2015年5月。隼人35歳、綾33歳、愛菜13歳中学2年生、さくら10歳小学5年生。引っ越しがほぼ完了し、それぞれの日常が始まった5月のある日曜日の朝。愛菜がさくらとともに僕と綾のところへやって来て、「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど……」と切り出した。リビングで僕と綾、愛菜とさくらの4人で座ると、綾が心配そうに「どうしたの?」と尋ねる。
しばらく沈黙が続き、愛菜は椅子から立ち上がる。そして、僕の父の段ボール箱を持ってくる。その中から一通の書類を取り出し、机の上に置く。「引っ越しの時に見つけたの」。 書類には大きく「戸籍謄本」と書いてある。
【戸籍謄本】松原 忠晴
【本籍】 東京都八王子市元本郷町〇丁目〇番地の〇
【氏名】 松原 忠晴
【戸籍に記載されている者】
【名】 忠晴
【生年月日】 昭和25年8月31日
【配偶者区分】 夫
【父】 松原 〇〇 ※仮名
【母】 松原 〇〇 ※仮名
【続柄】 (記載なし)
【身分事項】
出生
【出生日】 昭和25年8月31日
【出生地】 〇〇県〇〇市 ※仮の記載
【届出日】 昭和25年〇月〇日 ※仮の記載
【届出人】 父 ※仮の記載
婚姻
【婚姻日】 昭和△△年△月△日 ※仮の日付
【配偶者氏名】 松原 清美
【従前本籍】 〇〇県〇〇市〇〇番地 ※仮の記載
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【妻】
【名】 清美
【生年月日】 昭和27年3月10日
【父】 △△ 〇〇 ※仮名
【母】 △△ 〇〇 ※仮名
【続柄】 (記載なし)
【身分事項】
出生
【出生日】 昭和27年3月10日
【出生地】 〇〇県〇〇市 ※仮の記載
【届出日】 昭和27年〇月〇日 ※仮の記載
【届出人】 父 ※仮の記載
婚姻
【婚姻日】 昭和△△年△月△日 ※上記忠晴と同一
【配偶者氏名】 松原 忠晴
【従前本籍】 〇〇県〇〇市〇〇番地 ※仮の記載
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【子】
【名】 隼人
【生年月日】 昭和55年5月12日
【父】 松原 忠晴
【母】 松原 清美
【続柄】 長男
【身分事項】
出生
【出生日】 昭和55年5月12日
【出生地】 東京都八王子市
【届出日】 昭和55年5月13日
【届出人】 父
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【子】
【名】 綾
【生年月日】 昭和56年7月5日
【父】 松原 忠晴
【母】 松原 清美
【続柄】 長女
【身分事項】
出生
【出生日】 昭和56年7月5日
【出生地】 東京都八王子市
【届出日】 昭和56年7月6日
【届出人】 父
少し汚れて色あせた紙の感触から、それが父の戸籍謄本であることに僕と綾は直感的に気づく。血の気が引くのを感じる。なぜこんな物が、この家にあったのか? 愛菜が戸籍謄本を開く。そこには「戸籍謄本:松原忠晴、長男:隼人、長女:綾」と、僕たちの名前が並んでいる。「これ、どういうこと?」愛菜が思いつめた目で僕と綾を見つめ、問い詰めてくる。僕は何も答えることができない。
「パパとママは、兄妹なの?」愛菜が涙をためながら、さらに問いかけてくる。隣の綾は激しい息遣いになり、言葉に詰まる。「ねえ、何か言って!!!」愛菜が痛切な叫びとともに、僕たちに激しく詰め寄る。その表情は、泣きたいのを我慢しながらも、真実を知ってしまった絶望に満ちている。さくらは愛菜の隣で激しく泣きじゃくる。小学5年生のさくらには、この真実の意味がどの程度理解できるか分からないが、大好きなパパとママが「何か違う」ということは感じ取っているのだろう。
「そうだよ、パパとママは兄妹なんだ。愛菜とさくらには、いつか本当のことを話そうと思っていたんだよ」と、僕はやっとの思いで言葉を絞り出す。
「嫌だ、汚いよ、汚い!汚い!!汚い!!!」愛菜が大粒の涙をこぼしながら叫ぶ。「パパはママのことが中学生くらいの頃から大好きだったんだ。ママもパパのことが大好きだった。そして、高校生になってお互いの気持ちが通じ合ったんだ。愛菜やさくらのおじいちゃんやおばあちゃんは反対だった。だけど、パパとママは、お互い好きだという気持ちを貫き通した。そして、愛菜が生まれ、さくらが生まれたんだ」。
愛菜は激しく首を左右に振りながら席を立ち、自分の部屋に走っていく。僕と綾の目の前には、ただただ泣きじゃくるさくらが残される。
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綾は動揺を懸命に抑えながら、泣きじゃくるさくらを抱きしめた。さくらも綾に強く抱きついた。綾は「ママはさくらのことも、お姉ちゃんのことも、パパのことも大好きだよ」と、精一杯の愛情を込めてさくらに語り掛けた。
僕は、父の遺品が入った段ボールの中身を見た。そこには父の古いパスポートがあった。そういえば父は、僕と綾が小学生の頃、当時勤務していた会社から海外赴任の命令があり、1年間単身赴任をしていたことがあった。パスポートを持っていなかった父は、その時、新規にパスポートの申請をしたのだろう。パスポート申請には戸籍謄本が必要だ。用心深い父のことだから、念のため2通戸籍謄本を取得し、その1通がこの家に残っていたのだろう。
僕は残された戸籍謄本とパスポートを手に、愛菜とさくらの深く傷ついた心を思い、胸が締め付けられた。
松原隼人:1980年5月12日生まれ 1998年7月5日(18歳2か月)初体験
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松原 綾:1981年7月5日生まれ 1998年7月5日(17歳)初体験 桑都八王子東高校新体操部キャプテン
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松原
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松原さくら:2004年11月10日生まれ(次女)小学校5年生
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松原忠晴:1950年8月31日生まれ 2006年7月7日死去(55歳) 隼人と綾の父
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松原清美:1952年3月10日生まれ 2006年6月15日死去(54歳) 隼人と綾の母
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吉田有紗:1964年生まれ 弁護士 K女子中学校出身
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山田美咲:綾の桑都八王子東高校の同級生 新体操部副キャプテン ケーキ作りが趣味