アトリエとの新たで淫らな関係性はリリスの嗅覚によって即座にバレると共に、「まあえーか」と皆んなには受け入れられた。
クロエやメリアさんの様な部外の愛人扱いなのかな? いやそもそも俺たち結婚してねえけど。
ともあれ、特に波風が立たない性に寛容な我が家の皆に、先んじて話を通しておくとしよう。
「今日さ、ニル借りて良い? 教会で神様について調べたいんだよ」
朝食の席、ニルが作ってくれたサラダにフォークを刺しながら声を掛ける。
リアはなんて事なさそうに頷き、リリスは「次はリリスとデートね」と言い放ち、ビャクは「リリスの次にデートが良いです」とだけ言ってきた。
「リアはいいのか?」
問えばチラチラと横目でこちらを見てくるリア。少しモゴモゴとした後に耳を揺らしながら口を開いた。
「…………じゃあ、私も……チトセとデートする」
「あいよ。ニルともまた改めて時間を作ろうか。今日は真面目寄りなお出かけだから」
勿論即答だ。良い女とデート、楽しみですわ〜。
それとは別にニルにも予定を。今日の俺はちょっと真面目なのだ。
「うふ、ありがとうございますチトセ様。……ですが、あのメリアさんがいらっしゃる以上、あまり真面目では居られないかもしれませんよ?」
おぉ、悲しいかな、すごい説得力……。清楚清廉なシスターメリアの事なのに何一つ否定材料が無い。
俺があのでっかいすけべ乳首を思い出して否定出来ずに唸る間、ビャク達が今日の予定を話し始めた。
「では、此方達は今日はリリスの特訓にしよう」
「えー!? ビャクの訓練キツイからやーだー!」
「なら私が森で木苺でも摘んでこようか。リリスの好きなピンクベリーは野生の場合、今が取り頃だったはずだ」
「自分で摘みたーい……」
「特訓メニューを熟した後なら構わない。此方も木苺摘みには興味がある故っ」
なんか楽しそうな話してる。俺も摘みたーい。
「駄目ですよ、チトセ様。神様を調べるんですよね?」
「ニルも神通力使えんの?」
「愛の力ですよ」
「俺も愛の力が欲しくなってくるわ……」
一瞬、ニルの目がとても鋭くなった気がしたが、俺の李白を超えるだろう目をもってしても見逃す事象などあり得ない。きっと勘違いに違いないな! ガハハ!
食後。皿を洗い場に持って行ったら外出用の服に着替える。
着替えてリビングに戻ってくると、ビャクとリリスが並んで洗い場に立っており、背の低いビャクが台に乗って皿を拭いていた。
なんとも言えないビャクの娘感。そして妹と協力するリリスのお姉ちゃん感。だが実際の所は逆と言うね。
「リリス、皿に汚れが残っている」
「えー? それぐらい良くない?」
「では今晩、リリスにはこの皿に盛った料理を提供しよう」
「……もー、貸して。もっかい洗うからっ。もうっ!」
「綺麗な方が心地良い。チトセ殿もそう思いませぬか?」
突如として飛んできたキラーパスに動じずに反応出来るのがチトセさんだ。見とけよ見とけよ〜。
「そう思う。面倒だからやりたく無いじゃなくて、誰かが使う時にどう思うかを考えてみると良いさ。後は、あれだな。家事してる女の後ろ姿は良いもんだ」
「……ふーーーん。おにーさんがそこまで言うなら、やったげるよ」
言うや否や、リリスは俺に背を向けてお尻をふりふりとしながら皿洗いを再開した。チラチラと横目で俺の様子を盗み見ては尻尾の先でハートを作って見せるリリスに親指を立てる。リリスはそれだけで嬉しそうにしていた。
「ふふっ、チトセ殿♡」
その隣で、一本の尻尾を使って自らのミニスカートをぺらりと捲るエロ狐の姿も良いもんだ。今日は水色のおぱんてぃね。横が紐になってるのえっちすぎ。このどすけべ子狐め。夜を楽しみにしておこう。
俺はニルが着替えてくるまで、力強く両の親指を立て続けた。
少ししてやってきたのはお洒落に着替えたニル。夏も近付いて来て普段よりも薄着だった。
オフショルダーのトップスとショートパンツの組み合わせはDT抹殺コース。涼しげなサンダルと、小さめの鞄。髪には珍しくヘアピンを着けて片側だけ髪が耳に掛かるようになっている。端的に言って気合いマックスな様子だ。真面目寄りって言った筈なんだが……これはヤるっきゃないのか!?
「デートする気満々じゃん」
「えー? 普通ですよこのくらい。女の子なら当然の嗜みなんですよ」
「ほなやる気満々とちゃうかー……」
其処に装備を整えたリアがやってきた。
「ん? っはは! だいぶ気合いが入っているな、ニル。折角のデート、楽しんでくると良い」
やる気満々やないかい。
ニルの顔が少しずつ赤くなっていく。リリスとビャクの微笑ましい視線と俺からの目に耐えかねたニルの怒りは一方向に向けられた。
小さな拳をズガガガッと連続でリアの胸部装甲に叩き込んでいく。
「…………姉さんのバカ! ほんとバカ! いっつもタイミングが悪いんですよ!!」
「ちょ、やめ、やめてくれニル!? 急にどうしたんだ!? チトセ、助けてくれ!」
我が家は朝から賑やかだ。普段は卑猥に賑やかなのだが、こんな風に可愛らしい日も悪くない。
「ニル? 暴れたら頑張って整えた髪や服装が乱れるぞ? それに
「むぅ……チトセ様に免じて! 今回は許してあげます! バカ姉さん!」
「うぅ、すまなぃ……」
「リア、俺はお前を評価する。変わらずに居てくれ!」
「もお! 行きますよチトセ様!!」
怒られたり褒められたりで戸惑うリアと、全てを理解している少女二人を残して、俺たちはようやく家を出たのだった。
家を出てすぐに俺の左腕を取って大きな胸に挟んだニルは、表面的にぷんすかしていたが機嫌は良さそうだった。
エルフ耳がぴこぴこと揺れて教えてくれている。姉妹そっくりな反応だ。
「愛の力、芽生えそうですか?」
「もうちょっと引っ付いたら出てくるかも」
さらにむぎゅっとくっ付いてくるニルを連れて慣れた道を歩く。歩く度に弾むおっぱいが押し当てられて腕が気持ちいい。晴れた空の下、合法的にこの胸を楽しめるとか……異世界来て良かったぁ!
気付けばあっという間に教会の前に辿り着いてしまっていた。
教会の奥の方からは子ども達の賑やかで騒がしい声が聞こえてくる。併設されている孤児院はしっかり運営出来ているようだ。金貨を渡した甲斐があるってなもんよ。
「思ってたより大きいんですね、ここの教会」
「ね。俺も明るい内に来たのは初めてだから同じ感想ですわ」
「……不健全の極みです」
「向こうもね??」
流石に教会内までイチャイチャするのは違うと思うので、一旦ニルには離れてもらい、教会のドアを押し開ける。
最初に目に入るのは、最奥の壁上部にて日光を透過する大きなステンドグラス。その前に設置されている美しい女神の像。
女神越しの色とりどりの逆光が教会内を眩しくない程度に照らし出し、幻想的にすら感じるほど。
中は相当な奥行きがあり、長椅子が左右にズラリと置かれていた。壁には華美になりすぎない程度の装飾と、燭台やキャンドル。
仮にも王都にある教会として恥じない威容だと思う。なんの神を崇めてるのかまるで知らないけど。
人はそこそこ入っている様で、あまり見かけない俺達が来たからか中に居たおじさんおばさん連中がこちらをジロッと見てくる。特におじさん連中がニルを見る目がかなり不愉快だ。メリアさんを見過ぎてセクハラの境界線を忘れちまったか変態親父ども。気持ちはすげえよく分かるよ。
ニルを視線から庇う様に後ろに下げ、シスターや神父の姿を探す。
すると、おじおばの中に紛れているのが分かった。どうやらお喋りしていたらしいが、こちらとしては勝手が分からん。軽く会釈をする事で仕事せぇやとアピール。
すると、立ち上がったご年配のシスターは、俺を何度か改めて見直し出した。
「あらあら? あらあらあら?? 貴方もしかして……まあまあまあ! ちょっと待っていて下さいねぇ〜!」
突然そんなことを言ってシスターさんは奥へと引っ込んで行ってしまった。
「チトセ様、お知り合いですか?」
「えーっと……いやぁ憶えてないな。客としてうちに来た事は無いはずだから、あの子をここまで送る時に顔を見られたのかも」
「ああ、そう言う。……ほとんど毎日ですもんね。そりゃあ憶えられますよね〜」
「拗ねるなよ……それこそニルとは毎日なんだぞ?」
「それでもぶーぶーですっ」
半分演技だろうが、可愛らしくむくれる美少女エルフは絵になりすぎる。どこを切り取ってもスチル行きだわ。
イチャコラとシスターさんの帰りを待っていると、先ほどシスターさんが消えていったドアがバタンッと派手に開かれ、そこから綺麗に整えられた茶色い長髪と空色の瞳が特徴的な垂れ目な爆乳ドエロシスターが現れた。通称メリアさんだ。
駆け寄ってくるメリアさん。でっかいおっぱいが右に左にデンプシーロール。変態親父もおばさん達も、揃って視線がデンプシーロール。
痛そうに揺れ弾む爆乳がだっぷんだっぷんと音を立てて目の前にやってきた。
そしてメリアさんは即座にニルが居ない方の腕をがしっと抱き込むようにして引っ張ってくる。
「あっ、あ、あ、えっと……どどどうぞこちらに!! あの、すみません、来るなら来るって言ってくれたらあの、その……とりあえず奥へどうぞ!」
まだお布施もお祈りもしてないのに良いのかと言う思いはあるが、不躾な視線から逃れられるならそれに越した事は無い。おっぱいに手を引かれ、おっぱいを後ろに連れながら教会のさらに奥へとお邪魔する。
奥はちょっとした休憩室や聖職者が気を休めるスペースとなっており、そのさらに奥へと続くドアは外に繋がっていた。
ドアの外は孤児院の方へと続いているようで、閉ざされたドアが開くと、教会に入る前よりもずっと大きく、子ども達の活発な声が耳に届く。
次いで陽の光が降り注ぐ中、子ども達が庭で元気に駆け回る姿や、菜園に水をやる姿が見えた。
意外とダークな世界が身近にあるせいで、こう言った元の世界における普通の光景をとても眩しく感じてしまう。
「素敵な光景ですね、チトセ様」
「ああ。こう言う場所が増えてくれると良いな」
悪を嫌ってるわけでも、子どもを好いているわけでも無いが、こう言う場所が廃れたり荒らされるのは好かない。守るなんて大層な事は俺には出来ないが、精々悪い縁を断ち切るアドバイスくらいなら出来るかな?
今度メリアさんに繋がる縁を精査させてもらうとしよう。
そこからまた少し歩かされて、孤児院に併設された建物へと入る。
どうやらここはシスター達のプライベートな部屋を兼ねた寝室のようで、俺達はメリアさんの寝室に問答無用で押し込まれてしまった。
「な、なななんで来るって言ってくれないんですかぁ!? 私、今日はちょっと気を抜いていたと言うか……下着とか気を使ってないですし、って言うか朝だし……声我慢出来るでしょうか……」
「……この人ほんとにドスケベシスター過ぎます」
「否定出来ないのがなんとも。一先ずおはようメリアさん」
可愛らしく彩られた室内にて、落ち着いてもらうべく挨拶を交わす。
思い出した様に挨拶を返してくれた彼女に、今日やってきた本題を伝える。
「え……エッチするんじゃないんですか……そうですかぁ……」
「子供の声がする場所でもこれか。末期だな」
「流石に責任取った方が良いのでは?」
「メリアさんとリリスの仲が悪いからさ? 同族嫌悪で折り合いがどうにもな」
ともあれ、神様について調べたい旨を伝える。可能な範囲で神に関する書物を解説込みで読み込みたいのだと。
「えっと、そう言う事でしたら少し待って下さいね。他のシスターの皆さんに事情を説明してきますので」
程なくして戻ってきたメリアさんは顔を真っ赤にしていた。
どうせセクハラ発言を貰ってきたのだろう。小一時間は近付かない様にするわね〜とか。
「孤児院に子どもを預けても大丈夫だからねって言われました……もうお嫁さん扱いですよぉ!」
「凄い。セクハラ発言で棒高跳びしてやがる」
「先にチトセ様の子を授かるのは私達です!」
「ご存知か知りませんが、人間同士が一番子を授かり易いんですよ? ね、チトセさん?」
「……お願いだから、本を読ませて下さい」
バチバチと火花を散らすおっぱい達に挟まれながら、俺は切実な願いを声に出す。その声が二人に届いたかどうかは定かではない。
なんとも先が思いやられる一日が、幕を上げたのだった。