※この作品はR-18です。

綾~許されぬ愛と家族の形~   作:松原隼人

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第10章 手紙

2005年8月。隼人25歳、綾24歳、愛菜3歳、さくら生後9か月。その日、自宅マンションのポストに不審な手紙が入っていた。開くとそこには、「あなたたち夫婦は本当は兄妹、おかしい、子供も2人作るなんて変態、狂っている」という悪意に満ちたおぞましい内容が記されていた。僕と綾は衝撃を受けた。この秘密を知る誰かが、すぐ近くにいたのだ。

 

手紙には切手が貼られておらず、宅配便でもなかった。明らかに、誰かが僕たちのマンションまで来て投函したものだと直感した。犯人には心当たりがあった。僕と綾の秘密を知る人間は、そう多くはなかった。両親はもちろん秘密を知っていたが、綾との関係が知られて以来、僕たちは八王子市の実家を出て、5年以上会っていなかった。自宅住所や携帯電話の番号はもちろん、メールアドレスなども一切教えていなかった。両親は僕たちの愛し合う関係に賛成も理解も示さなかったが、表立って邪魔をするでもなく、ただ無視するという態度だった。だから、おそらく両親ではないと思われた。

 

残るは、綾の高校時代の同級生で親友の山田美咲だった。美咲は綾と同じ新体操部に所属し、僕が綾に告白した時、綾が真っ先に相談した相手だった。美咲は僕たちの恋愛を心から応援し、味方になってくれ、綾の心情に深く寄り添ってくれた。僕たちが家出する時も、駅まで見送りに来てくれた恩人だった。綾とはメールをやり取りする仲で、小平市の自宅の住所も電話番号も知っていた。子供が生まれたことも報告していた。ただ、僕たちの事情を知っているからこそ、美咲と直接会うことは避けていた。

 

警察に届けることも頭をよぎったが、警察に相談するには手紙の内容を見せなければならなかった。警察とはいえ、これ以上僕たちの秘密を知る人物を増やしたくはなかった。管理会社や弁護士も同様だ。一度人の口に上ったことは、あっという間に広がる。「人の口に戸は立てられない」という言葉が頭をよぎった。

 

この日以来、僕たち家族から笑顔が消えた。綾は体重が5キロも減り、夜眠れない日が続いた。このままではいけない。やはり美咲に会い、この手紙の真実を確かめなくてはならない。勇気を振り絞って、美咲に連絡を取ってみようと思った。

 

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2005年9月。隼人25歳、綾24歳、愛菜4歳、さくら生後10か月。僕は美咲に会った。会うなり、美咲は手紙の送り主であることを認めた。なぜ親友である彼女が、そんな手紙を送ったのか問い詰めた。

 

美咲は、僕たちが実家を出てからしばらくして、高校時代の先輩と結婚したという。しかし、その結婚生活はひどいDVに苦しみ、すぐに離婚したそうだ。その後、何人かの男性と付き合ったが、どれもうまくいかず、自暴自棄になっていたという。そんな折、綾から子供が生まれたことをメールで報告を受けた。その瞬間、美咲の心が音を立てて壊れたのだという。激しく、醜悪なまでの嫉妬心が、心の奥底からマグマのように噴き出したと語った。

 

その後、美咲は秘密裏に僕たちの近所に引っ越してきたという。そして、僕や綾の後を尾行しながら、いつか僕たちの幸せな家庭をぶっ壊してやろうと企んでいたと告白した。特に、近所の公園で愛菜やさくらと一緒に4人で遊んでいる光景が我慢ならなかったらしい。それからしばらくして、あの手紙を投函したのだ。

 

僕は美咲に、「綾は僕の妹だけど、君の知っている通り心から綾のことを愛している。2人の子供も僕のすべてだ。僕たちの家庭を壊すようなことをしたら絶対に許さない。何があっても綾と愛菜、さくらのことは守る。これ以上危害を加えたら、警察に行く」ときっぱりと言い放った。美咲は「わかった」とだけ言って、その後は何も語らなかった。

 

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話し合いが終わり、近所の喫茶店を出て駅へ戻る途中、綾が来た。最初は美咲とは会わないと言っていた綾だが、心配で近くまで来ていたのだ。綾は小さな愛菜の手を引き、ベビーカーにはさくらを乗せていた。2人は無言のまま対峙した。美咲は「ごめん」とだけ言い残し、駅の方へと向かい、改札の向こうに消えた。

 

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その後は、何事もなく平穏な生活が戻ってきた。数か月後、綾は美咲にメールを何回か送ったが、返信が来ることはなかった。僕と綾は携帯電話の番号を変え、メールアドレスを変更し、調布市のマンションへと引っ越しをした。

 

その後、美咲がどうなったかはわからなかった。噂では、2度目の結婚をしたそうだ。今度こそ、彼女には幸せになってほしいと心から願った。そして、かけがえのない親友を失った綾に、これからも僕は寄り添い、僕たち家族4人の生活を、何があっても守り抜きたいと改めて誓った。




松原隼人:1980年5月12日生まれ 1998年7月5日(18歳2か月)初体験
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松原 綾:1981年7月5日生まれ 1998年7月5日(17歳)初体験 新体操部
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松原愛菜(まな):2001年9月26日生まれ(長女)
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松原さくら:2004年11月10日生まれ(次女)
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山田美咲:綾の高校の同級生 新体操部
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