冒険者になってから十日が経った。
俺は現在数々の雑用依頼をこなす新進気鋭の冒険者として話題となっている。
どうして俺が活躍出来ているのか、それはチートスキルのお陰だ。
俺に与えられたスキルの名は『千里眼』。
今居る場所から絶対見れないだろう場所まで視界を飛ばす事が可能。ちょっと試してみたら、遠くに見える王城にある浴場にてお姫様っぽい高貴な少女の入浴を覗けたくらいだ。
勿論、街にある大衆浴場も覗いた。多種族の女性の裸はとても興味深い。が、俺には見る事とシコる事しか出来ないのが現実。手を出したかったらそれ相応の対価を払うか、娼館に行く必要があるそうだ。
おっと、話が逸れたな。
その千里眼を用いて俺は街の中で熟せる依頼を熟して回っているのだ。
例えば失せ物探し。物の特徴や、落としたと思う場所などを聞いた後に目を瞑って視界を飛ばして確認するだけで発見可能。視点をアリンコ程度の低さにまで下げて世界を観れるので非常に探しやすい。
他には行方不明者の捜索。
その人と縁の深い持ち物や、その人の身体の一部等があれば持ち主まで辿ることが出来る。
それによって見つけたのは、大体が水の中や土の中ではあったが、中には囚われている人も居たりして。
ちょっとした大捕物が繰り広げられもしたが、俺には占うことが出来るスキルがあるのだと喧伝する事にした。
そう言った流れで報奨金を貰ってお金を確保。
その縁で衛兵の人に今日も運勢を占ってくれと言われたり、他にもちょっとした占いを求めた客などが俺を求めてくる事もしばしばあるが、まだまだ雑用冒険者としての活動は必要だろう。
と言う事で、今日も何か丁度良い依頼は無いかと、用紙に何かを一生懸命書き込んでいる愛しのヴェルダンディーナさんの前にやってきた。
「こんにちは、ヴェルダンディーナさん」
「わぁっ!? チトセさん! こんにちは〜!」
どうやら俺の存在に全然気づいて居なかったようだ。そのせいで驚かせてしまったみたいだが……お可愛い。
「今日も依頼を受けに来ましたよ。何かお困りの依頼は有りませんか?」
「それなら良いのがあるんですよぅっと……丁度さっき受諾した依頼なのですが。こちらです」
にっこり笑顔とすこし傾げた首が今日もキュートなヴェルダンディーナさんの小さなお手手から羊皮紙を受け取って読む。
えーなになに。王都の近くの森で大切なイヤリングを落としてしまった。探すのを協力して欲しい。と。
「……申し訳ありませんヴェルダンディーナさん。俺には戦闘能力は無いので、王都の外に出るのはちょっと」
「そう……ですか……チトセさんならもしやと思ったのですが」
ヴェルダンディーナさんの悲しげな顔には罪悪感が湧くが、俺とて命は惜しい。
仮にも異世界。街の外には人類の敵である魔物が跋扈している。街の近くは間引きされて弱い魔物しか居ないそうだが、それでも命の奪い合いは性分じゃ無いんだ。
「占う事だけは出来るのですがねぇ」
「では、占ってはくれないか? 一刻を争うのだ!」
唐突に、それも後ろから掛けられた声に肩が跳ねる。
前ではヴェルダンディーナさんも一緒に肩を跳ねさせてちょっと頬を赤くしていた。可愛い。
それはともかく振り返ると、美女がいた。耳が長く尖っており、金髪緑眼、豊満な胸と大きなお尻、でも引っ込んだお腹とスラリとした手足、シンシアさんやキリリルさんよりもグラマラスだ。エルフってスレンダーかと思ってたけど違うんだな。
さて、思考を仕事に切り替えましてっと。
「どうも、初めまして。私は新人冒険者のチトセと申します。貴方のお名前は?」
「ロリアーナだ」
……ロリアーナ? いかん、不埒な思考に染まり掛けた。この人にはロリ要素一個もねえだろとか思ってない! 切り替えろ!
「こほん。ではロリアーナさん。私が占った場合、貴方は幾ら支払いますか? 依頼では成功報酬で銀貨一枚との事でしたが」
今更だが貨幣価値について言っておこう。
この世界では銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨と六種類の貨幣がある。
銅貨一枚=百円くらいで、各硬貨十枚毎に硬貨が変わっていく。
なので、失せ物探しにこちらのロリアーナさんは銀貨一枚、一万円を払うと言うのだが、スキルと言うのは貴重で希少な力だ。
スキルを持たない人もいれば、幾つも持っている人も居る。先天的才能と言って良い領域の話。
今回はそんな希少なスキルにどれくらい払うかと聞いているのだ。
「見つからなければ話にならん。もし今日中に見つかるなら、その銀貨一枚とは別に何かお前の頼み事を無償で引き受けてやる。今日中に見つからなければ記載通りの金額。それでどうだ?」
「分かりました。それで構いません。では少し待って居てください。依頼を受けますので」
俺は待ってくれて居たヴェルダンディーナさんに向き合い、依頼を受ける旨を伝える。
「その、チトセさん?」
急に上目遣いになって俺の手を取ったヴェルダンディーナさん。少しだけほっぺをぷくっと含まらせるキュートの権化。俺を殺す気か?
「あんまり記載外の報酬とか駄目なんですからね? めっ、なんですよ? あとあとっ……ロリアーナさんに変な報酬頼んでも、めっ、ですよ!」
勝手に頬が緩む。左右のシンシアさんとキリリルさんもニッコニコや。
あっ、この二人とは仲良くやってます。そらもう時々しっぽりやってますよ。
もちろん初心では無かったので、良い感じのさっぱりした関係性だ。避妊についてもなんか大丈夫らしくて、俺は毎度中出し3Pさせて貰っている。
「以後気を付けます。ヴェルダンディーナさんに怒られると悲しいですからね」
「あ、あぅ……えっと、チトセさんを怒りたいのでは無いのですよっ? お仕事がんばってくださいって思っては居るんですけど……むむぅ」
あぁ^〜心がヴェルヴェルするんじゃ〜。
俺はそっと拳を差し出す。
するとヴェルダンディーナさんの顔にほわっと笑みが灯る。
俺の拳に、体温が高いのか温かい拳がコツンと当たり、ヴェルダンディーナさんに満面の笑みが咲いた。
「行ってらっしゃいですよっ! おかえりを待ってますねっ」
「はい、それと受注手続きお願いしますね?」
「あぁ!! すみませぇ〜ん! すぐやりますぅ!」
抜けているところ含めて癒しのヴェルダンディーナさんに、冒険者登録時に血を染み込ませて作ったカードを渡す。
特殊な台座の上に依頼書とカードを重ねると、依頼書の文字が浮かび上がってカードに吸い込まれていく。
これにて依頼の受注完了。スーパーファンタジーなシーンだ。
さて、依頼を受けたら立ち上がる前に左右の受付嬢とも拳をぶつけ、親指と小指立てたらそれも合わせて、最後に手をシェイク。
これを羨ましそうに見るヴェルダンディーナさんを三人で愛でて、また四人で拳を合わせて、指を合わせたら皆んなでシェイク。
「んーふふっ。えへっ。楽しいですねっ!」
「最高ッ」
「至高ッ」
「最上ッ」
こうして俺はようやく受付からロリアーナさんの元へと向かうのだった。
ちなみに、この手遊びはしっぽりやる度に三人で考えてはヴェルダンディーナさんの前でわざとやっている。
悪い大人の悪い楽しみってやつっすな。最上〜!
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「お前達は随分仲が良いのだな。依頼人を待たせて遊ぶ程に」
「大変申し訳ございません。ですが、ご安心下さい。俺の占いは中々確度が高いので」
「ふん! 結果で示せ」
酒場の席に腰掛けて待って居たロリアーナさんの元へと向かうと真っ当なお叱りを受けた。
だがそれ以上に、ロリアーナさんは過剰なまでに焦っている。踵が細かく揺れており、焦りと苛立ちのオーラが漂って“見えてくる”のだ。
余程大切な物か、価値ある物を失くされたのだろう。
「それでは早速占いを致しましょう。失くされたイヤリングに縁のある物はございますか? 無い場合は、ロリアーナさんの手を掴ませて頂いても?」
縁を辿って千里を見る為に必要なものを聞けば、ロリアーナさんは迷わず手を差し出してきた。
なので、俺もまた迷わずその手を掴む。
すべすべの肌。手のひらは固く、指の先はもっと固い。ロリアーナさんは弓を引いているのかもしれない。にしても美女の手を触れるだけで役得だ。
「では参ります……」
目を閉じる。目元を力むと視界が飛んでいく。すると目を閉じているのにロリアーナさんが見える。ロリアーナさんの身体から伸びて広がる幾つもの線も。
その線の中から、森の方へと伸びる線を辿っていく。
森の中程。その木々の枝に引っかかっている、美しい翡翠のように輝くイヤリングが見えた。
「これは……説明が非常に難しいですね。森の少し入ったところ。その木々の枝に掛かっているのですが……」
「当然、森には木など無数にあるわな」
「……ロリアーナさん。戦闘と護衛の心得は御座いますか?」
俺はロリアーナさんにおんぶに抱っこされる覚悟を決める。
不甲斐無い事この上無いが、戦闘能力など微塵も無い以上仕方が無い。
しかし失せ物を見つけたのに伝えられない歯痒さも辛い。だからもう、ここまで来たら助け合いでしょ。
「お前の目から嘘を感じない。良いだろう、私から離れないように着いてこい。必ずお前を守り通すと約束しよう、チトセ」
こうして、俺は異世界転移してから十日目にしてようやく、初めて街の外に出る事になったのだった。