冒険者としての依頼を終えてドスケベバスタイムを楽しんだ日から数日後。まだまだ雨が頻繁に降る中でも俺はロリアーナに背中を押されて店を開けていた。
しかしやってくるのはセックス目的のメリアさんかクロエか、すっかり馴染んでしまった八百屋の奥さん、あとはマッサージにハマってくれた綺麗なお姉さんくらい。
正直言ってガラガラ。一日中ダラダラ。
時間が勿体無くて、最近は千里眼で色んな書物を漁っている。悪い事なのは分かっているが、立ち読みしては本から繋がる縁を辿って次の本へと渡り歩いて読書するのが楽しい。ネットサーフィンしてるみたいでやめらんないんだコレが。
あと、転移した時に持ってたカバンに入れていたメモ帳とシャーペンを使って情報をこっそり書き出したり、直近の事の整理もしている。
まず大規模犯罪組織の犬っころの首輪団。
こないだ潰したあのアジトは、いわゆる中継地点。王都の周囲に数箇所ああ言ったアジトは点在しており、もっと視野を広げてみれば下請け組織と言う形で他国にもその魔の手を広げている。国際規模と言って良いそれは、スーパーエリートな王女様がどう足掻いても解決には至らない事を嫌でも分からせてくれた。
ちなみに屋敷の地下の地下の大空間。あそこは主要アジトと言うか、貴重品倉庫みたいな扱いだったようだ。死体と言う物品から過去を辿れるこの目ん玉が恐ろしいわ。
次、クロエと言う冒険者。
彼女はかなりの凄腕と言って良い。冒険者には等級があり、上は一級、下は十級まである中で、彼女は単独三級。コレはかなりのものであり、普通三級ってのはパーティ単位での話になるらしい。ロリアーナとビャクが認めるだけはある訳だ。
そして経歴。年齢は二十歳と若め。冒険者になったのは十歳。当時からバーサーカー気質があったようで、性に関しても奔放。本人も言っていたが多くの男を食べては捨てていた様で、そんな強い女性像が多くの女性冒険者にとっては頼り甲斐のある風に見られる事もあったみたい。
そのせいか最近の可愛いクロエの様子を他の女性冒険者は訝しんでる様子が窺える。クロエ自身の後ろ暗い事や、犯罪と見做せる様な行いはギルドが知る限りでも無さそうでひと安心。
次、メリアさん。
こちらは八百屋の奥さんなどから聞いた話とほぼ相違なく、王都住民からかなりの人気を博している様だ。
女性達からは娘感覚で可愛がられ、一部から聖女様なんて呼ばれる事もあるとか。
男性からは言わずもがな、その優れた容姿とおっぺえだな。歩く度にたぷんと揺れる乳房を盗み見る奴は多いみたい。だがそれ以外に、娘や孫娘の様に微笑ましく見守る過保護集団も居る様だ。
楚々とした振る舞いと柔らかい笑顔。物腰も穏やかで、声まで優しい。包容力と豊満なおっぱい、そして綺麗で美しいシスターとくれば人気が出ない方がおかしい。
そんな人が俺に金を払って絶頂させて貰いにきてるのがもっとおかしい。皆んなごめん、その人、喘ぎまくって潮と涎と精液垂らすの大好きなんだ。調教しちゃってごめん!
今度ニルと教会に行く時は色んな事に注意する必要がありそうだ。
シスターから教会、そこから神様関係についても調べてみた。
この世界では神は創造神を主神として崇めるのが一般的で、その下に武芸だとか、魔法だとか、商売だとかを司る神様が数柱いる様だ。加えて、その他の土着信仰を否定したりしない寛容さを持つ。
ちなみに空間だとか異世界だとか召喚だとか、そう言う事に関する記述は俺が探した限りでは見つけられなかった。更に言うと、俺から伸びる縁を見て異世界転移者や、異世界転移者にまつわる書物なども無いか調べたがそれも見つからなかった。
だが流し読みのように読んだだけなので、メリアさんに訊ねれば何かヒントは得られるかもしれない。ある意味で余所者でもあり招待客でもあるかもしれない俺だが、このファンタジー世界の神様にお祈りもしていないのは少し怖いので近いうちに教会を訪ねた方が良さそうだ。
次はサキュバスの情報の精査。
基本的には以前調べた通り。特定の精を好み、一途な存在。体液に魔力を込める事で媚液を作り出す事が可能。見目麗しい存在だったが、現在はほぼ絶滅。
追加で分かったのは、その血を引く者は珍しくないと言う事。何せサキュバス全盛期は数百年前だ。世代が幾つも交代しているので、血は薄まったが広まっているのが実情。そのモデルケースがメリアさんだな。
先祖返りした真性サキュバスであるリーンリースの漏らす微弱な魔力でその血が覚醒するとしても、メリアさん程度の影響しかないなら性豪絶倫女性として覚醒したと誤認する程度で収まるだろう。
リリスから派生して羊獣人。
こちらは至って普通。別に何か大罪を犯した種族だとか、特殊な力を持った種族だなんて事はない。リリスがイレギュラーだっただけだろう。
強いて言うなら羊角ともふもふとした髪質が可愛らしい。偶々、偶然覗いてしまったお姉さんと少女の仲睦まじいお風呂シーンは眼福の極みであった……!!
次、ビャク。
この子の故郷は犬っころ団によって襲撃を受けたのか壊滅しているのが見えた。この事は折を見て伝えようかな……。
まあでも、単純に殺されたとかでは無く集落を放棄して逃走した様なので、可愛い狐獣人達はその多くが存命だ。これまた偶々偶然! 八尾の妖狐な爆乳おねいさんのお着替えシーンが見えたりもしたが、断じてわざとじゃない!
……あと、一瞬そのおねいさんと目が合った気がした。いや、確実に見られている事を認識していたかの様に微笑んで見せたので正直怖いです。今日ビャクの家族に八尾の人が居ないか聞いてみよーっと。
ここから派生して九尾の妖狐について調べてみた。
九尾の妖狐は基本的には修行し続けた才能ある狐獣人の果ての姿と言える存在。神格化されるのも無理は無いと言いますか、正確に言うなら“仙人”や“現人神”と言う言葉が適当かもしれない。
とくれば、だ。生まれた頃から九尾でしたとなればそりゃ祀られるわなぁ……と言うのが俺の所感。ビャク的にはそれが苦痛だったみたいなので、俺がビャクを怖れたり祀る事は無いだろうけど。
ついでにロリアーナとニルヴァーナについても調べてみた。
この二人の過去って実は俺あんまり知らなかったからね。正直本人から聞くべきだろって所ではあるけど、千里眼を持ってて相手を知ろうとしない方が失礼に当たりそう。
つーこってエニシサーフィンしてみたんだけど、どうやらこの二人は本当になんて事のない普通のエルフの血筋一家だった模様。ご両親は流行り病で失っている様で、それからは二人で協力して支え合いながら山暮らしをしていたみたい。
で、ある日、狩りから帰ってきたロリアーナはニルヴァーナが居ない事に気付いて妹を探しに旅に出た訳だ。
幼少のみぎりに父親が街で買ってきてくれた思い出のイヤリングを片方ずつ分け合って大切に持っていたお陰で、リアと俺が出会い、ニルの事を簡単に見つける事が出来たんだよな。多分姉妹の縁でも辿れただろうけど、美しい絆を感じさせてくれる。
「ふぅ……あーやばいやばい。八尾のお姉さん怖すぎ。視線に気付いただけなのか、俺にも気付いていたのか……。えっちいぺえぺえどころじゃねぇや」
兎にも角にも、メモしておくべき事は現状こんなもんかな? 王女様とかくっころシェーアさんとか調べた所で仕方無いし、強いて言うならヴェルダンディーナさんは気になるけど、無遠慮に詮索したいとは思えない。
「んー、あ。あちょりえ覗いてみるか。レイアウトどうしてっかな。ちゃんと展示するもん選べたのか心配だわ」
自宅のマジックアイテムから縁を辿ると、丁度あちょりえの工房とは別方向に視界が飛んでいく。その先は……ウチ? の玄関?
——カランコロン。
俺の視界の先でドアを開けたローブ姿の人の挙動と、俺の耳に届いたドアベルの音がリンクしていた。
あちょりえをあちょりえと扱うのは一般人チトセ。今の俺は相談所店主であるチトセだ。お客様としてアトリエを持て成すとともに、用件と進捗を聞いてやるとしようかね。
メモ帳とペンを片し、ボタンを上まで閉め、緩めていたネクタイを締め直し、部屋のドアを開けて声を掛ける。
「いらっしゃいませ、お客様。どうぞこちらまでお越し下さい」
「あひゃっ、ひゃいぃ……」
考え事は一旦おしまい。こっからはお仕事の時間だ。