今はセフレでいいから 〜ギャルな幼馴染のギャル友の初体験を手伝ったら、激オモ感情を向けられるようになった〜【電子書籍4巻4月24日 発売】 作:佐間野 隆紀
『今日は陸上部で後輩の練習見てくる。早めに終わったらLIMEするね』
土曜の朝、猫のイラストのスタンプとともに送られてきたメッセージで僕は起こされた。
僕と夏希は学校でこそあまり絡みはないものの、放課後に帰宅したあとや、今日のような休日などはだいたい一緒にいることが多い。
だから、今日みたいにどちらかに予定がある場合は一人で過ごすことになってしまう。
今はとくにハマっているゲームがあるわけでもないし、さて、どうしたものか。
やりたいことも思いつかぬまま昼前までベッドの上でゴロゴロとしていたが、さすがにこれは不毛すぎると思い至り、体を起こして自室を出る。
リビングでは親父がソファに座ってテレビを見ており、お袋はキッチンでそんな親父の昼食を用意しているようだった。
「あら、ユウト、あんたも何か食べる?」
「うん。あるなら」
お袋が野菜ラーメンを作るというので、親父と一緒にそれをいただくことにした。
テーブルのほうに移ってきた親父と一緒に食卓に着き、お袋が運んできてくれたラーメン丼を前に二人で手を合わせる。
「今日はナッちゃんのところにはいかないのか?」
「うん。陸上部に顔出すんだって」
ズゾゾッとラーメンを啜りながら訊いてくる親父に、そう答える。
天宮家とは家族ぐるみのつき合いなので、親父もお袋も夏希のことはよく知っている。
「そうか。陸上なぁ。なんでやめちまったんだろうなぁ」
「全国に行けないレベルで頑張っても、時間の無駄だからって言ってたよ」
「シビアな考えかただなぁ。推薦の話もあったんだろ?」
「うん。でも、県大会レベルの実力で頑張ってもどうせ辛くなるだけだからって」
「そんなの、やってみなきゃ分からんだろう」
「走るのが嫌いになりたくないからって、ナツキは言ってたよ」
「ふーん? まあ、ナッちゃんにもいろいろあるんだろうなぁ」
僕にだって、夏希の事情は分からない。
進路のことで夏希が両親とかなり揉めたという話くらいは知っているが、だからといって僕にできることなんてなにもなかった。
ただ、夏希は今でも走るのが好きで、だからこそ、この先は趣味でいいと言っていたことだけは強く印象に残っている。
実際、今日みたいに母校の陸上部に顔を出したり、天気のいい日は市民公園で走ったりもしていて、僕もよくその横を自転車で並走させられていた。
きっと僕ら素人には分からない世界の中で夏希は夏希なりにしっかり考えて答えを出したのだろうし、僕はその選択が間違っているとも思わない。
夏希は周りから生粋のギャルだと思われているが、僕からすればただ走ることが好きで派手好きで、ちょっとエッチなだけの普通の女の子だった。
「あんた、今日は家にいるの?」
お袋がキッチンから訊いてきて、僕は少し悩んでから首を振った。
「出かける」
「何処いくの?」
「ラウワン」
夏希は今も一生懸命に自分の人生を邁進しているが、あいにくと僕にそこまで情熱を捧げるものはない。
そして、そんな退屈な人間が暇を潰すなら、アラウンドワンほど最適な場所はないのだ。
お袋特製の野菜ラーメンを腹の中に収めると、僕はスマホと財布だけという身軽な格好で暇つぶしの旅へと出立する。