようになり、その場にたまたまいたヴィンダミアの騎士に拾われて面白がられた結果ヴィンダミア産の林檎(銀河リンゴ)を運ぶ搬送業につく。
つまり騙されたのもあるとはいえ自らを破滅させたヴァールを時系列的に8年間、12歳の時から自分の手で広げていたのである。だいたいニャアン。
ヴァール化した身内をまとめて殺せるだけあって身体能力は高いと思われる。…ヴァール化しても家族を殺せない身内を一方的に殺したのかもしれない
今後結婚シチュとか考えると家族いると邪魔だからヴァールで全滅したことにしたけどこれ意外と業が深いな?