「お〜なんだシンジ、帰ってたのか」
「おかえり父さん」
夜が更け始めた頃、いつもより随分早く帰宅したサングラスをした怪しい風体の髭の男性。これが僕の父碇ゲンドウだ。いつもサングラスをしていて外した所を見たことが無い。何時でも何処でもサングラスをしていてもはやサングラスが本体なのではないかと考えたことは1度や2度ではない。
さらに言えばこの怪しい風体のせいで家族皆で出かけた際にはほぼ確実に警察や駅の係委員に声をかけられ職質される。今までもよく警察にお世話になっている所をよく見かけていた。
だが、本人は至って真面目。母さんや僕を心から愛していてとても大事にしてくれている。仕事ではどこかの研究所の所長を任されている程だ。
「おっ今日の晩御飯はシンジが作るのか」
「うん」
「それは楽しみだ」
そういうとリビングに行きジャケットを脱いでハンガーにかける。そしてそのままテレビを見ている。ソファに寝っ転がりながらテレビのチャンネルを次々変えていく。ニュース番組に注目するとそこからチャンネルを変えず静かに画面を眺めている。
なんだか隣町で事件があったとか少女が1人保護されたとかニュースキャスターが語っているのを聴きながら僕は晩御飯の用意を進める。
晩御飯の用意を進めていきあとはリビングのテーブルに配膳していくだけだ、と言う時に玄関が開いた音と共に誰かが入ってきたのが分かった
「ただいま〜」
「おかえりなさい、母さん」
「おかえりユイ」
スーツ姿で疲れた顔をしている母さんから荷物を預かりリビングに持っていく。母さんは誰に対しても穏やかに微笑み、決して声を荒らげることなく、ただ静かに心を包み込んでくる。そんな存在だ。父の共にもう40に迫りつつあるとは考えられないほど若々しく、僕と二人で出かけると親子とは見られず少し年の離れた姉弟に見られることもある。
何故父さんみたいな、一見まるでダメなオッサン、略してマダオと結婚したのか時々不思議に思う。
家族みんなが揃ったリビングで晩御飯を用意していく。
テレビを見ながら明日の天気や事件があった事などを聴きながら食事を始めしばらくすると、母さんが話し始める。
「そうだアナタあの事、ちゃんとシンちゃんに話しておいてくれた?」
「あっあぁ、もっ勿論だとも」
徐々に目線を逸らしていく父さんの様子を見てため息をつく
「ハァ...やっぱりまだなのね」
「ス…スマン」
「どうかしたの?」
母さんに話しかけると真剣な表情でこちらを向きゆっくりと、しかし、確かな意志のようなものを感じる顔つきで話し始めてくる
「来週からこの家に女の子がやってくるわ。私の親戚に当たる子なんだけどちょっと事情があってこっちに引っ越してくるの」
事情はまた今度ゆっくりと話すから、そういうと母さんは食べ終わった食器を片付け仕事が残ってるといい自室にこもってしまった
この時、僕は何も気には止めてなかった。よく来る来客の延長のような感覚でいた。
だが、これから起こることは僕の予想していたものよりも重く深くのしかかってきた。